令和5年6月定例県議会の開会に当たり、最近の動き、提案事項などについて御説明申し上げます。
はじめに、全国的に注目を集めている吉野ヶ里遺跡の「謎のエリア」における発掘調査の状況について申し上げます。
我が国最大級の弥生時代環濠集落跡である吉野ヶ里遺跡の中で、謎のエリアと呼ばれてきた日吉神社の跡地において、令和4年5月から発掘調査を進めてまいりました。吉野ヶ里遺跡では、最盛期とされる邪馬台国時代の有力者の墓がこれまで見つかっておらず、最大の謎とされてきました。そうした中、今年4月25日に、弥生時代後期の邪馬台国時代につくられたと考えられる「石棺墓」を、見晴らしの良い丘陵頂上部で発見いたしました。
6月5日には、約70名もの報道陣が現地に詰めかける中、石棺墓の石蓋を開け、内部を覆っていた土を慎重かつ丁寧に掘り下げながら、これまで調査を進めてまいりました。
そして、昨日、石棺の底まで掘り下げたところ、これまでに石蓋の裏などの石棺内部から複数確認された赤色顔料が、新たに底面からも確認され、石棺の内側全体が赤く塗られていたことが分かりました。棺を据え置くために掘られた墓坑が一般的な石棺墓より際立って大きく、しかも単独での埋葬であることや、「×」などの線刻と呼ばれる多数の印が見られることなどから、この石棺墓が有力者の墓であることが裏付けられたと考えています。
今回の発掘では、銅鏡や鉄剣等の副葬品や人骨は発見されませんでした。被葬者を横たえる石棺墓の底の部分は土のままであったため、長い年月の間に、人骨は分解されてしまったものと考えています。また、絹織物や貝の腕輪等の有機質のものも入っていたとすれば、人骨同様に分解されてしまったものと考えています。銅鏡等の副葬品や人骨が発見されていれば、被葬者の身分や社会的地位、埋葬されていた時代をより正確に確定できていたかと思うと残念に思います。
しかし、今回の発見と調査は、私達を古代ロマンに駆り立ててくれました。特に全国的にも例がない、石棺の石蓋に刻まれていた多数の線刻にはどういった意味があるのか、また石棺の幅が36センチと狭いことから、被葬者は女性や小柄な人物であると想像されますが、そのような中で100キロを超える石蓋で封じ込めたということはどういうことなのかなど、随時リアルに全国の皆様と高揚感を共有できたことを大変嬉しく思います。これから土壌や赤色顔料等の分析を行うこととしており、そこから分かってくることもあるのではないかと思います。
「謎のエリア」約4,000平方メートルには、手つかずの未調査部分が約4割残っており、丘陵の頂上部など期待が高い場所も含まれています。今年度中に調査を実施することとしており、新たな発見にも期待しています。
なお、今回発見された石棺墓を、6月24日と25日の2日間、発掘現場において特別公開することとしました。是非、皆様に世紀の発見である石棺墓を御覧いただき、約1800年前の邪馬台国時代に想いを馳せていただきたいと思います。
次に、世界的企業による県営産業用地の取得について申し上げます。
この度、半導体の製造に必要不可欠な材料であるシリコンウェハーの世界的なメーカーであるSUMCOから、吉野ヶ里町内で整備中の県営産業用地22ヘクタール全てを購入したいとの申し出がありました。
シリコンウェハーの世界シェア第2位、なかでも最先端ロジック分野においては首位を誇る企業が、伊万里市など県内3つの拠点に加えて、再度佐賀の地を選んでいただいたことは大変嬉しいことだと考えています。半導体サプライチェーンの川上から川下まで関連企業が立地する佐賀県の強みを活かして、ともに成長してまいります。
次に、SAGAサンライズパークについて申し上げます。
SAGAサンライズパークは、「SAGA2024」を契機として、そしてむしろその先の佐賀の未来を見据え、約5年半という年月を経て、5月13日に、ついにグランドオープンいたしました。中核となるSAGAアリーナは、観客席が国内最大35度の急勾配でせり上がったコロシアム型で、どの席からでも臨場感あふれるパフォーマンスを体感できます。また、センターと壁面の大型ビジョン、そしてアリーナをぐるりと一周するリボンビジョンの3つを全国で唯一装備し、さらには最新鋭のデジタル音響システムが一体となって熱狂空間を創出しており、意欲的で野心的な、まさに新時代のエンターテインメントアリーナです。世界的な大会が開催可能な「SAGAアクア」や「SAGAスタジアム」なども一体となり、ここに集う人たちがそれぞれの形で楽しむことができ、非日常と日常が織りなす多くの感動を生み出すエリアとして誕生いたしました。整備に関わっていただいた全ての皆様に改めて感謝申し上げます。
また、佐賀駅の高架下西側に、新しい商業施設「サガハツ」が4月末にオープンし、連日多くの人が行き交っています。サンライズパーク内においても、開放的な空間にカフェやショップなどが立ち並ぶ「パークテラス」が、アリーナなど各施設の結節点となり、それぞれのスタイルで過ごすことができる空間を創出しています。佐賀駅からサンライズストリートなどが一体となって、このエリアに、県内外から生き生きとした新しい息吹が吹き込まれる可能性を感じています。
また、プロバスケットボールB1昇格をかけたB2プレーオフ初戦が、5月6日から佐賀バルーナーズのホームで開催されることが決まったことを受け、グランドオープンを待たずして、SAGAアリーナで開催することとしました。そして、グランドオープンの日が半年以上前に決まっていた中で、その日にB1昇格をかけた昇格戦が開催されるという信じられない偶然が重なりました。さらには、昇格戦翌週の決勝の相手が西地区2位の長崎ヴェルカに決まったことで、決勝戦もSAGAアリーナでの開催となりました。B2年間優勝をかけた隣県同士の頂上決戦という、まさに奇跡と言うべき舞台が整い、最終戦となった5月21日の試合では、全国におけるB2史上最多の入場者数となる7,532人の大歓声のもと、大熱戦が繰り広げられました。一進一退の中、佐賀バルーナーズは見事勝利を収め、結果的にプレーオフ6試合を全勝で戦い抜き、B2制覇という最高の形で有終の美を飾りました。
プレーオフ6試合を観戦された約31,000人が、国内3か所しかないNBA級アリーナの一つであるSAGAアリーナにおいて、そこでしか味わうことができない一体感を、肌でひしひしと感じられたものと思います。
また、3階のプレミアムフロアでは、ゆったりとした個性的な空間の中で、試合中はもとより、その前後の時間も食事や談笑を楽しまれている方の姿が数多く見られました。世界基準のスポーツホスピタリティの実現に向けた高いポテンシャルを実感するとともに、県民の皆様とともにSAGAアリーナを成長させていきたいという想いが大きく膨らみました。
さらに、SAGAアリーナの整備を機に、バレーボールⅤ1女子「久光スプリングス」の練習拠点が、この6月に神戸市から鳥栖市に移されることとなり、世界基準のトレーニングルームをも備えた「サロンパスアリーナ」が誕生したことも嬉しく思います。
6月10日からは、日本最高峰のアイスショー「プリンスアイスワールド」が開催され、約1万6,500人の観客がトップスケーターの美しいパフォーマンスに魅了されました。そして、そのうち佐賀県民が約8割を占めていたことは、我々にとっても喜びでした。
さらに、明後日の17日からは、いよいよライブ・コンサートのこけら落としとして、B’zのライブが、また来月1日からは人気ガールズグループNiziUのライブが行われます。いずれも全国ツアーのスタートの地として、SAGAアリーナが選ばれました。その後もユーミンのコンサートやディズニー・オン・アイスの開催など、大規模なライブ・コンサートやショーなどが、続々と開催されます。
さらに、7月には日本ペインクリニック学会の全国大会が開催されます。4月18日に開通した「栄光橋」により、SAGAプラザや佐賀市文化会館との回遊性も一気に高まりました。今後も、国際会議や各種学会、展示会などの、より大規模なMICEの開催も目指してまいります。
プロスポーツやライブ・コンサート、MICEによる経済効果を、県内の経済団体をはじめとする民間企業の皆様とともに、県内全域に広げ、それが新しい佐賀のチカラになるよう、今までにない新たな価値を創造するエリアとしてSAGAサンライズパークを育ててまいります。
次に、インバウンド回復の動きについて申し上げます。
九州佐賀国際空港では、4月2日に、約3年ぶりに台北便が再開しました。コロナ禍の前は、近隣の長崎、熊本、大分の各空港の国際線よりも多くの方が利用されていました。しかし、新型コロナの感染拡大の影響で、国際線の全4路線が運休となったことで、外国人観光客の賑やかな声や笑顔がまちなかや観光地から消え、厳しい状況になるとともに、長い間、寂しい思いをしてきました。
今年2月には、私も参加した台湾における佐賀県総合プロモーションにおいて、タイガーエア台湾に対して、早期の運航再開を交渉いたしました。そうした結果、4月からの台北便の運航再開が決まり、台湾からの定期便としては、九州では福岡空港に次いで2番目の早さで運航を再開することができました。タイガーエア台湾をはじめ、保安検査業務やハンドリング業務を担っていただいている皆様に対して、再開に向けて一緒に取り組んでいただいたことに心から感謝いたします。
台北便の搭乗率は約9割と、多くの皆様に御利用いただいております。上海、西安やソウルの路線についても早期の運航再開に向けて全力で取り組み、インバウンド誘客を促進していくため、必要な予算を今議会に提案いたしております。
また、唐津港への国際クルーズ船の寄港も、4月4日に再開しました。ラグジュアリークラスのクルーズ船誘致に官民一体となって取り組んでおり、今年は過去最多の13回の寄港が予定されています。
続きまして、当面の諸課題への対処方針について申し上げます。
まず、玄海原子力発電所についてです。
今年3月8日に、4号機の定期検査が終了し、現在、3号機、4号機とも通常運転が行われています。
また、敷地内では、事故発生時に指揮所となる「緊急時対策棟」の工事が行われています。九州電力によると、一昨年の作業員負傷事故による工事の中断や、事故の再発防止のために、より安全な工法への見直しを行うなどし、令和6年10月から運用を開始するとのことです。
玄海原子力発電所とは、廃止措置を含めて、これからも長い年月にわたり関わり続けなければなりません。今後とも、県民の安全を何よりも大切に、県も含め全ての関係者の中に気の緩みが生じることがないよう万全を期してまいります。
次に、佐賀空港の自衛隊使用要請について申し上げます。
計画予定地の土地売買に関しては、5月1日に、地権者でつくる管理運営協議会において、防衛省への土地売却を決定され、有明海漁協の理事会において土地売却が承認された後、5月18日には防衛省との土地売買契約が締結されました。地権者や漁業者の皆様の様々な思いの中で御判断をいただいたものと思っています。
5月25日には、浜田防衛大臣と面談し、工事を行うにあたって、周辺地域の環境へ配慮した上で進めていくことを要請しました。さらに、佐賀空港の民間空港としての発展に支障を及ぼさないことが大前提であるというかねてからの約束を改めて確認しました。また、自衛隊の使用により全体の離発着回数が増加することを踏まえ、平行誘導路の設置など、民間空港としての発展を第一に連携することに合意しました。
6月12日からは、駐屯地開設に向けた準備工事が始まり、今後、本格的な工事へ進んでいくこととなります。事業主体である防衛省には、工事期間中はもちろん、駐屯地の整備後においても、一つ一つ丁寧な対応を行っていくよう求めてまいります。
次に、有明海の再生について申し上げます。
諫早湾干拓関連訴訟について、国が平成22年の福岡高裁確定判決の無効化を求めた請求異議訴訟では、今年3月1日に最高裁により上告が棄却されました。これにより、平成22年の確定判決に基づく開門の強制執行は許されないとした令和4年3月の福岡高裁判決が確定しました。平成22年の確定判決があるにもかかわらず、この間和解協議の席に着かなかった国の主張が認められたことについては釈然としないものがあります。
また、長崎県の漁業者が開門を求めた訴訟では、今年3月28日に福岡高裁は、漁業者の控訴を棄却する判決を言い渡しました。一方で、この判決において、長崎地裁判決では無かった干拓事業と諫早湾内における漁業被害の因果関係を認めたことについては、漁業者の肌感覚に近い司法判断が示されたものと思います。
有明海の再生のためには、開門調査を含む環境変化の原因究明が必要との想いは変わりません。国に対しては、その必要性を様々な機会を通じて訴えてまいります。
昨年度の有明海のノリ養殖については、赤潮によるノリの色落ち被害が県全域に拡大したことで、非常に厳しいものになりました。漁業者の皆さんは最後まで諦めずに頑張ってこられましたが、結果として、20年連続の日本一とはなりませんでした。有明海漁協からは、「来季改めて日本一を目指し、一からスタートしたい」といった声をお聴きしております。県としても、再び日本一を達成されるよう、これまでの取組に加え、国の事業も活用し、赤潮に強いノリ養殖生産システムの構築に向けた漁業者の取組への支援を行うこととし、今議会に必要な予算を提案いたしております。
漁船漁業については、ウミタケ漁が17年ぶりに復活しました。私は、6月2日に有明海漁協でウミタケの試食をさせていただきました。深みのある味わいで、愛する有明海から生まれたことを思うと万感胸に迫るものがありました。また、アサリの稚貝も増加傾向にあり、来春の漁獲に期待が持てるといった明るい兆しもあります。しかし、再生のシンボルであるタイラギの11年連続の休漁など厳しい状況が続いています。このため、国と有明海沿岸4県が協調し、漁場環境の改善や人工種苗の放流を引き続き行うとともに、大規模な海底耕うんといった本県独自の取組を加えながら、一日も早い資源回復に向け努力してまいります。
宝の海である有明海の再生は、国や県、市町、漁業者など有明海に関わるもの皆で取り組む課題です。今後も、有明海の再生という本来の目的を見据え、関係する皆で力を合わせて全力で取り組んでまいります。
次に、九州新幹線西九州ルートについて申し上げます。
西九州新幹線の開業から8か月が経過し、全国旅行支援などの相乗効果もあり、県内の宿泊稼働指数は昨年11月と12月に全国1位となった後も、毎月1桁の順位で推移し、好調を維持しています。引き続き、地域の盛り上がりが広域に波及するよう市町や地域の取組をしっかり後押ししてまいります。
一方、西九州新幹線の開業に伴い、上下分離方式に 移行した長崎本線の江北-諫早間については、利便性の 低下などが課題となっています。JR九州や沿線市町と一緒になって、利用者の目線に立って利便性の改善に取り組んでまいります。
また、県南西部の玄関口である肥前鹿島駅については、新駅舎や駅前広場を含めた駅エリア全体の基本設計を 進めているところであり、様々な美しさを併せ持つ「鹿島・太良らしさ」を感じられるよう整備してまいります。
新鳥栖-武雄温泉間の在り方については、佐賀県の将来に大きく影響することです。この区間の鉄道環境は悪くありません。フル規格については、この鉄道環境を壊すリスクを大きく上回るメリットがあるかどうか、過去の延長線上の議論ではなく、全く新たな発想で佐賀県の発展や九州の将来展望にどうつながっていくのかなど、大きな視点で、幅広く骨太に議論してまいります。
次に、城原川ダム事業について申し上げます。
城原川ダム事業については、現在、ダム本体や付替道路の調査・設計、用地調査、家屋調査などが行われ、ダム建設に向けて着実に進捗している状況です。
水没予定地域では、今年2月16日に地目認定基準の確認書への調印が行われるなど用地補償に向けた協議や集団移転のための候補地選定の作業も進められています。
県としては、地域の治水対策を進めるため、一日も早いダム完成を目指した事業の推進と必要な予算の確保を、引き続き国に働き掛けてまいります。水没予定地域の住民の皆様の具体的な生活再建に向け、国や神埼市と連携して、お一人お一人に寄り添いながら、きめ細やかな支援を心がけて行ってまいります。あわせて、ダム周辺地域に対しても、今後も丁寧な情報提供に努めてまいります。
次に、県立大学について申し上げます。
佐賀県はこの25年間、15歳未満人口の割合は全国3位以上であるにも関わらず、大学進学者の8割が県外に進学しています。産業界だけでなく、教員、医療、介護従事者など、各方面で担い手不足の状況が続く中、生産年齢人口の流出という佐賀県の構造的な課題に正面から向き合い、対策を講じていくのは県政の急務であると私は考えます。こうした問題意識のもと、現在、県立大学の基本構想策定に向け、調査・検討を行っております。今後とも、幅広く関係者の意見を聴くとともに、丁寧な情報提供に努めてまいります。
続きまして、最近の県政の主な動きについて申し上げます。
まず、ハンセン病療養所「菊池恵楓園」訪問について申し上げます。私は、知事就任後、機会を見つけて度々菊池恵楓園を訪問してきました。それは、これまで行政がハンセン病に対する誤った認識から、長い間、ハンセン病患者やその家族の方々を差別してきたことへの贖罪と、つらく厳しい運命を強いてしまった方々の想いに寄り添い、次世代に繋いでいくことが必要であると考えているからです。
コロナの状況の変化により、今年4月になってようやく入所者の方との懇談が可能となったことから、5年ぶりに園を訪問しました。今回の訪問では、人権啓発用の冊子「ハンセン病とともに生きる佐賀県民の証言」の完成を報告しました。この冊子は、菊池恵楓園や、佐賀県出身の入所者で長年にわたりハンセン病問題の教育普及に御尽力されてきた志村康さんをはじめとする入所者自治会の皆様に御協力いただき作成したものです。冊子の中で書かれている志村さんの「人の心はなかなか変わらない」、「この世界ではお互いが助け合わないと生きていけない。人権の問題に、療養所の内も外もない」といった言葉に、ハンセン病とともに生きてこられた当事者だからこその想いや苦しみが凝縮されていると感じました。今を、そしてこれからを生きる私達が、ハンセン病差別への贖罪と学びを次世代へ繋ぎ、二度と同じ過ちを繰り返さないことや、偏見や差別をなくすためにこれからも努力していくことを改めて約束してまいりました。
ハンセン病に対する偏見や差別はもちろん、現在も様々な差別や人権に関する問題が発生しています。昨今では、ネット社会の特性である匿名性や拡散性から、SNSでの誹謗中傷の投稿が簡単に拡がってしまうなど、様々な問題が起こるリスクが高まっています。今も、偏見や差別、誹謗中傷に悩み、苦しんでいる人がいます。
あらゆる人権侵害行為は決して許されません。県では今年3月、「全ての佐賀県民が一人一人の人権を共に認め合い、支え合う社会づくりを進める条例」を制定いたしました。県民一人一人が全ての人権問題を自分のこととして考え、自ら行動していくことが何よりも大切です。
ハンセン病差別の問題を風化させない、二度と同じ過ちを繰り返さないという強い想いで、これからもずっと佐賀県は人を大切にする県であり続けたいと思っています。
次に、「SAGA2024」について申し上げます。
来年10月の本大会の開催まであと478日となりました。県内の各市町においては、開催に向けた準備が順調に進められております。
3月からは、大会の運営を様々な場面で支えてもらうボランティアの募集を開始しました。「SAGA2024」では、「すべての人に、スポーツのチカラを。」をコンセプトに、新しい大会を目指しています。ボランティアの方々についても、競技を観戦するなど、自らが楽しみながら大会を支えるという、新しい形を目指しており、名称を「Sagantier!(サガンティア)」としました。オール佐賀で新しい大会を創り上げたいと思っており、ぜひ多くの県民の皆様の応募をお待ちしています。
また、「SAGA2024」に“スポーツのチカラの象徴となる炎”をともす炬火台とトーチについて、佐賀県出身の世界的デザイナーである吉岡徳仁氏に制作していただくことを決定しました。新しい大会にふさわしく、これから世界にはばたく佐賀のスポーツシーンを象徴するものが出来上がることを期待しています。
5月13日には、「SAGA2024」イメージソング「Batons~キミの夢が叶う時~」のプロモーションビデオが完成し、大会に向けた機運も高まってまいりました。先月開催された軟式野球を皮切りに、いよいよリハーサル大会が始まりました。来年6月まで、35の国スポ競技と14の全障スポ競技が県内各地で順次開催されます。ここで得られた経験や課題を踏まえ、来年の本大会では、体育からスポーツに生まれ変わる初めての大会として、「新しい大会」とそこから生み出される価値を感じてもらえるよう、準備を進めてまいります。
次に、SSP構想の推進について申し上げます。
SSP構想では、全国、世界で活躍する選手をSSPアスリートとして認定し、支援しています。現在、認定しているSSPアスリートは381人となり、制度をスタートした令和元年から4倍以上となり、中高生をはじめとする多くのアスリートが、佐賀に集い、佐賀で育ち、成長する流れが生まれています。
鳥栖工業高校の小柴ゆり選手は、今年2月にスウェーデンで開催されたレスリングのクリッパン女子国際大会において、当時中学3年生でU17部門に出場して見事優勝を果たしました。また、佐賀工業高校の岡本留佳選手は、今月アゼルバイジャンで開催された世界テコンドー選手権大会において、銅メダルを獲得しています。これからのスポーツ界を牽引する女子アスリートが、佐賀から世界に挑戦しています。
春の全国高校選抜大会では、神埼清明高校男子新体操部が見事団体3連覇を成し遂げました。個人では、レスリング男子で、鳥栖工業高校の甫木元起選手が2連覇を果たし、柔道女子では、佐賀商業高校の清水優陸選手と中野弥花選手が、それぞれ初の栄冠を手にしました。
今回の選抜大会では3位以内の上位入賞が、団体6チーム、個人10人となり、過去最高の成績を収めました。
そして、社会人アスリートも目を見張る活躍を見せてくれています。日本陸上競技選手権大会では、女子400メートルで今村病院の久保山晴菜選手が悲願の初優勝を果たし、ボート競技の全日本ローイング選手権大会では、唐津商業高校出身の國元悠衣選手が2連覇を達成しました。また、全日本ウエイトリフティング選手権大会では、チームSSPの生頼永人選手と安嶋千晶選手が、「KARATE1プレミアリーグ福岡2023」では、同じくチームSSPの空手道の橋本大夢選手が、それぞれ優勝に輝きました。
さらに、東京オリンピックにも出場したセーリングの唐津西高校出身の岡田奎樹選手は、スペイン・マヨルカ島で開催されたプリンセスソフィア杯で優勝し、来年のパリオリンピック出場が期待されます。
アスリートの人生は、競技だけではありません。アスリートの人生に寄り添うSSP構想を進める佐賀県だからこそできる取組として、昨年から女性アスリートの健康支援を進めています。4月6日には、県、県医師会、西九州大学、県栄養士会、県スポーツ協会による「SSP女性アスリートウェルネス協議会」を設立いたしました。指導者や保護者、医療関係者などが、女性特有の健康問題に関する理解を深め、正しく対応していくことで、女性アスリートに対する健康支援を進めてまいります。
また、今月12日には、スポーツ庁が行うスポーツビジネス実証事業の地域パートナーに、自治体としては初めて佐賀県が選定されました。
さらに、SSP構想を進めている中、プロスポーツにおいては、佐賀バルーナーズが悲願のB1昇格を果たしたことにより、県内にJリーグ、Vリーグ、そしてBリーグの1部で活躍する3つのプロスポーツチームが揃うことになりました。九州では佐賀県のみであり、まさに佐賀はプロスポーツの聖地として、先陣を切っていきます。SSP構想が県内外に活気づいていくために、そして佐賀のプロスポーツが上昇気流となっているこの機会を捉えて、プロスポーツチームへの支援を行うために、必要な予算を今議会に提案いたしております。
今後も行政、スポーツ界、企業・団体などが一体となってSSP構想に取り組み、スポーツのチカラを活かした人づくりや、スポーツホスピタリティの実現を含め、スポーツビジネスシーンが広がる地域づくりを進めてまいります。
次に、SAGAアリーナのオープン記念として、6月4日に開催しました「WithYou!佐賀県文化芸術祭」について申し上げます。県民総参加で佐賀の文化芸術を結集し、アリーナに県民の息吹を吹き込む特別な日として、1年以上前から準備をしてまいりました。
第1幕では、佐賀の地に連綿と受け継がれる伝承芸能が織りなす四季の美しさや素晴らしさを、佐賀市の「佐嘉神社巫女舞」、鳥栖市の「曽根崎の獅子舞」、多久市の「多久山笠」、鹿島市の「母ヶ浦の面浮立」の順に、最新の音響・映像技術が融合した演出とともに、動と静で豊かに表現されました。そして、第1幕のフィナーレには、佐賀が世界に誇る唐津くんちが披露されました。この日のために特別に、豪華絢爛な、「青獅子」、「鯛」、「上杉謙信の兜」の3台の曳山が登場し、風情あふれる鐘、笛、太鼓のお囃子と曳子の「エンヤエンヤ」の威勢良い掛け声が相まって、一気に会場全体が興奮と熱気に包まれました。
第2幕では、これからSAGAアリーナとともに生きる世代である「ティーンズミュージカル佐賀」や「キッズミュージカル鳥栖」の子どもたちが演じてくれました。真っすぐな眼差しで全力で表現する姿に、会場の皆様の感動が温かい拍手とともに伝わってきました。
そして、小城市出身で、現在、フィンランド国立バレエ団で活躍する原田菜緒氏をはじめとするプリンシパルダンサーと県内11のバレエ団による「With You!バレエプロジェクト」と、「アルモニア管弦楽団」との豪華共演によるフィナーレで、歴史的なステージを締めくくり、会場中を感動の渦に巻き込み、幕を下ろしました。
総勢約900人の演者による文化芸術のチカラに、約5,000人の観客が魂を揺さぶられ、まさにSAGAアリーナに県民の息吹が吹き込まれる特別な日となりました。これからも、佐賀が世界に誇る文化芸術を大切にし、未来に継承してまいります。
次に、佐野常民生誕200年を記念した顕彰について申し上げます。
佐野常民は、現在の日本赤十字社の前身となる博愛社の創設をはじめ、精煉方や三重津海軍所のリーダーとして日本初の実用蒸気船「凌風丸」の建造に尽力するなど、幅広い分野で活躍した、佐賀七賢人の一人であり、昨年12月に生誕200年を迎えました。今年11月中旬、サンライズストリートに面している日本赤十字血液センター前に、佐野の銅像を設置することとしております。
また、これに先駆け、情報発信の戦略的な取組として、先月11日、設置場所に隣接する交差点名を「機動隊前」から「佐野常民像前」に変更いたしました。佐野の顕彰を通して、その功績や志を県内外の方々に広く伝えていくとともに、未来につなげてまいります。
次に、スタートアップの支援についてです。
県では令和元年度から、佐賀ならではの「人と人」、「企業と企業」とのつながりを活かし、「佐賀型」のスタートアップ支援を築き上げてきました。全国的に活躍している実業家や投資家、コンサルタントなどが、ビジネス創出や資金調達、ビジネスマッチングなどをテーマとして、県内の起業家一人一人に寄り添って伴走支援する、他県にはない取組です。
この結果、尖った個性あふれる発想力や、類まれな行動力により、起業家として活動の場を広げている方も出てきています。
今後は、これら一人一人の有望な「起業家」が、さらに事業を拡大させ、羽ばたけるよう、今年度から新たに、企業活動として必要となる人材確保・組織づくりやプロモーションをテーマとした伴走支援プログラムを導入するなど、支援のあり方をもう一段、ステップアップしてまいります。
次に、出水期における災害への備えについて申し上げます。
梅雨や台風などで災害が起こりやすい出水期に入りました。県では、令和3年に佐賀県内水対策プロジェクト「プロジェクトIF」を立ち上げ、内水氾濫による被害軽減対策を進めています。
今年度から、新たに、県内各地の監視カメラや浸水センサーのリアルタイムの情報を、スマートフォンでも見ることのできる、「あんあんアプリ」の運用を開始しました。道路やクリーク、ため池などの状況を把握することができるため、県民の皆様にぜひ登録をしていただくよう、引き続き周知を図ってまいります。
また、「田んぼダム」を昨年6月から運用しております。今年度は、地域の皆様の協力により昨年度の2倍となる約2,200ヘクタールに広げる予定です。大雨前にクリークの水位を下げ、一時的な雨水の受け皿を増やす、「事前放流」によって確保される量と合わせると約1,550万立方メートルとなり、これは北山ダムの70%もの貯留量に相当します。
直近では、今月7日に大町町の「下潟排水機場」の機能強化を図ったほか、9日には武雄市の「焼米ため池」において、大雨前に水位を下げるための事前放流施設を新たに設置し、出水期に間に合わせることができました。このほか、河川内の堆積土砂の浚渫を121か所で行うとともに、クリークの水門操作の省力化・安全化にも新たに取り組んでまいります。
今月7日に開催した「佐賀県内水対策プロジェクト拡大会議」では、県、国、全市町や関係機関がともに連携し、内水対策に取り組んでいくという強い想いを改めて共有したところです。また、12日には、私と災害対応の実動機関である警察や消防、自衛隊、海上保安庁のトップによる連絡会議を開催し、県民の命を守ることを最優先に、迅速に対応することを改めて確認しました。
過去に災害が繰り返し起こったことを教訓化し、人命を守ることを第一に、浸水被害ができる限り軽減されるよう、全力で取り組んでまいります。
次に、有明海沿岸道路等の整備について申し上げます。
有明海沿岸道路と、南北軸となる佐賀唐津道路が接続する「Tゾーン」については、橋梁や地盤改良、盛土の工事を展開して事業の進捗を図っています。福富鹿島道路については、鹿島側から現地での測量を進め、道路の詳細な設計にも着手してまいります。大川佐賀道路については、昨年11月に開通した諸富インターチェンジからさらに西の(仮称)川副インターチェンジに向けて整備が進んでいます。
また、鳥栖市においては、小郡鳥栖南スマートインターチェンジへのアクセス道路となる県道鳥栖朝倉線の整備とその周辺地域においては、鳥栖市とともに新たな産業団地の整備を進めております。
さらに唐津市では、国道204号唐房バイパスが今秋に開通する予定です。
引き続き、地域の発展と県民の暮らしを支える基盤として、広域幹線道路やくらしに身近な道路の整備を着実に進めてまいります。
続きまして、提案事項について御説明申し上げます。
今回の補正予算案の編成に当たりましては、当初予算編成後の情勢の推移に対応するため、物価高騰対策を柱に、早急に措置を要するものについて所要額を計上することといたしました。
この結果、その総額は、歳入歳出とも、それぞれ、
一般会計 減額 約46億6,100万円
特別会計 減額 約10億3,900万円
となり、これを既定の予算額と合わせますと、本年度の予算総額は、
一般会計 約5,319億8,600万円
特別会計 約2,054億6,500万円
となっております。
今回は、物価高騰対策などの政策的な補正として約102億円の事業予算を計上しています。一方で、新型コロナウイルス感染症対策については、当初予算の段階では、これまでの対策を継続するために必要な予算を一旦計上し、5類移行後に対策の変更に伴う減額措置を速やかに行うこととしていました。このため、今回約149億円を減額することとしたものであり、その結果、一般会計で減額補正となっているものです。
次に、予算案の主な内容について申し上げます。
まず、物価高騰の影響を受けている医療・福祉・保育の現場への支援についてです。
県内の医療機関や福祉施設、保育所等は、物価高騰により大きな影響を受けていますが、これらの施設の多くは、診療報酬など国が定める公定価格で運営されているため、コスト上昇分を価格に転嫁することができません。また、物価高騰の長期化や、幅広い品目への波及により、経営努力だけでは対応が難しくなっています。このため、県民生活に不可欠なサービスを維持していただけるよう、昨年度に引き続き、これらの施設に支援金を交付することといたしました。
次に、物価高騰の影響を受けている子育て世帯を支援するCSOへの支援について申し上げます。
県内では、様々なCSOが子育て世帯への生活支援として、「子ども食堂」や「こども宅食」などを運営しています。物価高騰により、子育て世帯からの支援ニーズが増えている中、CSOにおいても、寄付だけでは賄うことができない食材や日用品の購入費用や燃料代など、物価高騰による負担が続いています。このため、子育て世帯へのサービスの維持・充実が図られるよう、昨年度に引き続き、これらのCSOに対し、支援することといたしました。
次に、光熱費高騰の影響を受けている家庭や企業への支援について申し上げます。
現在、国において、都市ガスや一般の家庭、企業が使用する電気を対象に負担軽減策が講じられています。一方で、県内の約6割の家庭や企業が使用するLPガスと、大規模な工場や総合病院などが使用する特別高圧電力については、国の支援対象となっていないことから、県において、LPガス及び特別高圧の電気の使用者に対し、支援することといたしました。
次に、物価高騰で経営に影響を受けている畜産農家や園芸農家への支援について申し上げます。
まず、畜産農家については、とうもろこしなどを原料とする配合飼料の価格や、牧草などの粗飼料の価格が高止まりしており、経営に大きな影響を受けています。
このため、県独自の対策として、食べこぼし対策などの飼料コスト縮減に取り組んでいただくことを要件に、配合飼料については、国の制度で補填されない農家負担に対し支援することとし、粗飼料については、酪農家の負担が前年並みとなるよう支援することとしました。
また、園芸農家についても、生産コストをこれまで以上に抑制し、経営の安定化が図られるよう、省エネ能力の高いハウス加温機や園芸用集出荷設備の整備に対して支援することといたしました。
予算外議案といたしましては、条例議案として5件、条例外議案として13件となっています。
このうち、乙第45号議案「佐賀県施策方針2023」の策定については、今後4年間の県政の大きな方向性を示すために新たに策定するものです。今、時代は大きな変革期にあります。加えて、コロナの期間が社会に様々な変化をもたらしました。デジタル技術の飛躍的進化やグローバル化の一層の進展など、世の中が目まぐるしく変わっていく中で、佐賀の将来を見据え、これまで取り組んできた様々なプロジェクトを一層前へ進めてまいります。さらに、デジタル先進技術を用いた実証フィールド化やライフスタイルの変化に応じた人の流れの創出など、その時々の情勢に対応し、自ら先陣を切るべく、新たな取組に果敢にチャレンジしていきます。これからも、人にこだわり、「人を大切に、世界に誇れる佐賀県」を力強く創ってまいります。
最後になりますが、これまで私は、世界の情勢を鳥瞰的に見て、想像力と構想力をもって、戦略的に県政を進めてまいりました。コロナ禍においても、ピンチをむしろチャンスに変えるとの想いで、先を見据えて布石を打ち続けてきました。屋外での新しい観光や生活スタイルへの流れを先読みした「OPEN-AIR佐賀 」の提案をはじめ、県内事業者の新分野進出や業態転換等へのチャレンジに対する支援、芸術文化の新しい表現のカタチを後押しする「LiveS Beyond(ライブスビヨンド)」、さらには循環型農業への転換を後押しするための堆肥の利活用促進など、幅広い分野で構造改革に取り組んでまいりました。もちろん、SSPやSAGAアリーナの取組も先を見据えてのものです。意欲的かつ戦略的に蒔いてきた種が芽を出し、さらに大きく芽吹いていくよう努力を続けてまいります。
また、県内を見渡しますと、県東部地域では、鳥栖市において、久光製薬の新研究所の建設が、来年5月の稼働に向けて進められています。分散する国内の研究機能を佐賀に集約するものであり、新たな貼付剤の技術開発拠点が誕生いたします。また、誘致が実現したアサヒビール新工場の建設地の造成工事も進められています。
県西部地域においては、伊万里市において、SUMCOによる投資額2,000億円を超える工場の拡張工事が進められており、数百人規模の新たな雇用が生まれています。
さらに、海外で見込まれる高級和牛需要に対応するため、佐賀牛の主要産地である県北部地域の唐津市において、全国有数の規模を誇るブリーディングステーション「佐賀牛いろはファーム」が今月9日から、また県中部地域の多久市においては、米国やEUなどへの輸出にも対応できる佐賀県高性能食肉センター「KAKEHASHI」が今月1日から、いずれも本格稼働いたしました。これから、「佐賀生まれ、佐賀育ちの佐賀牛」を一気通貫で佐賀から世界へ届けてまいります。
県内各地域で未来に向けた新しい動きが始まっております。今まさに、佐賀県は新時代を迎えつつあります。
古代史に秘められた謎を解き明かす鍵を握る吉野ヶ里遺跡や、SUMCOによる新工場候補地の取得、さらには新時代のエンタメアリーナ「SAGAアリーナ」など、佐賀県は、今、様々な面で輝きを放っており、これまでには見られなかったような県内外からの人の流れが、新たな動きとして生まれてきています。こうした動きは、佐賀の地に、生き生きとした新しい息吹を次々と吹き込んでいくものと思います。
未来に向けて輝く佐賀県をさらに創造し、チーム佐賀、オール佐賀で新時代の佐賀を切り拓いてまいります。
以上、今回提案いたしました議案などについて御説明申し上げました。
よろしく御審議いただきますようお願い申し上げます。