令和6年度の重点的な取組をご紹介します。
1月24日、基本的な理念である教育大綱Vol.3が公表されました。その冒頭には、「自分で自分のことを決められる子どもに育てたい」と、大きな方向性が示されました。
県教育委員会においても、子どもの主体性をリスペクトして、自分自身で考え、判断し、行動する、失敗しても次に向かってチャレンジできる「骨太でたくましい子ども」への成長を応援したいと思います。
そのときの大人の基本姿勢として、「ほめるから、はじめる。はじまる。」を合言葉に、肯定的に子どもと向き合い、子どもの主体的な考えや挑戦を尊重し、子どもの夢ややりたいことを応援していきます。
今年度当初に掲げた重点プロジェクトを引き続き進めます。
1.教育DXプロジェクト
2.唯一無二の誇り高き学校づくりプロジェクト
3.さがん学びプロジェクト
4.SAGA部活プロジェクト
5.さがすたいるスクールプロジェクト
6.「未来のさが」を担う教員の人材確保
また、今年の夏に開催されるインターハイにもしっかりと取り組みます。
1.教育DXプロジェクト~高校生の新しい学びの場を創設~
全国的にDI人材のニーズは、右肩上がりです。多くの業界でニーズがあるにもかかわらず、それに応じる人材が県内も不足しています。そこで、将来のDI人材となりうる高校生の育成に取り組みます。
佐賀ハイスクールDI人材育成事業は、佐賀県教育委員会と佐賀県産業労働部が、県内企業、高等教育機関、金融機関と連携し、コンソーシアムを設置し事業を運営していきます。県内6か所に学びの場の拠点を設け、専門家による最先端のデジタル技術の学びを実現します。
併せて、佐賀の地元学を学びます。歴史と産業のかかわりを学び、佐賀への誇りと佐賀に貢献するマインドを醸成したいと思います。
ここで育った子どもたちが、将来、佐賀で活躍する人材となり、その人材が次の人材を育成する好循環につなげたいと思います。
2.唯一無二の誇り高き学校づくりプロジェクト~唯一無二の学校に!~
このプロジェクトは、すべての県立高校が取り組んでいます。その高校ならではの魅力や強みを磨き上げ発信し、本人が入学したい・保護者が入学させたいと感じる学校づくりを目指しています。来年度の特徴的な取組を2つ紹介します。
○唐津青翔高校 TSUNAGARUプロジェクト
・DXを学んで未来につながる:プログラミングやeスポーツなどクリエイティブな技術とセンスを学びます。
・韓国の今を学び世界とつながる:デジタル技術で韓国とつながり、まるで韓国にいるような体験と実践的な学びを実現します。
・玄海を学び地域とつながる:例えば、高校生がプロデュースする水族館などで、玄海町の地域資源を活用した学びを進めます。
学ぶ中身を磨き上げ、変えていくために、令和6年度から校舎のリノベーションを行います。令和6年度に設計、令和7年度施工、令和8年度から新たな体制になります。
○佐賀東高校 スポーツを軸に魅力発信
令和6年度から、スポーツ科が新設され、スポーツに特化した専門科目が学べます。スポーツビジネスやスポーツに関する多様な人材を育成したいと考えています。
部活動の強化にも取り組みます。来年度から、クロストレーニングという、専門競技以外のほかの競技を取り入れるトレーニングを練習に採用します。具体的には、サッカー部の部員を対象に、専門家による陸上のトレーニング要素を練習に取り入れます。スプリント力、身体能力の向上、けがの防止に役立ち、競技力が向上すると期待しています。
モデル事業として始め、得られたデータをスポーツ科で研究し、将来、ほかの分野への展開も視野に入れています。
3.さがん学びプロジェクト~認めて、ほめて伸ばす「子どもの力」~
令和8年、全国産業教育フェア佐賀大会 さんフェアSAGAを開催します。これは、全国の高校で産業教育を学ぶ生徒の学習成果の発表の場です。農業、工業、商業などを学ぶ専門学科高校、総合学科高校、特別支援学校高等部の生徒の祭典、一番大きなイベントです。
展示、体験コーナーに加え、介護技術やロボット競技といった競技大会もあります。各競技の上位入賞を目指し、競技力向上に取り組みます。
国の法律改正では、令和3年度から1年ごとに段階的に35人学級へと移行し、令和7年で6年生が35人学級になる予定です。本県は、国に先駆けて令和6年度から6年生の少人数学級を実現し、児童一人ひとりの成長をサポートします。
4.SAGA部活プロジェクト~SAGA部活の推進~
子どものやりたい気持ちに応えるSAGA部活をさらに推進します。そのための鍵の1つは、指導者の確保。公認スポーツ指導者や退職教員などの関係団体で指導者リストを作成してもらい、それを基に地域指導者と部活動をつなぎます。また、日本スポーツ協会や県内企業が取り組むマッチングサイトを活用し、地域指導者を確保します。
地域指導者の皆さんには、ガイドラインの遵守、事故防止、ハラスメントの防止、発達段階に応じた適切な指導を学ぶ研修の機会をつくります。研修後は、受講証明書を発行し、双方が安心して部活動指導に取り組めるよう体制を整備します。
また、SAGA部活の認知度を向上させ、応援の機運をつくる必要があります。例えば、社会スポーツや社会体育の大会、地域クラブの成績報告会を行います。小・中学生の保護者向けのPRチラシ、ロゴマークを作成し、SAGA部活の周知を図ります。子どもファーストの部活動改革で、子どもの挑戦を応援します。
5.さがすたいるスクールプロジェクト~誰もが、安心して学べる、やさしい学校~
それぞれの個性や多様な価値を尊重する教育に取り組みます。
・県立夜間中学 彩志学舎中学校
4月20日に開校記念式典、入学式を行います。現在の申込者は15名。各自が目標に向かい、学びの喜びを感じられる場所になるよう取り組みます。
・帰国・外国人児童生徒への対応
日本語習得状況がそれぞれ違うため、日本語指導担当教員や非常勤講師を配置し、個別にきめ細かな日本語指導を実施します。また、令和6年度の高校入学者選抜では、一般選抜で帰国・外国人生徒等募集枠を設置。三養基高校で実施します。県立高校の入学の機会を拡大し、学びの環境を充実させます。
・特別支援学校の医療的ケア体制強化
令和6年4月から、医療的ケアアドバイザーを1名配置。看護職員へのアドバイスや指導を行い、看護職員のスキルアップを支援します。また、教職員との連携も図り、児童生徒の学ぶ環境を整えます。
・校則の見直し第2弾
令和2年度の第1弾では、人権保障の観点から見直しました。今回は、児童・生徒の自主性の尊重という視点での見直しです。例えば、高校生のアルバイトは、社会体験を積む機会という観点で、許可基準の緩和が考えられます。学校外の私的な活動を過度に制限しないという観点での見直しになります。
・一人ひとりに寄り添った居場所づくり
支援が必要な児童生徒へのきめ細やかなサポートに取り組みます。また、不登校児童生徒の保護者向けリーフレットのさらなる充実を図ります。ホームページにも分かりやすく掲載し、保護者の不安に対応します。
6.「未来のさが」を担う教員確保
教員採用選考試験改革として、大学3年次からの早期受験、大学等からの推薦枠の拡大、講師経験者の免除要件を拡大します。
教員採用後は、研修やペーパーティーチャー研修講座の実施に取り組みます。また、教員へのインタビュー動画など教師の魅力をウェブで発信します。
併せて、働き方改革を進め、教師でなければできないことに専念できる環境を整えます。このような取り組みで、教員の確保に努めます。
来年度の第一次試験は、例年より早い6月16日に実施します。
SAGAインターハイ、いよいよ開催
今夏は、北部九州他で全国高等学校総合体育大会が開催されます。佐賀県では、SAGAインターハイと名付け、6競技種目が、7月23日のフェンシングを皮切りに約1か月間、熱い戦いを展開します。
生徒委員会「さがまる」のメンバー20人を中心に企画立案したイベントやグッズ、おもてなしで大会を盛り上げます。高校生が主体的につくる、すばらしい祭典になるよう取り組みます。
学びと挑戦を支える環境づくり
施設整備をご紹介します。
○多様な人材を育てる学びの施設等の整備
(1) 学びの拡充
鳥栖特別支援学校を令和6年~7年にかけて整備、令和8年度の開校を予定。
金立特別支援学校は、知的障害課程の子どもを受け入れられるよう令和6年~7年にかけて整備します。
(2) 学校施設の長寿命化
外壁・屋根の修理、屋根の改修、警報装置を更新します。
(3) 産業教育整備
実践的な知識や技術習得のためパソコンやソフトウェアを整備します。
○子どもの挑戦を応援する取り組み
スポーツをする環境、実習環境を整え、様々な経験を通じて、骨太でたくましい子どもを育てたいと考えています。
(1) 佐賀東高校:スポーツ科設置に合わせ、グラウンドに人工芝を整備します。
(2) 佐賀北高校:使用していないプールを解体し、グラウンドを拡充します。
(3) 小城高校:グラウンドの土の改修を行い、スポーツしやすい環境を整えます。
(4) 佐賀農業高校:乳酸菌変異株研究のため、温度・湿度を一定に保てるよう培養室の環境を充実します。
(5) 神埼清明高校:地域の子どもたちとの交流実習のため、調理室の空調整備を行います。
県教委における来年度の取組の紹介は、以上です。
<質疑応答>
〇朝日新聞
DI人材の説明にあった「地元学」とは、具体的にどのようなものですか。
〇教育長
佐賀の歴史や産業の発展、佐賀で起業した人、活躍している人から話を聞き、佐賀への誇りや愛着を持って未来への方向性を学ぶ場所です。
Uターンで戻ってきた講師からも話を聞けるので、佐賀で働くことを考えるいい機会になります。
〇朝日新聞
講師は決まりましたか。
〇教育長
佐賀大学の先生、有明高専の先生へ打診しています。企業の協力も得たいと考えています。
〇朝日新聞
彩志学舎中学校の入学生の学びたいことが何か、分かれば教えてください。
〇教育長
10代から70代までいらっしゃるので、学びたいことは違うと思います。面談をしながら、進路や学びたいことに寄り添っていきます。
〇朝日新聞
校則の見直しで、学校外の活動とはアルバイトのことですか。
〇教育長
アルバイトのほかに、「カラオケボックスに保護者と同伴でも行ってはいけない」という小・中学校の校則がありました。校則を一方的に学校が考えるのではなく、何のためにあるのか、どうすればいいのかと校則を見直す機会にしてほしいと思います。
〇朝日新聞
ペーパーティーチャーの研修から受験される人は、何人ですか。
〇教育長
ペーパーティーチャーから受験ではなく、講師としての採用です。研修を受けた中から2名が、現場で活躍中です。
〇佐賀新聞
人工芝のグラウンドの拡充など整備の時期は、令和6年度中ですか。
〇教育長
子どもの挑戦を応援する5校の取組は、令和6年度に行います。
〇佐賀新聞
学びと挑戦を支える環境づくりに選ばれた学校の理由を教えてください。
〇教育長
学びの施設等の整備は、児童生徒が安心して学べる環境づくりのため、特別支援学校の整備や老朽化した施設の計画的な更新、産業教育設備の充実に取り組んでいくものです。
一方で、子どものチャレンジを応援することも大事であり、唯一無二の学校づくりを進めていく観点から、ここに掲げる5校について、限られた予算の中ではありますが、取組を進めていくこととしています。
〇佐賀新聞
特色ある取組にチャレンジする学校を中心に整備を進めていくということでしょうか。
〇教育長
唯一無二の学校づくりと施設整備がイコールではありませんが、唐津青翔高校であれば学校施設のリノベーションを行うなど、目指す学校づくりを実現するためには施設整備が伴うこともあります。
各学校の状況を見ながら、どのタイミングで何をするかを考え、必要な取組を行っているところです。
〇佐賀新聞
医療的ケアアドバイザーは、各学校に1人ですか。
〇教育長
県教育委員会事務局に1人です。各学校の看護職員へのアドバイスをする役割です。
〇佐賀新聞
常駐ですか、不定期ですか。
〇教育長
基本は事務局にいます。常駐で、各学校を回る形です。
〇日本経済新聞
県内1人1台端末は、何台設置されていますか。費用を知りたいので、例えば何年前に入れたものを何台更新するという形で教えてください。
〇教育長
市町の小・中学校の1人1台端末は、導入時期がばらばらです。来年度は、2市町分ですが、台数など細かな数字は、担当から改めてお知らせします。
国の交付金を基金に積んで、その中から毎年度計画的に出しています。来年度の更新希望が2市町だということです。
〇日本経済新聞
公立学校の端末は、新しく買い替えるのですか。
〇県職員
県立学校は、すべてリースです。令和2年度、3年度のGIGAスクール構想で入れた市町立学校は、ほとんどが購入で、1市町がリースでした。
〇読売新聞
医療的ケアアドバイザーは、どんな人を配置するのですか。
〇教育長
指導経験のある看護師を会計年度任用職員として雇用し、配置したいと考えています。
〇読売新聞
今年度は、5年生までが35人学級ですか。
〇教育長
今年度に5年生までが35人学級を実現しています。来年度は、国に先駆けて6年生を35人にします。1学年、先行しながらやっています。
〇読売新聞
来年、教員は何人増えますか。
〇教育長
35人学級にすると、24人の教員が必要だと計算しています。