第1回佐賀県伝承芸能祭の開催にあたり、県内外の各地から、特色ある伝承芸能団体の皆様にご出演いただき、多くの来場者を迎えて盛会のうちに終えられたことを、心から感謝申し上げます。
「命には終りあり、能には果てあるべからず」
これは、能を大成した世阿弥(ぜあみ)の言葉で、芸を極めることに終わりはなく、年を取ってもさらに工夫ができることを意味しているそうです。しかし、私は、もう一つ意味が込められているように思います。それは、人から人へ時代を超えて継承されていくということです。
能という芸が、600年もの間、多くの演者によって演じられてきたことこそ、その証であり、同じことが伝承芸能にも言えるのではないでしょうか。
佐賀県には、各地に独自の伝承芸能が存在し、今も大切に受け継がれています。以前、ある地区を訪問した時、子どもたちが高齢者の方々の指導を受け、いきいきと稽古に取り組んでいる様子を見て、とても心強く思うとともに、住民の方々が世代を超えて思いを一つに演じることで、地域の結びつきは強まっていくのだと感じました。
一方で、人口減少やライフスタイルの変化、価値観の多様化などにより、担い手の減少といった承継の問題に直面している地域も少なくありません。だからこそ、引き継がれてきた伝統の素晴らしさを実感してもらい、いかに多くの人を巻き込みながら発展させていくのかを、今、考えなければならないのです。
昨年、明治維新150年の節目に開催した「肥前さが幕末維新博覧会」。時代を切り拓いた先人たちに思いを馳せるとともに、自分たちが暮らす地域や人、伝統にあらためて誇りを持つ機会となったのではないでしょうか。今回の芸能祭においても、ふるさとを誇りに思う気持ちが醸成され、そして、迫力あふれる舞台が県民の皆様の心に響き、伝承芸能への扉を開くきっかけになっていれば嬉しく思います。
地域の行事と密接に関係している伝承芸能は、地域をつなぐ「継手」とも言えるでしょう。
県民の皆様、地域の方々と手を取り合い、この大切な佐賀の「宝」を”果てない”未来へつなげていきましょう。