多くの漁民の生活を支えてきた有明海では、諫早湾潮受堤防の締切により環境の悪化が懸念されていたが、平成12年12月、有明海の全域に渡って発生した赤潮は、かつて経験したことのないノリの不作をもたらした。
「有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会」は、諫早湾干拓事業が有明海全体の環境に影響を与えていると想定した上で、干拓地潮受堤防排水門の短期・中期・長期の開門調査の実施を提言し、環境の変化に不安と心配を抱く漁民は、その実施に大きな期待を寄せたものである。
しかし、提言から約3年半が経過したが、中・長期開門調査は行われることなく今日に至っている。
5月16日の国営諫早湾干拓事業の工事差し止め仮処分命令に対する保全抗告申し立てに係る福岡高等裁判所の決定においては、佐賀地方裁判所の仮処分を取り消すものとなったものの、国の責務について「中・長期の開門調査を含めた漁業環境悪化に対する調査・研究を今後も実施すべき責務を漁業者に対して負っている」と判断した。
農水省が、福岡高裁の決定を根拠に干拓工事を再開するのであれば、同高裁が求めている中・長期開門調査実施の責務を果たすべきであり、農水省側の理由で調査を実施しないのを認めることはできない。
しかしながら、6月27日国営諫早湾干拓工事差し止め仮処分を取り消した福岡高裁決定を不服として、原告の漁業者が申し立てた許可抗告について、福岡高裁は最高裁への抗告を許可した。我々佐賀県民は、最高裁の判断に大きな期待を寄せているところである。
有明海を後世に引き継ぐために、また、有明海沿岸漁業者と有明海の恵みを受ける多くの関係者の生活の安定のために、是非とも諫早湾干拓潮受堤防排水門を開けての中・長期開門調査の実施を強く要望する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成17年7月 日
佐 賀 県 議 会
衆議院議長 河 野 洋 平 様
参議院議長 扇 千 景 様
内閣総理大臣 小 泉 純一郎 様
農林水産大臣 島 村 宜 伸 様
環境大臣 小 池 百合子 様
水産庁長官 田 原 文 夫 様
農林水産省九州農政局長 伊 丹 光 則 様
以上、意見書案を提出する。
平成17年7月1日
提出者 全議員
佐賀県議会議長 原 口 義 己 様
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