平成29年4月臨時会 決議案と採決状況
決第4号
可決
九州電力玄海原子力発電所3、4号機の再稼働に関する決議(案)
九州電力玄海原子力発電所3、4号機の再稼働に関し、原子力規制委員会は、平成25年7月12日九州電力からの申請を受け、「世界最高水準の基準」とされる新規制基準に基づき、電力事業者へのヒアリング358回、専門家委員等による審査会合65回を重ねてきた結果、本年1月18日にこの基準に適合するとの審査書を決定し、原子炉設置変更許可を交付した。
これを受け、政府は、同月20日、玄海原子力発電所3、4号機は再稼働に求められる安全性が確保されており、エネルギー基本計画に基づき再稼働を進めるなどとする経済産業大臣名の文書を知事に提示した。
また、この提示に先立ち、昨年12月9日に開催された原子力防災会議において、政府は、「玄海地域の緊急時対応」について、「現時点において、原子力災害対策指針に照らして合理的な内容になっている」として、これを了承するとともに、同会議の席上、総理は、「原子力政策を推進する責任は政府にあり、万が一、原発事故が起きて災害になるような事態が生じた場合、国民の生命、身体や財産を守ることは政府の重大な責務であり、責任をもって対処する。」旨を発言した。
一方、県は、「玄海原子力発電所の再稼働に関して広く意見を聴く委員会」及び「原子力安全専門部会」において、安全性及び各方面からの意見の整理を進めるとともに、県内5カ所で「玄海原子力発電所に関する県民説明会」を開催し、広く県民から意見を求めてきた。
こうした中、我々佐賀県議会は、玄海原子力発電所の稼働のあり方について、県議会開会中の審議はもとより、閉会中においても政府、原子力規制庁、九州電力などに繰り返し参考人として出席を求め検討を重ねてきた。さらには、先行再稼働した川内、伊方の両原子力発電施設を視察、そして本年3月15日には玄海原子力発電所を視察し、緊急の電源確保のための大容量発電機や高圧電気車の配備、緊急時対応訓練の実施などハード・ソフト両面から対策が図られていることを確認した。
エネルギーの安定供給は、国民が安全にかつ文化的に生活を営む上において、また安定した経済活動を行っていく上においても欠くことのできないものであるにも拘らず、我が国のエネルギーを巡る環境は依然として厳しい状況にある。特に九州においては、老朽化した火力発電所を稼働させることや他の電力会社から融通を受けることによって、住民の生活と経済が支えられており、安定した電力供給体制が確保されているといえる状況にはなっていない。
このようなことから、県内経済界からは、国民生活の安定や産業・経済活動の持続的な発展を図るためには、電力の安定供給が必要不可欠として、玄海原子力発電所の早期再稼働を求める陳情が本県議会になされている。
また、原子力発電の停止によって火力発電への依存が高まったことで、地球温暖化の大きな要因といわれる二酸化炭素の大気中への放出が激増しており、その低減に向けて国際間で批准した「気候変動枠組条約」を順守していくことも喫緊の課題となっている。
このようなエネルギーをめぐる状況を踏まえ、政府は、原子力を「安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置付け、エネルギー自給率の改善や電力コストの引下げなどの目標達成のため、2030年度の原発依存度を20%~22%程度とする「エネルギー基本計画」及び「長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)」を策定した。
これらの状況を総合的に勘案した結果、本県議会としては、
・安全性については、原子力規制委員会において厳正に審査され、政府及び県においてもそのことを確認していること
・県民の暮らしや経済活動に不可欠な電力を、安定かつ安価に供給する必要があること
・我が国のエネルギー情勢や地球温暖化対策等を踏まえ、当面、原子力発電に依存せざるを得ないこと
から、再稼働の必要性が認められるものと判断する。
その上で、我々佐賀県議会議員が地元との対話の中で、玄海原子力発電所の再稼働を求める声を多く耳にし、再稼働やむなしということについての県民理解は、進んでいると考えるものの、安全性への不安の声や再稼働に否定的な声など、様々な意見があることは十分に認識しており、これを重く受け止めるとともに、万が一、原子力災害が発生した場合に備え、防災対策の充実が不可欠である。
よって、本県議会は、政府及び国会、原子力規制委員会、九州電力並びに知事に対し、次の事項に十分に配慮し対応されるよう強く要請する。
記
1 政府及び国会に対し、
(1) 原子力発電所の安全性及び再稼働の判断について、引き続き県民及び国民に対し、政府が前面に立って説明を行い、その理解を得るよう取り組
むこと
(2) エネルギー基本計画で、原発依存度については可能な限り低減させるとしていることに対し、再生可能エネルギーの更なる導入促進や蓄電技術
や新エネルギーの開発など、将来的に原子力に依存しない経済・社会構造の確立を目指すこと
(3) 県、市町、防災関係機関等との連携を強化し、避難のための道路、港湾等のインフラの整備促進や離島住民及び避難行動要支援者に十分に配慮
した避難計画の充実など、原子力防災対策の継続的な見直しを行うこと
(4) 使用済核燃料対策及び高レベル放射性廃棄物の最終処分などのバックエンド対策への取組を加速させること
(5) 立地地域の更なる振興対策に努めること
を要請する。
2 原子力規制委員会に対し、
(1) 電力会社が提出する工事計画、保安規定及び使用前検査について厳正な審査及び検査を行うとともに、安全性の更なる向上を常に念頭に置き、
原子力発電施設の安全性に関わる新たな知見が得られれば迅速な改善指導を行うこと
を要請する。
3 九州電力に対し、
(1) 再稼働に関して地元住民をはじめ県民に丁寧で分かりやすい説明を継続すること
(2) 県民、国民、そしてすべての命を預かる重責を常に自覚し、玄海原子力発電所の安全対策の更なる充実を図るとともに、一層の情報公開に努め
ること
(3) 県内経済の安定と発展のため、適正な電気料金設定を行うこと
を要請する。
4 知事に対し、
(1) 原子力発電施設の安全性に関わる新たな知見が得られた場合には、原子力規制委員会に対して、その積極的な情報提供と事業者に対する安全管
理の徹底を強く求めること
(2) 玄海原子力発電所に関わる国や事業者等との協議等については、情報公開を進め、透明性の確保に努めること
(3) 政府、市町、防災関係機関等との連携を強化し、避難のための道路、港湾等のインフラの整備促進や離島住民及び避難行動要支援者に十分に配
慮した避難計画の充実など、原子力防災対策の継続的な見直しを行うこと
(4) 立地地域の更なる振興対策に努めること
を要請する。
以上、決議する。
平成29年 月 日
佐 賀 県 議 会
以上、決議案を提出する。
平成29年4月13日
提出者 留 守 茂 幸 石 丸 博 石 井 秀 夫 木 原 奉 文
稲 富 正 敏 竹 内 和 教 中 倉 政 義 藤木 卓一郎
石 倉 秀 郷 桃 崎 峰 人 土 井 敏 行 指 山 清 範
大 場 芳 博 岡 口 重 文 原 田 寿 雄 宮 原 真 一
坂 口 祐 樹 向 門 慶 人 米 倉 幸 久 八 谷 克 幸
定 松 一 生 川 﨑 常 博 古 賀 陽 三 井 上 常 憲
池 田 正 恭 西久保 弘克 青 木 一 功
佐賀県議会議長 中倉 政義 様