令和4年6月定例県議会の開会に当たり、最近の動き、提案事項などについて御説明申し上げます。
はじめに、昨今の国際情勢と県民生活への影響について申し上げます。
2月24日に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻は世界に衝撃を与え、状況を一変させました。力による一方的な現状変更は、欧州のみならずアジアを含めて、国際秩序と平和を根底から覆すものであり、断じて許されません。改めて強く非難するとともに、国際社会が連携し一日も早く平和を取り戻せるよう心から願っています。この国際情勢の不確実性の高まりから、世界規模で原油や穀物の国際価格が上昇しています。これに約20年ぶりの円安水準が追い打ちとなって、国内では、ガソリンや重油などの燃料をはじめ、飼料、原材料などの価格が高騰しており、この影響は県民生活や県内の経済活動にも及んでいます。こうしたことから県では、現場の声や状況を踏まえて対策を検討し、6月補正予算において事業者、生産者の負担軽減や、子供たちの給食への支援などの予算を計上しています。なお、低所得のひとり親世帯への給付金については、速やかに支給できるよう5月に専決処分を行っております。県民生活や経済活動への影響をできるだけ抑えるよう取り組んでまいります。
次に、ウクライナ避難民への支援について申し上げます。
国連難民高等弁務官事務所によると、今回のロシアによる軍事侵攻でウクライナの人口の約4分の1に当たる1,400万人以上が国内外で避難を強いられているとされています。佐賀県では、人道的見地から避難民の方々を積極的に受け入れて支援するため、3月9日に、県、市町とCSOが連携した全国初の官民連携による「SAGA Ukeire Network ~ウクライナひまわりプロジェクト~」を立ち上げました。世界規模で難民支援や被災地支援を行っているCSOをはじめ、多数のCSOが県の誘致により県内を拠点に活動しています。それぞれの豊富な経験とCSO同士のつながりを活かした佐賀ならではのプロジェクトです。身寄りのない方も含め、まずは30組まで順次受け入れてまいります。避難民の方々には、義援金等を活用して生活資金などを支援しているほか、生活サポート、就労マッチングや就学の支援も行っています。祖国の惨状に心を痛め、辛い想いや大きな不安の中で過ごしておられる避難民の方々が、少しでも平穏な生活を取り戻していただけるよう、皆様の気持ちに寄り添いながら、佐賀だからこそできる、きめ細やかな支援に取り組んでまいります。
次に、新型コロナウイルス感染症対策について申し上げます。
佐賀県では、若い世代を中心に感染確認が続いていますが、現在のオミクロン株はほとんどが軽症か無症状であり、若い世代はほとんどが入院せずに済んでいます。具体的には、20代以下の感染は全体の過半数を占めるものの、その入院率はわずか1%程度です。一方で、高齢者の感染は少ないものの、その入院率は3割程度と高いことから、県では高齢者の感染対策に重点的に取り組んでいます。高齢者施設等において、感染事例の共有とチェックリスト化により感染対策を強化し、感染発生時には、保健所や佐賀大学の医師等が訪問して拡大防止措置を指導しています。また施設や自宅等で療養する高齢者に対し地域の医療機関が往診するなど医療体制を強化しています。こうした取組が着実に効果を発揮し、病床使用率は10%程度にとどまっています。
県内のワクチン接種については、先月下旬から、60歳以上の方や基礎疾患をお持ちの方など、重症化リスクが高い方を対象に4回目の接種が開始されています。佐賀県はこれまで、トップランナーとして高齢者へのワクチン接種を進めてきました。こうした取組により、感染を抑え医療現場の病床ひっ迫の回避につながっていると考えられ、4回目接種の方針が高齢者を対象としていることは、佐賀県の考えと合致しています。県と市町、医師会等が連携しながら、希望する県民の皆様が円滑に接種を受けられるよう取り組んでまいります。
佐賀県は、感染の状況に応じメリハリある対応を取ってきました。オミクロン株は感染者のほとんどが軽症か無症状であり4月以降の重症者はゼロです。こうした状況を踏まえ、今年のゴールデンウイークは、県民の皆様に対し行動制限や県境を越えた移動自粛は求めない判断をしました。3年振りに開催された有田陶器市ではコロナ禍前の水準と同じ122万人が来場したほか、県内の観光地やレジャー施設も多くの人で賑わいました。久しぶりの帰省で家族との再会を喜んだ方も多かったと思います。ゴールデンウイーク後の感染拡大はなく、感染対策を適切に取りながら徐々に日常を取り戻していきたいと考えています。感染症の専門家からは「ウイルスが人間との共生を始めている面がある」との御意見もお聞きしています。新たな変異株のような敵が出てくればその特性に合わせて対応を見直しますが、現在はオミクロン株となり弱毒化してきている状況です。高齢者への対策は継続しながらも、コロナと折り合いをつけ、マスク着用を含めた制限緩和のあり方を考えてまいります。
次に、出水期における災害への備えについて申し上げます。
梅雨や台風などで災害が起こりやすい出水期に入りました。気候変動の影響で、佐賀県では1時間あたり20ミリ以上の降雨の回数がここ10年間で約2倍になるなど、気象条件はこれまでと全く異なるものに変化しています。数十年に一度と言われていた大雨特別警報が平成30年以降4年連続で発表され、令和元年佐賀豪雨、令和3年8月豪雨では、県内各地で土砂災害と内水氾濫の甚大な被害が発生しました。過去、災害が繰り返し起こっている経験を「教訓化」し、同じような豪雨は毎年発生するということを前提に備えておかなければなりません。内水対策については、令和3年8月豪雨災害後直ちに「佐賀県内水対策プロジェクトチーム(プロジェクトIF)」を起ち上げ、「人命等を守る」「内水を貯める」「内水を流す」これら三つを柱として、国や市町等の関係機関と連携しながら、できることから順次取組を進めています。例えば、内水発生を早期に把握し避難指示などに活用するための浸水センサーを県内215箇所に設置することとしており、まずは内水氾濫が多い佐賀市、武雄市、大町町など6市町の約100箇所に設置し今月中に運用を開始します。また、上流域の田んぼの排水口にせき板を設置し、大雨時の水路への水の流出を抑制する田んぼダムについては、農業者の皆様の御協力により、当初予定していた面積の1.5倍に当たる約1,200ヘクタールで実施可能となります。さらに、県内5つの土木事務所に排水ポンプ車各1台を配備し、流水の阻害となっている河川内の堆積土砂の浚渫については52箇所が完了しています。引き続き、いつ災害が起きても可能な限り被害を軽減させたいとの強い想いで、全力で取り組んでまいります。
続きまして、当面の諸課題への対処方針について申し上げます。
まず、原子力発電についてです。
使用済燃料を金属製の容器に入れて保管する玄海原子力発電所の「乾式貯蔵施設」の設置については、平成31年1月に九州電力が国の原子力規制委員会に設置を申請し、併せて、県に対して事前了解願いを提出していました。令和3年4月に原子力規制委員会が設置を許可したことを受け、県では、同年7月に佐賀県原子力安全専門部会を開催し、専門家からの意見等も踏まえて、原子力規制委員会や九州電力に詳細を確認するなど、確認作業を丁寧に行ってまいりました。その結果、原子力規制委員会の審査により法令上の要求事項に適合することが確認されていること、並びに、九州電力の計画及び原子力規制委員会の審査内容に不合理な点はなかったことから、去る3月24日に事前了解を行いました。また、玄海原子力発電所3、4号機において進められている「特定重大事故等対処施設」の設置工事について、九州電力は工期を5か月程度延長することを表明しました。3号機及び4号機は、現在定期検査中でありますが、県としては、九州電力に対し、全ての作業において常に安全を最優先に取り組むよう強く求めています。
玄海原子力発電所とは、廃止措置を含めて、これからも長い年月にわたり関わり続けなければなりません。今後とも、県民の安全を何よりも大切に、県も含め全ての関係者の中に気の緩みが生じることがないよう万全を期してまいります。
次に、佐賀空港の自衛隊使用要請について申し上げます。
有明海漁協は、県と交わしている公害防止協定覚書付属資料について、計画予定地の排水対策など3つの事項に対して防衛省の考えが示されることを条件に、変更に応じるとされています。条件解決に向けて、漁協、防衛省及び県の実務者で構成する三者協議会をこれまでに4回開催し、3条件に関する防衛省の検討状況について協議してまいりました。そして、6月6日に開催した協議会で、防衛省の考えについて概ね三者で確認できたところであり、今後、7月をめどに、漁協検討委員会に報告ができるよう更に調整していくこととしています。県としては、漁協から示された条件が解決されるよう、引き続き調整していくとともに、必要に応じて防衛省に対して働き掛けてまいります。
次に、有明海の再生について申し上げます。
諫早湾干拓関連訴訟について、福岡高裁における請求異議訴訟の差戻審では3月25日に判決が出されました。国の請求を認め、同高裁における平成22年の確定判決に基づく開門の強制執行は許されないとしています。今回の判決は、国が確定判決を履行しない間に生じた漁獲量の増加や営農への支障などの事情の変動を理由に強制執行が権利濫用に当たるとされた点や、同高裁が求めた和解協議に全く応じようとしなかった国の姿勢について一切触れられなかった点など、釈然としないものがあります。開門を求める漁業者側は、判決を不服として4月8日に最高裁に上告しており、今後の訴訟の動向を注視してまいります。有明海の再生のためには、開門調査を含む環境変化の原因究明が必要との想いは変わりません。国に対しては、その必要性を様々な機会を通じて訴えてまいります。
有明海のノリ養殖については、令和3年度の生産枚数、生産金額ともに19年連続で日本一を達成されましたが、地域間格差が大きく、特に西南部地区は漁期を通して断続的に発生した赤潮による色落ち被害で、生産金額は西部地区は例年の5割に、南部地区は1割に満たない深刻な結果でした。西南部地区の漁業者からは「何十年も携わってきて初めてだ」、「このままでは廃業も考えないといけない」といった切実な声をお聴きしています。こうした状況を踏まえ、西南部地区において、赤潮の原因であるプランクトンを捕食する二枚貝サルボウの稚貝の放流や、海底の泥を掘削する作澪など潮流改善に向けた取組を効果的に実施するための塩田川河口の潮流のシミュレーションを行うこととし、今議会に必要な予算を提案いたしております。
宝の海である有明海の再生は、国や県、市町、漁業者など有明海に関わるもの皆で取り組む課題です。今後も有明海の再生という本来の目的を見据え、関係する皆で力を合わせて全力で取り組んでまいります。
次に、九州新幹線西九州ルートについて申し上げます。
いよいよ9月23日に武雄温泉-長崎間が開業します。開業に合わせ、武雄温泉駅と嬉野温泉駅において開業イベントを行うこととしており、4月20日に県、武雄市、嬉野市、JR九州、鉄道・運輸機構の5者で実行委員会を設立しました。10月からは佐賀・長崎デスティネーションキャンペーンがスタートします。県内各地に息づく文化や歴史、伝統など佐賀の本物の魅力を多くの方に存分に体感していただき、開業効果を広域に波及させてまいります。
また、上下分離方式へ移行する肥前山口-諫早間については、4月28日から各駅に開業後のダイヤ案が掲示され意見募集が行われています。ダイヤ案は、普通列車については運行本数が増えるものの、特急列車については現行の運行本数から大幅に減るものとなっています。県としては、鹿島や太良などの長崎本線沿線地域の振興に力を注いでまいります。これまで県と鹿島市とで進めてきている肥前鹿島駅周辺整備については、「さがデザイン」の視点も入れながら、今後県が主体となって基本設計を進めていくこととしています。「鹿島らしさ」を感じられる唯一無二の駅にこだわり、県南西部の広域交流の拠点づくりと魅力あるまちづくりをさらに後押ししてまいります。
国土交通省鉄道局との「幅広い協議」については、2月10日の第6回の協議で、フリーゲージトレインについて議論するとともに、フル規格で整備する場合の3つのルートについて、将来を見据え、佐賀県はもとより九州の発展にどのようにつながっていくのかなど、改めて国土交通省としての考えを示すよう求めています。次回の協議について鉄道局に確認したところ、準備にもう少し時間がかかるとのことでした。新鳥栖-武雄温泉間の在り方は佐賀県の将来に大きく影響することであり、今後も何が望ましい姿なのかということを大きな視点を持って幅広く、骨太に議論してまいります。
次に、城原川ダム事業について申し上げます。
3月に行われた、水没予定地域の住民の皆様に対する国の説明会では、湛水範囲や付替道路のルートに加え、ダム工事に使用するコンクリートの材料を採取する原石山や、現場工事で発生する残土処分のための土捨場など、ダム建設に関連する施設の計画が示されました。現在、水没予定地域内では用地調査や家屋調査が進められているなど、ダム建設に向けて、一つ一つ段階を踏みながら着実に進捗している状況です。地域の治水対策推進のため、一日も早いダム完成を目指した事業の推進と必要な予算の確保を、引き続き国に働き掛けてまいります。水没予定地域の住民の皆様は、自らの生活再建に向け、他のダムの事例調査や視察などに積極的に取り組んでおられます。これまでも住民の皆様からは幾度となく、「早く安心した生活を送りたい」、「地域の皆で力を合わせて頑張っていきたい」など切実な想いを伺ってきました。県としては、今後も変わることなく、住民の皆様お一人お一人に寄り添い、不安な気持ちが将来への希望に変わり具体的な生活再建に向け踏み出せるよう、国や神埼市と連携して、きめ細やかな支援を心掛けてまいります。
続きまして、最近の県政の主な動きについて申し上げます。
まず、離島のヘリポート整備についてです。
唐津市の離島において、ヘリは急患搬送や物資輸送に欠かすことのできない手段であり、また原子力災害が発生した時には島外避難に活用する重要な手段となります。県では、ヘリによる搬送等の実効性を高めるため、令和2年度から唐津市と連携してヘリポート整備を進め、4月に7つの離島全てにおいて整備が完了したところです。ヘリの離着陸環境が整ったことで、緊急時にはヘリが離島の皆様を迅速に救助し、離島の安全安心につなげてまいります。
次に、ARKS(アルクス)のオープンについて申し上げます。
県では、整備から30年が経過し、最近はほとんど利用がなかった県庁北側のくすかぜ広場についてリニューアルし、5月にARKSをオープンいたしました。県民の皆様が思い思いに利用しそれに合わせて成長していく、県民利用の進化型の公園です。ARKSではウォーキングアプリ「SAGATOCO」との連携など、歩く楽しさを感じられる拠点となることを期待しています。
次に、吉野ヶ里遺跡の発掘再開について申し上げます。
我が国最大級の弥生時代の遺跡である吉野ヶ里遺跡において、5月から発掘調査を再開しました。調査地点は日吉神社の跡地で、有柄式銅剣やガラス管玉などが出土した北墳丘墓のすぐ西側の小高い場所に位置しています。吉野ヶ里フィーバーに沸いた33年前から、何か重要なものが眠っているかもしれない「謎のエリア」として注目されてきた場所です。今後約2年間実施することとしており、令和の「世紀の発見」になることを期待しています。発掘調査体験会の開催のほか、全国初となる発掘現場のライブ配信では、双方向で現場から質問に答えるなど遠くにいながら臨場感を体感していただきたいと考えており、今議会に必要な予算を提案いたしております。弥生時代のクニのはじまりを伝える日本随一の歴史的価値と、現代の「OPEN-AIR佐賀」を楽しめる新しい吉野ヶ里歴史公園の魅力が相まって、東部地域の拠点として育てていきたいと思います。
次に、「はじまりの名護屋城。」プロジェクトについて申し上げます。
豊臣秀吉が築いた名護屋城は、当時、徳川家康や石田三成といった名だたる大名をはじめとして、全国から160もの大名が勢ぞろいし、約7年間にわたって人口20万人を超える一大都市が形成されていました。大名たちが一堂に会したことで、茶道、能、和歌、華道、陶磁器、仮装など、全国各地の文化の見本市とも言うべき様々な文化交流が生まれ、そこはまさに日本文化発展の“はじまりの地”でした。これこそが名護屋城のこれまで隠されていた価値なのであります。県では、その価値を磨き上げ、「はじまりの名護屋城。」をコンセプトに、名護屋城の歴史や文化を活かした取組を進めています。3月には、秀吉がつくらせた「黄金の茶室」を当時の史料に基づいて忠実に再現し一般公開を開始しました。これに合わせ開催した「名護屋城大茶会」では、本丸跡などでの茶席や、満開の桜と美しい海を背景にした能や和楽器の実演など、400年前の大名たちの茶会が偲ばれました。まだほとんど認識されていない、名護屋城が持つ日本文化発展の“はじまりの地”としての唯一無二の価値と魅力を広く発信してまいります。
次に、高輪築堤の移築復元についてです。
県では、JR東日本や文化庁、港区のご協力をいただき、解体された石垣の一部を譲り受け、4月に県立博物館の南側に約10メートルにわたって築堤を復元しました。常識にとらわれない発想で日本初の鉄道開業を成し遂げた大隈侯の志を感じ、その志を私たち皆で未来につなげていきたいと思います。
次に、SAGAサンライズパークの整備について申し上げます。
「SAGA2024」の総合開会式や陸上競技などの会場となるSAGAスタジアムについては、リニューアル工事が完了し5月26日にオープンしました。トラックやフィールドの全面改修、全天候型ウォーミングアップ走路の新設、ドーピング検査室など諸室の設置を行い、第一種公認陸上競技場に認定されました。また、中核施設であるSAGAアリーナについては、現在、柱や梁などの骨組み工事がほぼ完了し、屋根や外壁の取付け工事が徐々に進んで、全体の姿を現してきました。今後、内装工事に本格的に着手してまいります。SAGAサンライズパークは、これまで本県ではできなかった規模のスポーツ大会やコンサート、MICE(マイス)と呼ばれる全国規模の学会や展示会などの開催が実現できるようになり、新たな価値を生み出していきます。4月には、SAGAアリーナの利活用に向けて、官民連携でオープニングイベントやMICEなどを盛り上げるため、「SAGAアリーナ躍動プロジェクト実行委員会」を設立しました。さらに5月にはMICEシンポジウムを開催し、来場者の飲食、宿泊、観光など県内一円へ経済波及効果がもたらされるMICEについて、県内経済界の方々と協力して誘致を進めていくことを確認しました。
来年春のSAGAサンライズパークのグランドオープンに向けて、さらにその先のMICEなどの新たなシーンを見据えながら、引き続き着実に整備を進めてまいります。
次に、SSP構想について申し上げます。
5月にブラジルで開催された聴覚障害者による国際総合スポーツ大会「デフリンピック」では、水泳の金持義和選手が2種目で銀メダル、自転車の簑原由加利選手が3種目で銅メダルを獲得し、バドミントンの永石泰寛選手は初出場ながらベスト8に入賞しました。こうしたトップアスリートの活躍に高校生も続いています。春の全国高校選抜大会では、団体で、佐賀商業高校女子柔道部が悲願の初優勝を、佐賀女子高校ソフトボール部と神埼清明高校新体操部が2連覇を達成しました。個人では、柔道男子で佐賀商業高校の田中龍雅選手が、レスリング男子で鳥栖工業高校の須田宝選手、甫木元起選手が優勝しました。今回の選抜大会では3位以内の上位入賞が団体5チーム、個人9人と過去最高の成績となり、佐賀ゆかりのアスリートが活躍し、そのアスリートが次の世代を育てるという好循環が生まれています。
また、官民連携で整備を進めていたアスリート寮について、1月の太良町に続き、4月に佐賀市と鳥栖市にオープンしました。現在県内外から約70人の中高生が寮生活をしており、佐賀で技を磨き全国、世界で活躍するアスリートに成長していくことを期待しています。引き続き、「佐賀が育てる、佐賀が支える」という想いでSSP構想を推進し、スポーツの力を活かした人づくり、地域づくりを進めてまいります。
次に、有明海沿岸道路等の整備について申し上げます。
県が整備を進めている、広域幹線道路網の東西軸となる有明海沿岸道路と、南北軸となる佐賀唐津道路が接続する「Tゾーン」については、橋梁や地盤改良工事に加え、盛土工事も本格化し道路の姿が着実に現れてきています。国が整備を進めている有明海沿岸道路の区間については、(仮称)諸富インターの令和4年度中の開通に向けて着々と整備が進められています。また、国道202号では、国において唐津大橋を含む区間の4車線化に向けた調査が開始されました。さらに、県では、県道の嬉野下宿塩田線と伊万里有田線を3月に開通し、付近の渋滞緩和や病院へのアクセス向上などにつなげています。
引き続き、県民の暮らしと地域の発展を支える基盤として、広域幹線道路やくらしに身近な道路の整備を着実に進めてまいります。
続きまして、提案事項について御説明申し上げます。
今回の補正予算案の編成に当たりましては、当初予算編成後の情勢の推移に対応するため、原油価格・物価高騰対策を柱に、早急に措置を要するものについて所要額を計上することといたしました。
この結果、その総額は、歳入歳出とも、それぞれ、
一般会計 約43億6,300万円
特別会計 約19億3,400万円
となり、これを既定の予算額と合わせますと、本年度の予算総額は、
一般会計 約5,755億2,700万円
特別会計 約1,944億1,900万円
となっております。
次に、予算案の主な内容について申し上げます。
まず、保育施設等における給食への支援についてです。
物価高騰による食材価格の値上がりが、保育施設や学校等の給食の提供に影響を及ぼしています。給食は子供たちの成長を支える大切なものであり、安価な食材への変更などをせずに、安定して提供されることが必要です。県としては私立の保育施設や学校等に対して食材価格の高騰分を補助することといたしました。将来を担う子供たちに、栄養バランスの取れた十分な量の食事が提供され、子育て世代の負担軽減にもつながるよう取り組んでまいります。
次に、CSOの子育て支援活動及び福祉作業所への支援について申し上げます。
県内では、様々なCSOが子育て世帯への生活支援として、「子ども食堂」や「こども宅食」、九州初のまちの冷蔵庫「コミュニティフリッジ」などを運営しています。寄付された食材や日用品だけでは賄いきれず、不足分を購入する必要があるため、物価高騰により負担が増加しています。今後さらにニーズが増えていくと予想され、サービスの維持・向上のため、こうしたCSOの活動費用に対し補助することといたしました。
また、福祉作業所として障害者に就労の機会を提供する就労継続支援事業所においても、原材料費高騰などの影響を受けています。事業の継続や利用者の工賃維持が図られるよう、県内の就労継続支援事業所を対象に応援金を交付することといたしました。
次に、価格高騰の影響を受けている中小事業者への支援について申し上げます。
原油や原材料の価格高騰により、事業者の仕入などの取引価格が上昇しています。本来、事業者は取引価格の上昇を商品やサービスの価格に転嫁することになりますが、今回の急激な価格高騰をそのまま価格転嫁することは難しく経営を圧迫しています。そこで、燃油の使用が多い貨物運送事業者や建設業者などに対しては、燃油の使用量に応じた支援金を交付することとし、また、燃油の使用は少ないものの原材料の仕入額上昇に影響を受けている事業者に対しては応援金を交付することといたしました。コロナ禍に価格高騰が重なる厳しい状況の中でも、事業者が前を向いて事業を継続していけるよう支援してまいります。
次に、消費喚起の取組に対する支援について申し上げます。
コロナの影響が長期化するなか、旅行や観光などには持ち直しの動きが見られるものの、個人消費は依然として幅広い分野で落ち込みが続いています。これに加え、原油や原材料の価格高騰を背景に食料品や日用品などの価格が上昇しており、消費は今後さらに冷え込むことが懸念されます。こうしたことから、県では、商店街や業界団体などが消費喚起に向けて実施するプレミアム商品券の発行や、イベントの開催などに対して支援を行うことといたしました。創意工夫による自発的な取組を後押ししてまいります。
次に、飼料価格高騰の影響を受けている畜産農家への支援について申し上げます。
輸入原料価格の上昇により、配合飼料価格が高騰し、畜産農家の経営は急激に悪化してきています。国の配合飼料価格安定制度により、価格高騰時には、国や畜産農家などが積み立てている基金から、直近1年間の平均価格を超える額が補填されています。しかし、昨年来の急騰で平均価格が押し上げられ実質負担が増えている上に、多額の補填金交付で基金が不足しないよう本年度から積立金単価が引き上げられ、二重の負担増となって畜産経営を圧迫しています。このため、家畜の食べこぼし対策などの飼料コスト縮減につながる取組を行う畜産農家に対し、積立金単価の引き上げ分を支援することといたしました。価格高騰による影響を少しでも緩和し、畜産農家の皆様が安心して経営を続けていけるよう支えてまいります。
次に、唐津ビーチパークの整備について申し上げます。
唐津・玄海エリアでは、伝説のダイバー、ジャック・マイヨールが愛した美しい海を舞台に、ボードに立ち海面を進むSUPや、カヤック、フィッシングなど数多くのマリンアクティビティを楽しむことができます。県ではこれらを唐津マリンアクティビティパーク「KMAP(ケイマップ)」として県内外の多くの方に体感していただきたいと考えており、KMAPのハブ拠点となる唐津ビーチパークを整備することといたしました。ヨットハーバーをガイド機能を備えたイベントや食事などを楽しめるスペースに改修するほか、西の浜ビーチを誰もが様々なアクティビティを楽しめるエリアにします。唐津ビーチパークから、OPEN-AIRで楽しめる唐津・玄海エリアのマリンアクティビティを創出し発信してまいります。
次に、「サガンスギの森林(もり)100年構想」について申し上げます。
「サガンスギ」は、県林業試験場が開発した、成長が早く、強度があり、花粉が少ない、まさに「早い・強い・優しい」の三拍子が揃った夢の次世代スギです。今年の2月から苗木の出荷を開始しており、サガンスギを植えたいという森林所有者が多くいらっしゃいますが、穂をとるための母樹が少ないことなどから苗木が不足しています。このため、県林業試験場の採穂園を拡大して母樹を増やし、苗木生産者のハウス造成を支援することで、苗木の生産量を増やすことといたしました。県内のスギ林が全てサガンスギとなるまでには、当初は160年かかる見込でしたが、苗木の生産量増加により植林を加速化させ、60年前倒しの100年で「サガンスギの森林(もり)」になることを目指してまいります。
予算外議案といたしましては、条例議案として9件、条例外議案として13件となっています。
最後に、条例議案のうち「佐賀県知的財産を大切にし、みんなで守り、育て、新たに生み出す条例(案)」についての提案理由とあわせて、知的財産に対する想いを申し上げます。
佐賀県には、日本の磁器発祥の地として創業400年以上の歴史を持つ「伊万里・有田焼」や、日本四大売薬の一つである田代売薬から発展した医薬品、世界的な品評会で高く評価されている日本酒など、その製法・技術を磨き上げ、大切に守り繋いできた歴史があります。近年では、19年連続生産量日本一の「佐賀海苔」や、黒毛和牛の最高峰と言われる「佐賀牛」などが全国に名を馳せ、さらには、「いちごさん」、「にじゅうまる」、「サガンスギ」なども佐賀の未来を担う新品種として期待されています。こうした佐賀ブランドの製法や技術などは、幅広い知的な創造活動によって生み出された「知的財産」であり、佐賀が飛躍するためのかけがえのない財産です。
今年に入り、「にじゅうまる」が不正に流出し県外で販売されていたことが発覚しました。「にじゅうまる」は、知的財産権の一つである育成者権で守られていますが、この権利を持つ県の許諾を得ずに栽培されていたものです。こうした知的財産への認識が十分に無ければ、お願いされるとつい善かれと応じる佐賀県民の気立ての良さが、思わぬ知的財産の流出につながってしまうおそれもあると感じています。
県は、お一人お一人が知的財産について正しく理解し、尊重して活かしていく社会をつくっていきたいと考え、今議会において本条例(案)を提案しています。セミナーや寸劇を通して身近な知的財産の事例を分かりやすく紹介するなど、日本弁理士会とも連携しながら啓発活動等を行ってまいります。
佐賀の優れた知的財産は、一朝一夕に創出されたものではありません。「にじゅうまる」の品種開発には21年、「サガンスギ」に至っては56年もの歳月がかけられました。流出や模倣などの不正は、こうした関わった人々の高い志と熱意を裏切るだけでなく、ブランドの価値が毀損されてしまうと、その損害の大きさは計り知れないものとなります。だからこそ、県民がこぞって知的財産を理解し尊重する意識を持つことが重要になります。
幕末維新期、日本で初めて鉄製大砲の製造に成功し、日本初の実用蒸気船を製造するなど日本の産業近代化をリードしていた佐賀藩は「奇跡の藩」と評され、知的活動の先進地としての存在感を示していました。この創造する気風は佐賀の財産であり、常に革新に挑む伝統工芸や、全国に先駆けて取り組んでいる産業のDXなど、知的資源の宝庫として今に受け継がれています。これから事業者や県民の皆様とともに、知的財産を大切にする県として、佐賀の知的財産を大切に守り、育て、知的創造を巻き起こし新たな価値を生み出していくことで、さらに世界で輝く佐賀を創ってまいります。
以上、今回提案いたしました議案などについて御説明申し上げました。
よろしく御審議いただきますようお願い申し上げます。