令和元年6月定例県議会の開会に当たり、最近の動き、提案事項などについて御説明申し上げます。
令和という新たな時代の幕が開き、平成から継承した戦争のない平和な社会をしっかりと次の世代へとつないでいくとともに、近年頻発する災害に備え、災害に強い安心して暮らせる地域を築いていくという想いを強くいたしております。
今、時代は大きく変わろうとしています。グローバル化・ボーダレス化の中で、ヒトとモノが世界を行き交い、佐賀と世界が直接つながる時代を迎え、佐賀がその潜在力を発揮することで世界に飛躍できる好機だと考えています。そのためには、佐賀だからこそ持っている文化、歴史、伝統、人と人の結びつきなどを大切にし、守るべきものはしっかりと守り、あわせて、新しいものを取り入れ、交流を広げることや、多様性を力に変えることで様々な分野でイノベーションを起こしていくことが大事になってまいります。こうした認識のもと、「人を大切に、世界に誇れる佐賀づくり」を基本理念に、県民の皆様と共に歩みを進めていくため、今後4年間の県政運営の基本となる「佐賀県総合計画2019」を策定することとし、今議会にその計画案を提出いたしております。引き続き、「現場」「ミッション」「プロセス」をキーワードに、現場を第一に考え、政策本来の目的を見失わず、政策決定のプロセスを大切にする県政を推進してまいります。この計画の基本理念にある「人」を、全ての施策の基軸に置きながら、「安全・安心のくらし さが」、「文化・スポーツ・観光の交流拠点 さが」など6本の政策の柱を据えて施策を展開することで、県民の皆様が、佐賀への誇りを胸に「志」を持って様々な分野で輝く「佐賀の時代」を創り出してまいります。
続きまして、当面の諸課題への対処方針について申し上げます。
まず、佐賀空港の自衛隊使用要請について申し上げます。
防衛省からの要請については、昨年8月24日に、県として、「防衛省からの要請を受け入れ、公害防止協定覚書付属資料の変更について有明海漁協と協議をさせていただく」という判断をし、有明海漁協に対して協議の申し入れを行い、協議の時期などについて調整を進めてまいりました。4月末にノリ漁期が終了したことを受け、5月24日に有明海漁協に赴き、今回の判断に至った経緯や理由、防衛省との合意事項の内容などについて説明いたしました。その概略について申し上げます。
今回の防衛省からの要請を検討するにあたっての私の基本認識として、
- 「国防」は、平和のために大切にしていかなければならないこと、そして、県民の生命と財産を守り、生活の土台になっていること
- 「有明海漁業」は、県民の誇りであり、子や孫へ、そしてその先の代へとしっかり引き継いでいく大切な財産であること
- 今から30年ほど前、様々な、そして厳しい議論を経て締結された公害防止協定は大変重いものであり、県は、その覚書付属資料にある佐賀空港を自衛隊と共用しないとする考えをずっと守り、これまで県が主体的に自衛隊との共用を考えたことも、打ち出したこともなかったこと。こうした中、昨今の安全保障環境を踏まえ防衛省から今回の要請があり、県としてしっかりと対応する必要があること
を申し上げました。
次に、検討のプロセスを説明いたしました。特に防衛省との交渉については、県議会での議論や決議において、さらには有明海漁協をはじめ多くの関係者からも、まずは県が判断すべきだとの意見を頂いていたことから、
- 有明海漁業の振興策などについて、漁協と相談できる状況ではなかったこと
- また、県が受け入れると判断した後に防衛省と交渉を始めても、こちらが求めるようなものを得るのは難しいと考え、様々な機会に漁協からいただいた要望などを結集して交渉に当たったこと
さらに、交渉を経て最終的に合意した内容について、
- 漁協、防衛省、そして県も参加する協議会を設置し、県が漁協のパートナーとして、直接防衛省に意見を伝え、必要な対策や補償を行わせること
- 有明海や本県の上空では、空中給油訓練や発着艦訓練といった過酷な状況下での訓練は行わないことを、直接、防衛大臣に確認したこと
- 100億円の基金については、防衛省が着陸料を支払うという仕組みを利用して、有明海漁業の振興を目的に創設することで合意したものであること
などを説明いたしました。
そして、私が、平成27年2月に無色透明の意味で「白紙」という姿勢で初めて防衛省から説明を受けて以来、
- 計画の将来像・全体像の明確化のための防衛省との5往復にわたる質問・回答のやり取り
- 環境への影響など様々な論点ごとに県の確認・検討状況を整理した論点整理素案のとりまとめ
さらには、
- オスプレイの事故が続いたことによる機体の安全性などについての精査・確認作業
など、3年半にわたる防衛省とのやり取りや幅広い観点からの検討を経て、県としての判断に至ったことを申し上げました。その上で、かけがえのない有明海を次の代へ引き継ぎ、ずっと繁栄するようにしていきたいとの私の想いを伝えるとともに、改めて公害防止協定覚書付属資料の変更について要請いたしました。
私からの要請を受けて、組合長からは、
- 公害防止協定を結んだ先人の想いがあり、簡単に返答できない
- 本日の知事の説明を踏まえ、どのように対応するのか検討したい
との発言を頂きました。県としては、引き続き、誠意をもって漁協と協議してまいります。
次に、有明海の再生について申し上げます。
諫早湾干拓関連訴訟については、潮受け堤防排水門の開門を命じた平成22年の福岡高裁判決を国が受け入れたことから、漁業者の皆様は開門を待ち望んでこられました。しかしながら、平成29年4月に、国が開門しない方針を明確にしたことや、昨年7月に福岡高裁が、確定判決に基づく開門の強制執行を認めない旨の判決を出したことなどから、開門調査の実現は非常に厳しい状況が続いています。有明海漁協も県も、有明海の再生のためには開門調査を含む環境変化の原因究明が必要という想いは変わりません。漁協は、そうした想いを抱きながらも、福岡高裁の和解勧告で示された方向性に沿った全体的解決と再生事業の継続などの要望事項の実現を望まれています。県としては、国に対して、漁協の決断の重みを受け止め、その要望を実現するよう求めてまいりました。このような中、最高裁が昨年7月の福岡高裁判決に対する上告を受理し、口頭弁論が開かれることとなりました。開門を待ち望む漁業者の皆様の心の拠り所であった確定判決を、漁業権の消滅という形式論で無効化した福岡高裁の判決に対し、今後、最高裁がどのような審理をし、判断をするのか重大な関心を持って見守ってまいります。
また、水産資源の回復は漁業者にとって待ったなしの課題です。昨年度のノリ養殖については、漁業者をはじめとする関係者の努力により、生産枚数、生産金額ともに16年連続の日本一が達成されました。漁船漁業については、資源管理や漁場環境の改善に取り組んできたサルボウ、ウミタケは、生息数の増加など回復の兆しが見られる一方で、タイラギは休漁が続き、昨年度22年ぶりの操業となったアゲマキも今年度の操業は見送られています。このため、国と有明海沿岸4県が協調し、漁場環境の改善や人工種苗の放流を引き続き行うとともに、タイラギやアゲマキについては、環境の良い漁場に稚貝を移植する本県独自の取組を加えながら、一日も早い資源の回復に向け努力してまいります。
私は、様々な機会において漁業者の皆様と意見を交わしてまいりました。漁業者の皆様の、漁に対するひたむきな気持ちや、代々受け継いできたという誇り、有明海に対する想いを強く感じています。宝の海である有明海の再生は、国や県、市町、漁業者など有明海に関わるもの皆で取り組む課題であり、今後も訴訟の状況や国の動向を 注視し、関係者と意見交換をしながら有明海の再生に向けて全力で取り組んでまいります。
次に、原子力発電について申し上げます。
玄海原子力発電所の3号機、4号機については、それぞれ昨年の5月及び7月に通常運転が開始されており、3号機については、現在、法令に基づく定期検査が実施されています。今年4月には、原子力規制委員会において、航空機の衝突などのテロに備えた「特定重大事故等対処施設」の設置が許可されました。この施設の設置については、九州電力から県に対して安全協定に基づく事前了解願いが提出されています。このため、県では、規制委員会の審査結果を確認するとともに、6月4日には原子力安全専門部会を開催いたしました。専門部会では、委員からの規制基準の考え方や施設を設置する地盤の状況などについての技術的・専門的な質問に、九州電力や原子力規制庁が回答する形で議論がなされました。県としては、これらの議論を精査・確認し、今後、事前了解願いについて判断してまいります。
また、1号機については、廃止措置の作業が行われており、2号機についても、4月9日に九州電力から電気事業法に基づく届出が国へ提出され、廃炉が決定しました。私は原子力発電への依存度を可能な限り低減し、原子力発電に頼らない再生可能エネルギーを中心とした社会が実現できれば素晴らしいという考えをかねてから表明しており、1号機、2号機の廃炉は、その考えと方向性を同じくするものです。原子力発電所とは、これからも長い年月にわたり関わり続けなければなりません。常に緊張感を持って慎重の上にも慎重に安全対策に取り組むことを九州電力に求めるとともに、県も含め全ての関係者の中に気の緩みが生じることがないよう万全を期してまいります。原発立地県の知事として、県民の安全を何よりも大切に、玄海原子力発電所と真摯に向き合い続けてまいります。
次に、九州新幹線西九州ルートについて申し上げます。
整備新幹線スキームにより進められている西九州ルートは、地元自治体である佐賀県、長崎県を中心とした「合意」があり、それを基本として整備されているものです。これまでに、
- 武雄温泉-長崎間に新線を整備すること
- 新鳥栖-武雄温泉間は在来線を利用すること
- 令和4年度に武雄温泉駅での対面乗換方式により開業すること
- 佐世保線の肥前山口-武雄温泉間の全線複線化を行うこと
などについて合意しています。
このように、在来線を利用することで合意している新鳥栖―武雄温泉間に関し、国によるフリーゲージトレインの開発が難航したことから、与党検討委員会において、「令和4年度の開業後の整備のあり方」が議論されており、昨年7月の「中間とりまとめ」において、西九州ルートへのフリーゲージトレインの導入は断念せざるを得ない、フル規格かミニ新幹線のいずれかを選択する必要がある、とされました。このことについて、これまでも佐賀県としては、フル規格での整備は受け入れられないこと、また、フルかミニかを選択しなければならない立場にないことを申し上げてまいりました。このような中、与党検討委員会では、6月にも整備方式について素案を決めるとして、4月26日に、改めて本県の意見を求められました。このため、新鳥栖-武雄温泉間については、
- 在来線を利用することで合意したものであり、新幹線整備を求めたことはなく、現在も求めていないこと
- 全て佐賀県内の区間であり、地元負担を義務付けられる佐賀県が新幹線整備を求めていない中で、前に進むことはあり得ないこと
などの意見を申し上げました。
西九州ルートについては、これまでも様々な御意見に真摯に向き合い、在来線を大事にしたいという強い想いを持ちながら、西九州の一体的発展に向け関係者と知恵を出し合い、ギリギリの「合意」をしてまいりました。まずは、令和4年度の西九州ルートの開業による効果を最大限生み出し、全県的な地域振興につながるよう市町の取組をしっかりと支援してまいります。また、開業により特急本数が大幅に減ることになる長崎本線沿線地域の振興に沿線市町と一緒になって取り組んでまいります。
なお、新鳥栖-武雄温泉間は全て佐賀県内の区間であり、特にフル規格での整備となれば、莫大な財政負担にとどまらず、本県にとって大事な在来線のあり方、ルート、地域振興など様々な問題が複合的に横たわっています。こうしたことについて白地から話をするようなもので、通勤・通学をはじめとした県民生活はもとより、佐賀県を輝かせ新時代を切り拓いていくための様々な施策への多大な影響が避けられません。このため、多面的な議論が必要であり、短期間で方向性を決められるような簡単なものではないと考えています。様々な意見に真摯に向き合い、時代の趨勢を見通しながら、本県にとって何が一番望ましい姿なのかをしっかりと考えてまいります。
次に、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定及び日EU経済連携協定(EPA)などについて申し上げます。
県内への影響については、これまで11回にわたる「佐賀県TPP・日欧EPA等経済連携協定対策本部会議」の開催などを通じて情報共有を図っております。協定の発効以降、牛肉や豚肉などの輸入量が増加する動きが見られており、国内の市場価格への影響を不安視する声も聞かれることから、今後も情報収集に努め、関係者の意見を聴きながら農林水産業をはじめとした本県の産業が持続的に発展していけるようしっかりと取り組んでまいります。また、日米両首脳において早期の協定締結に向けた議論を加速させる方針で一致している日米貿易交渉については、農業や自動車の関税交渉を巡る日米の隔たりは大きいとされていることから、交渉の行方を注視してまいります。
次に、城原川ダム事業について申し上げます。
昨年度から「建設段階」へと移行し、現在、国において、ダム建設の具体化に向けた地質調査やダム本体の設計などが進められています。こうした作業が進むにつれてダム事業の具体的な姿が明らかになってくるものと考えています。こうした中、水没予定地域の皆様からは、一日も早く事業の全体像と住民の生活再建の道筋を示してほしいという切実な想いをお聴きしています。県としては、地域の治水対策の推進のため、一日も早いダム完成を目指して、より一層の事業推進と必要な予算の確保を引き続き国に働き掛けてまいります。あわせて、将来の生活が見通せないという住民の皆様の長年にわたる不安にしっかりと寄り添い、住民お一人お一人が将来を思い描いて前に進んでいけるよう、国や神埼市と連携し、きめ細やかな支援を心掛けてまいります。
次に、国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会について申し上げます。
大会のメイン会場となるSAGAサンライズパークの整備については、今年度、中核施設となるSAGAアリーナや国際大会仕様の水泳場SAGAアクアの新築工事などを予定しており、今議会に、SAGAアクアの工事請負契約に係る議案を提案しています。
令和5年の大会開催を前に、今年、茨城県で開催される国民体育大会の出場をかけた九州ブロック大会が本県で開催されます。7月から8月にかけて30の競技を予定しており、県民の皆様に、国スポ・全障スポの本県開催への興味・関心を高めていただく機会になればと考えています。4年後の開催をイメージしながら官民一体となって準備に万全を尽くしてまいります。
本県スポーツ界では、佐賀のチームの活躍が続いています。サガン鳥栖が、イタリアで開かれたU-15の大会でイタリアの強豪ユベントスなどを破って初優勝を飾り、また、昨年発足した3人制バスケットボールのプロチーム「カラツレオブラックス」が、180チームが参加する国内最大の大会で優勝し世界大会に出場するなど、世界で躍動しています。また、「久光製薬スプリングス」が2年連続7回目のVリーグ優勝を飾り、バスケットボールの「佐賀バルーナーズ」がB3リーグ入りを決めています。こうした佐賀を拠点とするアスリートの活躍は、県民に勢いを与え佐賀への誇りの醸成につながっていくものと考えています。こうしたことを見据えて、トップアスリートの育成と、それを通じたスポーツ文化の裾野の拡大を図るSAGAスポーツピラミッド構想、通称SSP構想を進めています。スポーツエリートアカデミーSAGAを核とした人材育成として、例えば、18の競技を対象に国内の一流指導者と県内指導者が共に選手を育てるプログラムを展開しているほか、世界レベルの選手育成で知られるアメリカの「IMGアカデミー」のコーチによるテニスクリニックを開催しています。また、アスリートや指導者の県内就職を支援するため、無料職業紹介事業「SSPアスリートジョブサポ」を実施しています。こうした取組は、スポーツ関係者だけでなく、これまでスポーツと関わりがなかった企業・団体の参加や協賛が必要です。その輪を広げながら、佐賀で夢を実現していくアスリートを全力で応援し、佐賀から世界に挑戦するスポーツシーンを広げてまいります。
続きまして、最近の県政の主な動きについて御説明申し上げます。
まず、九州佐賀国際空港については、平成30年度の利用者数が約82万人となり6年連続で過去最高を更新しました。国際線については、国の評価において、「訪日誘客支援空港」に認定された27の地方空港の中で、最高レベルの評価を獲得しており、着実に利用を伸ばしている本県の取組が評価されています。国内線については、全日空が8月9日から18日までの10日間、東京便を1日1往復増やし6往復での運航を計画しており、増便に伴って必要となる空港運用時間の延長に係る条例の改正案を今議会に提案しています。今回の増便が実現すると、羽田発福岡行きの最終便よりも1時間ほど遅い21時発のダイヤとなります。首都圏での滞在時間をより長く確保できることから、新たな需要の開拓につながる可能性に期待するとともに、通年での増便に向けたステップにしていきたいと考えています。
空港の機能強化については、拡張した駐機場を4月から供用開始し、5月には旅客ビル本体の拡張工事に着手しています。また、全国の空港に先駆けて、全日空のイノベーションモデル空港に選定され、ロボットスーツや自動運転などの先進技術を活用した地上支援業務の実証プロジェクトをスタートさせています。このうち、国が実用化を目指す貨物けん引車両の自動運転については、中部、成田、関西と共に九州佐賀国際空港が国内で初めて導入される候補に選ばれています。引き続き、空港利用者へのサービスの質の向上に努めるとともに、利用者の増加と路線の充実に力を入れ、九州におけるゲートウェイ空港として、地域の発展に大きな役割を果たしていけるよう取り組んでまいります。
次に、「さが園芸888運動」について申し上げます。
白石地区では、いちごの新規就農者を確保するためのトレーニングファームが完成し、県外から移住した方を含む20代から30代の4組5名が、地域を引っ張る稼げる農業経営者を目指して「いちごさん」の栽培技術や経営ノウハウを学んでいます。日本一のハウスみかん産地である唐津では、傷の有無や着色などを高精度で判別する光センサーを導入するなど農家の出荷作業の効率化につながるJAからつの柑橘選果場が完成し、4月から稼働しています。また、生産者の期待が大きい柑橘類の新品種「佐賀果試35号」については、令和4年春のデビューに向けて、これまでハウス栽培に取り組んできた11戸のモデル農家に加え、この春からは、圃場などの一定の基準を満たした18戸の農家が新たに栽培を開始しています。今後とも、JAなどの関係機関と一丸となって産地の育成に力を入れ、稼げる農業を実現してまいります。
次に、佐賀の魅力を体感していただく取組について申し上げます。
県では、これまで、佐賀駅での「歩茶」、九州佐賀国際空港での「空見酒」や「海苔の自動販売機」など、佐賀に来て、佐賀を味わって、佐賀の魅力を持ち帰っていただくためのチャレンジを続けてまいりました。6月27日には、佐賀駅に、佐賀ん酒の飲み比べや、有田焼や唐津焼の器を楽しむことができる「SAGA BAR」をオープンいたします。佐賀駅を自分たちが使う駅としてだけでなく、佐賀を訪れた方をお迎えする場、佐賀を知り味わっていただける場として活用し、佐賀らしさを演出することで、引き続き、県産品の魅力を発信してまいります。
次に、新規漁業就業者の確保に向けた取組について申し上げます。
漁業の魅力を多くの方に知っていただき、新たな担い手につなげる取組として、動画投稿サイトを活用した新規漁業就業者の募集に力を入れています。釣りや海が好きな若者をターゲットに、玄海地区での天然真鯛の漁や、アワビ・ウニ、トラフグ、唐津Qサバの養殖などの現場の様子を紹介しています。動画をきっかけに、漁業体験の申し込みがあるなど、漁業への関心が生まれており、後継者を求めている漁業者の下での漁業体験から研修、さらには、新規就業へとつながっていくことを期待しています。
次に、ものづくり産業の振興について申し上げます。
本県は、ものづくりを大切にしてきた伝統があり、世界に誇る技術や製品を有するものづくり企業が多く存在しています。本県の誇りであるものづくりの遺伝子を後世につなぐとともに、ものづくり産業を将来にわたって持続的に発展させていくため、これまで、人材育成や、ものづくりの素晴らしさの発信に取り組んでまいりました。こうした取組により、工業系高校生の県内就職率が3年間で3ポイント上昇するなど、若者が県内で働きたいという意識も広がり始めていると考えています。今年度からは、人口減少やグローバル化、AI、IoT技術の進展など様々な環境変化への対応も見据え、新たに「SAGAものづくり強靱化プロジェクト」を展開することとし、ものづくり産業で働く人を増やす取組や生産性を高める取組に更に力を入れてまいります。
次に、歩くライフスタイルへの転換を促す取組について申し上げます。
県民の皆様や佐賀を訪れる方が積極的に地域やまちなかを歩いていただくことにより、将来にわたって交流が盛んで魅力のある地域となるよう、本年度から、「歩くライフスタイル推進プロジェクト」を始動しました。歩くことや自転車、公共交通の利用などを積極的に選択していただき、地域やまちなかにある魅力に触れることで、その素晴らしさを知り、そのことに共感する人々との交流を促してまいります。歩くことが県民の中で習慣化されていくよう、健康づくりにもつながるウォーキングアプリを活用した取組や、スタンプラリーを通じて子供たちに路線バスを体験してもらう取組を進めてまいります。こうした取組を市町や民間事業者の皆様と連携しながら推進し、人が主役の「歩く社会づくり」「歩きたくなるまちづくり」の実現を目指してまいります。
次に、幹線道路ネットワークの整備について申し上げます。
福岡県大牟田市から鹿島市を結ぶ計画の有明海沿岸道路については、国において、福岡県との県境付近で、筑後川や早津江川を渡る橋梁の工事が進められています。4月には、有明海沿岸国道事務所も設置されており、今後の佐賀方面への事業の進捗を期待しております。県においては、六角川大橋を含む芦刈南インターから福富インター間とともに、佐賀唐津道路と接続するエリア「Tゾーン」の整備を重点的に進めてまいります。
続きまして、提案事項について御説明申し上げます。
今回の補正予算案の編成に当たりましては、当初予算編成後の情勢の推移に対応するため、早急に措置を要するものについて所要額を計上することといたしました。
この結果、補正予算案の総額は、歳入歳出とも、それぞれ、
一般会計 | | 約67億5,500万円 |
特別会計 | 減額 | 約3億7,100万円 |
となり、これを既定の予算額と合わせますと、本年度の予算総額は、
一般会計 | | 約4,556億1,300万円 |
特別会計 | | 約2,009億4,400万円 |
となっております。
次に、予算案の主な内容について申し上げます。
まず、中山間地の暮らしを守る取組についてであります。
路線バスの再編が計画されるなど、移動手段の確保が課題となる中山間地において、「くらしのモビリティ確保推進事業」に取り組みます。再編後の代替手段や運行ルートなどを住民ニーズに合わせて、住民、市町、事業者が一体となって作り上げるための試験運行や、AIを活用した予約制の乗り合いタクシーなどの新たな移動手段の実証事業の経費を補助し、山での暮らしを守り、未来に引き継いでいくための取組を進めてまいります。
また、地域にある大切な商店や伝統的な手仕事などが後継者不足で失われていかないようにするため、「地域の“たから”をつなぐ事業」に取り組みます。地域おこし協力隊として地域に移り住む方が、地域の編集者となって、地域に続く生業を体験しながら取材し、そこで働く人や仕事の魅力をSNSなどで発信してまいります。さらに、こうした地域の生業と移住希望者をつなぐことで、地域の新たな担い手を生み出してまいります。
次に、森林環境を保全する取組について申し上げます。
山は、平野部の暮らしを支え、海への恩恵をもたらす源流であることから、県では、森・川・海はひとつとして、人が豊かな自然環境を未来につなぐ「森川海人っプロジェクト」に取り組んでいます。一方で、全国的に森林所有者の経営意欲の低下や森林整備の担い手不足が進んでおり、県内でも森林の約7割を占める人工林の適切な整備が課題となっています。このような中、3月に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が制定され、市町が森林所有者に代わって森林を整備する財源が確保されました。このうち、市町支援費として県に配分される森林環境譲与税を基金として積み立て、市町を支援するアドバイザーの配置や林業経営体の技術力向上を図る研修会の開催に活用するなど、市町が主体的に人工林を育成、管理できるよう支援してまいります。この基金を設置するために必要となる「佐賀県森林環境譲与税基金条例(案)」を今議会に提案しています。
次に、世界に向けて県産品を印象づける取組について申し上げます。
県では、今年度から、食材と器と料理人が織りなす「SAGAマリアージュ」として、イノベーションを起こして新たな価値を創造する取組を進めています。こうした中、食のアカデミー賞と呼ばれ、世界の各都市が注目する祭典「アジアベストレスラン50」の日本で初めてとなる招致に成功いたしました。この祭典は、アジア圏のトップシェフをはじめ、ホテル・レストラン、メディア関係者など約800名が集い、アジアのレストランのトップを決定するもので、来年3月24日に武雄市での開催を予定しています。今回の招致成功の要因の一つには、「有田焼創業四百年事業」や「肥前さが幕末維新博覧会」など、地域資源を大切にし、その魅力を伝える本県の取組を通じて、和の文化と歴史にあふれる佐賀県の素晴らしさが認知されたことがあると考えています。これまでのシンガポール、バンコク、マカオというアジアを代表する都市での開催に続いて、地方都市では初めてとなるこの祭典を、これまでにない自然共生型で開催し、県産の食材と伊万里・有田焼などの器に、料理人の感性を組み合わせて、「世界に誇れる佐賀」の魅力を発信してまいります。今回の開催を、県産品が多くの料理人に認められ広まっていくきっかけにしてまいります。
次に、多文化共生の社会づくりに向けた取組について申し上げます。
全国的な労働力不足を背景に、県内における外国人住民の数は年々増加し、現在6,000人を超えています。4月に外国人材の受け入れを拡大する新たな制度がスタートし、今後も県内で働く外国人の増加が見込まれています。このため、日本人と外国人が共に暮らしやすい多文化共生社会の実現に向け、佐賀市にある国際交流プラザに総合的な相談窓口を設置することといたしました。習慣の違いなどからくる悩みや戸惑いに寄り添い、佐賀で学び働く外国人が安心して充実した暮らしを送れるよう丁寧な相談対応を心掛けてまいります。
次に、幼児教育・保育の無償化に関する取組について申し上げます。
改正子ども・子育て支援法の成立を受け、子育て世帯の経済的負担の軽減を図るため、3歳以上の就学前の子供及び住民税非課税世帯の2歳以下の子供については、幼稚園や認可保育所などの利用料が10月1日から無償化されます。安心して子育てできる環境を整えるためには、保護者の経済的負担の軽減とあわせて、保育の質の向上が重要と考えています。そのための取組の一つとして、給食の配膳や清掃などの業務を担う保育支援者を新たに雇用して保育士の負担軽減を図る保育施設に対し、その費用を補助することで保育体制の充実につなげてまいります。
次に、障害者を支えるボランティアを育成する取組について申し上げます。
手話が言語であるとの認識を共有するとともに、全ての県民が聴覚障害の有無によって分け隔てられることなく、共に安心して暮らすことができる地域社会を実現することを目指し、昨年9月に議員提案により「佐賀県手話言語と聞こえの共生社会づくり条例」が制定されました。これを受け、今後の需要の高まりが見込まれる手話通訳士を確保するため、資格取得や更なるレベルアップを支援してまいります。条例に込められた想いをしっかりと受け止め、障害のあるなしにかかわらず、共に暮らしやすい佐賀県を目指してまいります。
次に、予算外議案といたしましては、条例議案として、「佐賀県佐賀空港条例の一部を改正する条例(案)」など11件、条例外議案として「請負契約について」など11件となっています。それぞれの議案については、提案理由を記載していますので説明を省略させていただきます。
最後になりますが、全国から文化部の高校生約2万人が集う第43回全国高等学校総合文化祭「2019さが総文」を来月27日から8月1日までの6日間、県内全域で開催いたします。開会式やパレードに続いて、吹奏楽や書道など23の部門大会があり、例えば、演劇部門では、全国2,100校から勝ち上がった12校が出場するなど、全国トップクラスの実力を誇る高校生たちの競演を多くの県民の皆様にも体感していただきたいと考えています。この「さが総文」は、県内の高校生にとって、ふるさと佐賀の魅力を知り、発信する好機でもあります。大会運営の要となる実行委員会の生徒たちは、県内の農業、漁業、畜産業、ものづくり産業などに携わっている人を訪ね、仕事の様子や次世代につなぐ想いを取材し、佐賀が誇る地域資源を全国から訪れる高校生に映像やパネルで紹介するプロジェクトを進めています。さが総文が、高校生による文化芸術の祭典として成功するだけでなく、開催を機に、「肥前さが幕末維新博覧会」から引き継いだ佐賀への誇りと、「自分はこれがしたい」という「志」が、高校生の心に根付き、広がっていくことを期待しています。
来年夏に開催される東京オリンピックでの聖火リレーで使うトーチに、有田工業高校を卒業し、世界的なデザイナーである吉岡徳仁さんの桜の花のデザインが選ばれました。高校時代について、「デザインの基本を徹底して繰り返したことで、しっかりと基礎を身に付ける大切な時間となった」という吉岡さんの言葉は、さが総文に関わる高校生だけでなく、全ての高校生に勇気と力を与えてくれると思います。吉岡さんは、トーチのデザインに、東日本大震災の被災地の方々の心の復興と平和への願いを込めたとおっしゃっています。思いやりと助け合いという日本の本当の美しさを表現したいと、5枚の桜の花びらからあがる5つの炎がトーチの中央で一つになるようにデザインされています。5つの炎が合わさって輝きを増すトーチの炎は、地域に誇りを持ち、志を持って様々な分野で輝いている人たちの力が融合し、イノベーションを起こして大きく輝いている佐賀県の姿に重なり合って見えます。県民が様々な現場で輝く多様性にあふれる素晴らしい佐賀県を、チーム佐賀で県民の皆様と共に創り出してまいります。
以上、今回提案いたしました議案などについて御説明申し上げました。
よろしく御審議いただきますようお願い申し上げます。