令和5年11月定例県議会の開会に当たり、最近の動き、提案事項などについて御説明申し上げます。
はじめに、鳥インフルエンザ対策について申し上げます。
鹿島市の養鶏農場において、県内では約1年ぶり4例目となる高病原性鳥インフルエンザが発生しました。11月24日に疑い事例に対する1回目の簡易検査が陽性となった段階から南里副知事を現地に派遣し、2回目の簡易検査陽性の結果を受け、直ちに同日23時30分に第1回対策本部会議を開催し、現地では鳥インフルエンザと確定次第、即防疫措置に入れるよう、準備を進めました。翌25日早朝に遺伝子検査結果の陽性が判明した後、国から疑似患畜決定の連絡を受け、同日9時から殺処分等の防疫措置を開始し、併せて、私も現場に赴き状況の確認を行いました。
今回の防疫措置については、殺処分において、鶏舎の形状が高床式で、2階で飼育されている鶏を1階に降ろす必要がある中、1階と2階とをつなぐエレベータが非常に狭く、2基しかないという構造上の問題から、作業スピードを一定以上上げられないという中での対応となりました。また、今回の発生農場は干拓地にあることから、殺処分後の鶏の処理に当たっては、これまでの埋却ではなく、近隣の県有地に移動式焼却施設を設置して焼却処分することとしていました。しかし、現場の状況を踏まえ、住民の生活環境への影響を考慮し、産廃施設に運搬して対応することに変更するなど、現場での判断により、臨機応変にオペレーションを見直し対応してまいりました。佐賀県のオペレーションや現場重視の危機管理対応について、熟度が上がっていると感じています。
これまで経験のないオペレーションもありましたが、殺処分から密閉容器への封入、発生農場内の消毒といった一連の防疫措置については、11月28日17時50分に完了することができました。今回、防疫措置などに多大な御協力をいただきました建設業協会、JA、鹿島市などの方々に対しまして、厚くお礼申し上げます。
現在のところ、県内で新たな鳥インフルエンザの発生は見られていないものの、依然発生リスクは高い状況にあります。県内すべての養鶏農家で消毒を徹底して発生予防対策に注力するなど、引き続き、警戒感を緩めることなく対応してまいります。
次に、SAGA2024について申し上げます。
SAGA2024の“双子の大会”である「燃ゆる感動かごしま国体・かごしま大会」が、10月30日まで鹿児島県で開催されました。今年、そして来年と史上初の2年連続九州開催となります。
開会式では、通常は各県が北から順番に行う入場行進において、最後に佐賀県と鹿児島県が連続して行進するという粋な計らいがあり、鹿児島の子どもたちが満面の笑顔で「佐賀さいこう!」の掛け声で迎えてくれました。また、高校生アナウンサー3人のうちの1人に、今夏の全国高校総合文化祭放送部門で最高賞を受賞した佐賀清和高校3年の副島葉月さんを選んでいただきました。さらには、両県にゆかりのある俳優・迫田孝也さんによるトークや「さが維新おどり」の披露など、まさに“双子の大会”であることを印象づけるものでした。
そして、今回の大会では、佐賀県のターゲットエイジの選手が、鹿児島の地で躍動する姿を、より多くの県民の皆さんに観てもらい、応援していただけるよう、出場する全試合をライブ配信しました。佐賀の地から贈られる県民の皆さんの熱い声援が、一瞬一瞬にかける選手たちに届いたのではないかと思います。
このような中で、佐賀県選手団は、国体では昨年の21位から10位に躍進し、入賞の8位までわずか27点に迫る勢いでした。レスリング、スポーツクライミング、銃剣道の3競技で競技別天皇杯を獲得し、8位以内の入賞は、31競技99種目、特に3位以内は21競技46種目と、昨年の14競技36種目を大きく上回りました。これまでの競技力向上の取組が、SAGA2024に向けて着実に実を結んできていることを実感しています。ここ2大会連続で、開催県が天皇杯を逃しております。来年は、各競技団体をはじめとして、天皇杯を獲得したいという想いが一つになって、みんなで是非とも成し遂げたいと思います。
また、全障スポでは、個人競技の出場者が例年の約2倍の45名となるなど、過去最多の72名が出場し、個人と団体合わせて、昨年の26個を大きく上回る40個のメダルを獲得しました。そして、入賞には届かずとも、自身の記録を伸ばして、ガッツポーズで笑顔がはじけるフライングディスクの選手や、昨年同様、優勝チームに初戦で敗れ、悔し涙を流しながら、来年こそは!と誓い合うバレーボール(知的障害)男子の皆さんの姿に、胸がとても熱くなりました。引き続き、競技団体等と連携しながら、選手の発掘や育成を行い、一人でも多く大会に出場し、活躍できるよう取り組んでまいります。
私は、今回現地で、国体・全障スポ競技あわせて26競技の応援をしました。行く先々で、鹿児島県の皆さんが佐賀県の選手を応援する姿を見ました。来年は、私たちの番です。鹿児島の選手団に熱い声援を贈りたいと思います。そして、私が強く感じたことは、“地元の応援のチカラ”です。地元の応援が、鹿児島の選手のエネルギーとなり、試合の流れをも変え、勝敗に大きく影響することを目の当たりにしました。10月23日に鳥栖市で開催したGM21において、SAGA2024では、熱い声援で佐賀県の選手を後押しするため、全ての会場を満員にすべく、盛り上げていこうと呼びかけたところです。
10月17日の国体の閉会式では、日本スポーツ協会の遠藤利明会長から真新しい国スポ旗を、また全障スポが閉幕した10月30日には、塩田知事から全障スポ旗を受け取りました。両旗を高らかに掲げた際、ひたむきに努力を続けている全国のアスリートの皆さんの熱い灯を、この佐賀の地から力強く灯したいとの想いを強くしました。
SAGA2024の開催まであと310日と、いよいよ1年を切りました。「体育」から「スポーツ」に変わる新しい大会を、前代未聞の大会とするべく、佐賀だからできる、これまでにはない取組に果敢に挑戦したいと思っています。
「すべての人に、スポーツのチカラを。」、例えば、開会式における、従来の整列行進ではなく、選手たちが思い思いに自由に入場するなど、エンターテインメント性を高めた式典演出をはじめ、都道府県対抗だけではなく、選手やチームなど、個人の活躍に着目した表彰も行います。全国障害者スポーツ大会では、選手を支える伴走者等、競技支援者へのメダル授与も行います。また、ナイトゲームの開催を含めた幅広い時間帯での試合も試みたいと考えています。ゲームズメーカーとして大会を支えるサガンティアをはじめとする大会関係者など、SAGA2024にかかわる全ての皆さんが主役となる大会にしたいと思っています。佐賀からはじまる新しい大会、SAGA2024を、県民の皆さんと共に、オール佐賀で創り上げてまいります。
続きまして、当面の諸課題への対処方針について申し上げます。
まず、県立大学についてです。
「佐賀県立大学(仮称)」の設置については、9月議会での議論をはじめ、県民座談会、パブリックコメント等も踏まえ、このたび、県立大学のまさに骨格となる「基本構想(案)」を取りまとめました。
今議会での議論を通じて、基本構想を確定すれば、「具体化プログラム」に着手したいと考えており、必要な予算を今議会に提案いたしております。
具体化プログラムでは、学部運営などに知見のある複数の大学教授で構成する専門家チームを設置し、大学の根幹となるカリキュラム、教員の規模、設置場所、施設の在り方などを具体的に検討していくこととしております。これらの作業は、専門家の方々と共に行っていくことになりますが、基本的にそのまま「佐賀県立大学(仮称)」を一緒に担っていただく形で進められていくものと考えております。
佐賀県はこの25年間、15歳未満人口の割合が常に全国3位以上であるにも拘わらず、大学進学者の8割が県外に進学し、そのほとんどがそのまま県外に就職してしまう、佐賀の未来を担う人材の流出という機会損失を続けてきました。
産業界だけでなく、教員、医療、介護従事者など、各方面で担い手不足の状況が続く中、生産年齢人口の流出という佐賀県の構造的な課題に正面から向き合い、対策を講じていくのは県政の急務であると、私はこれまでも訴えてまいりました。
「佐賀県立大学(仮称)」の設置は、大学進学先の不足による人材流出という佐賀県特有の問題に直接アプローチすることができる施策であり、高等教育機関が圧倒的に不足する現状の打開を目指す、佐賀県の戦略的な取組です。
光を放つ佐賀の未来の扉を開くため、県立大学構想の実現に向けて、不退転の決意で取り組んでいきたいと考えています。
次に、玄海原子力発電所について申し上げます。
九州電力は、昨年12月28日、「1、2号機の廃止措置計画の変更」について、原子力規制委員会に申請し、また県に対して事前了解願いを提出しました。これは、廃棄物処理設備を2号機に集約するなど、不要な機器を停止するものであり、九州電力では、解体作業の安全性の向上を図り、円滑に進めるためのものとしています。
9月11日に、原子力規制委員会が認可したことを受け、県では、佐賀県原子力安全専門部会の委員から意見を聴いた上で、原子力規制委員会と九州電力に対して、審査結果の考え方などを詳細に確認してまいりました。
その結果、九州電力の計画及び原子力規制委員会の審査内容に不合理な点はなかったことなどから、11月20日に事前了解を行いました。この事前了解に当たっては、九州電力に対して、今後とも、玄海原子力発電所の更なる安全対策に不断に取り組むよう、改めて強く求めています。
玄海原子力発電所とは、廃止措置を含めて、これからも長い年月にわたり関わり続けなければなりません。今後とも、県民の安全を何よりも大切に、県も含め全ての関係者の中に気の緩みが生じることがないよう万全を期してまいります。
次に、佐賀空港の自衛隊使用要請について申し上げます。
駐屯地の整備については、現在、土砂運搬や地盤改良などが進められています。排水対策については、有明海漁協、防衛省、県の三者による協議会で、海水混合施設の位置や混合・比重調整方法などについて協議し、9月28日に有明海漁協の了解を得ました。今後、防衛省において、具体的な設計や工事に進むこととなります。
事業主体である防衛省には、工事期間中はもちろん、駐屯地の整備後においても、一つ一つ丁寧な対応を行っていくよう、引き続き求めてまいります。
なお、昨日米軍のオスプレイCV-22が屋久島沖で墜落したとの情報がありました。直ちに、防衛省に対し、詳細な情報の収集と提供を求めました。強い関心を持って注視します。
次に、有明海の再生について申し上げます。
国は、10月31日、佐賀・福岡・熊本の3県漁業団体に対して、今年3月に当時の野村農林水産大臣が発表した談話について、文書での賛同を求めました。これを受け、有明海漁協は検討を重ねられ、11月22日の全運営委員長を集めた会議において、大臣談話に賛同するとの苦渋の判断をされました。
漁協の判断について、西久保組合長は、開門の手は下ろさないけれども裁判の結果から仕方がない旨、そして国に対する有明海再生の加速化の要請などについて言及されました。
令和5年3月1日の最高裁の決定により、司法判断は「非開門」とされましたが、この判断は確定判決にいわば上書きされたものです。開門調査を含む有明海の環境変化の原因究明が必要であるという想いは変わりません。
しかしながら、訴訟等により長きの時が経過し、また司法判断が上書きされたことや、海況が好転する兆しが見えない中で、現実的な対応として、漁協の皆さんが、有明海の再生が何よりも大事であり、再生を加速化して欲しいとの想いから、大臣談話に賛同されたことは、残念でもどかしい思いはあるものの、致し方ないものと考えます。
県としましては、今後も、再生に向かって前に進んでいくという、漁協の皆さんの気持ちに寄り添って対応してまいります。
有明海のノリ養殖については、昨季は赤潮による色落ち被害が、種付け当初から漁場全体に拡大しました。良好な漁場環境とすべく、1,500ヘクタール規模の大規模海底耕うんをはじめ、カキ礁の造成や、昨年度の2倍となる200万個のサルボウを放流するなど、様々な赤潮対策に取り組んでまいりました。これまでにノリ漁家の皆さんからは、「一部で赤潮がみられるものの、今年の海況は昨年より良い」との声を聴いております。生産枚数・生産金額日本一奪還に向けて、引き続き、気象や海況の変化をつぶさに把握し、必要な対策を先手先手で打ってまいります。
宝の海である有明海の再生は、国や県、市町、漁業者など有明海に関わるもの皆で取り組む課題です。これからも、有明海の再生という本来の目的を見据え、関係する皆で力を合わせて全力で取り組んでまいります。
次に、九州新幹線西九州ルートについて申し上げます。
新鳥栖-武雄温泉間は、現在、合意されたものは何もない「未合意区間」です。現在の状況を招いたのは、合意していたフリーゲージトレインを断念した国の責任です。この区間の鉄道環境は悪くありません。佐賀駅を通るフル規格は、今の鉄道環境を壊すリスクがあります。また、建設費に対する佐賀県の実質負担は1,400億円以上となり、西九州ルート全体で、佐賀県は長崎県の2.5倍以上を負担することになります。
フル規格については、これまで県議会でも議論がありましたように、例えば、九州佐賀国際空港の活用や有明海沿岸道路などとの連携を含めて、佐賀県や九州全体の将来展望が描けるのであれば、財政負担や在来線などの課題はあるものの、議論する価値はあると考えています。
県民の皆さんにお示しして議論できるような案ができるかどうか、それは複雑な連立方程式を解くようなものであり、
簡単なものではないと思いますが、様々なチャンネルで議論していくことは大事なことであると考えています。
西九州新幹線の開業により、上下分離区間となった長崎本線の特急列車が大幅に減り、利便性が低下しました。また、西九州新幹線の通る嬉野温泉駅では、停車本数が少ないという課題があります。JR九州に対しては、利用者目線に立ったダイヤへの改正を求めるなど、沿線市町と一緒になって、利便性の改善に引き続き取り組んでまいります。
次に、城原川ダム事業について申し上げます。
水没予定地域では、9月26日に国との間で、土地の等級区分に関する確認書への調印が行われました。現在は、国において等級区分ごとの補償額等の提示に向けた作業が進められ、また神埼市において2箇所の集団移転地が示されるなど、ダム建設に向けて事業の進捗が図られています。
県としては、地域の治水対策を進めるため、一日も早いダム完成を目指した事業の推進と必要な予算の確保を、引き続き国に働き掛けてまいります。
また、水没予定地域の皆様の不安な気持ちが少しでも解消し、具体的な生活再建に向け希望を持って踏み出せるよう、国や神埼市と連携して、きめ細やかな支援を心掛けてまいります。
続きまして、最近の県政の主な動きについて申し上げます。
まず、市村記念体育館のリニューアルについてです。
市村記念体育館は、昭和38年に佐賀県出身でリコー三愛グループの創業者である市村清さんに寄贈いただいた大切な建物であり、国際的な建築家坂倉準三氏による設計で、デザイン的にもとても素晴らしい県民共有の誇り高い財産です。この市村記念体育館を、クリエイターやデザイナーなど様々な皆さんが集い、多彩な文化芸術の体験、創作活動によって、新たな価値を生み出す文化創造拠点とすべく、令和3年度から事業を進めてまいりました。
今年度は、令和7年度にかけて建物の耐震化やリノベーションを行うべく、その建築工事について入札を行い、10月12日に開札したところ、予定価格と入札価格に大きな開きがあり、不落となりました。その原因分析と今後の対応について検討を行いました。
昨今の急激な資材価格や労務費の高騰、とりわけ九州のひっ迫する工事環境などから、今後も事業費の更なる上振れが予想されます。県の実質負担は少なくとも20億円以上増加する見込みです。こうしたことを踏まえ、本事業を凍結する方向で進めたいと考えています。
私は、近代建築の名作と評されるこの建物を後世に遺し、文化創造の拠点として生まれ変わらせるこの事業を大変誇りに思っており、事業凍結は非常に残念な思いです。今後、状況の変化を見ながら、検討を重ねていきたいと考えています。
こうした昨今の資材高や労務費高騰による建設コストの大幅増は、一部の誘致企業にも影響を及ぼしています。令和8年からの操業を予定されていたアサヒビール鳥栖工場については、当初計画から約2倍と、大幅に建設や設備などにかかる費用が高騰したことを理由に、3年を目途に操業を延期されることになりました。致し方ないと思いますが、私は、むしろこの期間に様々な共同事業に取り組み、プロジェクトを熟成、昇華させることで、未来に向けて多くの成果を生み出していきたいと考えています。アサヒグループの次世代生産体制のモデル工場となる鳥栖工場が、最高の形で操業開始の時を迎えられるよう、これからも連携を密にしながら、共に歩んでいきたいと考えています。
次に、「むしろこれから鹿島・太良プロジェクト」について申し上げます。
鹿島・太良は、国内外の人を惹きつける本物の地域資源に溢れています。それらの地域資源は、非常に素晴らしい、佐賀県のなくてはならない、かけがえのない財産です。そこにある本物の価値を磨き上げ、県内外へ発信していくべく、「むしろこれから鹿島・太良プロジェクト」を進めています。
私は、プロジェクトに取り組む上で、鹿島・太良の地域の皆さんの、地元の未来を創り上げていくという志が大切であると考えています。そして、この志を共に育み、未来につなぐための拠点として、多くの人が交わり、想いを培ってきたという意味で命名した「鹿島十字路交差点」からほど近い場所に、11月1日「KATAラボ」を開設しました。KATAラボという名称には、「KAshima」と「TAra」の頭文字を取り、鹿島・太良の未来を語らう場所であるという意味を込めています。
KATAラボには、新たに鹿島市内にこのために居住する県職員2名と、鹿島市、太良町の職員それぞれ1名の計4名が常駐し、活動をスタートさせております。KATAラボが、交わる人たちをつなぐ、そして誇るべき地域資源をつなぐ、蜜蜂のような触媒の役割を果たしてくれることを期待しています。
次に、OPEN-AIR佐賀の推進について申し上げます。
これまで再整備を進めてきた「レイクサイド北山」において、10月20日に北山キャンプ場がリニューアルしました。水源の森と美しい湖に囲まれたロケーションの中で、オートキャンプはもちろん、ペットの同伴や直火での焚火といった幅広いニーズに対応できるよう、様々な特徴を持たせた79のサイトを整備しました。車いすの方にもご利用いただけるシャワーやトイレを設けるなど、誰もがバリエーションに富んだキャンプを楽しめる空間を創出しています。
リニューアル後、県内外の多くの皆さんにご利用いただいており、年内の週末は、ほぼ予約が埋まっているなど、大変好評を得ております。キャンプ初心者から熟練のキャンパーの方まで、それぞれのスタイルでオープンエアを楽しんでいただきたいと思います。
また、吉野ヶ里歴史公園においても、その価値を更に高めるべく、民間と連携した取組を進めております。11月21日には、日本のアウトドアシーンを牽引する株式会社スノーピークを代表とする共同企業体と協定を締結しました。五感で楽しむ食を提供する交流拠点施設や、個性溢れるキャンプフィールド、雄大な弥生の時の移ろいを体感できる宿泊施設など、令和7年のオープンに向けて整備を進めていくこととしております。ここにしかない歴史と自然、そして人をつなぐ、“アウトドアの聖地”を目指してまいります。
次に、子どもたちの本物体験について申し上げます。
県では、佐賀の子どもたちには、佐賀に誇りを持ち、志を持って骨太に育ってもらいたいとの想いで、佐賀ならではの本物を体験してもらう取組を推進しています。9月21日には、「SAGAアクア」で、県内の保育所等に通う園児を対象として、「SAGA Enji Basha」を開催しました。当日は、最大水深3メートルまで可動するメインプールの床を、園児の膝の高さに合わせて30センチに設定し、約1,200人の園児が、思い思いに水遊びを楽しみました。世界基準のプールを体感した園児からは、「めっちゃ広い!」、「すっごいプール!」といった驚きの声、「水泳選手になりたい!」といった頼もしい声も聴かれました。
また、10月から11月にかけて、県内の小中学生を対象に、本物の職業体験として、「キッザケアサガ」を開催しました。これは、介護の仕事を、より身近に感じてもらい、介護職を将来の選択肢の一つとして考えてもらいたいとの想いで、2年前から取り組んでいるものです。介護の仕事は、多くの方から感謝される素晴らしい職業でありながら、「大変そう」、「きつそう」といったイメージを持たれがちです。しかし、実際の介護の現場では、センサーによる介護記録の自動化や、ロボットを活用した抱き上げない介護といった先進機器の導入による現場のDX化も日々進んでいます。「キッザケアサガ」では、子どもたちに、そうしたデジタル技術の体感とあわせて、実際に介護の現場で働く皆さんから、ご自身の経験を交え、介護の仕事のやりがいを直接伝えていただいています。年を追うごとに参加人数が増えている「キッザケアサガ」への参加がきっかけとなり、子どもたちが介護という、私たちにとってなくてはならない尊い職業に憧れを持ち、その道に進んでくれることを期待しております。
次に、佐賀を支える社会資本の整備について申し上げます。
シリコンウェハー大手の世界的企業であるSUMCOをはじめ、県内には半導体関連企業や研究機関が多数存在します。半導体分野の上流部に位置する唯一無二の素材産業として、我が国の経済安全保障に大きく貢献しております。
今後の経済成長や経済安全保障の確立に資するため、半導体分野の投資拡大に向けた佐賀の社会資本整備を推進すべく、11月22日に国に対して政策提案を行いました。
現在、県東部地域においては、「佐賀県・鳥栖市サザン鳥栖連携プロジェクト」を進めています。小郡鳥栖南スマートインターチェンジへのアクセス道路となる県道鳥栖朝倉線の整備や、約34ヘクタールの大型産業団地「(仮称)サザン鳥栖クロスパーク」の開発などを進めております。交通の要衝などの優位性を戦略的に活用し、交通網の更なる充実による物流の効率化や、周辺開発、企業誘致を促進してまいります。
また、県北部地域においては、唐津プロジェクトのひとつ、国道204号唐房バイパスが、11月12日に開通しました。このバイパスには、元々鉄道・呼子線のために整備された唐房トンネルが、道路トンネルに生まれ変わって活用されています。
唐房バイパスを抜けるとどこまでも美しい世界に誇れる唐津の海が望めます。バイパス開通を契機として、唐房バイパスから幸多里の浜、相賀の浜、七ツ釜などを通り、名護屋城跡や波戸岬へと向かうラインを、「ルート・グランブルー~ジャック・マイヨールが愛した海~」と名付けました。グランブルーとは、海を潜って現れる深い青色を表す言葉であり、唐津の海をこよなく愛したジャック・マイヨールの自伝をもとにした映画「グラン・ブルー」にちなんだものです。美しい海を望むこの爽快なルートを是非多くの方に爽快に走っていただきたいと思います。
引き続き、人やモノの交流を促進し、佐賀の更なる活力を生み出していくための基盤となる社会資本の整備を、着実に進めてまいります。
続きまして、提案事項について申し上げます。
今回の補正予算案の編成に当たりましては、9月補正予算編成後の情勢の推移に対応するため、早急に措置を要するものについて所要額を計上することといたしました。
この結果、その総額は、歳入歳出とも、それぞれ、
一般会計 約12億700万円
特別会計 約4,900万円
となり、これを既定の予算額と合わせますと、本年度の予算総額は、
一般会計 約5,636億1,400万円
特別会計 約2,109億500万円
となっております。
次に、予算案の主な内容について申し上げます。
まず、「令和5年7月九州北部豪雨災害」への対応についてです。災害復旧に必要な予算は、9月補正で所要額を計上し、早急な復旧を進めております。11月補正では、地元調整が整ったがけ崩れ防止対策などについて、必要な予算を追加するものです。引き続き、市町と連携しながら、速やかに対策を進めてまいります。
次に、SAGA2024開催準備事業について申し上げます。来年の開催に向けて準備を加速させていくため、年度をまたいで準備が必要なものを予算化しております。新しいスポーツ大会を象徴する場となる開閉会式の会場づくりや、各種コンテンツを用意し、来場者に様々なスポーツの楽しさを体感してもらう「ウェルスポエリア」の企画運営、みんなにやさしい全障スポ競技会場づくりなど、今年度中から着実に取り組んでまいります。
次に、SSP構想推進の一環としてのサガン鳥栖U15の練習環境の整備について申し上げます。
サガン鳥栖U15は、全国トップクラスのチームであるものの、練習場所が調整池であり足場が悪い状況でした。県では、Cygamesからの企業版ふるさと納税なども活用しながら、鳥栖市と連携して、グラウンドの整備に対して支援することとしました。来年で、13年連続でJ1の舞台で活躍するサガン鳥栖の礎となる「育成力」という強みを更に活かしていくことで、“育成大県さが”として、佐賀から日本一、そして世界を目指すアスリートを育ててまいります。
また、人事委員会勧告に基づき給与改定を行い、必要な額を増額補正することといたしました。
予算外議案といたしましては、条例議案として4件、条例外議案として11件となっています。
最後になりますが、今日、社会は絶えず変化し、そこから生じる課題は複雑多様化しています。気候変動、世界の分断の危機、多様性やAI化の進展といった時代背景のその先のこれからの未来は、更に私たちの想像を超える変革が待ち受けているはずです。
このような時代だからこそ、「人の力」というものがますます重要になり、それを育むための投資というものが、私は大変大切なことだと思います。目まぐるしく変化する時代に対応できるしなやかさを持つ多様な人材を、この佐賀から育てていきたいと考えています。
「佐賀県立大学(仮称)」では、新しい大学像というものに挑戦していきたいと思っています。
県内をはじめ、国内外の大学同士、あるいは大学と企業等の連携で、常に新たな価値を生み出し続けていきたいと考えます。
また、社会人が、時代が変遷していく中で、自分の価値を高めるために学べるよう、リカレント教育の機能も充実させたいと考えています。
そして、佐賀の子どもたちに「学び」の本質的な価値を体得してもらう一気通貫型の「学び」の拠点としていきたいと考えています。自分たちが小学校や中学校で普段勉強していることがいずれどういうふうに役立っていくのか、自分にとって学びとはどういうものなのかということを子どもたちがイメージできることはとても大切なことと思います。そうした思いから、県立大学は県内の小、中、高校生が普段使いできる新しい大学にしていきたいと考えています。
子どもから高齢者まで年代を問わない全世代型の学びをベースに、教育関係者だけでなく、産業界をはじめ、佐賀県の強みであるCSOなどの地域の多様なプレーヤーの連携といった、縦にも横にも大きく機能が拡がっていく。そうした学びの場づくりにチャレンジしていくことで、佐賀にしかできない、これまでの高等教育にはない、新しい大学像を創り上げてまいります。
新しい時代は佐賀が牽引していく、そしてその佐賀を担っていく鳥瞰力と構想力を持った人材を輩出していくのが「佐賀県立大学(仮称)」でありたいと思います。
県議会の皆様、そして、県民の皆様、みんなの力で、教育県佐賀県ならではの県立大学構想を実現させていきたいと思います。
以上、今回提案いたしました議案などについて御説明申し上げました。
よろしく御審議いただきますようお願い申し上げます。