佐賀県教育委員会は、今年度、文部科学省から「教員の資質能力の向上に係る調査検討事案」の委嘱を受けた佐賀大学文化教育学部と連携して、「ICT利活用に関する教員の資質能力向上のためのプログラム開発」に取り組み、教員のICT利活用指導力向上のための共同研究を実施しています。
その一環として、今回、標題の研修会を下記のとおり開催しました。
記
1 日時 平成24年2月21日(火曜日)
2 場所 武雄市立北方公民館・文化ホール(武雄市北方町大字大崎2217番地)
3 主な内容
(1)「先進的ICT利活用教育推進事業」の現状と今後の計画
佐賀県教育庁教育情報化推進室 丹野 到
佐賀県が進めている「先進的ICT利活用教育推進事業」の現状と今後の計画について報告。最後に5分程度、NHKで放映された本事業の紹介番組を放映。
(2)「教員のICT活用能力調査の結果から」草場聡宏准教授(佐賀大学)
- 調査に対する分析の観点
- 教職員のICT指導能力
- 情報モラルの指導
- 校務におけるICT活用能力
- ICT活用指導力向上研修プログラム
「学校における教育の情報化に関する実態調査」をもとに佐賀県や全国の傾向を分析し、それを踏まえた研修を充実させることが大切だ。
(3)「ICTを活用した授業」中川一史教授(放送大学)
ポイント(1)ICTと非ICTの融合
・ 45分ずっと使い続けるわけではなく、紙とデジタルをどう併用していくかがポイントである。プロセスは電子黒板を利活用し、プロダクト、すなわち結果は黒板を使って押さえるという形がよい。
ポイント(2)デジタル教材の有効活用
・ デジタル教材を活用することで「意欲、関心の拡充」「知識、理解の補完」「技能の習得」「思考の進化、拡大」が可能となる。
・ 子どもたちは、電子黒板を見ながら分かったつもりになりやすい。「本当に分かったのか」いい意味で疑うことが必要。電子黒板だけでなく、手元の資料集と比較したり、本物とつき合わせたりして、電子黒板の活用を工夫する。
ポイント(3)個別・協働・一斉の切り替え
・ 自己とのコミュニケーションを図る。つまり、自分で考える時間を保証してやることが大切だ。また、他者とのコミュニケーション、すなわち意見交換の場をどういう意図で、どのタイミングで、どれくらいの頻度でどのくらいの時間割り当てるのか。そこにどうICTを絡ませていくのかを考えなければならない。
ポイント(4)思考の可視化にICT
・ デジタルペンの特性を活用することで思考のプロセスを再生してみんなに示し、それをもとに吟味することに使える。
ポイント(5)伝える力をつみあげる
・ 言葉に映像を付け加えるという活動を積み重ねて、プレゼンテーション能力を鍛える。発表の場にICTを積極的に使う。
(4)「児童生徒の情報モラル教育」角和博教授(佐賀大学)
・ 「ITサポートさが」は産学官民の協働により、児童生徒保護者に情報モラル等の学習機会を提供している。
・ 主な活動は、ネットパトロールなどによる「調査分析」、イベントや「Yokooh!劇場」「Kidさが」の開催などによる「講話」や「啓発劇」、現場の先生方との共同による「教材開発」、「相談窓口」の設置などがある。
(5)「ICT支援員との連携による授業」中村隆敏准教授(佐賀大学)
・ ICT支援員の主な業務内容には、設定や操作説明、教材等の紹介、事例紹介、デジタル教材の作成、メンテナンス等があげられるが、それらを根底で支えるのは、高いコミュニケーション能力である。
・ ある学校ではICTを推進するうえで、「授業研究の流れは変えない」「日常的な活用を考える」「日常業務にゆるやかに導入する」という方針を掲げ、成功している。また、ベテランの先生がアイデアの提供という意味でキーパーソンとなっている。
・ 現在、佐賀大学ではICT支援員育成プログラムの開発と実証研究にあたっている。それを踏まえて指導力をもった教員、ICT教育コーディネーターを養成したい。