昨年6月に成立した改正医療法第19条によって、助産所の開設者が嘱託する医師と病院・診療所を定める規定が強化された。改正は、出産の異常時等における母子の安全を確保することが趣旨である。しかし、現実には、産科医師や地域の産科病院や診療所が不足するなか、助産所が嘱託する医師や病院を個人で確保することは極めて困難である。問題は、本来機能すべき地域医療体制や周産期医療システムの整備が不十分であるために、妊産婦・新生児の緊急時搬送体制が整っていないことにある。このまま法が施行されれば、平成20年度以降、助産所は、新たな開業はもとより存続さえ困難になる。
出産の約8割を占める正常分娩であれば助産師が充分担えることは、日本の母子保健の歴史と実績が証明している。現在、出産は病院や診療所が主流となっているが、助産師は妊産婦に寄り添った出産のみならず、その後の子育て支援を行う等、重要な役割を果たしており、身近な地域において、安心して出産できる社会環境を維持する上で、助産所の閉鎖と助産師の不足は、重大な問題となっている。
全国の助産所が閉鎖の危機に瀕している緊急事態、および産科医師、助産師、産科病院・診療所・助産所が不足し、「お産難民」が深刻化している現状に鑑み、下記について要望する。
記
1 改正医療法第19条の施行を、当分の間凍結すること。
2 参議院厚生労働委員会の附帯決議(平成18年6月13日)に基づき、国が、責任をもって助産所の嘱託医・嘱託医療機関を確保すること。
3 各都道府県の総合周産期母子医療センター、各地域の中核病院や公的医療機関が助産所や診療所からの緊急搬送を円滑に受け入れられるよう、適宜適切な支援を講ずること。
4 助産師資格を取りやすい環境づくりと、助産師教育制度の充実
を図ること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成19年12月 日
佐 賀 県 議 会
衆議院議長 河 野 洋 平 様
参議院議長 江 田 五 月 様
内閣総理大臣 福 田 康 夫 様
厚生労働大臣 舛 添 要 一 様
以上、意見書案を提出する。
平成19年12月14日
提出者 全 議 員
佐賀県議会議長 石 丸 博 様 |