江戸時代の剣豪・宮本武蔵が著した『五輪書』。現代でも広く知られており、皆さんの中には読んだことがある人もいるのではないでしょうか。
この『五輪書』とともに二大巨峰と評価される武道書に『兵法家伝書』があります。これは、徳川家で剣術を教えた柳生宗矩(やぎゅうむねのり)が柳生新陰流の技法や心のあり方を記したものであり、佐賀とも縁のある書物と言えます。
当時、全国に名を馳せていた柳生の門に入って腕を磨き、この兵法書を授かったとされる四人のうちの二人が、佐賀藩初代藩主・鍋島勝茂とその子・元茂でした。後に小城鍋島藩の初代藩主となった元茂は、代々柳生新陰流を伝え、小城では幕末まで盛んに学ばれていたといいます。
柳生の言葉は、佐賀藩士の心得がまとめられた『葉隠』にも残されています。
「人に勝つ道は知らず、我に勝つ道を知りたり」
剣の道を極めると、鍛錬を通じて自分はまだまだ不十分であることを知る。だからこそ、一日一日と稽古に取り組み、一生をかけて自分を磨き上げなければならない。すなわち、他人に勝つことではなく、自分自身に勝つことが大切であると説いています。
日々稽古に励んでいる皆さんも、試合で負けることもあるでしょう。そうした時、勝敗にこだわるのではなく、自分の弱点を知ることができたと考えれば、それを克服するために、前を向いて稽古に取り組むことができます。
自分に勝つということは、剣道の技術を向上させるだけでなく、人としての成長にもつながるのだと思います。
今年で40回を数える大麻旗争奪剣道大会。この歴史ある大会を目指し、仲間とともに稽古を重ねてこられた皆さんが、日頃の成果を大いに発揮され、本大会がさらなる成長のための舞台となることを心から願っています。