●日 時:平成24年10月22日(月曜日) 10時~12時
●場 所:佐賀県庁新行政棟特別会議室A
●協議会構成委員(25名)
・ 県教育委員会教育長
・ 県最高情報統括監
・ 県教育委員会副教育長
・ 県教育委員会教育情報化推進室長
・ 県内市町教育委員会教育長(県内20市町)
・ 連携企業代表
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推進協議会に先立ち、文部科学省生涯学習政策局参事官付(学習情報政策担当)専門官 太田知啓氏から、文部科学省における教育の情報化推進の取組について説明していただきました。
文部科学省からの説明(太田専門官)
○教育の情報化の目的は、「ICTを活用して分かる授業を実現する」、「子どもたちの情報活用能力を育成する」ことである。ICTを活用していきながら、学校教育の質を向上していくことが教育の情報化の一番の目的である。
○文部科学省では、21世紀にふさわしい新しい学びの姿を昨年の4月に「教育の情報化ビジョン」で示した。また、本年7月には日本再生戦略を取りまとめ、政府全体で教育の情報化を通じて日本を担う人材を育てていこうということで位置付けた。
○本年3月に実施した「教育の情報化に関する実態調査」を見ると、電子黒板の整備状況については近年急激に整備が進んできているが、日本全体でみると1校当たり2台強という現状である。また、「授業中にICTを活用して指導できる教員の割合」についての数値が65.1%であり、先生方が各教科でICTを使って指導できる割合を少しでも高くしていくことが課題である。
○海外に目を向けると、オーストラリアは州単位でデジタル教育革命政策を掲げており、昨年度までに中・高校生に1人1台の端末の整備をし、いろいろな教材の提供や教員の指導力の向上など、国をあげて教育の情報化に熱心に取り組んでいる。さらに、「21世紀型スキル」が世界規模になってきており、創造力や課題解決、情報を使いこなす力などを重視している。オーストラリアでは、カリキュラムの中に「21世紀型スキル」で提言された内容を位置付ける動きがある。こういった世界的な動きも視野に入れながら教育の情報化を進めていきたいと考えている。
○OECDのPISA調査結果については、国として危機感を覚えている。次回の2015年調査では、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシー、問題解決能力の4つの調査についてコンピュータ活用型に移行するということをPISA自体も明言している。コンピュータを使って読解をしたり問題解決したりするということが、グローバルスタンダードになっていることを認識して、文部科学省はじめ学校教育関係者と協力しながら取り組んでいく必要がある。
○文部科学省では、総務省のフューチャースクール推進事業と連携して、学びのイノベーション事業を実施している。佐賀県内では西与賀小学校と武雄青陵中学校の2校を指定し、1人1台端末や電子黒板を活用した学習、文部科学省が開発した学習者用デジタル教科書・教材を使って授業を進めている。実際に学校現場の先生方に使ってもらいながら、より良い指導方法や学習者用デジタル教材を開発することが重要である。
○佐賀県では来年度、教員採用試験で電子黒板を使った模擬授業を実施されると聞き、非常に期待している。文部科学省でも特に、これからの新しい先生方がICTを使って課題を解決したり、子どもたちがICTを使って学習すること等をうまく指導できるよう、大学の教員養成課程でICTを活用した授業をきちんと実施しておく必要があると考えている。
○情報活用能力の育成については、単に操作技能だけでなく、情報を主体的に適切に活用できる能力を育むことが大切であり、新学習指導要領で位置付けている。情報活用能力が子どもたちにどれくらい身に付いたかをきちんと検証して指導に生かすため、来年度、情報活用能力調査の実施を予定している。現在、協力者会議で実施方法を検討中であり、佐賀県の川﨑教育長もメンバーである。
○最後に、学校のICT環境の整備についてであるが、教育の情報化については地方交付税措置がされており、文部科学省が掲げた整備目標をもとに地方交付税措置を示してきた。コンピュータは学習指導要領に位置付けられた活動であり、子どもたちがしっかりと情報活用能力を身に付けるために必要なものであるため、着実に整備を進めてほしい。また、国では、教育の情報化対策だけでなく教材整備計画も定めている。子どもたちがしっかりと勉強するための環境を整え、教育活動がより充実するように進めていただきたい。
○佐賀県では、県と市町が連携して教育の情報化に熱心に取り組んでいると伺っている。これからもICT活用先進県として、ますますICT利活用の推進に努めていただきたい。文部科学省だけでなく、全国も非常に注目しているので、着実に計画が進められるよう尽力してほしい。
[意見交換]
○(多久市教育長)我々は、財政のことが一番気になっている。国として閣議決定をしながら進めているということで、計画をしっかり進めていただきたい。
○(太田専門官)市町村が地方交付税を予算化することは、全国どこでも難しい課題であると考えている。我々としても、交付税の趣旨や必要性を首長にしっかり理解してもらうよう働き掛けたい。
現在、総務省とも相談しながら、直接首長に働きかけるために全国を回りたいと考えている。教育長には、教育の情報化の必要性はかなり認識していただいているし、毎年の予算折衝で努力していただいている。引き続き首長部局への後押しをしたい。
○(最高情報統括官)国の財政措置は必要である。首長の理解を進めたりICT利活用教育の必要性を説くということでは、私も力になれると思う。
これまで、先生や生徒にとってIT教育というのは、スキルを覚えることが重点的であったと思うが、今回の話では、情報モラルや情報活用能力の育成につながっていくということで、大変喜ばしく思っている。そこで、情報活用能力とは、どんなことを評価指標として得ようとしているのか。
○(太田専門官)PISA調査を参考にし、情報活用能力調査を作成する。ICTの操作技能というよりも、正しい情報を選べるか、情報をきちんと読み取り解釈したり新しい情報を作ったりできるかを見る。さらには、情報を頭の中で処理したり友達や他人とコラボレーションしたり発信したりコミュニケーションしたりする力が非常に大事になる。そういったものを課題解決の場面に織り交ぜたような問題を作成し、情報活用能力の指標としたい。
ICTを使うことによって、プロセスを保存したり考えの変化や深まりを見たりできるので、そういったものを分析する。情報活用能力調査に関する協力者会議に川﨑教育長も委員として入っていただいている。
○(最高情報統括官)協力者会議でどんな話がされているか川﨑教育長から情報をいただき、私も川﨑教育長を通じて提案できることがあると思う。
情報モラル・情報セキュリティについて、問題を解決するには3つ必要である。一つは技術で防ぐ、二つ目は法律で防ぐ、三つ目は教育啓発をして一人一人の意識をあげて防ぐことである。小・中学校の道徳の時間は教育啓発の部分であろう。技術的なことや著作権等の法律的なことは、他教科で学ぶことになるのだろうが、小・中学校の間はモラルの醸成に重点を置き、法律などは後回しでいいと考えているのか。
○(太田専門官)従来から、情報化が人間や社会に及ぼす影響や問題については、小学校の社会科、中学校の公民の授業で勉強している。また、情報技術の観点は中学校の技術分野で学ぶ。今回、道徳で紹介したのは、今までの学習指導要領になかったからである。道徳の面からも情報モラルをきちんと学ぶ必要がある。他教科でも情報モラルを扱う。各教科を通じて情報モラルを養うことが大切である。
○(川﨑教育長)学校の情報化を進める。子どもたちが安心して使える環境を整えなければならない。嵐の中に無防備でさらすようなことをしてはならない。環境としての情報化が必要ということだ。
情報活用能力の育成が必要だ。情報化社会を生きるスキルを身に付け、社会人として生きていく力を育む。重要な要素の一つである。
教育における効果の発現の高度化、効率化を求めていく。そのためには教育工学を進める必要がある。その意味で教授法の研究が必要になる。機器を整備するだけではいけない。子どもたちには、コミュニケーション能力を育成することもまた重要だ。現在使用している黒板をなくすつもりはない。
実態調査については、どういう調査項目が必要か。
登校できない子どもたちへの対応にも有効だ。
財政負担が大きな問題だ。現状では、教科書、電子教科書の二重の負担。現場からの声を踏まえなければならない。
教育委員会は技術的知見を持たない。情報課等、他課、他局の協力を得ながら、機器の開発と教育内容の充実に努めなければならない。ソフト面、ハード面が一体となって進める。医学分野にも似たところがある。技術、機器と教育工学の両側面から対応する。
第2回推進協議会内容
1 開会
2 川﨑教育長挨拶
ICT利活用教育は、佐賀県教育の喫緊の課題である。佐賀県においても不登校、いじめの問題、学力向上の問題等々の教育課題を抱えている。これを解決するにあたりICT利活用教育が多くの可能性をもっている。ただし、ICT利活用教育がすべてであるとは思っていない。これまでできなかったことが、ICTを利活用することによってできる。さまざまな教育課題の解決につながるという強い思いである。
どういう方法を取っていけば、佐賀県の子どもたち、佐賀県の教育がより良く進むのかという一つの命題の中で、ICT利活用教育を推進していく。
文部科学省に対して申し上げているのは、ICT利活用教育がすべてという認識に立つものではないが、多くの可能性を秘めている。先進的に取り組んでいくことが佐賀県の教育につながる、日本の教育の活性化につながるとの強い思いである。
先進的ICT利活用教育推進事業もおおよそ山場を迎えた。推進協議会での活発な論議を通じて、本事業がより良いものに、そして更に発展的につながっていくことを期待している。
3 新会員の紹介
鳥栖市教育委員会 天野昌明 教育長 (平成24年10月1日付)
4 議事
1 平成24年度事業の取組について
(1)県の取組(7月移行の事業取組状況) 資料1参照
(教育情報化推進室長)
韓国の先進事例を佐賀県でも活用したいとの思いで、10月10日~12日に、韓国教育学術情報院(KERIS)を訪問した。また10月15日~17日には、KERISから来ていただき、韓国の教育事情を踏まえた取組を進めていきたいと考え、現在、協議を進めている。
平成23年度から26年度までの事業計画に沿って、機器整備、基幹システムの構築、人材育成に取り組んでいる。
(2)新しい教育情報システムの構築状況と展開見込 資料2参照
(教育情報化推進室長)
基幹システムは、先生方の校務を支援し効率化し先生方が生徒と向き合う時間を増やすための校務支援システムと、生徒と先生の総合通信のベースとなる教育管理システムということで学習管理、教材管理を合わせたシステムの開発を進めている。校務管理システムは、最終的には指導要録までの情報を一元的に管理するものである。その他、従来から提供している学校HPや文書管理等の更新についても予定している。
県の基幹システムを市町が利用するにあたっては、市町の公共ネットに接続して提供していく。市町のネットワークについては、今後、市町の情報課等に相談する。将来は、県のシステムを活用していただき、先生方が生徒と向き合える時間がより一層増えるような仕組みを目指している。
開発のスケジュールについて、平成25年4月の稼働を目指している。まずは、出欠管理や時間割、行事など、校務の代表的な機能を提供する。その後、通知表作成や指導要録、各種証明書の作成等の機能を順次開発する予定である。
[意見交換]
○(佐賀市教育長)全県的な人事異動がある。動けるところは、各市町が一緒に取り組んでいけたらいいと考えている。そこで、義務制の小中学校のニーズや要望、様式などに対して十分な情報収集をお願いしたい。
○(教育情報化推進室長)現在、市町を訪問し調査をしている。県内全市町をつなぐために、まず県立をフィールドに使い、使える機能を市町で使ってもらいながら、意見をいただき、改良を加え、成長型システムとして完成させていく。
○(多久市教育長)県としてベースを作ることが必要。市町のネットワークがどうなっているのかをしっかりつかんでいただく。出来上がってどうかでは結果的に差がありすぎるかもしれない。
○(教育情報化推進室長)市町の情報を収集しながら、指導要録の作成を目標にしてどれをデータとして活用するかを考えていく。
(3)各市町の取組(電子黒板および学習者用端末の整備状況) 資料3参照
(教育情報化推進室長)
教育情報化推進室が全市町教育委員会に問い合わせをし、取りまとめをした一覧表(資料3)を見ていただきたい。
2 教職員研修について 資料4参照
(1)教員のICT活用指導力調査について
(教育情報化推進室長)
我々は、特に「B授業中にICTを活用して指導する能力」「C生徒のICT活用を指導する能力」の2点を中心に調査・分析をし、研修を実施しているところである。ICT活用指導力を上げるためには、各学校で日常的に研修が行われ、その成果が日常的に授業の中で生かされることが大切である。分析結果では、特にC項目で厳しい状況にある。まずは現場の先生方にICT利活用教育を理解していただき、必要な場面で使える力を身につけていただきたい。
[意見交換]
○(武雄市教育長)ICTを用いて指導する能力の調査結果について、他の項目に対してここだけ全国平均を割ることはないだろう。集団でやるべき研修、切実な状況になって初めて身に付くこともある。レベルに即応した支援体制が必要である。
○(教育情報化推進室長)同調査結果については、県立学校の数値が下がっている。研修については、こうしたことも踏まえ長期展望をもって取り組みたい。
○(最高情報統括監)調査には、数値的に客観的な分析ができるような工夫が必要である。
(2)平成24年度第1期研修及び第2期研修について
(教育情報化推進室長)
各学校では、学校長と推進リーダーがスクラムを組んで、全職員がICT利活用教育を理解しICTを活用できるよう、PDCAサイクルを踏まえてスキルアップしていく。
1期研修については、本事業の理解を目的に全員一律の研修を実施した。2期研修については、各学校の整備状況や先生方のスキルを十分踏まえ、研修日程や研修内容について選択できるようにしたい。
1期リーダー研修を5日間実施したが、各学校で実施された校内研修は平均で2回~3回であった。全職員への伝達が十分なされていないと考える。市町教委からも積極的に働きかけてほしい。
3 全国学力・学習状況調査の結果について
(教育情報化推進室長)
ICT利活用教育推進事業については、ひとえに佐賀県に学ぶ児童生徒の学力向上に資することを目的に実施している。子どもたちの学力向上に反映されてこそ本事業の成果と考えている。
全国学力・学習状況調査結果によると、佐賀県は全国平均に限りなく近いが後れをとっている。全国平均を超えたい。県内のある町では、電子黒板を導入する前と導入した後を比べると、導入後は成績が伸びている。ICTを利活用した授業を行っていることも学力向上の要因の一つであると考える。
4 その他
[意見交換]
○(佐賀市教育長)オーストラリアの9年生以上は、日本の中学3年生以上と考えてよいか。1人1台の学習者用端末を持たせるに一番ふさわしい学年はどこだと考えられるか。ネット依存やモラルの問題も端末の所持に伴い考えなければならない。
○(太田専門官)オーストラリアは、州によって異なる教育制度を持っているので学年を一律に説明できない。州の教育コースにあったものを端末として相当学年に配備しているというのが現状だ。学習形態も個別学習が中心で、Windows版やアンドロイド版など使用に関するガイドブックを作っている。Webで教材を配信している。
学習者用端末は、どういう学習活動で利活用するか、どこで用いると効果的かを考えるものだ。そういう意味でICTは可能性がある。低学年にはバランスが必要だというのも事実だ。最適のバランスはこれから模索することになる。それぞれの発達段階、地域の実情にあわせて考えてほしい。
ネット依存、家庭における深夜のインターネット使用などは考えるべき問題だ。子どものうちから自分の生活にどのように位置付けるか、自覚的な人間を育てる必要がある。家庭との連携を取りながら学校で教えていく。実践の場を与えながら家庭でもルールを作る。子どもたちを守る視点が必要だ。学びのイノベーション事業においてワーキンググループを設置し、セキュリティなどの利活用と同時に検討を進めている。
○(教育情報化推進室長)韓国では、小学校低学年では、いわゆるパソコン教室で基本的なスキルを身に付け、そのあと1人1台端末の環境になっていく。現在、県でも東京大学と連携して特別支援学校における端末の使い方を研究しているところである。教育効果を理解しながら教員は指導する必要がある。
○(多久市教育長)ICT機器の導入は多額の費用を要する。ソフトの充実とともに教師が使わざるを得ない状況をつくることが重要だ。国としてバックアップしてほしい。現在は、平成9年に導入したパソコンを使い、小学校では学級だよりの作成、中学校は成績処理に使用している。しかし、授業で使われないと学力は上がらない。全ての教職員が利活用できるようにする必要がある。
○(太田専門官)現在、来年度の概算要求をしている。参考にしたい。
○(教育情報化推進室長)当時のパソコンは校務管理を中心としたものであった。今回構築している基幹システムは、LMS、子どもたちの日々の学習管理を行えるものだが、それは端末や電子黒板があってこそ効果を発揮する。秋田県は、教育センターから学習プリントを配信している。LCMSにいろいろな学習素材をのせている。ドリルが必要なくなる。日々のプリントが打ち出せる。全国レベルの問いを確認することもできる。3つの機能を統合することで、成果を見ることができる。現在、教育センターが持っているものも入れ込んでいく。早稲田佐賀中学校・高等学校では、英語教材で自分のIDパスを持たせ、学校のみならず寮などでも学習できるようにしているのは参考になる。
5 閉会