令和元年9月定例会 知事提案事項説明要旨
知事提案事項説明要旨(9月10日)
令和元年9月定例県議会の開会に当たり、最近の動き、提案事項などについて御説明申し上げます。
はじめに、本県で8月に発生した「令和元年佐賀豪雨災害」への対応について申し上げます。8月27日から28日に九州北部で秋雨前線が停滞し、猛烈な集中豪雨により発生した災害で、県内で3名の方がお亡くなりになりました。また、低平地が広がる本県の地理的特性から広範囲にわたり家屋や農地などが浸水し、武雄市、大町町をはじめとする県内各地で床上・床下浸水などの家屋被害が4,200棟を超えたほか、大町町では、工場から大量の油が流出し周辺地域に広がったことへの対応が必要となるなど、大規模かつ非常に特殊な災害となりました。佐賀市金立や武雄ジャンクション付近などでの土砂災害や、多くの場所での道路ののり面や河川の護岸の崩壊など、県内のいたるところで被害が発生し、県民生活に多大な影響が生じています。犠牲となられた方々に対し謹んで哀悼の意を表し、ご冥福をお祈りいたしますとともに、被害にあわれた方々に心からお見舞い申し上げます。
危機管理の対応は、現場の状況を直視したオペレーションが重要であり、被災直後の状況がはっきりしない中でも、初動体制をしっかりと立ち上げ、情報共有を行いながら対策を講じていくことが大切です。私は、「人命第一で。対策は前広に幅広に。」という基本方針で関係機関に対応を要請し、自衛隊、消防、警察、海上保安庁などにおいては、災害発生直後から迅速に実動部隊を展開いただきました。また、熊本県などの自治体には、ヘリコプターの出動による被害状況の把握などに協力いただきました。さらには、内閣府、国土交通省、厚生労働省などの国の機関、建設業協会などの団体をはじめ、人命第一の初動オペレーションにご支援いただいた関係機関に感謝申し上げます。
今回の応急対応を振り返ると、27日の時点で、翌日にかけて大雨による災害発生が危惧されたことから、21時55分に防災監である副知事をトップに災害警戒本部を設置して警戒態勢に入りました。28日早朝の段階では、県内の多くの河川で氾濫危険水位に達しており、家屋の浸水などの被害報告も入ってきておりました。一方で、被害の全容については、市町でも把握できないでいたことに加えて、悪天候のためヘリコプターによる上空からの確認も困難な状況でした。そうした中、河川の氾濫で集落が孤立する恐れがあるとの情報を覚知したため、被害の詳細は不明な状況ではありましたが、人命を第一に考え、8時4分に私から自衛隊に対し災害派遣要請を行いました。8時30分には知事をトップにした災害対策本部を設置し、あわせて、10時15分に記者会見を開き、直接、私から不要不急の外出は控え「命を守る行動」をとっていただくよう呼びかけました。午後になってヘリコプターの飛行が可能になり、送られてくる映像などから、極めて広範囲に家屋が浸水している武雄市、大町町に対応を重点化すべきと判断し、現場の状況に応じて実動部隊を展開するため武雄総合庁舎に現地対策本部を立ち上げ、防災監をトップに被害の把握とそれに応じたオペレーションに全力をあげました。現地対策本部では、浸水した家屋に人が残っていないかを確認するという方針を決定し、地元消防団に加え、自衛隊、消防、警察の部隊間調整を行い、一軒一軒をボートで回って住民の安否確認を行うローラー作戦を実施しました。大町町では、工場から流出した大量の油が、周辺の浸水した宅地や農地に流れ出すという特殊な事象となりました。その地区にある順天堂病院では1階部分が浸水し、病院及び併設する老人保健施設には入院患者や入所者など約200人がおられました。その多くは他の場所へ移送することがリスクを伴うということで、既に行っていた垂直避難を継続し、2階と3階で安全を確保しながら病院内で医療提供を続けることとなりました。病院への更なる浸水を防ぐため、建物の周囲に土のうを積むこととし、建設業協会及び自衛隊の夜を徹した作業により、翌朝までに完了することができました。また、29日からは、油を極力有明海に出すことなく、宅地や農地の浸水被害を早期に解消する排水作業を行うという難しいオペレーションに着手しました。発生から本日まで14日間にわたり自衛隊をはじめとする様々な関係機関の支援によって、これまでに浸水状態は解消しており、現地では、本日9時から緊急対策の最終作業及び確認を行っているところです。自衛隊においては、災害派遣要請に迅速に対応いただき、様々な場面で被災者の支えとなっていただいております。人命救助や油の除去をはじめ、避難所での給食支援やお風呂の設置、災害廃棄物の除去、浸水した道路の消毒といった防疫活動など、昼夜を問わず活動していただく自衛隊の姿は頼もしく、厳しい状況の中でも、県民の皆様に安心感を与えてくれたと感じています。
私は、危機管理の要諦として、災害はどのような状況・形態で発生するのか分からないため、そのための対応マニュアルはあくまでも一つのモデルであり、現場で起きていることに真摯に向き合い、必要なオペレーションを行っていくことが重要だと痛切に感じています。今回の災害では、大町町において、浸水だけでなく油の流出や、ぼた山の斜面崩落などが発生したことから、役場に現地対策本部を立ち上げ、派遣した総務部長をトップに、町と協力して住民避難や斜面崩落現場などの対応に当たってまいりました。あわせて、流出した油の回収という難しいオペレーションについては、これに特化した対応が必要と判断し、県民環境部長をはじめ多くの県職員を現地へ派遣し対応に全力をあげております。このように、応急対応においては、現場に責任者を派遣し、現場を第一に関係機関と連携して現場で判断できる体制を作り上げてまいりました。
災害対策の局面は、応急対応から復旧・復興へと徐々に移っています。避難所支援や生活再建支援、中小企業支援、災害廃棄物の処理など、ミッションを明確にし、それぞれの責任者に部局長を指名して対応に当たらせるなど、被災者の生活が一日も早く元の状態に戻れるよう、被災者にしっかりと寄り添った支援に取り組んでいます。具体的には、長期化する避難所生活については、生活ニーズの聞き取り、保健師や栄養士による健康管理や精神科医師による心のケアを行い、被災者の方々にきめ細やかに対応しています。また、被災した家屋の清掃などへのボランティア活動については、各地域の社会福祉協議会が窓口となって、既に県内外から多くの方にご参加いただいております。このほか、様々なCSOも被災地に入り、被災した方々が日常を取り戻すための多様な支援活動を展開していただき感謝しております。
県では、住宅被害の数が国の基準を上回る武雄市と大町町に対し、住宅再建を支援する被災者生活再建支援法の適用を決定し、住宅が全壊か大規模半壊と認められた世帯に、被害の程度に応じて50万円から300万円の支援金が支給されることとなりました。また、支援法が適用されない市町についても、本年2月に国の制度を補完するため創設した本県独自の「被災者生活再建支援制度」を適用することとしており、市町単位での、住宅の全壊や大規模半壊が1世帯であっても佐賀県はしっかりと支援してまいります。
農業分野では、農地をはじめ、農道、水路などの生産基盤の復旧工事を進めるとともに、ハウスに流入した土砂の除去や農業用施設、機械の復旧にかかる経費を補助するなど、被災した農家が前を向いて営農を継続できるよう支援してまいります。また、油の流出で影響をうけたエリアは県土の0.03%に過ぎず、そのエリアの農作物が出荷されることはありません。佐賀県産の農作物は安全・安心で素晴らしいものだということをしっかりと伝えてまいります。
次に、中小企業者や小規模企業者に対しては、被災した事業所を一軒一軒訪問し、個別の状況をしっかり把握しながら、まず、災害復旧に必要な設備資金や運転資金を低利で融資する「豪雨災害復旧資金」を創設し、至急の資金需要に対応できる体制を整えました。また、事業活動に必要な設備の更新にかかる経費を補助するとともに、被害の大きかった地域の商工会議所や商工会に臨時の職員を配置し、事業者への支援を強化するほか、国とも連携しながら、被災した事業者に寄り添った支援を行い、一日も早い事業再開につながるよう後押ししてまいります。また、今回の豪雨災害に伴ってホテルや旅館では宿泊のキャンセルが相次ぐなどの影響を受けていますが、武雄温泉や嬉野温泉では大雨被害で休業している宿はなく通常通り営業しています。こうした県内の観光産業を支援するため、旅行会社を通じた宿泊割引キャンペーンやメディアを通じた観光情報の発信を行い、本県への旅行需要の早急な回復を図ってまいります。
さらには、公共土木施設の着実な復旧などを含め、この9月議会においては、緊急に対応が必要となる災害関係の予算を提案しています。
今回の豪雨災害については、被災地を視察された山本防災担当大臣や原田環境大臣に、さらには官邸において菅官房長官に、また、関係省庁に対し、激甚災害として早期に指定することなどを求める緊急要望を行ってまいりました。国からは、現時点で、武雄市、多久市、大町町を指定する方針が示されています。指定により、道路や農地の復旧といった公共事業への国の補助率が引き上げられるなど財政支援が手厚くなることから、復旧、復興を加速させてまいります。あわせて、佐賀は元気だということをしっかりと発信し、魅力あふれる佐賀を、多くの方が楽しんでいただくことで、被災した方々が希望を持って前を向いて歩みを進めていけるよう、やるべきことは全てやるという強い想いで復旧、復興に全力で取り組んでまいります。
応急対応に率先して当たっていただいた関係機関をはじめ、被災者の避難生活や生活再建に力を貸していただいているCSOやボランティアの方々、被災地に義援金を寄せていただいた方々など、多くの皆様から様々な支援をいただきました。佐賀県は、災害対策本部会議を公開で行っています。報道機関の皆様には、会議でのやり取りをつぶさに見ていただき、そこでの情報を的確かつタイムリーに報道していただきました。今回の災害への対応に当たり、ご支援いただいた全ての方々に心から感謝申し上げます。まだまだ復旧復興は続きます。引き続き、ご支援をよろしくお願いいたします。
次に、第43回全国高等学校総合文化祭「2019さが総文」について申し上げます。
この夏、秋篠宮皇嗣同妃両殿下の御臨席を賜り、全国の約2万人の高校生が参加して「2019さが総文」を開催し、高校生の情熱がひとつになって文化の風を佐賀の地から巻き起こしました。県内の高校生たちは、文化芸術の祭典としてだけでなく、佐賀の魅力を全国の高校生に伝える大会として創り上げ、ふるさとの素晴らしさを再認識する機会にしたいと開催した郷土研究部門では、保全活動に取り組む虹の松原や世界遺産・三重津海軍所跡などを案内し、郷土芸能部門では、地域で受け継がれる和太鼓や舞を披露するなど、ふるさとの歴史や伝統、人々の想いを感じ、未来に向かって何をなすべきかを考える機会になりました。肥前さが幕末維新博覧会で芽生え、さが総文が引き継いだ佐賀への誇りと「志」は、佐賀が飛躍する上で土台となるものであり、「志」を今に活かし未来につなげていきたいという想いを込めたメモリアルプレートを「こころざしのもり」に設置しました。さが総文での様々な体験や交流を通じて高校生が抱いた佐賀への誇りと「志」は、世界に、そして未来に向けて羽ばたいていく大きな力になります。ヒトとモノが世界を行き交い、佐賀が世界と直接つながる時代だからこそ、若い人たちが、自分たちが受け継ぎ、磨き上げてきた文化と、それを育んできた地域を大切にし、さらに磨き上げながら未来を切り拓いていってくれることを期待しています。
続きまして、当面の諸課題への対処方針について申し上げます。
まず、九州新幹線西九州ルートについては、去る8月5日、与党検討委員会において、これまで在来線を利用することで関係者と合意している新鳥栖-武雄温泉間について、「フル規格により整備することが適当と判断する」、「今後、関係者である国土交通省・佐賀県・長崎県・JR九州の間で協議を行い、検討を進めていくべきである」などとした基本方針が示されました。これまで、与党検討委員会の求めに応じ3回のヒアリングに出席し、「フル規格での整備は受け入れられないこと」、「短期間のうちに方向性を示すような簡単な問題ではないこと」などの意見を申し述べてきましたが、新鳥栖-武雄温泉間は全て佐賀県内の区間であるにもかかわらず、佐賀県の意見には触れることなく、これまで求めたことも、検討したこともないフル規格での整備を一方的に押し付けるような基本方針が示されたことは極めて遺憾と言わざるを得ません。
そもそも西九州ルートは、新鳥栖-武雄温泉間は在来線を利用することを大前提として整備が進められてきたもので、佐賀県は、鹿島市や太良町などの長崎本線沿線地域の皆様の辛い想いの上に、西九州全体の地域振興も考慮し、ギリギリの判断で長崎本線肥前山口-諫早間の上下分離に合意し、多額の費用負担を伴う武雄温泉-長崎間の新線整備に同意したものです。仮に、新鳥栖-武雄温泉間が、関係者で合意している在来線利用ではなくフル規格で整備された場合、建設費に対する莫大な財政負担によって、佐賀県は、少なくとも20年以上は厳しい財政運営を余儀なくされ、佐賀県の未来のために必要な施策に多大な影響が避けられません。それだけでなく、本県にとって大事な在来線のあり方、ルート、地域振興など様々な難しい問題が複合的に横たわっています。新鳥栖-武雄温泉間のあり方については、これまで佐賀県は、在来線を利用することになるスーパー特急方式やフリーゲージトレイン方式、リレー方式については、県議会などでの議論を重ねた上での意思決定を経て合意していますが、ミニ新幹線やフル規格のように、これまでの合意にないものも含めた議論を求められるのであれば、短期間で方向性を求めるような簡単な問題ではなく、ゼロベースから時間をかけてしっかり議論することが必要です。このことは、県民の皆様一人一人に佐賀県の未来を見据えてしっかりと考えていただきたい大変重要な問題です。佐賀県が将来にわたって輝き続けていけるよう、今後も、県議会の皆様、県民の皆様と共に、本県にとって何が望ましい姿なのかをしっかりと考えてまいります。西九州ルートについては、平成28年の六者合意により、令和4年度に武雄温泉駅での対面乗換方式により開業することを関係者で合意しており、令和4年度の開業による効果を最大限生み出すよう努力してまいります。また、開業により特急列車の本数が大幅に減ることになる長崎本線沿線地域の振興に沿線市町と一緒になって取り組んでまいります。
次に、佐賀空港の自衛隊使用要請について申し上げます。
去る5月24日に、私が有明海漁協に赴き、改めて公害防止協定覚書付属資料の変更について協議の申し入れを行いました。その後、漁協の組合長や15支所の運営委員長、支所長と今後の進め方などについて意見交換を行い、その中で、事業主体である防衛省から計画内容について説明を聴き、漁協内で議論を深めていただいてはどうかとの提案をさせていただきました。これを受け、漁協としては、15支所の運営委員長などで構成する委員会において防衛省から説明を聴くこととされ、8月9日に防衛省による説明会が開催されました。説明会では、防衛省から、今回の計画の概要をはじめ、県との合意事項である有明海漁業の振興のための基金の設置や、環境保全と補償に関する協議会の設置、さらには多くの漁業者が懸念されている排水対策や万一の場合の補償などについて説明がなされました。その上で、防衛省からは、漁協の支所ごとに説明する機会を設けていただきたいとの要請がなされたところであり、県としても、事業主体である防衛省が実施する説明会の開催に向け取り組んでまいります。
次に、有明海の再生について申し上げます。
諫早湾干拓関連訴訟については、長崎1次開門請求訴訟及び開門差止請求訴訟において、6月に最高裁が上告を棄却し、開門しない決定をしました。宝の海である有明海で漁業の伝統を引き継いできた漁業者の皆様のことを思うと、やるせない気持ちになります。一方で、開門を命じた平成22年福岡高裁確定判決の無効化を国が求めた請求異議訴訟の上告審については、最高裁での口頭弁論が7月に開かれ、判決が9月13日に言い渡される予定です。漁業権の消滅という形式論で確定判決を無効化した昨年7月の福岡高裁判決が見直されるのか強い関心を持っており、確定判決が持つ既判力の重みについて最高裁がどのような判断をするのか注視してまいります。開門調査の実現は極めて厳しい状況が続いていますが、有明海の再生のためには開門調査を含む環境変化の原因究明が必要という想いは変わりません。今後も、有明海の再生という本来の目的を見据え対応してまいります。
水産資源の回復については、サルボウやウミタケの生息数が増加し、店頭で見かける機会も増えているものの、漁業者の誇りであるタイラギについては、7年連続で休漁となる厳しい状況となっています。このため、県有明水産振興センターにおいて、これまで難しいとされていたタイラギの種苗生産技術の開発に昨年度から着手しています。昨年度はできなかった稚貝の大きさまで成長させることに今年度は成功した一方で、海底への移植が行える大きさにまで育てるには課題が残っており、今後もこうしたチャレンジを続けながら一日も早い漁獲の再開を目指してまいります。
宝の海である有明海の再生は、国や県、市町、漁業者など有明海に関わるもの皆で取り組む課題であり、今後も訴訟の状況や国の動向を注視し、関係者と意見交換をしながら有明海の再生に向けて全力で取り組んでまいります。
次に、原子力発電について申し上げます。
玄海原子力発電所3、4号機については、約1年毎に定期検査が行われており、3号機は、5月から8月にかけて検査を実施し、現在は通常運転に復帰しています。4号機は、8月16日から検査のため運転を停止している状況です。また、平成29年12月に九州電力から県に安全協定に基づく事前了解願いが提出されていた「特定重大事故等対処施設」の設置は、航空機によるテロなどに備え法令で義務付けられた原子力発電所の安全性、信頼性を向上させるためのものです。そのような施設であっても、県としては丁寧なプロセスを経て事前了解願いに対する判断を行うべきと考え、佐賀県原子力安全専門部会を開催するとともに、原子力規制庁に直接聞き取りを行うなどの確認作業を行ってまいりました。その結果、8月9日に九州電力に対し事前了解の回答をいたしました。事前了解に当たっては、九州電力に対し、
・施設設置については、適切な施工管理を行うこと。
・常に緊張感を持って慎重の上にも慎重に安全対策に取り組むこと。
を強く要請いたしました。また、1号機に続き既に廃止が決定している2号機について、9月3日、九州電力は、廃止措置計画を原子力規制庁に申請し、同日、県に対して事前了解願いを提出しました。今後、国の審査が行われることから、その状況をしっかり注視してまいります。私は、原子力発電への依存度を可能な限り低減し、原子力発電に頼らない再生可能エネルギーを中心とした社会が実現できれば素晴らしいとの考えをかねてから表明しており、1号機、2号機の廃炉は、その考えと方向性を同じくするものです。玄海原子力発電所とは、これからも長い年月にわたり関わり続けなければなりません。今後とも、県も含め全ての関係者の中に気の緩みが生じることがないよう万全を期してまいります。
再生可能エネルギーを中心とした社会の実現に向けては、平成30年3月に策定した「佐賀県再生可能エネルギー等先進県実現化構想」に基づく取組を進めています。今後、県と佐賀大学を中心に産学官が連携し、「再生可能エネルギー等イノベーション共創プラットフォーム」を立ち上げ、この組織を中心に、地中熱の利用など新たな技術や製品、サービスにつながる研究開発や市場開拓を積極的に推進してまいります。
また、唐津港に隣接する九州電力旧唐津発電所跡については、九州電力において、燃料タンクは5月に撤去を完了しており、高さ180mの煙突2基については、来月から撤去に着手し、令和2年度中に撤去を完了する予定とされています。その他の施設の取扱いについては、引き続き、県、唐津市及び九州電力の間で協議を進めてまいります。
次に、国際経済連携協定について申し上げます。
TPP(環太平洋パートナーシップ)協定や日EU経済連携協定(EPA)の発効から半年以上が経過しました。協定の発効以降、牛肉や豚肉などの畜産物の輸入量は増加傾向にあり、国内の市場価格への影響を不安視する声も聞かれることから、今後も「佐賀県TPP・日欧EPA等経済連携協定対策本部会議」などを通じて現場の実態把握に努め、関係者の意見を聴きながら農林水産業をはじめとした本県の産業が持続的に発展していけるようしっかりと取り組んでまいります。また、先月、政府間で主要項目について意見の一致が見られた日米貿易交渉については、農産品の関税削減は過去の経済連携協定の範囲内とされました。一方、自動車の関税撤廃は不透明な状況にあり、具体的な内容は明らかにされていません。9月末の貿易協定の署名に向けた交渉の行方を注視してまいります。
次に、城原川ダム事業について申し上げます。
城原川ダム事業については、国の来年度概算要求において前年度を上回る約9億円が盛り込まれており、ダム本体や付替え道路などの調査・設計、水没地域の補償に必要となる用地調査など、ダム建設の具体化に向けた事業の更なる進捗を期待しています。県としては、地域の治水対策の推進のため、一日も早いダム完成を目指して、より一層の事業推進と必要な予算の確保を引き続き国に働き掛けてまいります。あわせて、将来の生活が見通せないという水没予定地域の皆様の長年にわたる不安にしっかりと寄り添い、住民お一人お一人が将来を思い描いて前に進んでいけるよう、国や神埼市と連携し、きめ細やかな支援を心掛けてまいります。
次に、国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会について申し上げます。
大会のメイン会場となるSAGAサンライズパークの整備については、先月、国際大会仕様の水泳場SAGAアクアの新築工事に着手いたしました。また、ボクシング場・フェンシング場が完成し、ボクシングの具志堅用高氏や内山高志氏、フェンシングの太田雄貴氏を招いてオープニングセレモニーを開催しました。国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会、さらにはその先を見据えて、県民の夢や感動を生み出すスポーツの一大拠点の形成を目指してまいります。
全国高等学校総合体育大会では、柔道の60kg級で佐賀工業高校の近藤隼斗選手が2連覇を遂げ、66kg級で佐賀商業高校の田中龍馬選手、レスリング60kg級で鳥栖工業高校の小野正之助選手、陸上の男子5000m競歩で鳥栖工業高校の宮原空哉選手が優勝を果たしています。
佐賀ゆかりの選手の世界での活躍も続いています。セーリング470級では、昨年日本で開催されたワールドカップで日本勢男子として初優勝し、SSPトップアスリートとして支援している唐津西高校出身の岡田奎樹選手が、東京オリンピック選考レースで好成績を収め、本県関係者での第一号の代表決定となりました。県では、このような佐賀ゆかりのトップアスリートの育成と、それを通じたスポーツ文化の裾野の拡大を図るためSAGAスポーツピラミッド構想、通称SSP構想に取り組んでいます。アスリートの育成や就職支援、練習環境の充実を進めるこの取組が好循環を生み出していくには、スポーツ関係者だけでなく、これまでスポーツと関わりがなかった企業・団体にも支えていただく基盤を作っていく必要があります。この取組に力を貸していただくため、先月には、世界のサッカー界の至宝で、サガン鳥栖を最後に現役を引退したフェルナンド・トーレス氏にSSPアンバサダーに就任いただきました。今後、地域を基盤としたスポーツの振興などにアドバイスを頂きたいと考えております。
県では、東京オリンピック・パラリンピックを機にキャンプ誘致に取り組んでおり、本年はこれまでに4か国4競技の事前キャンプが実現しました。今後も、東京オリンピックに出場するフィンランド代表選手団など7か国最大19競技の事前キャンプが予定されており、県民が世界クラスのアスリートを身近に感じ、子供たちが夢や志を抱くきっかけになることを期待しています。
次に、平成30年2月に陸上自衛隊のAH-64D戦闘ヘリコプターが神埼市の住宅に墜落した事故については、8月21日、防衛省から事故原因及び再発防止策の取りまとめ状況について事務レベルで説明がありました。その内容に不合理な点がないか確認した上で、防衛省から私に報告がなされた際には、県民の安全・安心を第一に考え、二度とこのような事故が起きることがないよう万全の安全対策を求めてまいります。
続きまして、最近の県政の主な動きについて御説明申し上げます。
まず、九州佐賀国際空港については、春秋航空日本の成田便が8月1日に就航5周年を迎えました。成田便は、10代から30代の若い世代の利用が全体の半数を占め、帰省や知人を訪ねる際など日常の移動手段としての役割を果たしています。引き続き、大学生などをターゲットにした路線のPRに力を入れ、首都圏のメディアや旅行会社などとの関係を深めながら、更なる利用促進に向けて取り組んでまいります。また、全日空の東京便が、8月9日から18日までの10日間、期間限定で夜間の時間帯に1往復増便されました。羽田空港を、福岡空港便より遅い時間帯に出発でき、首都圏での滞在時間をより長く確保できたことで、新たな需要開拓の可能性が広がると考えており、この成果を通年での増便に向けたステップにしてまいります。
国際線については、最近の日韓関係や韓国経済の低迷により8月19日からソウル便とプサン便が運休しています。これまでの利用は好調だっただけに、運休は大変残念であり、今後の日韓情勢などを注視し、状況が改善した際には、培ってきた航空会社との絆を強みとして早期に運航が再開されるよう取り組んでまいります。県内のホテルや旅館では、今回の豪雨を受け宿泊のキャンセルが相次いだことに加え、韓国からの宿泊客が減少し、影響が長期化することを懸念しています。県内に宿泊する訪日外国人客約40万人のうち韓国からが約半数を占める現状において、誘客先の多角化を進めるマルチインバウンド対策を進め、様々な状況の変化に対応できるインバウンド観光の拠点として発展していくことの重要さを強く感じています。このため、佐賀と空路で結ばれている中国、台湾をはじめ、九州にとって有望な市場であるタイ、シンガポールをターゲットに、旅行会社と新たなタイアップ商品を造成するなどの観光プロモーションを実施することとし、必要な予算を今議会に提案しています。
次に、男女共同参画・女性の活躍推進について申し上げます。
男性も女性も、仕事、家庭、地域社会などあらゆる分野で意欲に応じて活躍できる社会を実現するためには、ワークライフバランスが大切です。このため、職場において、部下のキャリアと人生を応援しながら組織の業績も高めていく「イクボス」をテーマにしたセミナーを開催し、仕事と私生活を両立できる環境づくりの大切さを考えていただきました。また、男性の家事・育児への参画も大切なことから、夫婦で家事・育児を楽しむコツをまとめた「佐賀県版父子手帳」を、妻が妊娠期にある男性に配布するなど、夫婦が共に家事・育児を担っていくという意識啓発にも取り組んでいます。男性も女性も、生活を楽しみ、個性と能力を発揮できる多様性のある佐賀県づくりに取り組んでまいります。
次に、歩くライフスタイルへの転換を促す取組について申し上げます。
これまで、自動車に頼りすぎているライフスタイルを、自転車や公共交通機関などを利用し歩くことへ転換していくことで、自らが健康になることに加えて、交流が盛んで賑わいのある地域にしていきたいと考えています。佐賀県では、路線バスに乗ったことがない子供たちが多いという状況にあります。このため、公共交通機関の利用に親しんでもらおうと、夏休み中の子供たちに路線バスを体験してもらうスタンプラリーを実施しました。また、佐賀を楽しく歩くきっかけにしてもらうため、スマートフォンを使って佐賀の偉人の功績を学びながら、まちなかを歩く「さが偉人ラリー」を開催しています。こうした歩く習慣化につなげる取組を通じて、健康づくりにとどまらず、歩いて楽しめる魅力ある地域づくりにつなげてまいります。
次に、稼げる農業の推進について申し上げます。
農業の新たな担い手を育成しているトレーニングファームで初めての修了式が6月に行われました。研修を終えたのは、県内4か所に設置した施設のうち、武雄市で環境制御技術を使ったキュウリの栽培技術などを学んだ第1期生4名です。こうした研修を受けた方々が、習得した技術を活かして、今後、稼げる農業経営者として佐賀の農業をリードしていただくことを期待しています。
昨年秋にデビューした「いちごさん」については、従来の「さがほのか」と比べ、販売単価や収量が上回るなど市場の評価と生産者の期待が高まっています。2年目を迎え、栽培面積はこれまでの3倍以上となる約60ヘクタールまで拡大する予定であり、栽培技術を一層高めることで、いちごのトップブランドへと育ててまいります。
また、佐賀牛の生産拡大に向け、肥育素牛の県内自給率を高め「佐賀生まれ、佐賀育ちの佐賀牛」を増やしていきたいと考えています。主要産地である唐津地域において、母牛の種付けから分娩までの繁殖を農家に代わって実施するブリーディングステーションを整備することを目指します。この施設は、担い手の研修機能も備えた画期的なもので、現在、JAと一緒になって整備構想を検討しており、日本一の生産拠点の実現に向け取組を進めてまいります。
また、今回の豪雨災害を受け、山を大事にしなければという想いを改めて強くしています。山は平野部の暮らしを支え、海への恩恵をもたらす源流であることから、森・川・海はひとつとして、人が豊かな自然環境を未来につなぐ「森川海人っプロジェクト」に、なお一層しっかりと取り組んでまいります。
次に、幹線道路ネットワークの整備について申し上げます。有明海沿岸道路については、国が整備を進めている大川佐賀道路の大野島インターから(仮称)諸富インター間について、令和4年度に開通する見通しが示されました。この区間の開通により、有明海沿岸道路で佐賀県と福岡県が初めて繋がることになり、九州佐賀国際空港と大牟田市の間が40分程度で結ばれるなど福岡県南西部との交流の更なる促進が期待されます。県においては、引き続き六角川大橋を含む芦刈南インターから福富インター間とともに、佐賀唐津道路と接続するエリア「Tゾーン」を重点的に整備してまいります。
続きまして、提案事項について御説明申し上げます。
今回の補正予算案の編成に当たりましては、予定していた補正予算に加え、「令和元年佐賀豪雨災害」に緊急に対応するため、甲第41号議案・令和元年度佐賀県一般会計補正予算(第3号)で約77億3,200万円、甲第42号議案・令和元年度佐賀県災害救助基金特別会計補正予算(第1号)で1億3,000万円を追加して計上することといたしました。今後対応が必要となるものについては、11月以降の補正を検討してまいります。
この結果、補正予算案の総額は、歳入歳出とも、それぞれ、
一般会計 約125億7,900万円
特別会計 減額 約5億2,500万円
となり、これを既定の予算額と合わせますと、本年度の予算総額は、
一般会計 約4,681億9,200万円
特別会計 約2,004億1,900万円
となっております。
次に、先に申し上げた災害関係以外の予算案の主な内容について申し上げます。
まず、県民の命を守る取組についてであります。
近年、国内では、登下校中の子どもが犯罪に巻き込まれ、尊い命が奪われるという痛ましい事件が発生しており、県内でも、声かけ事案が平成26年の61件から平成30年は140件にまで増加しています。子供たちの安全を、防犯ボランティアをはじめとする地域の皆さまが、通学路の安全点検や登下校時の見守りなどを通じて地域ぐるみで守っていただいていることに心から感謝申し上げます。一方で、県内の防犯ボランティアは、メンバーが高齢化や固定化し、人数も減少する傾向にあります。こうした中、子どもたちを守るため、防犯ボランティアなどの「人の目」を補完するものとして、通学路へ防犯カメラを設置する取り組みを支援することといたしました。この支援制度の活用を市町を通じて呼びかけ、子供たちが安心して通学できる環境を整えてまいります。
また、交通安全・事故防止対策については、県民への交通安全の意識改革を促す「SAGA BLUE PROJECT」を展開するとともに、県、市町、警察、交通安全指導員など多くの関係者が総力を挙げて取り組んだ結果、県内の人身交通事故発生件数は減少傾向にあります。しかしながら、高齢運転者による事故が後を絶たないため、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故を防止する装置を体験していただくことなどを通じ、高齢者の事故防止に努めてまいります。
次に、予算外議案といたしましては、条例議案として、「佐賀県会計年度任用職員の報酬等に関する条例(案)」など4件、条例外議案として「請負契約について」など11件となっています。それぞれの議案については、提案理由を記載していますので説明を省略させていただきます。
最後になりますが、この夏開催した「2019さが総文」の運営を担った生徒実行委員会の高校生たちは、地域を磨き、文化を育んできた人々の「手」に想いを寄せながら大会を創り上げました。郷土芸能部門の生徒は、「郷土の誇りは、この『手』で守り、未来へつなぐ!」という想いを活動に込め、器楽・管弦楽部門の生徒は、演奏は「見えない『手』のつながりが大事」と話し音を奏でていました。こうした手と手のつながりによって地域の魅力や文化は守られ、新しい力が加わることでイノベーションが起こり、新たな価値が生まれていくと考えています。だからこそ私は、人と人がつながる場を大切にしています。その一つである「勝手にプレゼンFES」は、佐賀を応援する想いを持ったデザイナーやクリエイターたちが始めた企画で、そうした方々が佐賀に集まり、佐賀を良くしていくためのアイディアが生まれています。また、ミシュランガイド福岡・佐賀・長崎2019特別版が出版された際には、掲載された県内の料理人だけでなく、アスパラガスやチーズなど選ばれる食材づくりを追い求めている生産者、新しい器づくりに挑戦している窯元やデザイナー、若い感性で佐賀の魅力を発信し続けている方々などを招いた本県独自の交流会を開催しました。参加をきっかけに、唐津の料理人が太良のアスパラ農家を訪ねるといったつながりも生まれています。今年度から取り組んでいる食材と器と料理人が織りなす「SAGAマリアージュ」の要となるのは、まさにこうした新たな出会いであり、来年3月に、日本で初めて武雄市で開催する「アジアベストレストラン50」では、アジア圏のトップシェフと佐賀の食材や有田焼などがつながることで新たな動きを生み出そうとしています。
また、今回の豪雨の被災地においても、生活再建に向けた一歩を踏み出そうとする住民の方々を、親戚、友人、地域や消防団などのつながりが支えています。そして、数多くのボランティアが、「職場があってお世話になっている地域だから」、「いつもソフトボールでグラウンドを借りているから」など様々な縁で駆けつけ、近隣の高校の女子生徒は「学校の中にボランティアに行こうという雰囲気がある」と友達3人で浸水した家屋の片付けを手伝っていました。佐賀という地域は、元来、人のつながりを大切にする風土があります。こうした人のつながりは、被災された方が前を向くための大きな力になっていると私は信じています。そういう佐賀ならではの強みを活かして、人が支え合うことで災害を乗り越えるとともに、未来に向けた歩みを止めることなく、人と人のつながりから様々な分野での自発的な動きを生み出し、多様性にあふれる力強い佐賀県を創り出してまいります。
以上、今回提案いたしました議案などについて御説明申し上げました。
よろしく御審議いただきますようお願い申し上げます。
ここで、いま一度、今回の豪雨災害で佐賀を応援していただいている全ての皆さまに心から感謝申し上げます。
被災地の皆様、県民の皆様、力を合わせて支え合っていきましょう。
知事提案事項説明要旨(10月1日)
本日、追加提案いたしました乙第80号議案「教育長の任命について」御説明申し上げます。
この議案は、白水敏光氏が本年10月6日をもって教育長を辞職することに伴い、落合裕二氏を教育長に任命することに、県議会の同意をお願いするものです。
白水敏光氏は、平成29年4月に、教員出身として初めての教育長に就任され、現場での経験を活かして様々な改革に取り組むとともに、「維新博」の志を引き継いだ「さが総文」を成功に導いていただきました。こうした取組を通じて本県の教育にリーダーシップを発揮していただいたことに、この場をお借りして感謝申し上げます。
落合裕二氏は、筑波大学を卒業後、昭和59年に入庁、唐津市の商工観光部長として出向されたほか、政策部長や県民環境部長を歴任し、県政全般の施策の推進をはじめ、「佐賀県教育大綱」の策定にも携わりました。また、地域においては、サッカーの指導を通じた子供たちの育成や唐津くんちの曳山取締会の一員としての地域文化の継承など幅広く活動されています。こうした見識、人柄、これまでの行政経験などから、教育長として適任と考えております。
以上、今回提案いたしました議案について御説明申し上げました。よろしくお願い申し上げます。