玄海3号機のプルサーマル計画に関する九州電力の原子炉設置変更許可申請は、今年2月10日付で原子力安全委員会に諮問された。同委員会による審査には、委員会自らが行う直轄方式と特別に専門部会を設けて審査する専門部会方式の2つがあり、過去3回行われた審査ではすべて専門部会が設置され、審査が行われたが、今回の玄海3号機は直轄方式で行われており、審査が簡略化されているとの批判が噴出している。
同委員会は、玄海3号機に関して、専門部会を設置しない理由に、コストがかかることと、同じ加圧水型原発の高浜3、4号機における審査の経験があることを挙げているが、高浜3、4号機(87万kW)に対し、玄海3号機(118万kW)は出力が大きく、プルトニウム量やMOX燃料集合体の炉内配置も異なる。冷却系が3ループの高浜に対し、4ループの玄海では、重大事故時の影響も異なってくる。過去、沸騰水型原発においては、福島第一3号機(78万kW)についての専門部会の審査の後、より出力の大きい柏崎刈羽3号機(110万kW)の審査に際しても、専門部会が設けられた。この審査に福島の約3ヶ月を上回る約7ヶ月もの時間をかけている。
すでに、加圧水型原発でプルサーマルを行なっているフランスでさえも、MOX燃料を使用する原子炉はすべて90万kW級に制限されており、120万kW級の経験はない。日本におけるMOX燃料の「少数体実証計画」の後の「実用規模実証計画」も、本来予定されていたのは80万kW級原発においてであった。それをいきなり高出力の原子炉を対象にし、しかも、その安全審査を簡略化してしまうのでは、佐賀県民の理解を得ることは決してできない。
高浜3、4号機の審査は1998年に行われたが、その後、MOX燃料データ不正事件やデータ開示拒否、新潟県刈羽村の住民投票、美浜3号機の事故等により、プルサーマルに対する住民や国民の不信感はますます高まっている。不正事件に伴い、輸入燃料体の検査制度も変更されている。重要なのは、こうした状況下で過去に安全審査の対象となった3つのプラントのいずれもがプルサーマルを実施できていないという点である。事実上、わが国初のプルサーマル計画となる玄海3号機の安全審査がコスト論などから軽視され、簡略化されるのは看過できない。
よって、玄海3号機の安全審査については、専門部会を設け、より慎重に、十分な時間をかけて行なうよう、強く要請する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成17年7月 日
佐 賀 県 議 会
衆議院議長 河 野 洋 平 様
参議院議長 扇 千 景 様
内閣総理大臣 小 泉 純一郎 様
資源エネルギー庁長官 小 平 信 因 様
原子力安全・保安院院長 松 永 和 夫 様
原子力安全委員会委員長 松 浦 祥次郎 様
以上、意見書案を提出する。
平成17年7月1日
提出者 牛 嶋 博 明 木 下 治 紀 増 本 亨 太 田 記代子
末 安 善 徳 伊 藤 豊 宮 崎 泰 茂
佐賀県議会議長 原 口 義 己 様
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