県教育委員会では、今年度から「先進的ICT利活用教育推進事業」に取り組んでおりますが、その一環として、ICT利活用教育の意義やその在り方についての見識を広げるため、県内全ての学校(小、中、高等学校及び特別支援学校)を対象に代表者研修会を開催しました。
研修会では、先進的ICT利活用教育推進員による実践報告や、今日的な教育課題についての講演等を行いました。
(会場の様子)
1 日時 平成23年6月30日(木曜日) 13時20分~16時45分
2 場所 佐賀県立美術館ホール(佐賀市城内一丁目15番23号)
3 参加者 364名(県内国公私立学校代表者、県内教育行政関係者、連携企業代表者、他)
4 概要
(1)教育委員会挨拶
佐賀県教育委員会教育長 川﨑 俊広
(2)行政説明 「先進的ICT利活用教育推進事業について」
佐賀県教育庁教育情報化推進室 室長 福田 孝義
〔主な内容〕
(1) 先進的ICT利活用教育推進の背景
・ 社会構造の変化、学力の国際調査比較において情報教育先進国との格差発生、新型インフルエンザ対応や不登校等への支援等の観点から、児童生徒一人ひとりに応じた指導やいつでもどこでも学習可能な仕組みづくりとそれによって全ての児童生徒の学力向上を達成することが強く求められていること。
・ 県教育委員会が進める教育の基本方針として、新たに「ICT利活用教育の推進」や「グローバル化に対応した教育の推進」など「社会の進展に対応した教育の推進」を打ち出したこと。
(2) 教育の情報化とは
・ 教育の情報化とは「授業の情報化」と「学校の情報化」に大別されるが、「授業の情報化」とは、授業でICTを活用したり、情報教育を充実したりすることであり、このことにより、わかる授業の実現や情報活用能力の育成が期待できること。「学校の情報化」とは、ICTを利活用した授業準備をしたり、校務の情報化、学校の情報公開に努めたりすることであり、このことにより、学校教育活動が効率化・高度化され、教育の質の改善が期待できること。
・ こうした教育の情報化により、時間と空間を超えた学びの空間が拡大し、新たな学びのスタイルが構築できること。
(3) 社会の変化に対応した教育の実現
・ 子どもたちは「未来からの留学生」であり、将来を生きる子どもたちに必要な力を付けさせるのは大人の責務であること。
・ 教育の効率化・高度化を図るため、これからの教育には、教育工学的な視点が必要であること。
・ 電子黒板や学習者用端末の利活用により、教授型の指導の充実とともに学習者を主体とした協働学習への展開が可能となること。
(4) 先進的ICT利活用教育推進事業の展開
・ 平成23年度は、インフラの整備とともに、致遠館中学校、中原特別支援学校、並びに太良町及び玄海町において実証研究に取り組むこと。
・ 致遠館中学校では、電子教卓・電子黒板・学習者用端末を備えたユビキタスルームを設置すること。
・ 学習者管理システム(LMS)、教材提供学習者ポータル(LCMS)、校務支援システムの3つを統合した新たな教育情報システムの構築を進めること。
・ 平成24年度は、県立学校において対象校を拡大するとともに、各市町と連携し、市町立学校でも取組を促進すること。
・ 平成25年度は、ICT利活用教育の先進的事例(佐賀県スタイル)として全国に向けて発信していくこと。
・ 事業の推進に当たっては、本部を教育情報化推進室に置いて、県及び全市町の教育長等を会員とした「佐賀県先進的ICT利活用教育推進協議会(仮称)」を設置するとともに、県教委が委嘱した推進員や外部人材等から成る「推進チーム」を発足させ、県全体での推進体制を明確化すること。
(5) 本県で実施中の主な実践研究
・ 総務省フューチャースクール事業(佐賀市立西与賀小学校)
・ 総務省教育絆プロジェクト(佐賀市(赤松小学校、若楠小学校)、武雄市(山内東小学校、武内小学校))
・ 新太良高校の教育実践(電子黒板の使用、ニンテンドーDSによる個別学習支援等)
・ あきちゃんの魔法のふでばこプロジェクト(東京大学先端科学技術研究センターとの研究協定:県立ろう学校、金立特別支援学校)
(3)講義 「ICT利活用はじめの一歩」
講師 先進的ICT利活用教育推進員 横地千恵子(佐賀市立赤松小学校 教諭)
(1) 総務省の教育絆プロジェクトについて
・ 赤松小学校は、総務省の教育絆プロジェクト実証研究校として、現在、ICT利活用教育に取り組んでいる。4年生以上の各クラスに電子黒板が、また全ての児童に一人一台のタブレット型パソコンが導入された。加えて、無線LAN環境が整い、ICT支援員も配置されている。
(2)電子黒板の利活用場面について
・ 電子黒板を活用しての課題提示場面では、社会や算数などでデジタル教科書を拡大して見せたり、パワーポイントで作った自作のコンテンツを提示したりしている。
・ 思考や理解を深める場面では、カメラ機能で児童のノートを撮影し、拡大して見せながら説明させたり、動画のコンテンツを見せたりしている。
・ 特に高学年の社会科ではデジタル教科書の中で動画コンテンツがたくさんあるのでよく使われている。
・ 家庭科でも針の通し方、玉どめ・玉結びの仕方などの動画を活用している。
・ 知識を定着させる場面では、国語では物語や説明文の筆者の思いを動画で見たり、フラッシュ教材でくり返し問題に答えたりしている。
・ その他、日常的な使い方として、朝の会、帰りの会での子どものスピーチや先生の話に写真を使ったり、インターネットのニュースを見せたり、タイマーを大きく映して時間を意識させたりしている。また、歯磨きや次の時間の準備など全員に徹底したいときに、電子黒板に表示してある座席表に本人で確認チェックを入れさせる等の使用もある。
(講義)
(3) 成果と課題について
・ 4年生以上の担任、及び授業に出ている教員に「電子黒板が入ってよかったか。」という質問を行ったところ、100%が「よかった」という回答であった。
・ その理由として、「教室備え付けなのでいつでも使える」「デジタル教科書が使える」「簡単にノートをカメラで拡大して使える」「子どもが集中する」「インターネットが使える」などがあげられた。
・ 「簡単」「便利」「いつでも使える」という環境にあれば、機械操作が苦手なベテランの教員でも活用するようになる。
・ 課題としては、各教科、単元の目標を達成するために、授業のどの場面で、どのように使っていくかを考えておく必要がある。単に、見せればよいということではなく、どの場面でどのように見せれば効果的かを考え、授業をデザインすることが大切。
・ 黒板と電子黒板の使い分けをどのようにしていくかを考える必要がある。電子黒板は映像として映るが、次の場面に移るときに残しておけない。また、デジタル教科書の文字など文字数の多いものは、拡大しても後ろの席の児童にとっては見えにくく、教室の光の反射具合で、場所によっては見えにくい場合があるなどの課題もある。
(4)講演 「ICTを活用した授業のあり方」
講師 関西大学外国語教育研究機構教授 田尻 悟郎 氏
田尻氏は、学習指導要領改訂協力員、文部科学省「英語教育改善のための調査研究」、企画評価会議委員のなど、英語指導における第一人者としてご活躍中ですが、今回は、「ICTを活用した授業のあり方」と題して、授業とはどのようなものであるか、ICTをどのように活用すればいいのかということについて講演されました。
(講演)
田尻氏は、教師が確かな指導力をもってこそ、ICTを効果的に活用することができると述べられ、動物分類クイズや英会話を通して、子どもの知的好奇心をくすぐり、惹きつける授業のあり方を提示されました。