私たち新日本婦人の会は、女性の願いや子どものしあわせのために全国で運動している女性団体である。
中央教育審議会(文部科学大臣の私的諮問機関)が3月20日に、教育基本法の「改正」に関する「最終答申」を発表した。私たちは、この「改正」が国や行政が教育に直接ふみこむことにつながるのでは、と大変な危惧をいだいている。
「最終答申」をみると、「国を愛する心」「公共への主体的な参画」などという言葉がもりこまれているが、河村建夫文科副大臣は「公共=国家」だと答弁している(4月2日・衆議院)。これは戦前の軍国主義的教育の反省にたって制定された憲法・教育基本法の理念を180度転換するものである。
また教育の目標を「新しい時代を切り拓く心豊でたくましい日本人」とかかげている。「新しい時代」とは「少子・高齢化」「規制緩和」「グローバル化の進展と大競争時代の到来」である。そうした時代を生き抜く「たくましい日本人」は、政府・財界の要請にこたえる人づくりである。また、「ゆたかな心」とは、自立心、倫理観、思いやりの心、礼儀、人間の力を超えたものに対する畏敬の念などとしている。
いま、子どもたちによる相次ぐ痛ましい事件や不登校・登校拒否の増加、いじめや「学級崩壊」など、子供と教育をめぐる状況はかつてない困難をかかえている。2002年4月からの学校5日制完全実施で、「ゆとり」どころかますます窮屈な授業や生活を強いられている。いまほど学校や教育のありかたが問われているときはない。しかし、この「最終答申」ではこうした子どもの状況を招いた要因を何ら明らかにしないまま「改正」しようとしている。
子どもたちの苦しみの大きな要因は、国連・子どもの権利委員会が「極度に競争的な日本の教育制度が子どもたちに発達のゆがみを起こしている」(1998年)と勧告したように、政府が長い間すすめてきた、受験中心のつめこみ・競争教育や管理教育にある。今回の「最終答申」はまさにこの競争教育に拍車をかけるもので、到底、認めるわけにはいかない。
私たちは、子どもたち一人ひとりの可能性がゆたかにひらく教育、平和と民主主義の担い手が育つ教育をと願っている。そのためにはいまこそ、憲法・教育基本法の理念や子どもの権利条約の精神にそった教育が求められていると考える。
政府は、今国会にも教育基本法「改正」法案を提出しようとしている。ついては貴議会で教育基本法の「改正」に反対する意見書を採択していただくよう請願する。
平成15年6月23日
佐賀県議会議長 篠 塚 周 城 様
請願者 佐賀市天神1丁目4-12
新日本婦人の会佐賀県本部
会長 山 口 美 恵 子
紹介議員 宮 崎 泰 茂
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