昨今の国際情勢や円安の進展などにより、エネルギー価格や原材料価格等が高止まりしている状況です。しかし、県内企業へのアンケート調査では、製造業の約4割、非製造業の約5割がコスト上昇分の2割未満しか価格転嫁できていない状況です。こうしたことから、事業者の価格転嫁を強力に推進すべく、「価格転嫁伴走支援プロジェクト」を立ち上げます。専門家による伴走支援やセミナーの開催などにより事業者の価格交渉をきめ細かくサポートしてまいります。また、ダイナミックプライシングなど時期や本来持つ価値にふさわしい値付けをしていくことも必要と考えており、新たに「『適正な時価』研究プロジェクト」に取り組むこととしました。モデル事業者への専門家派遣、県や商工団体など関係機関による伴走を行いながら、関係者で価格設定の在り方を考えてまいります。
県内の有効求人倍率は1.3倍を超える高水準が続き、人材確保は喫緊の課題となっています。一方で、県内中小企業からは、女性や外国人が働きやすい環境整備に取り組みたいものの、経営環境が厳しく投資を躊躇してしまうといった声があります。企業が発展し成長していくためには、多様な人材の活躍を後押しする職場環境作りをハード、ソフトの両面で進めていくことが大切です。多様な人々が集まることで、今までにない新しい発想が生まれ、生産性向上にもつながると考えています。
今回は、女性用休憩室の整備や更衣室の設置、外国人を受け入れるための社員寮の改修など、ハード面について職場環境改善の取組を支援することとしています。多様な人材の活躍を後押しし、県内企業の更なる成長・発展につなげてまいります。
次に、高校生の県内就職をさらに促進する取組について申し上げます。
現在、県では高校生の県内就職率65%以上を目指す「プロジェクト65+」に関係機関一丸となって取り組んでいます。2018年度に56.9%であった県内就職率が2022年度は65.8%になり、この間の県内就職率の上昇率は全国1位となりました。一方、全国の他の地域と比べると県内就職率はまだまだ低く、伸ばしていく必要があります。これまでの取組を拡充し、「SAGA県内企業トリプルツアープロジェクト」として、県内企業の素晴らしさを直接知ってもらうべく、保護者を対象とした県内企業等の見学ツアーなどに新たに取り組みます。また、訪問先企業には専門家を派遣し、情報発信力の強化に向けた支援を行うこととしています。県内企業を志望する高校生を増やし、県内就職率の更なる向上につなげてまいります。
次に、波戸岬少年自然の家について申し上げます。
少年自然の家は、佐賀の子どもたちが宿泊体験などを通じ、骨太で健やかに学び育つための大切な場所です。ただ、県内にある少年自然の家3箇所のうち波戸岬少年自然の家については、指定管理料が多額である、利用者の半数以上が県外の学校や青少年団体であるなどの課題もあります。こうしたことも踏まえつつ、より効率的で効果的な活用方法について調査・検討してまいります。
次に、県内高校への進学促進に向けた受入環境の整備について申し上げます。
昨年10月、小川島の中学生から、唐津本土に県立高校の寮がないことで寮のある県外の高校に進学せざるを得ないという切実な声を聞きました。また、唐津地区の県立高校には、ヨットやバドミントンなどのスポーツや特色のある教育を行う唯一無二の学校があります。これらの学校に進学を希望し、通学している生徒は県内に限られません。
こうしたことから、西唐津職員宿舎の一部について、離島の生徒や県外からの生徒を受け入れる寮として活用することとしております。既に4月からは離島の生徒が入寮しているところです。今回、生活面でのサポートのため食堂を整備し、受入環境を整えることで、島や県外などの子どもたちの県内高校への進学促進につなげてまいります。
次に、新たな大学設置への支援について申し上げます。
学校法人旭学園と武雄市においては、新たな四年制大学「武雄アジア大学(仮称)」の令和8年4月開学に向けて準備が進められています。県は、この共同事業に対する支援として、市が負担する額の2分の1を、市に対して補助することといたしました。武雄アジア大学(仮称)の開学を支援し、県内高等教育機関の充実を図ってまいります。
次に、江藤新平復権プロジェクトについて申し上げます。
江藤新平は、明治新政府において、今に生きる数々の国家制度の設計を成し遂げた、まさに「この国の骨格を造った男」です。傑出した功績があるにもかかわらず、佐賀戦争の影響もあり、政府による名誉回復が遅れただけでなく、県内においてさえその功績や復権について詳しく触れられてきませんでした。薩摩の西郷隆盛、土佐の坂本龍馬らとも並び称されるほどの英雄であるにもかかわらず、我々佐賀県民は十分な顕彰ができていなかったのではないかと感じています。
江藤が成してきたことを、今ここに改めて考えるべきときではないかとの想いから、江藤の真の復権を果たすため、江藤新平復権プロジェクトを進めています。第1弾は3月15日から約2か月間、佐賀城本丸歴史館で特別展を開催しました。約4万人もの来館者があり、県内外の江藤に対する関心の高さを感じました。また、第2弾として、江藤の真実を広く伝えるための映像を制作することとしております。そして今回第3弾となる取組として、特別展「江藤新平展」を佐賀城本丸歴史館内で常設展示することとしています。さらに、来年2月には復権に向けた式典を開催し、江藤の功績の顕彰や関係者による交流を通じ、復権に向けた大きなうねりを創り出してまいります。
我々佐賀県民が、本当の江藤について知り、語り、佐賀の誇りとして未来につないでいくことで、江藤の真の復権が果たされるのではないかと考えております。
予算外議案といたしましては、条例議案として5件、条例外議案として3件となっています。
最後になりますが、SAGAアリーナがオープンして1年が経過しました。開業後の来場者数は50万人を突破。
ライブ、学会、スポーツなど多彩なイベントの舞台としてフル稼働しました。B1に昇格した初年度の佐賀バルーナーズは、シーズン平均観客数が5,000人を超え、観客動員数でB1全24チーム中5位となりました。「バスケをやって、あれほど人が集まるなんて中学、高校の時には想像できなかった。」、これは江北町出身の角田太輝選手の言葉です。
きっと多くの県民の皆さんも、1年前には想像していなかった景色を目撃されているのではないでしょうか。佐賀から時代を切り拓く思いで作ったSAGAアリーナ。県民の皆さんが一緒に盛り上げ、息吹を吹き込んでくれたことに感謝します。
少子高齢化の進展や人口減少、気候変動や国際紛争など社会の不確実性が一層高まる今だからこそ、自ら考え、世界を常に俯瞰しながら、自分たちで未来を切り拓いていくことが重要です。
今から約30年前に始まった地方分権改革も、国民の多様化する価値観への対応、少子高齢社会や変動する国際社会への対応など新たな時代の課題に向き合うために強く求められたものでした。国と地方の関係は、上下・主従から対等・協力に変わり、地方公共団体がそれぞれの住民と共に、自らの責任で、自らの決定によって地域社会を創っていくことが可能となりました。
しかし、この大きな流れを変えてしまうのではないかと危惧する法律改正が現在国において議論されています。地方自治法の改正による補充的指示権の創設です。その他の個別の法律が想定していない「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」が発生した場合、国が地方公共団体に指示することができるようにするものです。この指示権が将来、なし崩し的に適用されることで、地方自治の根幹を壊してしまうことにつながらないかと危惧しております。こうした考えのもと、先の政策提案においても、改正後の指示権については厳に抑制的に運用するよう、松本総務大臣に対して強く要請いたしました。
第一次地方分権改革を成し遂げた地方分権推進委員会は、当時、地方に向けて次のようなことを訴えています。国への依存心を払拭し、自治の道を真剣に模索してほしい。国に向けていた目を地域住民に向け直してほしい。我々は今一度こうした地方分権の精神を確認し、大切に貫いていくべきではないでしょうか。
佐賀が生み育んだ江藤新平は、明治維新期の激動の時代の中、類稀なる人間力や鳥瞰力、創造力、そして実行力により、この国を造りました。今、私たちは、江藤に学ぶことが多いのではないかと強く感じています。現場に根差し地域を想いながら、この国の在り方も鳥瞰していく。こうした地方自治を江藤を生んだ佐賀が実践していくことが、この国の改革の在り方、処方箋の参考となるのではないでしょうか。私自身も、これまでもそしてこれからも、常に鳥瞰的に、佐賀の未来を想像し、創造力をもって新たな価値を生み出すことに力を注いでまいります。そして、世界から選ばれる佐賀を、未来輝く世界に誇れる佐賀を、県民の皆さんと共に創ってまいります。
以上、今回提案いたしました議案などについて御説明申し上げました。
よろしく御審議いただきますようお願い申し上げます。