一言ごあいさつ申し上げます。
ただいま、戦没者に対する秋季慰霊大祭が厳かに執り行われたところでございます。
3年ぶりに、御遺族の皆様にも御参列いただき、戦没者の方々をしのびながら、御霊(みたま)の御冥福を心からお祈り申し上げます。
先の大戦では、祖国の発展と安寧を願い、戦地に赴いた多くの方々の尊い命が失われました。愛する御家族を亡くされた御遺族の皆様が、癒えぬ悲しみを胸に、幾多の困難を乗り越えてこられましたことに、御慰労を申し上げますとともに、深く敬意を表します。
私は今年6月、沖縄県糸満市の摩文仁(まぶに)の丘にあります佐賀県出身戦没者が祀られた、はがくれの塔を訪れました。
慰霊碑の前で花を手向け頭を垂れる中で、ふるさとに残した御家族を思いながら、沖縄・南方地域の戦場で散華(さんげ)された方々に思いをはせるとき、言葉には尽くしがたい感情が込みあげてきました。
慰霊碑に刻まれた戦没者の中には、御遺骨が帰らぬままという方々も多くいらっしゃり、まだどこかで生きているような気がすると言われる御遺族のお言葉や、これまでの御労苦に思いをいたしますと、大変胸に迫るものがありました。
また、8月に訪れた同県の離島・伊江島(いえじま)の芳魂之塔(ほうこんのとう)には、戦禍の犠牲となった現地の方々とともに、佐賀県をはじめ全国各地から戦地に赴き犠牲となった方々がまつられています。
かつて、激戦地となり、多くの尊い命が失われたこの地で、慰霊碑に込められた思いをしっかりと胸に刻むとともに、戦争の惨禍を決して繰り返してはならないという平和への誓いを新たにしました。
戦後77年、御遺族の皆様をはじめ、国民が平和への思いを胸に、未来への歩みを着実に進めてきたからこそ、今日へつながる命があることを忘れてはなりません。
しかしながら、長い歳月を経て、戦争体験者から話を聞く機会が少なくなり、戦争の記憶の風化が懸念される今、悲惨な戦争の歴史や多くの命が犠牲となったこと、そして、未来へと託された思いを次の世代へ語り継いでいくことが今を生きる私たちの使命であると思います。
佐賀県は、人と人とのつながりが強く、お互いを想いあえる慈しみの県です。
私はこれからも、人の想いに寄り添い、県民の皆様とともに、平穏で笑顔あふれる豊かな社会をつくるために全力で取り組んでまいります。
最後に、ここに謹んで御霊(みたま)の安らかな御冥福を重ねてお祈り申し上げ、御参列の皆様の御健勝と御多幸を祈念いたしまして、ごあいさつとさせていただきます。