平成30年6月定例会 意見書案と採決状況
意第6号
可決
地方財政の充実・強化を求める意見書(案)
地方自治体は、子育て支援策の充実と保育人材の確保、高齢化が進行する中での医療・介護などの社会保障への対応、地域交通の維持など、果たす役割が拡大する中で、人口減少対策を含む地方版総合戦略の実行やマイナンバー制度への対応、大規模災害を想定した防災・減災事業の実施など、新たな政策課題に直面している。
一方、地方公務員をはじめとした公的サービスを担う人材が限られる中で、新たなニーズへの対応と細やかな公的サービスの提供が困難となっており、人材確保を進めるとともに、これに見合う地方財政の確立をめざす必要がある。
このような中、社会保障費の圧縮や「公的サービスの産業化」など地方財政をターゲットとした歳出削減にむけた議論が加速している。特に、「トップランナー方式」の推進に当たっては、地方の行政コストの差が、歳出削減努力以外の要素によるところが大きいことを考慮すべきと考える。
本来、必要な公共サービスを提供するため、財源面を担保するのが地方財政計画の役割である。しかし、財政再建目標を達成するためだけに歳出削減が行われ、結果として不可欠なサービスが削減されれば、本末転倒であり、国民生活と地域経済に疲弊をもたらすことは明らかである。
このため、2019年度の政府予算と地方財政の検討にあたっては、歳入・歳出を的確に見積もり、人的サービスとしての社会保障予算の充実と地方財政の確立をめざすことが必要である。
よって、国会及び政府に対し、以下の事項の実現を求める。
記
1 社会保障、災害対策、環境対策、地域交通対策、人口減少対策など、増大する地方自治体の財政需要を的確に把握し、これに見合う地方一般財源総額
の確保をはかること。
2 子ども・子育て支援新制度、地域医療の確保、地域包括ケアシステムの構築、生活困窮者自立支援、介護保険制度や国民健康保険制度の見直しなど、
急増する社会保障ニーズへの対応と人材を確保するための社会保障予算の確保および地方財政措置を的確に行うこと。
3 地方交付税における「トップランナー方式」については、算定や他の業務への導入の検討に際して、地方の行政コストの差は、人口や地理的条件な
ど、歳出削減努力以外の要素によるところが大きく、一律の行政コスト比較にはなじまないことに十分留意すること。
4 災害時においても住民の命と財産を守る防災・減災事業は、これまで以上に重要であり、自治体庁舎をはじめとした公共施設の耐震化や緊急防災・減
災事業の対象事業の拡充と十分な期間の確保を行うこと。また、2015年度の国勢調査を踏まえた人口急減・急増自治体の行財政運営に支障が生じるこ
とがないよう、地方交付税算定のあり方を引き続き検討すること。
5 地域間の財源偏在性の是正のため、偏在性の小さい所得税・消費税を対象に国税から地方税への税源移譲を行うなど、抜本的な解決策の協議を進める
こと。
同時に、各種税制の廃止、減税を検討する際には、自治体財政に与える影響を十分検証した上で、代替財源の確保をはじめ、財政運営に支障が生じるこ
とがないよう対応をはかること。
6 地方交付税の財源保障機能・財源調整機能の強化をはかり、市町村合併の算定特例の終了を踏まえた新たな財政需要の把握、小規模自治体に配慮した
段階補正の強化などの対策を講じること。
同時に、地方交付税原資の確保については、臨時財政対策債に過度に依存しないものとし、対象国税4税(所得税・法人税・酒税・消費税)に対する法
定率の引き上げを行うこと。
7 自治体の基金残高を、地方財政計画や地方交付税に反映させないこと。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成30年 月 日
佐 賀 県 議 会
内閣総理大臣 安倍 晋三 様
衆議院議長 大島 理森 様
参議院議長 伊達 忠一 様
財務大臣 麻生 太郎 様
総務大臣 野田 聖子 様
経済産業大臣 世耕 弘成 様
内閣官房長官 菅 義偉 様
内閣府特命担当大臣 茂木 敏充 様
(経済財政政策)
内閣府特命担当大臣 梶山 弘志 様
(地方創生,規制改革)
以上、意見書案を提出する。
平成30年6月28日
提出者 全議員
佐賀県議会議長 石倉 秀郷 様