現在、県教育委員会では、全県規模で「先進的ICT利活用教育推進事業」に取り組んでおり、本県に学ぶ児童生徒の学力向上を目指し、「人材育成」と「ICT機器の整備」及び「学習管理や教務事務等を一括処理する新たなシステムの構築」を一体的に捉えて、現在、実証校・地区における実践研究を中心に事業を推進しています。
こうした中、本事業の推進には、県はもとより各市町の取組が重要なことから、県教育委員会と市町教育委員会とが相互に連携・協力しながらICT利活用教育を推進するため、本年7月に「佐賀県ICT利活用教育推進協議会(以下「協議会」という。)」を設置しました。
このたび、本年度第2回目となる推進協議会を下記のとおり開催しました。
〔概要〕
1 期日 平成23年11月16日(水曜日)13時~15時
2 場所 県庁特別会議室A(新行政棟4階)
3 出席者
・市町教育長連合会会長
・県最高情報統括監
・県教育委員会副教育長
・県教育委員会教育情報化推進室長
・県内全市町教育委員会教育長
・連携企業代表(ソフトバンクグループEDUAS社 社長)
4 議事内容
(1)県の取組状況 教育情報化推進室長 福田孝義
ア 事業全体の状況
- 致遠館中学校の機器等の整備が完了したため、ICT利活用教育のさらなる発展のために、致遠館のユビキタスルーム等を様々な方に見学していただいている。
- 教育情報化推進リーダーの研修(全5回)が11月17日に修了する。今年の対象は、小学校教諭(106名)だが、来年は中学校・高校教諭中心に研修を行っていく。今後3年間で、各学校に少なくとも1人は修了証を持っている体制にしたい。
- 財団法人コンピュータ教育開発センターの「ICT夢コンテスト」において、『あきちゃんの魔法のふでばこプロジェクト』(東京大学(ソフトバンクグループEDUAS社支援)と佐賀県が連携しているプロジェクト)に取り組んでいる金立特別支援学校が、11月15日付で総務大臣賞に選ばれた。
イ 実証研究の状況
〇致遠館中学校
- 機器の整備(ユビキタスルームの設置、全普通教室に電子黒板の配置、生徒は一人ひとりにタブレットPCを貸与)が全て終わっている。
- 授業の内容によって、高頻度で活用されている。
- 校内研修を通して、先生たちのスキルが上がっている。
〇中原特別支援学校
- 病弱の中等部において、短期間で元の学校へ復学する児童を対象にタブレットPCを活用した授業を行っている。
- 数名は病院・家庭等で使っている。
〇玄海町、太良町
- 研修会等を中心に取組が進んでいる。
- 佐賀県教育委員会と市町教育委員会が実証研究の協定書を交わしている。必要な機器等については県教育委員会から貸与するという形になっている。
〇その他
- 武雄青陵中学校が、フューチャースクール推進事業の中学校版として8月30日に選ばれている。機器の整備を間もなく行う予定である。
- 支援員については、現在22名を県が雇用しているが、共同実証研究だけでなく『魅力ある学校づくり推進事業』も踏まえて、他の市町にも配置している。
ウ 今後の取組方針
- 佐賀県総合計画2011において、平成23~26年度にかけて機器の整備、人材育成、実証研究を全県で取り組んでいく方針である。
- 「活用ガイドブック」を今年度中に作成して、全ての小中学校、県立学校の教職員に配布する予定。9名の推進員の先生方を中心に仕上げをしている。また、今年度は中学校を中心に実証研究をしているが、来年度は高等学校に拡大していく。
- ICT利活用教育を進めるにあたっては、教育工学という視点が必要である。これまでの良さを生かしつつ、何をどう変えていけばいいのか議論していきたい。
- 管理職に求められること
Step1)ICT利活用場面をイメージする
Step2)学校のICT環境(機器や人材育成を含めて)をチェックしておく
Step3)学習目標を設定する
〇何を学ばせたいか。どんな力をつけさせたいか
〇なぜそれを学ばせたいのか。重要なのか
〇目標を達成するため、ICTをどのように活用させるか
Step4)ICT利活用場面を考え、実践する
〇「ICTを使うこと」が目的ではない
〇授業のどの場面でICTを活用するか
- 教師のICT活用力と学力の相関を調査すると、中3生の結果に大きな相関が見られた。中学校の国語・数学に関しては、ICTを活用した指導ができる教師がいる学校ほど学力が高いという結果だった。
- 子どもの学力を向上させるためには、機器の整備と指導力が重要である。行政と管理職が担うべき役割と、教師が担うべき役割がある。
- 現在開発を進めている基幹システムは、来年度中に完成する。市町が参加される場合も、開発費は全て県が負担する。ただし、ランニングコスト(通信費用やデータサーバー等)は市町にお願いする。
- 例えば、タブレットPCを活用して小テストができる。連動したシステムのおかげで、自動採点・自動分析・自動集計が行える。省力化・効率化を図ることができる。
- 現在実証研究を行っている学校だけでなく、来年度は特別支援学校・県立中学校に拡充していく。これで、全県を網羅する。
- 実証研究を行う専門学科A・B高校については、まだ選定していない。また、市町についてもこれから連携・協定を結んでいく予定である。引き続き協議をしていきたい。
- フューチャースクールについては、全国で20校あるが、小中学校の2校が対象となっているのは佐賀県だけである。総務省からも、先駆的な役割を担ってもらいたいと言われている。
エ その他
- 指導者用のデジタル教科書の導入状況については、10月3日の教育家庭新聞に掲載されていたが、デジタル教科書の導入調査が行われている。全国の市区町村のうち、約半数が使っているという結果であった。
(2)各市町の取組状況 各市町教育委員会教育長
以下の項目について、各市町から報告がなされた。
(内容の詳細については、添付の資料をご覧ください。)
【報告項目】
(1)現状
ア 電子黒板の整備状況
イ 独自システムの整備・活用状況
ウ ICT支援員の配置状況
エ 独自取組
オ その他
(2)将来展望
ア 電子黒板の整備状況
イ 独自システムの整備・活用状況
ウ ICT支援員の配置状況
エ 独自取組
オ その他 |
【添付資料】
20市町における現状と展望 (220KB; PDFファイル)
(3)県と市町の連携の在り方(次年度以降の計画)
教育情報化推進室長 福田孝義
- 県の財政も潤沢なわけではない。市町でも独自に取組をされているが、まとまって動けるところはまとまりたい。世界では産業界と教育界の協働が進んでいて、佐賀県でも国だけでなく産業界からもオファーがあっている。財政負担の軽減ができるかもしれないので、スクラムを組んでどういうところが一緒にできるか協議していきたい。
- 韓国で「子どもの声が親の声となり、選挙民の声となる」ということを聞いた。トップダウンのみならず、子どもたちや保護者からの声も後押しになる。
- デジタルテレビがあれば、ちょっとした装置を付加するだけで、安価に電子黒板に転用できる。
- 文科省が進めている学習者用のデジタル教科書について、佐賀県においてはフューチャースクール実証校以外でも使える方向で検討可能ということだったので、国へ働き掛けたい。
- 知事が致遠館を見学されたとき、ICTに抵抗がある先生でも気軽に使える「書画カメラ」を使った授業が一番印象に残ったということだった。先生方のスキルが低いと言われているが、使える場面で気軽に使ってほしい。
- 事業推進の上での課題をさらにこの会で協議していきたい。
(主な意見交換)
〇森本CIOより
- 現在、「佐賀県ICT推進機構」には20市町全てに加入していただき、共同調達を目指している。その取組の一環として、土木設計積算システムを15市町で導入したとき、1/4~1/5にコストを削減することができた。今、図書館のシステムを導入しようとしているが、6市町共同で行って半分のコストになりそうだ。また、市町の職員のパソコンも共同で購入する方向で動いている。電子黒板もまとめて買うことでコストダウンにつながる。
〇福田室長より
- 人事異動で各市町教職員のスキルを均一化することができると考えている。
〇市町教育長より
- 共同調達を行うと、取り扱う金額が大きくなり、かえって地元からの調達が困難になる。地域の産業を育てるという視点も外さないでほしい。