佐賀県読書バリアフリー推進計画 令和4年3月 佐賀県 目次 第1章 計画策定にあたって  1 計画策定の背景と趣旨 2 計画の対象 3 計画の期間 4 計画の推進 第2章 基本的な方針 第3章 施策の方向性 1 視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等(法第9条) 2 インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(法第10条) 3 特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(法第11条) 4 端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援(法第14条) 5 製作人材・図書館サービス人材の育成等(法第17条) 第4章 おわりに 成果指標 資料 アクセシブルな書籍・電子書籍等(視覚障害者等が利用しやすい書籍)の紹介 県立図書館の概要 情報・交流センター(点字図書館)の概要 学校図書館の概要 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法) 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画  第1章 計画策定にあたって  1 計画策定の背景と趣旨 平成30年9月、県は、「障害のあるなしにかかわらず、ともに暮らしやすい佐賀県をつくる条例」を施行しました。この条例では、県民、地域コミュニティ、障害のある人が、お互いにその人らしさを認め合い、それぞれの立場でできる配慮や支援をすることで、障害を理由とする差別の解消を進めていくこととしています。 また、県は、いろんな特性や個性を持つ人たちみんなが自分らしく暮らせる、佐賀らしい、人にやさしいまちのスタイル「さがすたいる」を広める取組を行っています。これは、みんなが自然とお互いを思い合い、さりげなく支え合えるような、そんな佐賀県を目指すものです。   一方、国では、令和元年6月に「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)」(以下、「法」という)が施行されました。この法律は、障害のあるなしに関わらず、全ての人がひとしく読書を通じて文化的な生活ができる社会の実現に寄与することを目的としています。 折しも、令和4年4月に佐賀県視覚障害者情報・交流センター“あい さが”※1(以下、「情報・交流センター」という)がオープンし、県では、これを機会に視覚障害者に限らず、より多くの人が図書やサービスなどを利用できるような仕組みを作っていくこととしています。 そのため、視覚障害者等の読書環境の整備を推進するための計画を策定し、全ての県民がひとしく読書を通じて文字・活字文化の恩恵を受けることができる社会の実現に向け取り組んでいきます。 ※1 佐賀県視覚障害者情報・交流センター“あい さが” 令和4年4月より「佐賀県立点字図書館」から名称を変更して運営開始予定。 視覚障害者情報提供施設として、点字図書や録音図書、その他各種情報を記録するものを製作し、貸出や閲覧を行うとともに視覚障害者等に対する相談支援等を行うことにより、視覚障害者等の社会参加や自立を支援している。 2 計画の対象 本計画は、視覚障害、発達障害、知的障害、肢体不自由等さまざまな障害により、文字や絵の情報を見ることや認識することが難しい、又は本を持つことやページをめくることが難しい人(以下、「視覚障害者等」という)を対象とします。 なお、障害者手帳の所持の有無は問わず、また、視力の低下等で文字が読みづらくなった高齢者等も対象とします。 さらに、学びたい人がそれぞれのライフステージに応じて、主体的に学び、学んだことをいかして活躍できるようにするため、各ライフステージや子どもの発達段階(乳幼児期、小学生期、中学生期、高校生期)において必要とされるさまざまな種類・形態の書籍について考慮しながら取り組んでいきます。 3 計画の期間 本計画は、令和4年度(2022年度)から令和8年度(2026年度)までの5年間を対象とします。 計画の策定後は、対象とする人のニーズや要望、時代や情勢の変化に対応するため、現状やニーズの把握をさらに進めながら、定期的に進捗状況を把握・評価し、必要に応じて施策の見直しを行います。 4 計画の推進 本計画に基づき、県、市町及び関係団体で連携・協働し、施策の方向性に沿って視覚障害者等の読書環境の整備を推進します。 県においては、情報・交流センターを所管し、視覚障害者等を支える健康福祉部、公共図書館を所管する県民環境部及び学校図書館を所管する教育委員会が連携・協働し、施策の推進に向けて取り組んでいきます。 なお、これまでも点字図書館(情報・交流センター)や公共図書館及び学校図書館では、視覚障害者等に対して様々なサービスに取り組んできましたが、それらサービスに関する情報が、視覚障害者等や視覚障害者等を支援する人に行き届いていませんでした。 本計画や施策の周知については、視覚障害者等や視覚障害者等を支援する人に必要な情報が届くよう、県、市町及び関係団体が連携・協働し、広く周知を図ります。 第2章 基本的な方針  読書は、一生涯にわたって、個人の学びや成長を支えるものであり、教養や娯楽を得るだけでなく、教育や就労を支えるうえで欠かせないものです。誰もがひとしく読書に親しめるような環境を整備することは重要なことであり、また、その環境整備のためには、読書や図書館利用が難しい人の視点に立った施策を充実させていくことが必要です。 本計画の対象となる人は、障害の特性及び程度に応じて、読書や図書館利用の難しさも様々です。例えば、視覚障害や肢体不自由により、図書館に行くことが難しい人。発達障害や知的障害により、図書館で本を探すことや、探すための助けを求めることが困難な人。また、コミュニケーションがうまくとれず、レファレンスサービス※2の利用が難しいと感じる人。視覚障害や発達障害、知的障害、肢体不自由により、文字や絵を認識することや本のページをめくることが難しい人がいます。 これまで、点字図書館(情報・交流センター)、公共図書館及び学校図書館では、各館において、視覚障害者等に対するサービスや取組を行ってきました。時代や情勢の変化により、サービスの対象となる人が広がる中で、各館の取り組み方も考えていく必要があります。 ※2 レファレンスサービス 図書館利用者が学習・研究・調査を目的として必要な資料や情報を求める際に図書館員が図書館の資料を活用して、資料や情報を検索・提供・回答するサービス。 <点字図書館(情報・交流センター)における取組について> これまで、点字図書館(情報・交流センター)では、県内唯一の視覚障害者情報提供施設として、点字図書及び録音図書の貸出や視覚障害者等が必要とするサービスの提供に取り組んできました。図書の貸出にあたっては、サピエ※3に加入することで館内の蔵書のみならず全国の図書ネットワークも活用した貸出を行い、また、図書の検索・紹介、資料の提供等のレファレンスサービスや、視覚障害者が必要とする資料の点字化・音訳化等のプライベートサービスも実施しています。さらに、点訳・音訳ボランティアの養成にも力を入れ、ボランティアとともに点字図書及び録音図書の製作にも取り組んできました。 しかし、今後は視覚障害以外の要因により読書に困難を抱える人を対象として利用者が拡大していくことを考慮すると、蔵書の種類・数・貸出手段のより一層の充実を図っていく必要があります。加えて、ボランティアによる点字図書及び録音図書の製作についても、情報・交流センター単独の活動ではなく、より拡大させていく必要があります。また、情報・交流センターの活動内容を広く周知し、必要とする人に対して、ニーズに応じたサービスや情報の利用を促すことが課題となっています。 ※3 サピエ 視覚障害者をはじめ、目で文字を読むことが難しい人に対して、様々な情報を点字・音声データ等で提供するネットワーク(日本点字図書館が管理、全国視覚障害者情報提供施設協会が運営)。 主なサービスとして、全国のサピエ会員施設・団体が製作又は所蔵する資料の目録等からなる書誌データベースである「サピエ図書館」があり、資料の貸出・コンテンツのダウンロードサービス等を提供している。 <県立図書館における取組について> 県立図書館では、県の中核図書館として、市町立図書館・公民館図書室の支援や連携強化、郷土資料の保存・活用に取り組むとともに、県民が生涯にわたり学び続けていく「知の拠点」として、県民誰もがいつでもどこでも読みたい本が手に取れる環境づくりに取り組んできました。 障害者を対象とした取組では、大活字本やLLブック、マルチメディアデイジー図書、音声読み上げ対応の電子書籍の貸出や、拡大読書器の設置、ルーペや老眼鏡の貸出等のサービスを提供してきました。また、肢体不自由の障害を持つ人の自宅等に図書を届ける身体障害者図書郵送サービスにも取り組んでいます。 さらに、市町立図書館・公民館図書室においても、大活字本やLLブック、オーディオブックの貸出、読書支援機器の設置、対面朗読、バリアフリー映画上映会の開催や、障害福祉サービス事業所等と連携した図書館利用の支援が行われてきました。 しかし、各図書館で様々なサービスを提供しているものの、利用が少なく、対象となる人がどの程度いて、どのようなサービスを求められているのか、ニーズをしっかり把握できていないといった課題があります。 一方で、視覚障害者等及び視覚障害者等を支える医療従事者、施設関係者等においては、公共図書館が行うサービスや、障害の特性や程度に応じた様々な図書があるという情報が把握されておらず、それらの情報が必要とする人に行き届いていないといった課題もあります。 <学校図書館における取組について> 県立学校の学校図書館では、社会の変化や学問の進展を踏まえ、児童生徒にとって正しい情報に触れることができる図書を整備し、学校図書館資料を児童生徒や教職員が利用することにより、学校の教育課程の発展や児童生徒の健全な教養を育成することができるよう努めています。また、各県立学校の校種や児童生徒の障害の程度に応じて図書の種類を整えるなど、教育効果に必要とされる読書環境の整備を行っています。 例えば、視覚障害のある児童生徒が通う盲学校では、通常の図書以外に大活字本、点字図書、マルチメディアデイジー図書等を備え、貸出を行っています。また、拡大読書器や文書読み上げ機等の読書支援機も複数台設置し、視覚障害の程度に応じた読書環境を整備しています。さらに、肢体不自由のある児童生徒が通う特別支援学校では、書棚を図書が取り出しやすい高さに配置したりしています。 しかし、配慮を必要とする児童生徒の増加からスペース等の問題で学校図書館を独立した形で確保することが難しかったり、学校図書館自体が狭小であったりする学校もあります。 以上のように、情報・交流センターや県立図書館及び県立学校の学校図書館等において、様々なサービスの現状や課題があります。  同時に、情報・交流センターの視覚障害者等を対象としたサービスの提供及び点字図書・録音図書製作のノウハウ、県立図書館の公共図書館と連携した図書館司書のネットワーク及び公共図書館間の相互貸借ネットワーク(物流)、並びに学校図書館の授業に直結した蔵書をはじめ、児童生徒の発達段階に応じた図書や新聞等の整備、また、個々に応じたきめ細かな対応ができることは、これから読書環境を整備していく上での強みといえます。 本計画は、これらの強みをいかしながら、多様な関係者が互いに連携して取り組むことにより、障害のあるなしにかかわらず、全ての県民がひとしく読書に親しめるような環境を整備するため、以下の3つを基本的な方針とし、必要な方策について示すものとします。 <基本的な方針> 1 アクセシブルな電子書籍等※4の普及及びアクセシブルな書籍※5の継続的な提供 アクセシブルな電子書籍等の普及を図るとともに、これまでも提供されてきたアクセシブルな書籍も含めて、多様な関係者が連携し、それらを必要とする人に届くようにします。 2 アクセシブルな書籍等の量的拡充・質の向上 視覚障害者等が利用しやすい様々な書籍やそれらへのニーズを把握し、必要とされる書籍等の充実や質の向上を図ります。 3 視覚障害者等の障害の特性・程度に応じた配慮 視覚障害者等の障害の特性・程度に応じた書籍等やサービスを充実し、視覚障害者等及び視覚障害者等を支援する人へ必要とする情報の提供を行うとともに、研修等を通してそれらを担う人材の育成を行います。 ※4 アクセシブルな電子書籍等 視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等(法第2条第3項)。電子書籍その他の書籍に相当する文字、音声、点字等の電磁的記録で機器等を利用して視覚障害者等がその内容を容易に認識することができるもの。音声読み上げ対応の電子書籍、デイジー図書、オーディオブック等がある。 ※5 アクセシブルな書籍 視覚障害者等が利用しやすい書籍(法第2条第2項)。点字図書、大活字本、録音図書、布の絵本、触る絵本、LLブック等がある。 第3章 施策の方向性  1 視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等(法第9条) (1)アクセシブルな書籍等の充実 ・県立図書館は、県内の市町及び関係機関の実情に配慮しながら、情報・交流センター、市町立図書館・公民館図書室及び学校図書館等と連携し、アクセシブルな書籍等の充実や相互利用に努めます。【担当課:まなび課】                                  ・点字図書館(情報・交流センター)が今まで培ってきたノウハウをいかし、引き続き障害の種類及び程度に応じたアクセシブルな書籍等が充実するよう、情報・交流センターによる書籍等の製作に関する支援に努めます。【担当課:障害福祉課】  (2)円滑な利用のための支援の充実 ・県立図書館及び県立学校図書館において、各館の特性や利用者のニーズに応じ、アクセシブルな書籍等の紹介コーナーの設置・拡充や読書支援機器等の整備、ピクトグラムやUDフォントを使ったわかりやすい表示、インターネットを活用した広報・情報提供体制の充実及び障害者サービスの充実を図ります。【担当課:まなび課、教育振興課特別支援教育室、学校教育課】 ・インクルーシブ教育システム※6の理念にのっとって、視覚障害等のある児童生徒が在籍する教育機関において読書環境を保障することが重要であり、次の取組を推進します。 ①情報・交流センター、県立図書館、市町立図書館・公民館図書室及び学校図書館等の連携を図り、 視覚障害等のある児童生徒を支援するための取組を進めます。【担当課:障害福祉課、まなび課】 ※6 インクルーシブ教育システム 人間の多様性の尊重等を強化し、障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、 自由な社会に効果的に参加することを可能にするという目的の下、障害のある人と障害のない人が共に学ぶ仕組みのこと。 ②県立学校及び市町教育委員会に対し、情報・交流センター、県立図書館及び市町立図書館・公民館図書室の活用法を紹介し、視覚障害等のある児童生徒が生涯学習の場である図書館の利用について学ぶ機会を設けることの重要性及び具体的な利用方法について周知します。【担当課:教育振興課特別支援教育室、学校教育課】 ③県立学校及び市町教育委員会に対し、各学校の実態に応じて、視覚障害等のある児童生徒の学校図書館利用における支援体制の充実を図るため、司書教諭及び特別支援教育コーディネーター等の教職員間の連携の重要性を引き続き周知します。【担当課:教育振興課特別支援教育室、学校教育課】      ・情報・交流センターにおいて、県立図書館、市町立図書館・公民館図書室、学校図書館等及びICTサポートセンター※7との連携を図り、視覚障害者等に対し、アクセシブルな書籍等や端末機器を活用して読書の機会を提供するとともに、点字・録音図書等の郵送サービスを含めて、視覚障害者等がアクセシブルな書籍等を利用しやすくなるような支援を実施します。【担当課:障害福祉課】 ※7 ICTサポートセンター 障害者のICT機器の操作についての支援を行うパソコンボランティアの養成・派遣、ICT教室の開催、ICT機器の利用にかかる相談等を行う総合的なサービス拠点 ・情報・交流センターがこれまで担ってきた音訳図書の製作やアクセシブルな書籍等の利用に関する情報提供等の機能は、視覚障害者以外の文字や絵の情報を見ることや認識することが難しい、又は本を持つことやページをめくることが難しい人の読書環境の整備の推進にも役立つものです。 そのため、市町立図書館・公民館図書室及び学校図書館等に対し、情報・交流セン ターのそれら機能について情報提供を行います。 また、市町及び関係団体と協議しながら、情報・交流センター等の利用対象者の範囲について検討するとともに、障害の種類及び程度に応じた配慮を行い、アクセシブルな書籍等を必要とする人誰もが利用できるよう制度面を含め、受入れ環境の整備及びアクセシブルな書籍等の充実について検討します。【担当課:障害福祉課】 2 インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(法第10条) ・国立国会図書館※8及びサピエ図書館が実施しているインターネットを利用したサービスに関する情報提供を行うことで、多くの視覚障害者等が利用できるよう環境の整備を進めます。また、情報提供のために、情報・交流センター、県立図書館、市町立図書館・公民館図書室及び学校図書館等と連携し、司書や職員を対象とした研修会を活用したり、リーフレットの作成・配付を実施します。【担当課:まなび課、障害福祉課】 ※8 国立国会図書館 国立国会図書館が視覚障害者等に向けたサービスとして、各機関から収集した視覚障害者等データと、国立国会図書館が製作した視覚障害者等用データをインターネット経由で送信するサービスがある。視覚障害者等が自宅等から直接利用できるほか、国立国会図書館、サービスに参加している図書館等で利用できる。 3 特定書籍※9・特定電子書籍※10等の製作の支援(法第11条) ・特定書籍及び特定電子書籍等の充実や質の向上を図るため、点訳・音訳ボランティアの育成や特定図書等の製作についての研修を県立図書館及び市町立図書館・公民館図書室と連携して行います。【担当課:障害福祉課】 ※9 特定書籍  著作権法第37条第1項又は第3項本文の規定により製作される視覚障害者等が利用しやすい書籍。点字図書、大活字本、録音図書、布の絵本、触る絵本、LLブック等がある。 ※10 特定電子書籍 著作権法第37項第2項又は第3項本文の規定により製作される視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等。音声読み上げ対応の電子書籍、デイジー図書、オーディオブック等がある。 4 端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援(法第14条) ・視覚障害者等によるアクセシブルな書籍等の利用を促進するため、端末機器等の利用にあたり、以下の取組を推進します。 ①情報・交流センター、県立図書館及び市町立図書館・公民館図書室がICTサポートセンターと連携し、視覚障害者等に対し、様々な読書媒体やそれらを利用するための端末機器等の紹介及び利用法(習得支援、端末機器等の貸出等)についての情報を提供します。なお、拡大読書器、ルーペ等の拡大補助具、点字ディスプレイ及びデイジープレイヤー等の機器は、個々の状態に応じた活用となるよう配慮します。【担当課:まなび課、障害福祉課】                ②情報・交流センター、県立図書館及び市町立図書館・公民館図書室等が連携し、サピエ図書館の録音・点字・電子図書及び国立国会図書館の視覚障害者等用データの送信サービス等に必要なパソコン、タブレット、スマートフォン等を用いた利用方法に関する相談及び習得支援、デイジープレイヤー等の端末機器の貸出等による支援を行います。【担当課:まなび課、障害福祉課】         ③市町によるアクセシブルな電子書籍等を利用するための点字ディスプレイ、デイジープレイヤーの端末機器等に係る支援状況を取りまとめ、必要な支援を受けられるよう、個々の状態に応じて紹介します。【担当課:障害福祉課】    ④市町教育委員会及び県立学校に対し、様々な読書媒体やそれらを利用するための端末機器等の紹介及び利用方法について、情報を提供します。【担当課:教育振興課特別支援教育室、学校教育課】 ・上記の取組を推進するため、情報・交流センター、県立図書館、市町立図書館・公民館図書室及び学校図書館等が連携し、視覚障害者等が身近な地域において端末機器等の利用に必要な支援を受けることが可能となるよう、情報提供や操作方法の習得支援を行う司書や職員等に対する研修を実施します。【担当課:まなび課、障害福祉課、教育振興課特別支援教育室、学校教育課】 ・小・中・高等学校及び特別支援学校の学習指導要領において、「情報活用能力の育成を図るため、各学校において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること」と規定しており、また、学校におけるICT環境整備が進められていることも踏まえ、教育課程研修会等においてその内容を周知します。 また、各学校においては、情報・交流センター、県立図書館、市町立図書館・公民館図書室と連携し、文字や絵の情報を見ることや認識することが難しい、または本を持つことやページをめくることが難しい人に対して各館が所蔵する様々な書籍や端末機器等の情報入手に関する相談や支援を行います。【担当課:教育振興課特別支援教育室、学校教育課】 5 製作人材・図書館サービス人材の育成等(法第17条) (1)司書、司書教諭・学校司書、職員等の資質向上 ・県立図書館、市町立図書館・公民館図書室及び学校図書館の司書、司書教諭、学校司書、職員、ボランティア等を対象に障害者サービスに関する内容を理解し、支援方法を習得するための研修や、読書支援機器等の使用方法に習熟するための研修を実施し、資質の向上を図ります。 また、県立図書館、市町立図書館・公民館図書室及び学校図書館において、障害当事者でピアサポート※11ができるよう、司書及び職員等の育成や環境の整備を図ります。【担当課:まなび課、障害福祉課、教育振興課特別支援教育室、学校教育課】 ※11 ピアサポート  同じような立場や境遇、経験等をもつ人同士が仲間として支え合うこと。 (2)点訳者・音訳者、アクセシブルな電子データ製作者等の人材の養成 ・情報・交流センター、県立図書館、市町立図書館・公民館図書室、そこで活動するボランティア団体等における点訳、音訳、アクセシブルな電子データ製作等に携わる人材について、製作基準の共有やノウハウ等の習得に係る研修を実施し、質の向上を支援します。 また、研修に際しては、業務等で多忙な方に配慮し、研修内容を録画したものを後日配信するなど参加しやすい環境整備に取り組んでいきます。【担当課:まなび課、障害福祉課】 ・点訳、音訳及びアクセシブルな電子データ製作に携わる人材の不足が課題となっており、この分野における人材の確保が必要となっています。 このため、情報・交流センター、県立図書館、市町立図書館・公民館図書室と市町関係機関等が連携して、人材の募集や養成、活動支援に計画的に取り組みます。 なお、製作人材の確保に関しては、ボランティアのみに頼ることなく、様々な方策を関係者間で検討していく必要があります。【担当課:まなび課、障害福祉課】 第4章 おわりに  本計画は、障害のあるなしにかかわらず、全ての県民がひとしく読書に親しめるような環境を整備するため、第一期の計画として、当面の取組の方向性を示したものです。 今後、視覚障害者等及び視覚障害者等を支える医療従事者、施設関係者等の実態やニーズを把握し、より具体的な目標や達成時期等の検討や評価を行い、必要に応じて施策の見直しを行います。 また、本計画の取組を推進していくためには、市町や視覚障害者等を支える関係機関等の理解が必要であり、幅広く周知を行うとともに、誰もがひとしく読書に親しみ、読書を通じて文字・文化の恩恵を受けることができる社会の実現に向けた機運醸成に取り組んでいきます。 成果指標 1.利用体制の整備 情報・交流センターのアクセシブルな書籍等 年間貸出冊数 現状(令和2年度)32,633 目標(令和8年度)94,300 県立図書館のアクセシブルな書籍等 所蔵数 現状(令和2年度)1,135 目標(令和8年度)必要に応じて増加していく 情報・交流センターの利用登録者数 現状(令和2年度)370 目標(令和8年度)1,300 県立図書館の身体障害者図書郵送サービスの貸出冊数 現状(令和2年度)398 目標(令和8年度)必要に応じて増加していく 2.提供体制の整備 サピエ会員(個人会員)の登録者数 現状(令和2年度)128 目標(令和8年度)400 情報・交流センター・公共図書館連携貸出サービスの参加市町数 現状(令和2年度)3 目標(令和8年度)20 3.製作支援 情報・交流センターのアクセシブルな書籍等のサピエ図書館への年間アップロード数 現状(令和2年度)点字図書 68 録音図書 62 目標(令和8年度)必要に応じて増加していく 4.情報支援 情報・交流センターのアクセシブルな書籍等を利用するための端末機器所有数 現状(令和2年度)18 必要に応じて増加していく 県立図書館のアクセシブルな書籍等を利用するための端末機器所有数 現状(令和2年度)1 必要に応じて増加していく 5.人材育成 情報・交流センターの点訳・音訳ボランティアの数 現状(令和2年度)150 目標(令和8年度)必要に応じて増加していく 図書館職員等への読書バリアフリー研修会の受講者数(累計) 現状(令和2年度)35 目標(令和8年度)210 総合 読書バリアフリー推進計画の策定市町数 現状(令和2年度)0 目標(令和8年度)20 資料 アクセシブルな書籍・電子書籍等(視覚障害者等が利用しやすい書籍)の紹介 1点字図書 点字に翻訳(点訳)された図書。点字と点図(点を使って図や絵を表したもの)を使った点訳絵本もある。 2録音図書 耳で聴いて読書ができるように、朗読した音声を録音した図書。 3大活字本 目の見えにくい方にも読みやすいように大きな文字で書かれた図書。 4LLブック やさしい言葉と写真や図、ピクトグラムを使ってわかりやすく書かれた図書。LLとはスウェーデン語のLattlast(わかりやすく読みやすい)の略。 5デイジー図書 国際標準規格のデジタル録音図書。目次から読みたい見出しやページに移動することができる。音声デイジーとマルチメディアデイジーがある。 6音声デイジー 図書や雑誌の内容を録音して音声にしたもので、図や写真の説明が入っていたり、音声の速さを変えることができる。パソコンやスマートフォン、専用の再生機で聴くことができる。 7マルチメディアデイジー 表示される文字や画像を見ながら音声を聴くことができる。パソコンやタブレット等を使って再生し、文字の大きさや色、文字の背景の色も変えることができる。 8音声読み上げ対応の電子書籍 パソコンやスマートフォン、専用機器を使って、内容を音声で聴くことができる図書。目次から読みたいページに移動したり、文字の大きさや色、文字の背景の色も変えることができる。 9拡大読書器 カメラで撮影した文字や画像を拡大して表示することにより、読書を支援する機器。音声読み上げ対応や点字の読み上げができる機器もある。 10オーディオブック 声優等が朗読した音声を録音した図書。効果音やBGMがついた図書もある。 11触る絵本 指等で触って絵がわかるように作られた絵本で、目が見える児童も見えない児童も一緒に楽しめる絵本。点字付き触る絵本もあり、目の見えない保護者が読み聞かせに使うこともできる。 12布の絵本 触る絵本の一種で、布で作られた絵本。文字や絵が布やボタン、マジックテープ、ファスナー、紐等でできており、それらを留めたり、外したり、結んだりできる。絵本と遊具を兼ね備えた手作り図書。 佐賀県立図書館の概要 (1)サービス概要 ○身体障害者図書郵送サービス 内容:来館が困難な身体障碍者に対する郵送による貸出(15冊以内、3週間) 対象:身体障害者手帳による障害程度等級が肢体不自由1,2級、内部機能障害1,2,3級の人 ○マルチメディアデイジー図書の貸出 内容:紙の本では読書が困難な人へのマルチメディアデイジー図書の貸出(2冊以内、2週間以内) 対象:視覚・聴覚・精神や学習等の障害があるため、紙の本では読書が困難な人(ブルー版はどなたでも利用可) ○インターネット予約・貸出サービス 内容:インターネット上から検索・予約し、県立図書館又は市町立図書館等で受け取ることができるサービス(県立図書館での受け取り:15冊以内、2週間以内)(市町立図書館での受け取り:15冊以内、3週間以内) 対象:個人 ○遠隔地図書返却システム 内容:県立図書館の本を最寄りの市町立図書館に返却が可能 ○相互貸借・物流システム 内容:県立図書館や市町立図書館が保有する図書館資料を相互貸借(図書館間の貸し借り)し、配送するサービス。最短で申し込んだ翌日に本が届く。    (2)整備状況(令和2年度末時点) ○視覚障害者等が利用しやすい書籍 大活字本 1088点(本館492点、書庫534点、好生館62点) 録音図書(マルチメディアデイジー図書) 36枚 布の絵本 1点(閲覧用) LLブック 10点 ○読書支援機器 拡大読書器 1台 ルーペ 4個 老眼鏡 8個 佐賀県情報・交流センター(点字図書館)の概要 (1)サービス概要 ○巡回貸出サービス 県内を5地区に分け、毎月利用者の自宅や居宅している施設を訪問して図書を届けるサービス ○レファレンスサービス 利用者が読みたい図書の検索や紹介、資料の提供を行うサービス ○プライベートサービス 利用者から依頼された資料や図書、絵本などを点訳・音訳化するサービス ○対面朗読サービス 利用者が持参した図書や資料などをその場で読み上げるサービス ○図書情報提供サービス 九州ブロックの新刊録音図書案内や「図書館通信」を定期的に発行し、新刊図書や各種情報の提供を行うサービス (2)整備状況 ○視覚障害者等が利用しやすい書籍  点字図書 7,461点 録音図書(デイジー図書) 4,272点 触る絵本・布の絵本 10点   令和2年度の製作及び整備、受入れ状況                    点字図書 CD図書 MMD・TD(※) 自館で製作 点字図書 68 CD図書 62 MMD・TD(※) 0 ※MMD:マルチメディアデイジー、TD:テキストデイジー 厚労省から委託を受けて製作 点字図書 39 CD図書 24 MMD・TD 18 購入・寄贈 点字図書 2 CD図書 9 MMD・TD 1 ○読書支援機器 デイジー図書再生機(プレクストーク) 18台 学校図書館の概要 (1)学校図書館の役割 学校図書館は、図書館資料を児童生徒や教員の利用に供すること等により、「学校の教育課程の展開に寄与するとともに、児童又は生徒の健全な教養を育成すること」を目的とするものであり、以下の3つの役割を担う ○読書センター  自由な読書活動や読書指導の場 ・自発的・主体的な読書の推進 ・図書等の館内・館外貸出 ・他の学校図書館や公共図書館との相互貸出 ○学習センター  児童生徒の学習活動を支援したり、授業の内容を豊かにしてその理解を深めたりする場 ・各教科等の学習における計画的な利活用 ・授業づくりや教材準備に関する教員からの相談対応・支援 ○情報センター  児童生徒・教職員の情報ニーズへの対応や、児童生徒の情報収集・選択・活用能力を育む場 ・教育課程との連携を踏まえた計画的・継続的な利用指導 ・教科横断的な情報活用能力の指導 (2)整備状況 ○視覚障害者等が利用しやすい書籍の整備状況(各校種における所有率及び総冊数) 小学校155校 電子書籍 0%(0点) 点字図書 56.1%(590点) 大活字本(拡大図書) 16.1%(245点) 録音図書※録音デイジー図書含む 16.1%(596点) マルチメディアデイジー図書 1.9%(15点) LLブック 1.2%(34点) 中学校80校 電子書籍0%(0点) 点字図書 26.3%(164点) 大活字本(拡大図書) 17.5%(179点) 録音図書※録音デイジー図書含む 15.0%(397点) マルチメディアデイジー図書0%(0点) LLブック 0%(0点) 義務教育学校6校 電子書籍0%(0点) 点字図書 16.7%(8点) 大活字本(拡大図書) 33.3%(42点) 録音図書※録音デイジー図書含む 0%(0点) マルチメディアデイジー図書0%(0点) LLブック 0%(0点) 県立中学校4校 電子書籍0%(0点) 点字図書 0%(0点) 大活字本(拡大図書) 25.0%(53点) 録音図書※録音デイジー図書含む 0%(0点) マルチメディアデイジー図書0%(0点) LLブック 0%(0点) 県立高等学校37校 電子書籍0%(0点) 点字図書 5.4%(6点) 大活字本(拡大図書) 2.7%(109点) 録音図書※録音デイジー図書含む 0%(0点) マルチメディアデイジー図書0%(0点) LLブック 0%(0点) 県立特別支援学校10校 電子書籍0%(0点) 点字図書 20.0%(1,974点) 大活字本(拡大図書) 30.0%(149点) 録音図書※録音デイジー図書含む 20.0%(126点) マルチメディアデイジー図書60.0%(156点) LLブック 20.0%(11点) 令和2年度学校図書館活用状況調査をもとに作成 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(令和元年法律第四十九号) 目次  第一章 総則(第一条―第六条)  第二章 基本計画等(第七条・第八条)  第三章 基本的施策(第九条―第十七条)  第四章 協議の場等(第十八条)  附則    第一章 総則  (目的) 第一条 この法律は、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、基本計画の策定その他の視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策の基本となる事項を定めること等により、視覚障害者等の読書環境の整備を総合的かつ計画的に推進し、もって障害の有無にかかわらず全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化(文字・活字文化振興法(平成十七年法律第九十一号)第二条に規定する文字・活字文化をいう。)の恵沢を享受することができる社会の実現に寄与することを目的とする。  (定義) 第二条 この法律において「視覚障害者等」とは、視覚障害、発達障害、肢体不自由その他の障害により、書籍(雑誌、新聞その他の刊行物を含む。以下同じ。)について、視覚による表現の認識が困難な者をいう。 2 この法律において「視覚障害者等が利用しやすい書籍」とは、点字図書、拡大図書その他の視覚障害者等がその内容を容易に認識することができる書籍をいう。 3 この法律において「視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等」とは、電子書籍その他の書籍に相当する文字、音声、点字等の電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録をいう。第十一条第二項及び第十二条第二項において同じ。)であって、電子計算機等を利用して視覚障害者等がその内容を容易に認識することができるものをいう。  (基本理念) 第三条 視覚障害者等の読書環境の整備の推進は、次に掲げる事項を旨として行われなければならない。  一 視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等が視覚障害者等の読書に係る利便性の向上に著しく資する特性を有することに鑑み、情報通信その他の分野における先端的な技術等を活用して視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の普及が図られるとともに、視覚障害者等の需要を踏まえ、引き続き、視覚障害者等が利用しやすい書籍が提供されること。  二 視覚障害者等が利用しやすい書籍及び視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等(以下「視覚障害者等が利用しやすい書籍等」という。)の量的拡充及び質の向上が図られること。  三 視覚障害者等の障害の種類及び程度に応じた配慮がなされること。  (国の責務) 第四条 国は、前条の基本理念にのっとり、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。  (地方公共団体の責務) 第五条 地方公共団体は、第三条の基本理念にのっとり、国との連携を図りつつ、その地域の実情を踏まえ、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。  (財政上の措置等) 第六条 政府は、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策を実施するため必要な財政上の措置その他の措置を講じなければならない。    第二章 基本計画等  (基本計画) 第七条 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画(以下この章において「基本計画」という。)を定めなければならない。 2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。  一 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策についての基本的な方針  二 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関し政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策  三 前二号に掲げるもののほか、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項 3 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、基本計画を策定しようとするときは、あらかじめ、経済産業大臣、総務大臣その他の関係行政機関の長に協議しなければならない。 4 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、基本計画を策定しようとするときは、あらかじめ、視覚障害者等その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。 5 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、基本計画を策定したときは、遅滞なく、これをインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。 6 前三項の規定は、基本計画の変更について準用する。  (地方公共団体の計画) 第八条 地方公共団体は、基本計画を勘案して、当該地方公共団体における視覚障害者等の読書環境の整備の状況等を踏まえ、当該地方公共団体における視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画を定めるよう努めなければならない。 2 地方公共団体は、前項の計画を定めようとするときは、あらかじめ、視覚障害者等その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。 3 地方公共団体は、第一項の計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するよう努めなければならない。 4 前二項の規定は、第一項の計画の変更について準用する。    第三章 基本的施策  (視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等) 第九条 国及び地方公共団体は、公立図書館、大学及び高等専門学校の附属図書館並びに学校図書館(以下「公立図書館等」という。)並びに国立国会図書館について、各々の果たすべき役割に応じ、点字図書館とも連携して、視覚障害者等が利用しやすい書籍等の充実、視覚障害者等が利用しやすい書籍等の円滑な利用のための支援の充実その他の視覚障害者等によるこれらの図書館の利用に係る体制の整備が行われるよう、必要な施策を講ずるものとする。 2 国及び地方公共団体は、点字図書館について、視覚障害者等が利用しやすい書籍等の充実、公立図書館等に対する視覚障害者等が利用しやすい書籍等の利用に関する情報提供その他の視覚障害者等が利用しやすい書籍等を視覚障害者が十分かつ円滑に利用することができるようにするための取組の促進に必要な施策を講ずるものとする。  (インターネットを利用したサービスの提供体制の強化) 第十条 国及び地方公共団体は、視覚障害者等がインターネットを利用して全国各地に存する視覚障害者等が利用しやすい書籍等を十分かつ円滑に利用することができるようにするため、次に掲げる施策その他の必要な施策を講ずるものとする。  一 点字図書館等から著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第三十七条第二項又は第三項本文の規定により製作される視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等(以下「特定電子書籍等」という。)であってインターネットにより送信することができるもの及び当該点字図書館等の有する視覚障害者等が利用しやすい書籍等に関する情報の提供を受け、これらをインターネットにより視覚障害者等に提供する全国的なネットワークの運営に対する支援  二 視覚障害者等が利用しやすい書籍等に係るインターネットを利用したサービスの提供についての国立国会図書館、前号のネットワークを運営する者、公立図書館等、点字図書館及び特定電子書籍等の製作を行う者の間の連携の強化  (特定書籍及び特定電子書籍等の製作の支援) 第十一条 国及び地方公共団体は、著作権法第三十七条第一項又は第三項本文の規定により製作される視覚障害者等が利用しやすい書籍(以下「特定書籍」という。)及び特定電子書籍等の製作を支援するため、製作に係る基準の作成等のこれらの質の向上を図るための取組に対する支援その他の必要な施策を講ずるものとする。 2 国は、特定書籍及び特定電子書籍等の効率的な製作を促進するため、出版を行う者(次条及び第十八条において「出版者」という。)からの特定書籍又は特定電子書籍等の製作を行う者に対する書籍に係る電磁的記録の提供を促進するための環境の整備に必要な支援その他の必要な施策を講ずるものとする。  (視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の販売等の促進等) 第十二条 国は、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の販売等が促進されるよう、技術の進歩を適切に反映した規格等の普及の促進、著作権者と出版者との契約に関する情報提供その他の必要な施策を講ずるものとする。 2 国は、書籍を購入した視覚障害者等からの求めに応じて出版者が当該書籍に係る電磁的記録の提供を行うことその他の出版者からの視覚障害者等に対する書籍に係る電磁的記録の提供を促進するため、その環境の整備に関する関係者間における検討に対する支援その他の必要な施策を講ずるものとする。  (外国からの視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の入手のための環境の整備) 第十三条 国は、視覚障害者等が、盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約の枠組みに基づき、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等であってインターネットにより送信することができるものを外国から十分かつ円滑に入手することができるよう、その入手に関する相談体制の整備その他のその入手のための環境の整備について必要な施策を講ずるものとする。  (端末機器等及びこれに関する情報の入手の支援) 第十四条 国及び地方公共団体は、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等を利用するための端末機器等及びこれに関する情報を視覚障害者等が入手することを支援するため、必要な施策を講ずるものとする。  (情報通信技術の習得支援) 第十五条 国及び地方公共団体は、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等を利用するに当たって必要となる情報通信技術を視覚障害者等が習得することを支援するため、講習会及び巡回指導の実施の推進その他の必要な施策を講ずるものとする。  (研究開発の推進等) 第十六条 国は、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等及びこれを利用するための端末機器等について、視覚障害者等の利便性の一層の向上を図るため、これらに係る先端的な技術等に関する研究開発の推進及びその成果の普及に必要な施策を講ずるものとする。  (人材の育成等) 第十七条 国及び地方公共団体は、特定書籍及び特定電子書籍等の製作並びに公立図書館等、国立国会図書館及び点字図書館における視覚障害者等が利用しやすい書籍等の円滑な利用のための支援に係る人材の育成、資質の向上及び確保を図るため、研修の実施の推進、広報活動の充実その他の必要な施策を講ずるものとする。    第四章 協議の場等 第十八条 国は、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策の効果的な推進を図るため、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、総務省その他の関係行政機関の職員、国立国会図書館、公立図書館等、点字図書館、第十条第一号のネットワークを運営する者、特定書籍又は特定電子書籍等の製作を行う者、出版者、視覚障害者等その他の関係者による協議の場を設けることその他関係者の連携協力に関し必要な措置を講ずるものとする。    附 則  この法律は、公布の日から施行する。 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画 令和2年7月 文部科学省 厚生労働省 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画 目次 I はじめに 1.法律成立までの背景や経緯  2.基本計画について 3.視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る意義と課題 Ⅱ 基本的な方針 1.アクセシブルな電子書籍等の普及及びアクセシブルな書籍の継続的な提供 2.アクセシブルな書籍等の量的拡充・質の向上 3.視覚障害者等の障害の種類・程度に応じた配慮 Ⅲ 施策の方向性 1.視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係) 2.インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係) 3.特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11条関係) 4.アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等(第12条関係) 5.外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備(第13条関係) 6.端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援(第14条・第15条関係) 7.アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進等(第16条関係) 8.製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係) Ⅳ おわりに Ⅰ はじめに 1.法律成立までの背景や経緯  令和元年6月21日、議員立法により、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(令和元年法律第49号。以下「読書バリアフリー法」という。)が成立した。 我が国は、平成26年に、国連の「障害者の権利に関する条約」を批准した。同条約は、「障害の社会モデル」(*1)の考え方を示しつつ、締約国に対して、障害者があらゆる形態の意思疎通によって表現及び意見の自由についての権利を行使できるようにすること、障害者の生涯学習の機会を確保すること、障害者が利用しやすい様式を通じて、文化的な作品を享受する機会を確保することなどを求めている。また、同条約の締結に向け、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(平成25年法律第65号)をはじめとする様々な国内法制度が整備され、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向けた取組が進められている。 こうした大きな流れがある中で、特に「読書バリアフリー法」の成立に向けた動きの契機となったのは、平成25年6月27日の世界知的所有権機関(WIPO)による、「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」(以下「マラケシュ条約」という。)の採択である。 平成30年の第196回通常国会においては、「マラケシュ条約」の締結の承認とともに、著作権法(昭和45年法律第48号)の改正が行われ、一部の条項を除き、平成31年1月1日に施行された。これにより、視覚障害者等のために書籍の音訳等を著作権者等の許諾なく行うことを認める権利制限規定(著作権法第37条第3項)において、同規定の対象者として、視覚障害者や発達障害者のほか、肢体不自由により書籍を持てない者等が含まれることが明確になった。また、権利制限の対象とする行為について、コピー(複製)、譲渡やインターネット送信(自動公衆送信)に加えて、新たにメール送信等も対象とされた。更に、視覚障害者等のために書籍の音訳等を権利者の許諾なく行うことができる団体等についても、障害者施設、図書館等の公共施設の設置者や文化庁長官が個別に指定する者に加え、新たに、一定の要件を満たすボランティア団体等も対象とされることとなった。 更に、この改正著作権法に係る国会での審議の際、衆議院・参議院の両委員会において、「視覚障害者等の読書の機会の充実を図るためには、本法と併せて、…(略)…当該視覚障害者等のためのインターネット上も含めた図書館サービス等の提供体制の強化、アクセシブルな電子書籍の販売等の促進その他の環境整備も重要であることに鑑み、その推進の在り方について検討を加え、法制上の措置その他の必要な措置を講ずること。」との附帯決議がなされたことが、その後の読書バリアフリー法の制定の動きを加速化した。 2.基本計画について (1)位置付け 読書バリアフリー法は、障害者の権利に関する条約や障害者基本法(昭和45年法律第84号)の理念にのっとって、障害の有無にかかわらず全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現に寄与することを目的とするものである。 読書バリアフリー法第7条第1項には、「文部科学大臣及び厚生労働大臣は、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」を定める旨の規定があり、この基本的な計画(以下「基本計画」という。)には、基本的な方針、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策その他必要な事項を定めることとされている。   また、同条第3項及び第4項では、基本計画を策定するときは、あらかじめ、「経済産業大臣、総務大臣その他の関係行政機関の長に協議」することを定めているとともに、「視覚障害者等その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」ものとされている。加えて、第18条において、国は、「施策の効果的な推進を図るため、…(略)…関係者による協議の場を設けることその他関係者の連携協力に関し必要な措置を講ずる」ものとされている。これらの規定に基づき、本基本計画は、関係者協議会を設置し、関係者から聴取した意見を踏まえて、策定されるものである。   なお、基本計画は、視覚障害者等の読書環境の整備を通じ、障害者の社会参加・活躍の推進や共生社会の実現を目指すものであり、障害者基本法に基づく「障害者基本計画」の基本理念や方針を踏まえて作成する必要がある。また、基本計画の実現に向けた取組を進めることは、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の趣旨にも適うものである。 (2)対象期間 本基本計画は令和2年度から令和6年度までを対象とする。基本計画の策定後は、定期的に進捗状況を把握・評価していくものとする。 (3)構成 本基本計画は、この「Ⅰ はじめに」、「Ⅱ 基本的な方針」、「Ⅲ 施策の方向性」及び「Ⅳ おわりに」で構成される。 「Ⅱ 基本的な方針」では、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本理念を示すとともに、各分野に共通する横断的視点や、施策の円滑な推進に向けた考え方を示している。 「Ⅲ 施策の方向性」では、読書バリアフリー法第9条から第17条までに規定する9の分野の基本的施策について、本基本計画の対象期間に国が講ずる施策の方向性を示している。 「Ⅳ おわりに」では、計画に基づく取組を進めるに当たり念頭に置くべきことなどを示している。 (4)基本計画の対象 読書バリアフリー法第2条第1項において、「視覚障害者等」とは、「視覚障害、発達障害、肢体不自由その他の障害により、書籍…(略)…について、視覚による表現の認識が困難な者」と定義されている。具体的には、視覚障害者、読字に困難がある発達障害者、寝たきりや上肢に障害がある等の理由により、書籍を持つことやページをめくることが難しい、あるいは眼球使用が困難である身体障害者(*2)であり、基本計画においてもこれらの者を対象とする。 なお、読書環境の整備に当たっては、視覚障害者等以外の、読書や図書館の利用に困難を伴う者への配慮も必要である。 また、乳幼児期から高齢期までの各ライフステージにおいて必要とされる様々な種類の書籍を考慮しつつ取り組む必要がある。なお、同項において、「書籍」には、雑誌、新聞その他の刊行物も含むこととしている。 3.視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る意義と課題 読書は、乳幼児・青少年期、成人期、高齢期の一生涯にわたって、個人の学びや成長を支えるものであり(*3)、教養や娯楽を得る手段のみならず、教育や就労を支える重要な活動である。特に、学校教育段階においては、教科書以外にも(*4)、副読本、参考書、資料集、学術論文等が、学習や教育・研究に関連する活動の支えとなる。また、中等教育機関、高等教育機関及び職業教育機関への選抜試験の受験、進学や、資格取得のほか、就職活動、職業生活等の人生のあらゆる段階において、書籍を通じて専門的知識を得ることが不可欠である。   一方で、我が国において視覚障害者等(*5)が利用しやすい書籍等はいまだ少なく(*6)、障害の有無にかかわらず全ての国民が文字・活字文化を等しく恵沢できる状況とはなっていない。 視覚障害者等の読書環境の整備を推進するため、読書バリアフリー法は、第3条で「視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の普及が図られるとともに、視覚障害者等の需要を踏まえ、引き続き、視覚障害者等が利用しやすい書籍が提供されること」等を定めている。 読書バリアフリー法第2条第2項において、「視覚障害者等が利用しやすい書籍」(以下「アクセシブルな書籍」という。)とは、「点字図書、拡大図書その他の視覚障害者等がその内容を容易に認識することができる書籍」と定義されており、例えば点字図書、拡大図書、音訳図書、触る絵本、LLブック(*7)、布の絵本等がある。 また、読書バリアフリー法第2条第3項において、「視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等」(以下「アクセシブルな電子書籍等」という。)とは、「電子書籍その他の書籍に相当する文字、音声、点字等の電磁的記録…(略)…であって、電子計算機等を利用して視覚障害者等がその内容を容易に認識することができるもの」と定義されており、例えば、音声読み上げ対応の電子書籍、デイジー図書(*8)、オーディオブック(*9)、テキストデータ等がある。 視覚障害者等による、これらのアクセシブルな書籍及びアクセシブルな電子書籍等(以下「アクセシブルな書籍等」という。)に関する状況と課題については、「借りる」と「購入する」の2つの側面から捉えられる。 「借りる」に関しては、点字図書館と一部の公立図書館が、ボランティア・図書館協力者等の協力を得つつ、アクセシブルな書籍等の製作に取り組むとともに(*10)、窓口貸出・郵送貸出・宅配サービス・施設入所者へのサービス等の障害者サービス(*11)を必要に応じて展開してきており、視覚障害者等の情報保障の支えとなってきた。また、視覚障害等のある学生が在籍する大学や高等専門学校においても、学生からの求めに応じ、書籍等の製作が行われつつあるとともに、特別支援学校(視覚障害)の一部においてもサピエ図書館(*12)との連携により、在籍する児童生徒が書籍等を利用できるよう環境を整えている。 一方で、これらのアクセシブルな書籍等の数がニーズに対して不足していることに加え、点字図書館と公立図書館においてアクセシブルな書籍等の製作等に協力する人材の確保が難しくなってきており、今後の継続的な提供体制には課題がある。また、製作される書籍等の質が必ずしも担保されていない場合があること、サピエ図書館や国立国会図書館を含む、各図書館が所有する様々な形態の書籍等が十分に共有されておらず、全国の視覚障害者等が効率的に利用できる仕組みになっていないことが指摘されている。更に、今後、アクセシブルな電子書籍等の販売が促進されるに当たり、視覚障害者等がそれらを公立図書館で利用できるようにする観点からの取組も重要である。 「購入する」に関しては、点字出版施設(*13)等が製作するアクセシブルな書籍に加えて、出版者が製作する合成音声読み上げや文字の拡大に対応できる電子書籍等が、少しずつ市場に出回ってきている。点字図書や大活字図書等の印刷物の利用者としては視覚障害者が中心となるが、電子書籍等は、読み上げや文字の拡大が可能であるなど、発達障害者や肢体不自由のある者でも利用がしやすく、電子書籍等の発展に期待が大きく寄せられている。 その一方で、視覚障害者等にとって利用しづらい電子書籍等も少なくないこと、印刷本の出版と同時に販売されるものは少ないこと、紙市場に比して電子出版の市場規模(推定販売金額)は令和元年時点で2割弱に留まり(*14)、特に教育や研究において求められる電子書籍等は極めて少ないこと等、日本における普及は始まったばかりであり、多くの課題が残されている。なお、視覚障害者等のために、自社発行物の巻末に電子データの引換券を添付するといった取組も存在するが、ごく一部の出版社に限られているのが現状である。 また、電子書籍等に加えて、点字図書や大活字図書等の印刷物についても引き続き多くのニーズがあり、より多くの書籍が発行されることが望まれている。 前述のとおり、平成30年の第196回通常国会において成立した改正著作権法及び読書バリアフリー法において、視覚障害者や発達障害者のほか、肢体不自由により書籍を持つことができない者等が対象となり、アクセシブルな書籍等へのニーズが拡大していることを踏まえ、近年の先端技術を活用した、効率的で持続可能な仕組みを構築する必要がある。   *1 「障害」は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務である、という考え方。 *2 マラケシュ条約第3条において、同条約の「受益者」は、①盲人である者、②視覚障害又は知覚若しくは読字に関する障害のある者であって、印刷された著作物をそのような障害のない者と実質的に同程度に読むことができないもの、③身体的な障害により、書籍を持つこと若しくは取り扱うことができず、又は目の焦点を合わせること若しくは目を動かすことができない者のいずれかに該当する者であると定義されている。 *3 文字・活字文化振興法(平成17年法律第91号)は、「文字・活字文化が、人類が長い歴史の中で蓄積してきた知識及び知恵の継承及び向上、豊かな人間性の涵(かん)養並びに健全な民主主義の発達に欠くことのできないもの」であることにかんがみ、すべての国民が生涯にわたり、身体的な条件その他の要因にかかわらず、等しく豊かな文字・活字文化の恵沢を享受できる環境を整備することを基本理念として謳っている。また、子どもの読書活動の推進に関する法律(平成13年法律第154号)は、「子ども…(略)…の読書活動は、子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないものであることにかんがみ、すべての子どもがあらゆる機会とあらゆる場所において自主的に読書活動を行うことができるよう、積極的にそのための環境の整備が推進されなければならない」と規定している。 *4 教科書については、平成30年の学校教育法等の改正により、特別な配慮を必要とする児童生徒の困難低減等のため、学習者用デジタル教科書の活用が可能となっているほか、音声教材、拡大図書等について、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律(平成20年法律第81号)に基づき、ボランティア団体等が、教科書発行者から提供を受けた教科書デジタルデータを活用し製作している。 *5 日本の視覚障害児・者について、厚生労働省が行った平成28年度「生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」によると、視覚障害により障害者手帳を所持している児・者(推計)は約31.2万人(うち、日常的なコミュニケーション手段の一つとして点字を利用している者は約2.4万人)、同じく肢体不自由は約193.1万人(うち、「上肢」「脳原性運動機能障害・上肢」は約67.5万人)とされている。また、ディスレクシアと呼ばれる学習障害の一種とされる読字障害者の正確な人口は把握されていないが、現在、学習障害を理由に、公立小・中学校の通級による指導を受けている児童生徒数は、20,175人、平成30年度より制度が開始された公立高等学校の通級による指導を受けている生徒数は、72人である(平成30年度特別支援教育資料(文部科学省))。一方で、独立行政法人日本学生支援機構が毎年行っている高等教育機関への悉皆調査(「平成30年度障害のある学生の修学支援に関する実態調査」)では、学習障害(SLD:限局性学習症)のある学生数は213人に留まっている。 *6 国立国会図書館が平成29年度に全国の公共図書館を対象として行った調査(回答率約83%。『公共図書館における障害者サービスに関する調査研究』(https://current.ndl.go.jp/node/36508参照。)によれば、全国の公共図書館が所蔵するアクセシブルな書籍等は約170万タイトル(延べ数)である。なお、社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会情報サービス部会平成29年度実態調査「日本の点字図書館34」によると、全国の点字図書館84館が所蔵するアクセシブルな書籍数は約136万タイトル(延べ数)である。 *7 「LL」とはスウェーデン語の「Lattlast(分かりやすく読みやすい)」の略で、「LLブック」とは、読むことに困難を伴いがちな青年や成人を対象に、生活年齢に合った内容を、分かりやすく読みやすい形で提供すべく書かれた本のことである。 *8 「DAISY」とは、「Digital Accessible Information System」の略で、「アクセシブルな情報システム」を指す。特徴としては、①目次から読みたい章や節、任意のページに飛ぶことができる、②最新の圧縮技術で一枚のCDに50時間以上も収録が可能である、③音声にテキストや画像を同期させることができる、等がある。 *9 オーディオブックとは、書籍等の文章を読み上げ又は口演し、必要に応じて効果音及びBGM等を付与することにより、利用者が耳で聴くことを通じて情報を得られる形式の電子音声コンテンツを指す。文字を目で読んで情報を得られる電子書籍とは異なり、オーディオブックは利用者の視界を占有しないこと及び発音、抑揚等の発声技術を駆使した表現が可能となること等の特徴を有する。 *10 著作権法第37条第3項では、視覚障害者等の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものが、視覚障害者等のために録音図書等の製作等を行うことができる旨が規定され、政令で、(1)障害者施設や図書館等の公共施設の設置者、一定の要件を満たすボランティア団体等、(2)文化庁長官が個別に指定する者が定められている。 *11 図書館利用に障害のある者に対して、点字資料、大活字本、録音資料、手話や字幕入りの映像資料等の整備・提供、手話・筆談等によるコミュニケーションの確保、図書館利用の際の介助、対面朗読の実施など、来館・移動のための支援や、物理的環境への配慮、意思疎通への配慮を行う等、障壁となるものを取り除いて図書館を使えるようにするサービスのこと。 *12 視覚障害者及び視覚による表現の認識に障害のある方々に対して点字データ、デイジーデータ等を提供するネットワーク。日本点字図書館がシステムを管理し、全国視覚障害者情報提供施設協会が運営を行っている。正式名称は「視覚障害者情報総合ネットワーク」。 *13 身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)に基づく視聴覚障害者情報提供施設の一種で、点字刊行物の出版に係る事業を主として行う施設。平成30年社会福祉施設等調査によれば、全国にある点字出版施設は10施設。 *14 公益社団法人全国出版協会の発表「2019年の出版市場規模発表」(https://www.ajpea.or.jp/information/20200124/index.html)によれば、紙の出版市場は1兆2,360億円、電子出版市場は3,072億円。   Ⅱ 基本的な方針  1.アクセシブルな電子書籍等の普及及びアクセシブルな書籍の継続的な提供 市場で流通している電子書籍等が少なかった時代には、著作権法第37条第1項に基づき製作された点字図書や、同条第3項に基づき障害者施設、図書館、一定の要件を満たすボランティア団体等が権利者の許諾なく製作できる録音図書、拡大図書等の書籍が、視覚障害者等の読書環境を支える中心となってきた。 今後は、それらに加え、市場で流通する電子書籍等と、著作権法第37条第3項に基づき製作される電子書籍等を車の両輪として、両面から取組を進め、アクセシブルな電子書籍等の普及を図る時代となっている。 合わせて、アクセシブルな電子書籍等を利用するための端末機器等を視覚障害者等がより円滑に使える環境を整備することも必要である。 また、障害の状況によって端末機器等を使えない場合や、紙や布といった現物の書籍が必要とされる場面・ニーズもあるため、引き続きアクセシブルな書籍の提供を継続するための取組も必要である。更に、書籍利用のためのアクセシビリティのみならず、書籍の入手や利用に係るアクセシビリティの改善・向上にも合わせて取り組む必要がある。 2.アクセシブルな書籍等の量的拡充・質の向上 利用者の視点からは、アクセシブルな書籍等の「量的拡充」及び「質の向上」の両方のニーズがある。 「量的拡充」に関しては、今後のアクセシブルな書籍等のニーズの拡大に対応するため、公立図書館、点字図書館、大学及び高等専門学校の附属図書館、学校図書館、国立国会図書館において、各々の果たすべき役割に応じ、アクセシブルな書籍等を充実させることが重要である。また、アクセシブルな書籍等を全国の視覚障害者等に届けるための仕組みとして、製作されたアクセシブルな書籍等の共有に向けた図書館間の連携やネットワークを構築することが重要である。 「質の向上」については、書籍等の製作に係る基準の作成や、製作に従事する者の研修が必要である。 また、「量的拡充」及び「質の向上」のいずれにおいても、これまでに製作された書籍等について、書籍・電子書籍等の形態を問わずアクセシブルなものにし、長期的にデータとして保存するための取組や、製作者が効率的に作業できるよう出版者から製作者に電子データを提供する仕組みを構築することが効果的である。特に、教育や研究に必要とされるアクセシブルな電子書籍等がニーズに比して不足しており、この分野の取組が喫緊の課題である。 なお、書籍等のコンテンツや用途によって、「正確性」が求められる場合、「速報性」が求められる場合など様々であり、双方の観点のバランスを取りながら進めていくことが必要である。 3.視覚障害者等の障害の種類・程度に応じた配慮 視覚障害者等の障害の種類及び程度によって、アクセシブルといえる書籍等の提供媒体及び利用方法は異なる。このため、読書環境の整備を進めるに当たっては、個々の障害に対応したニーズを的確に把握し、障害の特性に応じた適切な形態の書籍等を用意することが必要である。 なお、視覚障害者等が、著作権法第37条第1項又は第3項本文の規定により製作されるアクセシブルな書籍(以下「特定書籍」という。)及び同条第2項又は第3項本文の規定により製作されるアクセシブルな電子書籍等(*15)(以下「特定電子書籍等」という。)の利用を希望する場合、これらの特定書籍・特定電子書籍等を視覚障害者等の利用に供する機関においては、障害者手帳や医学的診断基準に基づく診断書の有無に限ることなく、他の根拠資料を用いる等、柔軟な対応により障害等の確認を行うことが適切である。   *15 著作権法第37条では、視覚障害者等のために書籍の複製等を著作権者等の許諾なく行うことを認めている。同条第1項において、公表された著作物を点字により複製することが、同条第2項において、点字データを記録媒体に保存することや、インターネット等で送信することが認められている。また、同条第3項において、書籍の音訳等、視覚障害者等が利用するために必要な方式により複製すること(紙媒体と電子媒体の両方)や、作成されたものをインターネットやメール等で送信することが認められている。 Ⅲ 施策の方向性 1.視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係) 【<基本的考え方> 公立図書館、大学及び高等専門学校の附属図書館、学校図書館(以下「公立図書館等」という。)並びに国立国会図書館について、点字図書館とも連携して、アクセシブルな書籍等の充実、アクセシブルな書籍等の円滑な利用のための支援の充実その他の視覚障害者等によるこれらの図書館の利用に係る体制整備を図る。 また、点字図書館については、アクセシブルな書籍等の充実、公立図書館等に対する利用に関する情報提供、視覚障害者による十分かつ円滑な利用の推進を図る。】 (1)アクセシブルな書籍等の充実 ・ 公立図書館等において、地域や機関等の実情を踏まえ、点字図書館や他の図書館等と連携しつつ、アクセシブルな書籍等を充実させる取組を促進する。 ・ 国立国会図書館において、学術文献の録音資料やテキストデータの製作を促進するとともに、公立図書館等で製作される特定電子書籍等を収集し、アクセシブルな書籍等の充実を図る。   ・ 点字図書館及び点字出版施設(以下「点字図書館等」という。)が、今まで培ってきたノウハウを生かし、引き続き障害の種類及び程度に応じたアクセシブルな書籍等が充実するよう、点字図書館等による製作の支援を行う。 ・ 国立国会図書館と日本点字図書館が協力して実施している図書館等におけるテキストデータ製作支援の実験の取組を進め、それにより得られた知見を活用すること等により、点字図書館や公立図書館等におけるアクセシブルな電子書籍等の製作の取組を支援する。 (2)円滑な利用のための支援の充実 ・ 公立図書館や学校図書館において、各館の特性や利用者のニーズ等に応じ、段差の解消や対面朗読室等の施設の整備、アクセシブルな書籍等の紹介コーナーの設置、拡大読書機器等の読書支援機器の整備、点字による表示、ピクトグラム等を使ったわかりやすい表示、インターネットを活用した広報・情報提供体制の充実及び障害者サービスの充実を図る取組を促進する。 ・ 学校における学校図書館を活用した支援を充実するため、設置者である各教育委員会等に対し、司書教諭・学校司書の配置の重要性について周知するとともに、司書教諭をはじめ学級担任や通級の担当者、特別支援教育コーディネーター等の教員間の連携の重要性について周知するなどして支援体制の整備を図る。 ・ インクルーシブ教育システムの理念にのっとって、視覚障害等のある児童生徒及び学生等が在籍する初等中等教育機関及び高等教育機関において読書環境を保障することが重要であり、以下の取組を推進する。 ①点字図書館及び公立図書館と学校図書館の連携を図り、視覚障害等のある児童生徒を支援するための取組を進める。 ②各教育委員会を通して、特別支援学校、特別支援学級設置校、及び視覚障害等のある児童生徒が在籍する学校に対し、視覚障害等のある児童生徒が生涯学習の場である図書館の利用について学ぶ機会を設けることの重要性及び具体的な利用方法について周知を図る。 ③全国の大学及び高等専門学校の附属図書館が保有するアクセシブルな書籍等の所在情報を共有するためのリポジトリを国立情報学研究所において整備し、視覚障害者等による円滑な利用を促進する。また、同リポジトリと国立国会図書館のデータベースとの連携について検討を進める。更に、同リポジトリやデータベース等で公開される学術論文等について、視覚障害者等のアクセシビリティの向上に努める。 ④全国の大学等の障害学生支援を担う施設は、大学図書館に類する役割や機能を有する施設であれば、著作権法施行令(昭和45年政令第335号)において視覚障害者等のための複製が認められる者として位置付けられていることについて大学等に周知するとともに、大学等の図書館と学内の障害学生支援担当部局等の関係部局との情報共有を促進し、相互の連携を強化する。 ・ 点字図書館において、公立図書館や地域のICTサポートセンター(*16)等との連携を図り、視覚障害者等に対し、様々なアクセシブルな書籍等や端末機器を活用して読書の機会を提供する等とともに、点字・録音図書等の郵送サービスを含む地域の視覚障害者に対するアクセシブルな書籍等の円滑な利用のための支援を引き続き実施していく。 ・ 点字図書館が担ってきた音訳図書の製作やアクセシブルな書籍等の利用に関する情報提供などの機能は視覚障害者以外の視覚による表現の認識が困難な者の読書環境の整備の推進に役立つものであることから、地域における公立図書館等との連携を推進する。また、地方公共団体や関係団体等と協議しながら、点字図書館等の利用対象者の範囲について、アクセシブルな書籍等を必要とする方が利用できるよう制度面を含め検討を行い、その検討結果を踏まえ、受入れ環境の整備及びアクセシブルな書籍等の充実について検討する。 2.インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係) 【<基本的考え方> インターネットにより視覚障害者等に提供する全国的なネットワークの運営に対する支援を行い、アクセシブルな書籍等の十分かつ円滑な利用を促進する。 また、国立国会図書館、同ネットワークを運営する者、公立図書館等、点字図書館及び特定電子書籍等の製作を行う者の間の連携強化を図り、インターネットを利用したサービスの提供体制の強化を図る。】 ・現在、国立国会図書館においては、自ら製作した「学術文献録音図書」の音声デイジーデータや、公立図書館等が製作し、国立国会図書館が収集した視覚障害者等用データを、個人、公立図書館等及び点字図書館に送信するサービスを実施している。一方、サピエ図書館においては、全国の点字図書館等で製作された点字やデイジーデータを個人や会員施設等がダウンロードすることができる体制を整えている。また、双方のシステム間の連携も図られており、視覚障害者等が全国にあるアクセシブルな書籍等を統合的に検索できるシステムも国立国会図書館により整備されている。これらのシステムの十分な活用を図るため、視覚障害者だけでなく視覚による表現の認識が困難な者も利用できることも含め、関係機関・団体間の連携等を通してこれらシステムの周知を図る。 ・地域における点字図書館と公立図書館等との連携を図り、国立国会図書館やサピエ図書館のサービスについての周知や連携に必要な情報提供を研修会の開催やリーフレットの作成等を通じて行い、多くの視覚障害者等が視覚障害者等用データの送信サービスやサピエ図書館を利用できるよう会員加入の促進等の取組を進める。 ・このような取組を進めていく中で、視覚障害者等の障害の特性に応じた利用しやすいサービスが提供できるよう、国立国会図書館とサピエ図書館の役割も踏まえながら、サービス内容、システムの改善や提供体制等の検討を行う。 ・サピエ図書館の運営は、加入図書館やボランティア団体等からの会費や障害当事者からの寄付、国の補助金で実施しているところであるが、会員加入の促進を図り、将来的な会員の拡大等の状況や国の役割も踏まえ、安定的な運営が図られるよう支援を推進していく。 3.特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11条関係) 【<基本的考え方> 特定書籍・特定電子書籍等の製作支援のため、製作に係る基準の作成等、質の向上を図るための取組に対する支援を行う。】 (1)製作基準の作成等の質の向上のための取組への支援 ・アクセシブルな書籍等やサピエ図書館におけるアクセシブルな電子書籍等の充実及び質の向上を図るため、その製作手順や仕様の基準の作成についてサピエ図書館を運営する者への支援を行い、特定書籍や特定電子書籍等の製作を行う者への製作手順等の共有を図る。 ・地域における点字図書館と公立図書館等との連携を支援し、特定書籍や特定電子書籍等の製作のノウハウや製作された書籍等に関する情報の共有による製作の効率化を図る。 ・出版者に対し、特定書籍及び特定電子書籍等の製作に係る基準の作成等の質の向上を図るための取組に資する情報提供や助言等を行う。 ・障害者等の利便の増進に資するICT機器・サービスに関する研究開発(特定電子書籍等の質の向上に資する製作支援技術を含む。)を行う者への支援を引き続き実施する。 (2)出版者からの製作者に対する電磁的記録等の提供の促進のための環境整備への支援  ・出版者からの特定書籍又は特定電子書籍等の製作を行う者に対する電磁的記録の提供を促進するための情報提供や助言等を行う。その際、視覚障害等のある児童生徒及び学生等の教育や研究に必要とされる書籍等や、視覚障害等のある教育関係者や図書館関係者等が職務活動の遂行に必要とする書籍等の電磁的記録の提供が重要であることにも留意する。 ・電磁的記録の提供については、流出の防止、作成に係る費用負担の在り方、管理する仕組み等の課題がある。このため、出版関係者との検討の場を設け、電磁的記録の提供に関する課題や具体的な方法について検討していく。 4.アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等(第12条関係) 【<基本的考え方>  アクセシブルな電子書籍等の販売等が促進されるよう、技術の進歩を適切に反映した規格等の普及の促進、著作権者と出版者との契約に関する情報提供その他の必要な施策の推進を図る。 また、視覚障害者等への合理的配慮の提供の観点から、出版者からの視覚障害者等に対する書籍に係る電磁的記録の提供を促進するため、その環境の整備に関する関係者間における検討に対する支援その他の必要な施策の推進を図る。】 (1)技術の進歩を適切に反映した規格等の普及の促進  ・アクセシブルな電子書籍等の販売が促進されるようにするため、昨今の新たな技術(特にICT)の動向と視覚障害者等の多様なニーズを分析し、視覚障害者等の読書環境の整備に向けた取組を検討する。 (2)著作権者と出版者との契約に関する情報提供  ・出版者は、著作権者との出版に関する契約において電磁的記録の提供が含まれていない場合、著作権者から改めて許諾を受ける必要がある。このため、著作権者と出版者との契約の在り方等、アクセシブルな電子書籍等の販売等に関する著作権者と出版者との契約に資する情報提供や助言等を行う。 (3)出版者からの書籍購入者に対する電磁的記録等の提供の促進のための環境整備に関する検討への支援 ・出版者が書籍に係る電磁的記録の提供を行うこと、その他出版者からの視覚障害者等に対する書籍に係る電磁的記録の提供を促進するため、その環境の整備に資する情報提供や助言等を実施する。その際、視覚障害等のある児童生徒及び学生等の教育や研究に必要とされる書籍等や、視覚障害等のある教育関係者や図書館関係者等が職務活動の遂行に必要とする書籍等の電磁的記録の提供が重要であることにも留意する。 ・電磁的記録の提供については、流出の防止、作成に係る費用負担の在り方、管理する仕組み等の課題がある。このため、出版関係者との検討の場を設け、電磁的記録の提供に関する課題や具体的な方法について検討するとともにアクセシブルな電子書籍等の製作及び販売等の促進を図っていく。 (4)その他 ・音声読み上げ機能(TTS)等に対応したアクセシブルな電子書籍等を提供する民間電子書籍サービスについて、関係団体の協力を得つつ図書館における適切な基準の整理等を行い、図書館への導入を支援する。 5.外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備(第13条関係) 【<基本的考え方> 「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」の枠組みに基づき、視覚障害者等がアクセシブルな電子書籍等であってインターネットにより送信することができるものを外国から十分かつ円滑に入手することができるよう、相談体制の整備その他のその入手のための環境の整備を図る。】 ・アクセシブルな電子書籍等の受入れ・提供のための国内外の連絡・相談窓口として中心的な役割を果たす機関(国立国会図書館、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会等)において、役割分担及び連携方法の整理を行い、外国で製作されたアクセシブルな電子書籍等の円滑な入手及び国内で製作されたアクセシブルな電子書籍等の外国への提供を促進する。また、大学関係機関への情報提供やノウハウの共有を行う等、連携の強化を図り、外国で製作された学術文献のアクセシブルな電子書籍等を円滑に入手したり、日本で製作された学術文献のアクセシブルな電子書籍等を外国に提供したりできる環境の整備を進めていく。 ・外国で製作されたアクセシブルな電子書籍等の円滑な入手を促進するため、国内外の連絡・相談窓口として中心的な役割を果たす機関の連絡先や入手に当たっての手続・留意事項等について引き続き丁寧な周知を行うとともに、その運用状況も踏まえつつ、必要に応じて更なる環境整備を行う。 6.端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援(第14条・第15条関係) 【<基本的考え方> アクセシブルな電子書籍等を利用するための端末機器等、これに関する情報及びこれを利用するのに必要な情報通信技術について視覚障害者等が入手及び習得するため、必要な支援等を行う。】 ・視覚障害者等によるアクセシブルな書籍等の利用を促進するため、端末機器等の利用に当たり、支援の必要な者が必要な支援を受けられるよう、以下の取組を推進する。 ① 点字図書館と公立図書館が地域のICTサポートセンターと連携し、視覚障害者等に対して、様々な読書媒体の紹介やそれらを利用するための端末機器等の情報入手に関する支援を行う。なお、読書困難者の読書を支援する拡大読書機、ルーペ等の拡大補助具、点字ディスプレイ、デイジープレイヤー等の機器について、個々の状態に応じた活用に留意する。 ② 点字図書館と公立図書館が連携し、サピエ図書館及び国立国会図書館の視覚障害者等用データの送信サービス等にかかる、パソコン、タブレット、スマートフォン等を用いた利用方法に関する相談及び習得支援、端末機器の貸出等による支援を行う。 ③ 地方公共団体による、アクセシブルな電子書籍等を利用するための点字ディスプレイ、デイジープレイヤー等の端末機器等の給付を行う。 ・上記の取組を推進するため、ICTサポートセンターの普及の支援や端末機器等の習得支援等を行う公立図書館等の職員等に対する研修を実施し、視覚障害者等が身近な地域において端末機器等の利用に係る講習会等の支援を受けることが可能となるよう、施策の推進を図る。 ・小・中・高等学校、特別支援学校の学習指導要領において、「情報活用能力の育成を図るため、各学校において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること」と規定しており、また、現在、学校におけるICT環境整備が進められていることも踏まえ、各教育委員会の指導主事等を集めた全国会議等の場においてその趣旨を説明する等、その周知を図る。 7.アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進等(第16条関係) 【<基本的考え方> アクセシブルな電子書籍等及びこれを利用するための端末機器等について、視覚障害者等の利便性の一層の向上を図るため、これらに係る先端的な技術等に関する研究開発及びその成果の普及に必要な施策の推進を図る。】 ・アクセシブルな電子書籍等及びこれを利用するための端末機器も含め、広く障害者等の利便の増進に資するICT機器・サービスに関する研究開発やサービスの提供を行う者に対する資金面での支援及びその開発成果の普及を引き続き実施する。 8.製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係) 【<基本的考え方> 特定書籍・特定電子書籍等の製作及びアクセシブルな書籍等の利用のための支援に関する人材について、これらの養成、資質の向上及び確保に係る支援を行い、円滑な利用を促進する。 また、公立図書館等及び国立国会図書館において、アクセシブルな書籍等の円滑な利用のための支援の充実のため、司書等を対象とした研修及び養成において、視覚障害者等に対する図書館サービスについて取り上げ、司書等の資質の向上を図る。】 (1)司書、司書教諭・学校司書、職員等の資質向上  ・司書及び司書補(以下「司書等」という。)、司書教諭及び学校司書(以下「司書教諭等」という。)並びに職員、ボランティア及び図書館協力者(以下「職員等」という。)を対象に、障害者サービスに関する内容を理解し、支援方法を習得するための研修や、読書支援機器の使用方法に習熟するための研修等を実施し、資質の向上を図る。また、公立図書館においては、障害当事者でピアサポートができる司書等及び職員等の育成や環境の整備を行う。 ・大学の司書等及び司書教諭等の養成は、専門的職員としての入口に位置付けられる重要な段階である。このため、養成課程において、学生段階から障害者サービスの知識等について学習する機会を充実する。 (2)点訳者・音訳者、アクセシブルな電子データ製作者等の人材の養成 ・点字図書館等や公立図書館等及びそこで活動するボランティア団体等における点訳、音訳、アクセシブルな電子データ製作等に携わる人材について、製作基準の共有やノウハウ等の習得に係る研修の取組を支援し、質の向上を推進する。 ・点訳や音訳、アクセシブルな電子データ製作に携わる人材の不足が課題となっており、この分野における人材の確保が必要となっている。このため、点字図書館、公立図書館等と地方公共団体が連携して、人材の募集や養成、活動支援等に計画的に取り組むことができるよう支援する。 なお、製作人材の確保に関しては、ボランティアのみに頼ることなく、様々な方策を関係者間で検討していく必要がある。 ・新たな端末機器やソフトウェア、合成音声の活用等、技術の進歩に応じてアクセシブルな書籍等の製作を行う人材や体制を確保していくことも必要である。 *16 障害者等のICT(情報通信技術)の利用機会の拡大や活用能力の向上を目的として、①ICT機器の紹介、貸出・利用に係る相談、②サピエ図書館等のインターネットサービスの利用支援等を行うパソコンボランティアの養成・派遣等の事業を行う拠点(都道府県・指定都市・中核市に対する厚生労働省補助事業)。 Ⅳ おわりに 本基本計画では、視覚障害者等が読書を通じて文字・活字文化に触れることのできる環境整備を行うための第一期の計画として、当面の取組の方向性を示した。今後、更に実態把握を行い、より具体的な目標や達成時期等についての検討や定期的な評価を行っていく。   本基本計画に基づき取組を着実に推進していくためには、地方公共団体や関係機関、当事者等多くの関係者の理解が必要であり、丁寧な周知を行うとともに、国において、引き続き、関係者間による協議会を設置し、課題の解決に向けた取組を実施していく。また、関連施策の実施に当たって、国は必要な財源の確保に努める。   また、地方公共団体においても、本基本計画による取組がより具体的に進展するよう、取り組むべき事項や課題ごとに、組織の枠を超えた取組や関係者間で連携した取組が行えるような体制の構築を図る必要がある。特に都道府県は、域内全体の視覚障害者等の読書環境の整備が図られるよう、自ら行うべき図書館等の施策の充実を図るとともに、市町村に対して必要な指導・助言等を行うものとする。 国は、本基本計画を踏まえ、地方公共団体における計画の策定が円滑に行われるよう、好事例の周知をはじめとした支援を行っていく。 本基本計画に基づく施策の推進を図る際には、その対象者である視覚障害者等には、盲、弱視(ロービジョン)、盲ろう、発達障害、肢体不自由等、様々な特性があることを踏まえて取り組むことが求められる。加えて、聴覚障害者、知的障害者、高齢者、外国人等、様々な状況により読書や図書館の利用に困難を伴う者への配慮も認識して取り組むことが必要である。とりわけ、アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る研究開発の推進に当たっては、長期的な視点から、全ての者に配慮したユニバーサルデザインの実現を目指すことが重要である。 この基本計画に基づく施策の推進により、全ての国民が文字・活字文化の恵沢を享受できる社会が実現し、真の共生社会の実現に寄与することが期待される。