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平成22年2月定例県議会 知事提案事項説明要旨

最終更新日:
議案等の審議結果
平成22年2月定例県議会

  本日、平成22年2月定例県議会の開会に際し、県政を運営するにあたりまして、私の所信を述べさせていただくとともに、提案しました平成21年度補正予算案及び関連議案、並びに平成22年度当初予算案及びその他の議案について、その概要をご説明申し上げます。
昨年は、米国発の金融危機に端を発する世界的な景気後退と雇用不安の中ではじまり、4月にメキシコで発生した新型インフルエンザが瞬く間に世界規模で感染を拡大するなど、様々な形の厳しさと不安が、私たちのくらしに大きな影響を及ぼしました。
  また、9月には、政権交代によって民主党、社会民主党、国民新党による連立政権が発足し、「マニフェスト」実現を目指して、政策決定や予算編成について政治主導で進められるなど、大きな変化がありました。
  一方、社会・経済の変化に目を向けますと、環境やエネルギーの分野で、昨年秋に太陽光発電の余剰電力の新たな買取制度がスタートし、電気を買う時代から売る時代への転換を予感させたことや、自動車についても、ハイブリッド車が国内新車販売台数で初めて年間首位を獲得し、また、電気自動車の市販が開始されるなど、ガソリンから電気へ、主役交代の兆しを感じた年でもありました。
  このような中、県政の運営にあたっては、「地歩を固める」ことを基本として、何よりもまず足元の経済・雇用をしっかり支えていくことを第一に据え、県政の各分野においても、これまで取り掛かってきたものを固めていく、これまで育ててきたものを開花させながらしっかりと足元を踏みしめていくことを念頭に政策を進めてまいりました。
  このうち、経済・雇用情勢への対応については、年間を通じて、金融・雇用・経済の各分野において、県として取り組むことのできる最大限の対策を講じることができたものの、景気回復に向けた確かな道筋が見える段階には至っておりません。
  また、県政の各分野においては、
・ 高温に強い米の新品種で、昨年本格的に作付を始めた「さがびより」の生産・販売が順調な滑り出しを見せたこと
・ 平成25年春に鳥栖市での開設を目指している「九州国際重粒子線がん治療センター」について、特別目的会社の設立など準備が進んだこと
・ 本県が平成18年に始めたパーキングパーミット制度について、長崎、熊本、鹿児島の三県との間で相互利用が開始されるなど取組が広がったこと
  さらには、
・ 唐津市において進められている早稲田佐賀中学校・高等学校について、学校法人の設立認可を受けて、本年4月の開校に向けて校舎や寮の整備が行われたこと
などについては、着実に進めることができたものと考えております。
一方で、最も反省すべき出来事は、牛肉の輸出及び植物の輸出入に関する一連の問題でありました。
  現在、この問題を教訓として、再発防止策の徹底と組織経営の質の向上に、組織を挙げて取り組んでいるところであります。
私自身はもとより、職員一人ひとりが、日々の業務の中で具体的な行動として実践していくことが何よりも重要であるという認識のもと、しっかりと取り組んでまいります。
  さて、平成22年は、私が二期目の県政を担当させていただいて実質的に4年目の年、最後の年に当たります。
  これまで、「くらしの豊かさを実感できる佐賀県」の実現を県政の到達点と定め、そのために4年間に実施しておくべき政策を盛り込んだ「佐賀県総合計画2007」を道しるべとして、「佐賀県行財政改革緊急プログラム」に沿って必要な財源を確保しながら、各種施策の着実な推進に努めてまいりました。
  平成22年度は計画期間の最終年度となることから、私と県民との約束でありますマニフェストを織り込んだ充点項目はもとより、総合計画に掲げたすべての政策について、様々な工夫をこらしながら、目指す姿に一歩でも近づくよう全力で取り組んでまいります。
  総合計画の基本理念は、県民の皆様に「くらしの豊かさを実感」していただくため、福祉、教育、環境といった県民生活に密着した分野において、日々のくらしの実相にまで踏み込んだ施策を展開していくこと、そして、そのために必要な税収を確保していくため、先々を見据えた成長分野を含む産業の振興や、県民生活を支える社会資本の整備に総合的に取り組んでいくことであり、まさに、「くらし」と「成長」の両立を目指すものであります。
  足元の経済・雇用環境の厳しさが続くなど、県民生活に対する様々な不安が拭いきれない中、また、社会や経済の構造が急速に変化する中、あらためて「くらし」と「成長」を両立させるという原点に立ち返って県政運営にあたっていかねばならないという思いを強くしております。
  その象徴的な取組として、今年、二つの全国大会と、一つの、佐賀県を挙げての展示会を開催いたします。
  全国大会は、6月に佐賀市で開催する「食育推進全国大会」と、12月に嬉野市で開催する「ユニバーサルデザイン全国大会」であります。
  これらの大会の開催を契機として、家族とのだんらんや、地域の人々とのつながり、他人を思いやる心、誰もが過ごしやすいまちづくりなど、あらためて、人と人との結びつきの大切さを県民の皆様に実感していただき、行動に結びつけていただくことを期待しております。
  あわせまして、全国から訪れる方々に、佐賀海苔、佐賀牛、さがびよりをはじめとする本県の豊かな農水産物や、「器」である焼き物の魅力にも触れていただきたいと考えております。
  また、佐賀県を挙げての展示会として、10月に「"超"躍 する佐賀の企業展(仮称)」を開催することとしております。
  この展示会では、中小企業を取り巻く環境の厳しさが続く中、ものづくりを中心とする県内中小企業の優れた製品や技術力の高さを県民に広くアピールすることによって、企業の元気を引き出すこととあわせて、将来の取引拡大や人材確保にもつなげていくこととしております。
  これらの象徴的な取組のほか、県政の各分野においても、「くらし」と「成長」の両立を目指して、各種施策を推進してまいります。
  県民のくらしや環境の分野においては、
・ 太陽光発電の設置支援による一般住宅の低炭素化や、クリーンエネルギー自動車の導入を促進すること
・ 地上デジタルテレビ放送への円滑な移行の推進
  健康や医療、福祉の分野においては、
・ 九州国際重粒子線がん治療センターの開設に向けた取組を進めること
・ 佐賀県地域医療再生計画に基づき、医療機能強化や医師確保など地域の医療課題の解決を図っていくこと
  産業の分野においては、
・ 昨年デビューした米の新品種「さがびより」について、マーケットを確立していくこと
・ 九州新幹線鹿児島ルートの全線開業に向けた取組や、西九州ルートの活用に向けた取組の推進
  教育や文化振興の分野においては、
・ より身近な地域で教育を受けられるよう特別支援教育推進プランに基づく整備を進めること
・ 「九州・山口の近代化産業遺産群」の世界遺産登録に向けた取組の推進
などに意を用いて取り組んでまいります。
  次に、当面の課題に対する対処方針について申し上げます。
  まず、現下の経済雇用情勢に対する対応について申し上げます。
  最近の我が国経済は、アジア向けを中心に輸出が増加し、生産活動についても持ち直しているものの、失業率が高水準で推移しており、先行きについても、雇用情勢や海外景気の下振れ懸念、デフレの影響といったリスクが存在するなど、予断を許さない状況が続いております。
  このような中、政府は昨年12月、景気が二番底に陥る懸念を払拭するため、「雇用」「環境」「景気」を主要な分野と位置づけ、現下の経済情勢に緊急に対応するとともに、中長期的な成長力の強化を図ることを目指す「明日の安心と成長のための緊急経済対策」を決定し、この対策を実行するための国の平成21年度第二次補正予算が、先月28日に可決、成立したところであります。
  県内に目を向けますと、昨年12月の有効求人倍率が0.42倍と6か月ぶりに前月を下回り、依然として低い水準で推移していることや、生産活動において持ち直しの動きが続いているものの力強さに欠けるなど、厳しい状況が続いております。
  先月末から今月初旬にかけて実施いたしました県内企業60社の訪問調査では、景況感については緩やかながら改善傾向にあるものの、全体の約半数の企業が消費の低迷や価格競争等による「収益環境の悪化」を経営課題として挙げており、最悪期は脱したものの、景気回復を実感できる状況には至っていないことが明らかになったところであります。
  本県ではこれまで、「『くらしを守る』『活力を生み出す』緊急総合対策」の第一次対策及び第二次対策の着実な実施に努めてまいりましたが、景気回復に向けた確かな道筋が見えない中、国の対策にも呼応しつつ、切れ目ない・たゆみない対策を講じていくことが必要と判断し、県内の実情や現場の声を踏まえて追加や補充が必要とされる取組について、「緊急総合対策」の基本的な考え方に沿った第三次対策としてとりまとめたところであります。
  今回の対策により、これまでの二次にわたる対策とあわせた総額は約1,284億円と大規模なものとなりますが、今後も県内の情勢や国の動向に十分留意しながら、緊急総合対策を着実に実施していくことによって、生活や経済に関する県民の不安を解消するとともに、地域の利便性や成長力の向上、新しい分野での雇用創出を図り、県民が安心して安全に暮らせる元気な佐賀県を目指してまいります。
  次に、地方分権改革の推進について申し上げます。
  地方分権改革につきましては、地方分権改革推進委員会の四次にわたる勧告を踏まえ、昨年12月、政府の「地方分権改革推進計画」が閣議決定されました。
この計画においては、121条項の義務付け・枠付けを見直し、条例制定権の拡充を図ることのほか、「国と地方の協議の場」の法制化について決定がなされ、現在、政府において「地域主権推進一括法案」として今通常国会に関連法案を提出する準備が進められております。
  しかしながら、政府の地方分権改革推進委員会が、4076条項の義務付け・枠付けの見直しを勧告したことや、従前の民主党の主張を考えると、今回の見直しは、質・量ともに不十分と言わざるを得ません。
  県としましては、政府に対し、更なる義務付け・枠付けの見直しによる条例制定権の拡充など、「できることから確実に」実行していくことを強く求めてまいります。
また、本県におきましても、地方分権の推進を図るため、「県と市町の協議の場」の設置に向けて検討を進めてまいります。
  次に、有明海の再生について申し上げます。
  諫早湾干拓事業にかかる中・長期開門調査の早期実現につきましては、昨年10月に赤松農林水産大臣にお会いして早期開門調査の実現などを求めた際に、大臣から「地元である佐賀県と長崎県でまず話をしてほしい」旨の要請がありました。
これを受けて、長崎県側と調整を進めた結果、昨年12月24日に、金子長崎県知事との間で、諫早湾干拓事業と有明海再生についての会談が実現いたしました。
会談では、今後、両県の漁業者同士が有明海再生について話し合うことが出来るようにしたいという点においては意見が一致したものの、開門調査に対する長崎県の不安は大きく、この問題に対する両県の考え方の違いを再認識したところであります。
  私としましては、再度、赤松大臣にお会いして長崎県知事との会談の結果をご報告した上で、改めて、この問題について実務レベルの検討を行う場を国の主導で設けていただくことなどについて、強く要請してまいりたいと考えております。
  有明海では、今漁期、ノリの色落ちが発生しております。
  有明海では、昨年12月26日から冷凍網期のノリ養殖が開始されたところでありますが、年末から、海水中の栄養塩が極端に少ない状況が続いたことから、沖合を中心に広い範囲で色落ちが発生しました。
  先月26日には、佐賀県有明海漁業協同組合から県に対し、河川からの栄養塩を補給するためのダム貯留水の緊急放流について要請がなされたことを受けて、直ちに「佐賀県有明海再生推進本部幹事会」を開催して協議の上、河川管理者である九州地方整備局に対し緊急放流の要請を行った結果、先月29日から今月1日にかけて、松原・下筌ダムからの緊急放流が実施されたところであります。
  今月初めには、私自身ノリ養殖の現場に赴いて実情を確認してまいりましたが、そのときの状況は想像以上に深刻なものと受け止めたところであります。
  その後、降雨等もあり、なんとか生産が続けられている状況にありますが、県としましては、今後とも有明海の状況をモニタリングしながら、再度の緊急放流の要請があった場合には迅速に対応してまいりたいと考えております。
  また、漁業者に対する経営支援として、まずは、県の制度資金である近代化資金について、返済期が到来した漁業者が、円滑に返済猶予が受けられるよう必要な措置を講じたところであり、さらに、今後、漁業不振により経営の継続が危惧されることとなった漁業者に対しては、農林漁業セーフティネット資金など、低利かつ長期の制度資金を活用しながら、漁業経営の安定を図ることとしております。
  次に、九州国際重粒子線がん治療センターの開設に向けた取組について申し上げます。
  平成25年春に、鳥栖市の九州新幹線新鳥栖駅前での開設を目指して準備を進めております九州国際重粒子線がん治療センターにつきましては、先月29日に開催された第四回事業推進委員会において、事業計画Ver.2.0が承認されました。
この事業計画に基づきまして、今月5日には、同治療センターの医療運営を行う、一般財団法人佐賀国際重粒子線がん治療財団を設立したところであります。
今後、本プロジェクトは、計画段階から建設段階へと移行していくことになり、治療装置・建屋の整備はもとより、医療スタッフの育成・確保や重粒子線がん治療の普及活動など、様々な取組が本格化していくこととなります。
県といたしましては、本プロジェクトの推進役として、九州重粒子線施設管理株式会社及び佐賀国際重粒子線がん治療財団との緊密な連携のもと、引き続き、経済界、医療界、大学など各界各層のご支援、ご協力をいただきながら取組を進めてまいります。
  続きまして、提案事項についてご説明申し上げます。
  まず、平成21年度補正予算案及び関連議案の概要について申し上げます。
今回の補正予算の編成にあたりましては、県の緊急総合対策のうち、平成21年度に実施する必要のある事業について所要額を計上することといたしました。
この結果、今回提案いたしました平成21年度2月補正予算案の総額は、歳入歳出とも、それぞれ
     一 般 会 計    約     125億1,300万円
     特 別 会 計    約      17億8,200万円
となり、これを既定の予算額とあわせますと、本年度の予算総額は、
     一 般 会 計    約 4,911億4,100万円
     特 別 会 計    約 1,114億8,900万円
となっております。
  以下、補正予算案の主な内容について申し上げます。
雇用対策につきましては、介護、医療、環境・エネルギーなど今後成長が期待されている分野において新たな雇用機会を創出するとともに、地域のニーズに応じた人材を育成し雇用に結びつけるため、佐賀県緊急雇用創出基金について、必要な積み増しを行うことといたしました。
  また、離職者等への住宅手当の支給、福祉事務所への就労支援員の配置など、求職中の貧困・困窮者の生活・就労支援を強化するため、同じく佐賀県緊急雇用創出基金に積み増しを行うこととしました。
  次に、経済対策につきまして、柱立てに沿って申し上げます。
  まず、「安全・安心の確保」のための取組について申し上げます。
医療提供体制の充実につきましては、地域における医療課題を解決するため、新たに佐賀県地域医療再生基金を設置し、平成25年度までの間、地域における医療機能の強化や、医師確保など、県民が安心して医療を受けられる体制の整備を図っていくことといたしました。
  地域で安心して子育てができる環境整備につきましては、保育所の整備促進や、ひとり親家庭などの在宅就業を支援するため、佐賀県安心こども基金に積み増しを行うこととしました。
  高齢者福祉の充実につきましては、社会福祉法人が行う特別養護老人ホームの全室個室化に係る整備を支援することにより、居住環境の改善を図ることといたしました。
  元気な農業経営者の育成につきましては、消費者ニーズに即した農産物の生産や自ら販路開拓ができるような高い経営能力を持った人材を育成するための教育環境整備として、農業大学校の施設設備の改修を行うことといたしました。
交通安全対策につきましては、交通の安全と円滑化を確保するため、整備の必要性の高い場所に交通信号機を新設することとしました。
  次に、「新社会資本の整備」につきましては、来年7月に迫った地上デジタルテレビ放送への全面移行に向けて、県内すべての地域におけるデジタル化対応を円滑に進めるため、地理的・地域的な要因により、家庭用アンテナでは地上デジタル放送を受信できない地域及びアンテナ設備改修等に高額な負担を要する地域において、ケーブルテレビ施設の整備や共同受信施設の新設・改修に対して支援することとしました。
  次に、「低炭素社会の推進」につきましては、それぞれの地域の特色を活かした自立的な地域発展のための核づくりを推進するため、市町とともに、地域のクリーンエネルギー資源活用の事業化方策についての実証調査などを実施し、新たな事業の可能性を探っていくこととしました。
  以上、補正予算案の主な内容について申し述べましたが、これに対する一般会計の歳入財源といたしましては、
     国庫支出金  約 124億円
     繰 入 金 約          3億9,200万円
     諸 収 入 減額       3億4,200万円
     そ の 他       約          6,300万円
     計                約 125億1,300万円
となっております。
  次に、予算外議案といたしましては、補正予算に関連する条例案として、「佐賀県地域医療再生基金条例(案)」を提案しております。
  これは、国の交付金を受け入れ、佐賀県地域医療再生計画に基づく事業を行うための基金の設置、積み立て、管理等について必要な事項を定めるものであります。
  次に、平成22年度当初予算案について申し上げます。
わが国経済社会が、雇用の確保と確実な景気回復という当面の課題とともに、人口減少と超高齢化の同時進行、地球温暖化など中長期的な検討を要する課題にも対応を迫られる中、政府は、これまでの資源配分を転換し、経済社会の構造を変えることによって新たな経済成長の機会を見出すという基本的な考え方を示しました。
  このような考え方を踏まえ、国の平成22年度予算は、国民生活に安心と活力をもたらす施策を充実させた「いのちを守るための予算」として編成されたところであり、家計を直接応援し、国民の生活を守るため、マニフェストの工程表に掲げられた主要事項である子ども手当、農業の戸別所得補償、公立高校の授業料無償化などの施策を実施することとされております。
  また、公共事業については、大規模な公共事業について必要性を根本から見直すとともに、事業の効率性・必要性を踏まえた優先順位付けが行われ、あわせて、地方公共団体が地域のニーズにあった社会資本整備を行うための新たな交付金を創設することとされております。
  このような中、平成22年度の地方財政につきましては、個人所得の大幅な減少や企業収益の急激な悪化などにより、地方税収入や地方交付税の原資となる国税収入が引き続き落ち込む一方、社会保障関係経費の自然増や公債費が高い水準で推移することなどにより、定数削減や人事院勧告に伴い給与関係経費が大幅に減少してもなお、財源不足が過去最大の規模に拡大するものと見込まれています。
  このため、極めて厳しい財政運営を強いられている地方の切実な声を踏まえ、地方公共団体が、雇用情勢等を踏まえた当面の地域の活性化に向けた施策を円滑に実施できるよう、地方交付税が増額されたところであります。
  この結果、本県においても一般財源が増額となることから収支不足が大幅に圧縮され、一息ついた感はあるものの、県債の平成22年度末残高が、予算規模を大きく上回る7,157億円に達する見込みであることに加え、国と地方を通じた財源不足が拡大していることから、県財政の置かれた状況は依然として厳しいものとなっております。
  こうした状況を踏まえつつ、県民のくらしや地域経済の安定確保に最優先で取り組む方針の下、「佐賀県行財政改革緊急プログラムVer.2.1」により必要な財源を確保しながら、
・ 平成21年度補正予算とあわせ、緊急総合対策に基づく施策を切れ目なく講じていくこと
・ 「佐賀県総合計画2007」及び各本部の経営戦略に基づき、自らの権限と責任において、伸ばすものは伸ばし、見直すものは積極的に見直すなど、メリハリのきいた予算とすること
などにより予算編成を行ったところであります。
  この結果、平成22年度当初予算案の総額は、歳入歳出とも、それぞれ
     一 般 会 計      4,419億9,300万円
     特 別 会 計  約     994億7,100万円
となっており、一般会計におきましては、前年度当初予算と比較しますと、4.0パーセント増となっております。
  次に、当初予算案の主な内容についてご説明申し上げます。
  まず、緊急総合対策にかかるものについて申し上げます。
中小企業の金融対策につきましては、県内中小企業者の資金繰りを支援するため、経営安定のための緊急対策融資を引き続き実施するなど県制度金融について十分な資金枠を確保することといたしました。
  また、創業や独立による雇用の創出を促進するため、創業等を対象とした県制度金融の貸付要件を緩和するなど、所要の措置を講じることといたしました。
雇用対策につきましては、雇用の受け皿を確保するとともに、成長分野における新たな雇用機会の創出や、地域のニーズに応じた人材育成を図るため、佐賀県緊急雇用創出基金及び佐賀県ふるさと雇用再生基金を活用して、県及び市町において、地域の実情を踏まえ創意工夫を凝らした各種の取組を実施することとしております。
  また、離職者等の就労を支援するため、雇用の受け皿として期待できる情報技術分野や介護分野を中心に、職業訓練の科目・内容を拡充して実施することといたしました。
  次に、経済対策につきまして、柱立てに沿って申し上げます。
  まず、「安全・安心の確保」の取組について申し上げます。
医療提供体制の充実につきましては、佐賀県地域医療再生計画に基づき、県内に必要な医師を育成、確保するため、佐賀大学に地域医療支援のための寄附講座を設置することとしたほか、西部保健医療圏において、より効率的で高次な医療提供体制を構築するため、伊万里・有田地区統合病院(仮称)の整備に対し助成することといたしました。
  また、地震発生時において適切な医療提供体制の維持を図るため、災害拠点病院や二次救急病院の耐震化整備に対する助成を行うこととしました。
在宅就業の推進につきましては、家事や子育ての負担を背負うひとり親家庭の親や、事業所で働くことが困難な障害のある方の在宅就業拡大に向けた環境整備を図るため、教育訓練、業務開拓、品質管理、相談支援など総合的な支援を行うこととしました。
  地域で安心して子育てができる環境整備につきましては、子どもの保育環境の充実を図るため、保育所や認定こども園の新設や老朽化施設の改築を積極的に促進することとしております。
  また、乳幼児を抱える家庭が安心して外出できるよう、新たな取組として、市町や民間事業者が行う公民館やレストランなど身近な場所におけるおむつ交換台や授乳室の整備に対し助成することとしました。
社会福祉施設の安全・安心の確保につきましては、自力で避難することが難しい障害者等が入所する施設の耐震化やスプリンクラー整備を支援することといたしました。
  修学機会の確保につきましては、高校生等を対象とした育英資金について、厳しい経済・雇用情勢が依然として続く中、これまで以上の希望者が見込まれることから、新規貸付枠を拡大することとしております。
  次に、「低炭素社会の推進」の取組について申し上げます。
  地球温暖化対策につきましては、県民のライフスタイルの見直しにつながる新エネルギーの導入や家庭における省エネルギーの取組をこれまで以上に進めるため、本年一月に創設しました太陽光発電と高効率な給湯器等の省エネ設備を合わせて導入する場合の助成制度について、さらに普及を図ってまいります。
  また、走行中に二酸化炭素を出さない電気自動車を今後県内に広く普及させていくための環境整備として、充電器の設置を進めていくことといたしました。
  次に、当初予算案のうち緊急総合対策以外の主な内容について「総合計画2007」に掲げる六つの柱に従って申し上げます。
  まず、『健康で暮らしやすい佐賀県』について申し上げます。
  子ども・若者の自立支援につきましては、ニート、ひきこもりなど様々な問題を抱える子どもや若者の支援体制を確立するため、教育、福祉、雇用など関係機関の連携・協力のもと、総合相談窓口の設置や訪問支援を行うこととしました。
  食育の推進につきましては、本年6月に佐賀市において開催する「第五回食育推進全国大会」を通じて、県内の先進的な取組や豊かな「食」を全国に発信するとともに、大会開催を契機として、県全体の食育活動の充実など食育県民運動の一層の推進を図ることとしております。
  ユニバーサルデザインの推進につきましては、本年12月に嬉野市において開催する「第五回ユニバーサルデザイン全国大会」を通じて、本県の取組を全国に発信するとともに、大会開催を契機として、県民のユニバーサルデザインに対する理解と取組の一層の促進を図っていくこととしております。
  新型インフルエンザ対策につきましては、病原性の高い新型インフルエンザの流行に備えた医療体制の整備を図るため、医療機関での院内感染防止対策強化に向けた施設や設備の整備に対して助成することといたしました。
医療提供体制の充実につきましては、本年4月から地方独立行政法人に移行する佐賀県立病院好生館が行う移転改築事業について、地方独立行政法人法等の定めるところにより一定の負担を行うこととしております。
  中心市街地の活性化につきましては、商店街を中心とした市街地のにぎわいづくりのため、中心市街地活性化法に基づく国の基本計画認定を契機として、地域が一体となって取り組む歴史や文化などの個性を活かしたまちづくりを支援することとしました。
  快適に暮らせるまちづくりにつきましては、佐賀城公園の整備について、百年後の孫の世代まで受け継がれるような品格のあるまちづくりの方針を定めた「佐賀城下再生百年構想」の実現に向け、現在、埋め立てられている「東濠」の復元工事に着手することといたしました。
  次に、『誰もが活躍できる佐賀県』について申し上げます。
  国際化の推進につきましては、本県出身の移住者及びその子孫の方々を慰労するとともに、県民の海外における人脈づくりを促進するため、ブラジル佐賀県文化協会創立55周年及びペルー佐賀県人会創立30周年の記念式典開催に合わせ、県民訪問団を両国に派遣することといたしました。
  次に、『地球環境時代のトップランナー佐賀県』について申し上げます。
  有明海の再生につきましては、有明海湾奥部の海域の特性に応じた総合的な再生方策の検討を行っておりますが、これまでの「開門調査のための環境アセスメント」に向けた取組に加えて、佐賀大学と共同して、開門調査の具体的な計画に対して意見を述べるための研究に取り組むことといたしました。
  廃棄物の減量化・リサイクルと適正処理の推進につきましては、循環型社会の形成に向けた施策の費用に充てることとしている産業廃棄物税の有効活用を促進するため、助成内容の充実を図るとともに、処分場周辺の環境整備を支援する事業の創設など、ニーズを踏まえた抜本的な見直しを行うことといたしました。
  循環型社会の推進につきましては、11月に佐賀市において開催する「第五回3R推進全国大会」を契機として、県民のごみの減量やリサイクルに対する意識啓発を図ることにより、廃棄物の「発生抑制・再使用・再生利用」を一層推進していくこととしました。
  森林の保全につきましては、水源のかん養や地球温暖化防止など森林の持つ多様な機能を十分に発揮させるため、間伐をはじめとする森林整備や広葉樹の植栽を推進するとともに、「佐賀県森林環境税」を財源として県、市町及び県民の協働により荒廃森林の再生等に引き続き取り組むこととしております。
  新エネルギーに対する理解促進につきましては、核燃料サイクル交付金を活用して、玄海町が行う次世代エネルギーパーク整備事業に対し助成を行うこととしました。
  次に、『学びきらめく佐賀県』について申し上げます。
  基礎学力の定着と個性を生かす教育の推進につきましては、児童・生徒一人ひとりを大切にしたきめ細かな指導を充実させるため、昨年から導入した中学校第一学年において三十五人以下の小規模学級又はティームティーチングを選択できる制度について、対象校を拡大して実施することといたしました。
  また、国が実施する全国学力・学習状況調査について、来年度、従来の全数調査から抽出調査に変更されることに伴い、国の調査対象外となる学校について市町が参加を希望する場合には、県において採点と分析を行うことにより、児童・生徒一人ひとりの学力向上に取り組む市町を支援することとしました。
  特別支援教育の推進につきましては、より身近な地域で教育を受けられるよう、佐賀県特別支援教育推進プランに基づき、平成23年度までに中原養護学校に知的障害及び肢体不自由の小・中・高等部並びに病弱の高等部を、また、伊万里養護学校に肢体不自由の小・中・高等部を段階的に設置するため、必要な施設設備の整備を行うこととしております。
  本年4月には中原養護学校本校に知的障害の中学部を設置するとともに、鳥栖市の田代小学校内に「中原養護学校鳥栖田代分校」を開校し、知的障害の小・中学部を設置する運びとなっております。
  社会の進展に対応した多様な教育の推進につきましては、県立高等学校再編整備計画第二次実施計画に基づき、平成23年4月に、県立太良高校を多様な学びのできる全日制高校のモデル校として改編するとともに、県立鳥栖高校定時制と県立鳥栖工業高校定時制とを再編統合することとしており、そのために必要な施設設備を整備することとしております。
  公立高校の授業料無償化とあわせて国が進めている、私立学校の生徒にかかる家庭の教育費負担の軽減につきましては、「高等学校等就学支援金制度」に基づき、私立高等学校等の生徒に対して授業料の一部を助成することとしました。
文化の振興につきましては、「九州・山口の近代化産業遺産群」の世界遺産登録に向けた取組を進めておりますが、昨年10月に国内外の有識者で構成される専門家委員会において新たに構成資産候補とされた佐賀市の三重津海軍所跡が、先月、関係自治体による推進協議会において正式に構成資産候補に位置づけられました。
  このため、三重津海軍所跡の調査・研究を引き続き推進するとともに、関連する県内資産である築地反射炉跡等についても調査を進めてまいります。
世界遺産登録には、県民の皆様のご理解とご協力が何より重要であるため、今後も佐賀市や県民の皆様と一体となって取り組んでまいります。
また、幕末・明治期の日本の近代化に貢献した本県出身の多くの偉人の足跡を広く県民に知っていただき、郷土への誇りや関心を高めていただくこととあわせて、世界遺産登録の実現に向けて機運を盛り上げるため、「佐賀偉人伝集」を出版することといたしました。
  博物館施設における企画展につきましては、開館30周年を迎える九州陶磁文化館において「珠玉の九州陶磁展」を開催することとしております。
スポーツの振興につきましては、平成25年に佐賀、福岡、長崎、大分の北部九州ブロック四県を会場として開催予定の全国高等学校総合体育大会に向けて、中学生や高校生の競技力向上を図るため、指導者のレベルアップや、中学生と高校生の一貫した指導体制の構築などに取り組むこととしました。
  次に、『活力あふれる佐賀県』について申し上げます。
競争力のある売れる農産物の生産振興につきましては、水田農業の担い手の経営安定と競争力のある米・麦・大豆づくりを推進するため、省エネルギー化・低コスト化の取組に必要な機械・施設の整備や、「さがびより」の生産拡大などの取組に対し、引き続き助成していくこととしました。
  また、園芸農業の持続的な発展を図るため、環境保全型園芸農業や省資源型園芸農業の取組拡大を推進するとともに、新たに園芸農業に取り組む生産者の育成や経営規模の拡大に必要な機械・施設の整備などに対し、引き続き助成することとしております。
  また、優良な肥育素牛の安定的な確保と畜産農家の経営安定を図るため、唐津農業協同組合が行う肉用牛の子牛の飼育施設であるキャトルステーションの整備などに対して助成することといたしました。
  水産業の振興につきましては、玄海地域における藻場、有明海地域における干潟の公益的な機能の維持・保全を図るため、藻場の食害生物の駆除や、干潟の清掃など漁業者自らが行う活動に対して支援することとしました。
また、水産資源の回復対策として、玄海地域においては、引き続きマダイやカサゴ等の種苗放流に取り組むとともに、有明海地域においては、海底耕うんやナルトビエイの駆除など漁場環境の改善対策に取り組むほか、アゲマキやガザミ等を対象として、種苗の放流技術や、底質改善技術の開発など、資源回復方策の早急な確立を目指してまいります。
  中小企業の活力向上とものづくり産業の振興につきましては、県内中小企業とその製品・技術に対する県民の認知度を高めることで企業の元気を引き出すとともに、将来の取引拡大や人材確保にもつなげるため、県内商工団体等との共催により、広く県民に来場していただけるような展示会を開催することといたしました。
中小企業の新商品開発、新事業進出の支援につきましては、知的財産を活用した新商品の開発や新事業展開の促進を図るため、第三者の保有する特許技術等を導入し、事業化に向けた取組を行う中小企業を支援することとしました。
  最後に、『未来ひろがる佐賀県』について申し上げます。
  九州新幹線の開業に向けた取組につきましては、平成23年3月に予定されている鹿児島ルートの全線開業に向けて気運を盛り上げ、新鳥栖駅の利用者の増加を図るため、開業イベントやキャンペーンなどを行うこととしました。
  県営漁港施設及び農業水利施設の機能保全につきましては、更新時期を迎える施設の増加により、今後、補修費や更新費の増大が懸念されることから、施設の機能を効率的に維持するとともに、ライフサイクルコストの縮減を図るため、機能診断に基づく予防的な機能保全計画の策定及び保全工事を一貫して実施していくこととしました。
  幹線道路網の整備につきましては、県内の主要都市を結び、北部九州の広域的な高速交通網を構築する西九州自動車道、佐賀唐津道路、有明海沿岸道路、国道498号の整備を引き続き推進し、佐賀福富道路の嘉瀬南インターから久保田インター間及び国道四九八号の大坪バイパスにおきましては、平成23年春に供用開始できるものと見込んでおります。
  有明佐賀空港につきましては、本年10月末に予定されている羽田空港の新滑走路の供用開始時における東京路線四便の維持が決まったところですが、平成25年春までの発着枠の段階的拡大にあわせた更なる増便の実現に向けて、「マイエアポート運動」を引き続き推進するなど、今後とも利用者の増加を図ってまいります。
港湾の整備につきましては、伊万里港において、コンテナ船の大型化や二隻同時接岸に対応するための七ツ島地区埠頭整備を進めるとともに、唐津港においては、物流機能強化や大型旅客船の接岸、さらには震災時の緊急物資輸送にも対応する耐震強化岸壁の整備を、国と連携して進めてまいります。
  以上、平成22年度当初予算案の主な内容についてご説明申し上げましたが、これに対する一般会計の歳入財源としましては、
     県 税                           653億    400万円
     地方消費税清算金         145億3,300万円
     地方交付税          約 1,324億 円
     国庫支出金          約     533億4,100万円
     繰 入 金               約    209億6,200万円
     諸 収 入               約    502億7,700万円
     県 債                           838億5,500万円
     そ の 他                約    213億2,100万円
     計                           4,419億9,300万円
となっております。
  このうち、県税につきましては、最近における経済の動向、過去の実績等を総合的に勘案するとともに、平成22年度地方税制改正案に係る増減収額を考慮して計上しております。
  地方交付税につきましては、地方財政計画等をもとに、現段階で見込み得る額を基礎において、所要額を計上するとともに、県債につきましても、国の地方債計画等をもとに、今回計上する事業費の財源として所要額を計上しております。
  企業会計として運営しております工業用水道につきましては、収益的支出約4億5,004百万円、資本的支出約1億2,300万円となっております。
  次に、予算外議案としましては、条例案として「佐賀県職員定数条例の一部を改正する条例(案)」など17件、条例外議案として「国営土地改良事業に対する市町の負担について」など6件、あわせて23件となっております。
  このうち、「佐賀県立学校授業料等徴収条例の一部を改正する条例(案)」につきましては、国において、平成22年度から公立高校の授業料を原則無償化するため、今国会に関連法案等を提案されており、これを受け所要の改正を行うものであります。
  その他の議案につきましては、それぞれ提案理由を記載しておりますので、説明を省略させていただきます。
  さて、金融・経済危機後の世界経済が未だ回復の途上にある中、先の読みにくい状況が続いておりますが、一方で、冒頭申し上げましたように、家庭の太陽光発電でつくった電気を売る時代の到来を予感させる制度の創設や、電気自動車の市販開始など、私たちのくらしの様々な場面で、新しい時代の兆しは確実に見えてきております。
  このような「変化の時代」にあって、日々刻々と変化する社会・経済情勢や、価値観、ニーズの変化などを的確に汲み取って、県政に求められているものを判断していくことが、これまで以上に重要となってきております。
  佐賀県という地域を、時代にマッチした、際立つ地域としていくためにも、時代の変化を的確に見極めることのできる「動体視力」に磨きをかけながら、目を見開いてしっかり取り組んでいく、今年はそういう年にしたいと考えております。
  どうか、議員各位、並びに、県民の皆様のご理解とご協力をお願いいたします。
  以上、私の所信と今回提出しました議案についてご説明申し上げましたが、よろしくご審議いただきますようお願い申し上げます。

 


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