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令和4年 11月1日令和4年11月定例県議会 知事提案事項説明

最終更新日:

 令和4年11月定例県議会の開会に当たり、最近の動き、提案事項などについて御説明申し上げます。
 佐賀県は、新型コロナウイルス感染症と向き合い始めて2年半余りとなります。感染者数は、昨年末のデルタ株までで5千人でしたが、今年1月に性質の一変したオミクロン株が拡がって以降、この10か月間で15万7千人を超えています。このオミクロン株は感染スピードは速いものの、ほとんどが軽症か無症状で、若い世代はほぼ入院せずに済んでいます。県では重症化のリスクが高い高齢者の対策に重点的に取り組むことで、病床使用率を抑えてきました。日々、その時点における感染状況とウイルスの特性を詳細に分析しながら対策を打つことで、医療のひっ迫を防いできています。
 ただ、現在のオミクロン株となってからは、1日の感染者数が3千人に迫る日があるなど急増したため、感染者発生届の全数報告が、医療機関や保健所の大きな負担となり、救急医療や通常診療に支障が出てくるおそれがありました。そこで佐賀県では、早くから全数報告の在り方を模索し、スキームを構築するとともに、9月2日から全国に先駆けて、全数報告を見直しています。そして、佐賀県は、軽症・無症状の方など、発生届の対象から外れる方に、これまでどおりの必要に応じた支援を届けるため、「佐賀型フォローアップシステム(SFS)」を立ち上げました。これは、医療機関に簡易な診断書を作成いただき、陽性者がその内容を自分で登録して、自宅療養支援センターが、支援が必要な方をフォローアップするものです。医療機関や陽性者自らも少しずつ負担を分かち合って運用していくという佐賀らしい独自の取組であり、9割以上もの方々が登録していただくなど、多くの皆さんのご協力でこのシステムがうまく機能していることは、誇るべき成果と言えると思います。短期間でこの充実した仕組みができたのは、普段から医師会等と連携していたことや、県職員が国のシステムに頼らない陽性者情報の共有システムを現場の実態を踏まえ独自に構築していたからです。このシステムは、国も参考としており、全数報告の見直しが全国に適用された際には、国が各県に対応例として示しています。
 県内の感染者数は、盆明けのピーク時の1割程度まで減少して、このところ横ばいが続いており、落ち着いていると考えています。今後とも、オミクロン株であれば、SFSを運用した現在の対策で、陽性者にもしっかり対応しつつ、病床使用率を抑え、救急医療や通常診療も受けられる体制を確保することができると認識しています。
 一方で、佐賀県は、様々なコロナ対策を行いながらも、一変すると考えられるコロナ後の社会を見据え、新分野進出、業態転換などの中小企業のチャレンジ支援や、肥料から堆肥への転換による循環型農業の推進、文化芸術の公演の配信などにより、新たな活動モデルを創出する「LiveS Beyond(ライブスビヨンド)」など、幅広い分野で対策を講じてきました。今後さらにコロナとの折り合いをつけながら、次の未来に向けた戦略を加速していきます。
 全国的に感染状況が落ち着いてきた中、国は10月11日から、入国者数の上限撤廃や個人旅行の解禁など水際対策を緩和し、主要空港においては国際線の運航が徐々に再開されています。地方空港においては、現在、検疫などの体制の再構築が進められており、九州佐賀国際空港の台北便も早ければ年内の運航再開に向けて調整を進めています。また、国は同時に、観光需要喚起策として全国旅行支援を開始し、本格的に人の動きが戻り始めています。
 佐賀県においては、9月23日に西九州新幹線が開業しました。それに合わせ、10月1日からは佐賀・長崎デスティネーションキャンペーンが始まり、10月11日からは、全国を対象に「GO!!佐賀旅キャンペーン」もスタートさせています。また、在来線を使うスローな旅として、有明海沿岸を走る新たな観光列車「ふたつ星4047」や、JR唐津線と筑肥線の一部では人気ゲームとコラボした「ロマ佐賀列車」も運行を開始しました。明日からは3年ぶりに、佐賀バルーンフェスタが有観客で、また唐津くんちが本来の形で開催され、佐賀の秋を代表するイベントも帰ってきます。
 いよいよ、社会全体がコロナ禍から新たな時代に向かい歩み始めていることを実感しています。佐賀県は、コロナ禍で苦しい中でも、チーム佐賀、オール佐賀でエールを送り合いながら乗り越えてきました。そして先を見据えて仕掛けてきた様々な施策や戦略が、ようやく花開いてきています。新たな時代に向かって、これからも県民の皆さんとともに、力を合わせて、新しい佐賀県を創造する取組にチャレンジしてまいります。
 続きまして、当面の諸課題への対処方針について申し上げます。
 まず、玄海原子力発電所についてです。
 現在、1、2号機の廃炉作業は、蒸気タービン周辺設備の解体撤去などが計画どおり進められています。3、4号機については、定期検査を行いながら、特定重大事故等対処施設の工事が続けられています。3号機は、工事が予定より1か月早く12月に完了して発電を再開することが見込まれており、4号機については、来年2月の工事完了後に発電を再開する予定とされています。県としては、九州電力に対し、全ての作業や工事において常に安全を最優先に取り組むよう強く求めています。
 玄海原子力発電所とは、廃止措置を含めて、これからも長い年月にわたり関わり続けなければなりません。今後とも、県民の安全を何よりも大切に、県も含め全ての関係者の中に気の緩みが生じることがないよう万全を期してまいります。
 次に、佐賀空港の自衛隊使用要請について申し上げます。
 今回の防衛省からの要請は、国の根幹に関わる我が国の独立と平和を守る国防・安全保障に関することであります。そして、日本を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しております。そうした中で、私は今後とも戦争のない平和な社会が続くように全力を尽くしていく決意であります。
 私は、この要請に対して正面から、そして真摯に向き合ってまいりました。そして、国民、県民にとって大事な国防と、宝の海である有明海の再生を両立させていくことが大切だと考えております。漁協にもこれまで複数回訪問して、県と交わしている公害防止協定覚書付属資料の変更について申し入れてきました。先月24日には、協定締結時の当事者であった漁協6支所の会議で、組合長及び関係6支所の運営委員長等に対し、有明海再生に対する思い、国防の大切さをお伝えし、覚書付属資料の変更について改めてお願いしました。
 有明海漁協からは、昨年末、覚書付属資料について、計画予定地の排水対策など3つの事項に対して防衛省の考えが示されることを条件に、変更に応じるという回答をいただいています。3条件については、8月の漁協検討委員会で、防衛省より、排水対策の具体的な対策案も含めて説明され、その後関係6支所の組合員を対象に説明会も開催されました。漁協では、本日、検討委員会を開催し、覚書付属資料の変更について協議が行われると聞いています。
 次に、有明海の再生について申し上げます。
 10月15日に、野村農林水産大臣が本県を訪問されました。県有明水産振興センターでは、有明海の漁業の現状と再生に向けた取組について説明を受け、タイラギやアゲマキなど二枚貝の回復に向けた取組を視察されました。その後の意見交換では、漁業者の「元の海に戻してほしい」、「日々、不安の中で過ごしている」などの切実な声を直接聞いていただきました。私からは改めて、有明海の再生のためには、国は、開門調査を含め、有明海の環境変化の原因を一刻も早く明らかにし実効性のある対策を打つこと、また、現場の厳しい状況と漁業者の声に真摯に向き合い有明海の再生の道筋を早期に示すことを訴えました。引き続き、有明海の再生を願う現場の思いを受け止めて対応いただくよう求めてまいります。
 水産資源の回復については、10月25日に西南部地区において、近年漁獲量減少が続く二枚貝サルボウの人工稚貝約100万個を放流しました。サルボウは赤潮の原因であるプランクトンを捕食することから、その資源回復は、赤潮によるノリの色落ち被害軽減にもつながることを期待しています。こうした二枚貝類の種苗生産技術や人工稚貝の放流技術の開発とともに、漁場環境の維持・改善に努めるなど、一日も早い資源の回復を目指し関係機関と連携して取り組んでまいります。
 宝の海である有明海の再生は、国や県、市町、漁業者など有明海に関わるもの皆で取り組む課題です。今後も、訴訟の状況や国の動向を注視し、有明海の再生という本来の目的を見据え、関係する皆で力を合わせて全力で取り組んでまいります。
 次に、九州新幹線西九州ルートについて申し上げます。
 9月23日に、いよいよ西九州新幹線が開業しました。武雄温泉駅と嬉野温泉駅でイベントを実施し皆で祝福しました。
 西九州新幹線が開業したことで、武雄・嬉野と長崎がわずか23分でつながり、これから多くの観光客が県内を訪れ、移住して来られる方も増えていくものと期待しています。
 一方、上下分離方式へ移行した長崎本線の江北-諫早間は、特急列車が大幅に減少し、肥前浜駅から太良方面が非電化区間となりました。開業から1か月余りが経ち、太良方面と佐賀方面との直通運行が無くなり不便であることや、江北駅では跨線橋を渡る乗り継ぎが多く苦労することなど、利用者の切実な声が聞かれます。やはり、懸念されていた利便性の低下が様々な形で顕在化してきました。今後、こうした課題については、利用者の目線に立って、その改善にしっかり取り組んでまいります。
 また、県南西部の玄関口である肥前鹿島駅については、駅エリア全体が「鹿島らしさ」を感じられる訪れたい場所となるよう整備を進めています。鹿島・太良が持つ本物の地域資源は、国内外の人を惹きつける素晴らしさに溢れています。「むしろ、これから鹿島・太良」をコンセプトに、長崎本線沿線地域を官民一体で盛り上げてまいります。
 新鳥栖-武雄温泉間の在り方については、佐賀県の将来に大きく影響することであり、今後も何が望ましい姿なのかということを大きな視点を持って幅広く、骨太に議論してまいります。
 次に、城原川ダム事業について申し上げます。
 城原川ダム事業については、現在、水没予定地域内で用地調査や家屋調査が進められるとともに、今後の用地協議を見据えて、住民の皆様を対象とした用地補償に係る個別相談会が開催されるなど、一つ一つ段階を踏みながら着実に進捗している状況です。県としては、地域の治水対策を進めるため、一日も早いダム完成を目指した事業の推進と必要な予算の確保を、引き続き国に働き掛けてまいります。水没予定地域の集落では、人口減少と住民の高齢化も進んでいます。長年にわたりダム問題で御苦労されてきた住民の皆様が具体的な生活再建に向け踏み出せるよう、国や神埼市と連携して、お一人お一人に寄り添いながら、きめ細やかな支援を心掛けてまいります。
 続きまして、最近の県政の主な動きについて申し上げます。
 まず、有明海沿岸道路等の整備についてです。
 県が整備を進めている、広域幹線道路網の東西軸となる有明海沿岸道路と、南北軸となる佐賀唐津道路が接続する「Tゾーン」については、橋梁や地盤改良、盛土の工事を展開し、工事の進捗を図っています。福富鹿島道路については、国道444号と長崎本線が交差する龍王崎の踏切が渋滞の大きな原因となっている中、全体を早くつなげるため、鹿島側から道路のルートを示して事業に着手することといたしました。白石町の地元協議会に対して先日説明を行ったところであり、今後速やかに現場での測量に着手できるよう準備を進めてまいります。また、国が整備を進めている大川佐賀道路については、いよいよ諸富インターチェンジが今月12日に開通します。初めて佐賀県と福岡県がつながることになり、筑後佐賀エリアの交流と連携が、名実ともに新たな時代に踏み出していきます。
 引き続き、県民の暮らしと地域の発展を支える基盤として、県全体の広域幹線道路の整備を着実に進めてまいります。
 次に、佐賀牛の振興について申し上げます。
 現在、佐賀牛の主要産地である唐津地域では、来年度の稼働に向けて、全国有数の規模を誇るブリーディングステーション「佐賀牛いろはファーム」の整備を進めています。繁殖農家に代わって種付けから分娩までを実施し、農家の負担軽減と肥育素牛の県内自給率向上を図ってまいります。また、多久市で整備を進めてきた佐賀県高性能食肉センター「KAKEHASHI」については、10月15日に落成式を行いました。米国やEUなどへの輸出にも対応できる高性能な牛処理施設です。これまでのような、他県の輸出対応型施設に頼っていたことによる処理頭数の制約がなくなり、輸出量の増加と海外市場の販路拡大が可能となります。現在、来春の本格的な稼働に向けて試験運転などの調整作業を進めています。
 「佐賀生まれ、佐賀育ちの佐賀牛」の生産を拡大し、佐賀の地から直接世界に届け、佐賀牛の振興を図ってまいります。
 次に、タイ王国との交流について申し上げます。
 タイのバンコク国立博物館では、9月14日から「日本とタイの陶磁器交流」が開催されています。これは、タイのシリキット王太后陛下の生誕90年を記念する、タイ王国文化省主催の大規模な展覧会です。日本側の陶磁器の展示は有田焼をはじめとした佐賀県のやきものであり、全展示数の半分近い約100点を九州陶磁文化館から出展しています。
 佐賀県とタイの交流は、佐賀がタイの人気映画のロケ地となったことに始まり、陶磁器を通じたタイの学芸員との交流を機に、タイ文化省と文化交流の基本合意書を締結しました。平成29年からは毎年タイフェスを開催し、特に一昨年はコロナ禍で全国各地のタイフェスが中止される中、唯一佐賀県が開催し多くの感謝の声をいただいています。こうした、これまでの心を通わせた交流の積み重ねが、今回の開催につながっているものと考えており、これからもタイ王国との交流を深めてまいります。
 また、10月18日から、前駐日大使であるペッカ・オルパナ氏からの招聘を受け、フィンランドを佐賀県使節団が訪問しました。私を団長に、本県の次世代を担うリーダーたちが、現地のDX、デザイン、まちづくり、エネルギーなど、先鋭的で意欲的な社会システムについて意見交換を行ってまいりました。今後、この訪問を契機に多くの新しい芽が佐賀の地に生まれてくることを確信しています。
 次に、栃木県で開催された国民体育大会・全国障害者スポーツ大会とSSP構想について申し上げます。
 3年ぶりに開催された国民体育大会では、ソフトボールで佐賀女子高校が14年振り3度目の優勝に輝きました。個人では、レスリングで、小野正之助選手、小柴伊織選手、仲里優力選手、甫木元起選手が、ウェイトリフティングで、生頼永人選手、安嶋千晶選手が優勝に輝いています。このほかにも、成年女子ではトライアスロン、スポーツクライミングが初入賞を果たし、成年男子では体操が若楠国体以来46年ぶりに入賞するなど、前回茨城国体の21競技44種目を大幅に上回る27競技82種目で入賞し、総合成績である天皇杯は33位から21位に大きく躍進しました。
 また、3年前は台風の影響で中止となり、4年ぶりの開催となった全国障害者スポーツ大会でも、佐賀県選手団が大いに活躍しています。九州予選を初めて勝ち抜き、団体競技で唯一の出場を果たしたバレーボール知的障がいの部の男子チームは、初戦で敗退するも、今大会の優勝チーム相手に勝利まであと一歩の健闘を見せました。個人競技では22名が出場し、陸上の大川内健太選手、水泳の森山大樹選手がそれぞれ2種目において大会新記録で金メダルを獲得するなど、合計26個のメダルを獲得しています。
 佐賀県では、世界に挑戦するトップアスリートの育成を通じてスポーツ文化の裾野を拡大し、さらなるトップアスリートの育成につながる好循環の確立を目指して、SAGAスポーツピラミッド構想に取り組んでいます。このSSP構想では、国内の一流指導者と県内の指導者が連携して選手を育成する取組を進めており、今国体では、レスリングに加え、ライフル射撃やバドミントンでも高校生アスリートが入賞し成果が表れています。また、個人伴走型で競技活動支援や県内就職支援を進めているSSPアスリートが数多く入賞しており、選手・指導者の志とアスリートの人生にコミットするSSP構想の取組が相まって、いい流れが生まれています。
 さらに、一昨日開催された、講道館杯全日本柔道体重別選手権大会の60キロ級では、SSPアスリートとして、佐賀工業高校時代から支援している近藤隼斗選手が、決勝戦で古賀稔彦さんの次男である古賀玄暉選手を破り見事に優勝しました。これにより、2年後のパリ五輪への出場という夢に光が差してきたものと思います。
 今後もこうした勢いでSSP構想を推進し、2年後に迫ったSAGA2024につなげ、佐賀に競技力の根付く戦い方での天皇杯獲得を目指すとともに、「佐賀が育てる、佐賀が支える」という想いを大切にして、SAGA2024のその先を見据えた、スポーツの力を活かした人づくりや、スポーツホスピタリティをはじめとするスポーツビジネスを核とした地域づくりを進めてまいります。
 次に、「SAGA2024」のメイン会場となるSAGAサンライズパークの整備について申し上げます。
 中核施設であるSAGAアリーナについては、外壁工事が終わり足場が撤去され、その全貌が現れました。SAGAアリーナはSAGA2024の開催だけでなく、プロスポーツの試合やコンサート、全国規模の学会や展示会などの開催を実現し、その先も常に多くの皆様と感動を分かち合っていく場所として整備を進めています。観衆の感動がステージに直に届くよう設計されたメインアリーナでは、エリアごとに工夫された観客席の取付けが進んでおり、新時代のアリーナとして注目されるものとなりました。
 一昨日開催した「もうすぐ完成内覧会」には、日本バレーボール協会の川合俊一会長やBリーグの島田慎二チェアマンなど関係者にお越しいただきました。その洗練された機能に感嘆の声が上がり、様々な期待の声も寄せられました。
 SAGAアリーナは来年5月13日にオープンすることを決定し、いよいよSAGAサンライズパークはグランドオープンを迎えます。これを記念する最初の催しとして、6月4日に「With You!~佐賀県文化芸術祭~」を開催します。佐賀県民のアリーナとして県全体でお祝いし、県民の想いや息吹を吹き込みたいと考えています。そして、その後には、フィギュアスケートショーや日本のトップアーティストによる全国アリーナツアー公演、全国規模の学会など、佐賀県初となるイベントが続々と開催される予定です。オープンしてからも、使い方や楽しみ方で様々なトライアルを行い、その状況に応じて修正しながら、まさに人が人生を歩む中で経験を積み重ね成長していくような発展型のアリーナにしていきたいと思います。
 続きまして、提案事項について御説明申し上げます。
 今回の補正予算案の編成に当たりましては、9月補正予算編成後の情勢の推移に対応するため、原油価格・物価高騰対策及び新型コロナ対策の二つを柱として、早急に措置を要するものについて所要額を計上することといたしました。
 原油価格・物価高騰対策については、これまで、6月補正予算、9月補正予算により一定の対策を打ってきました。その後も燃油や原材料等の価格が高止まりし、電気やガスなど光熱費の値上げが続く状況は、依然として県民生活や県内の経済活動に大きく影響を及ぼしています。このため、現場の状況をさらに確認した上で、追加の措置として、様々な分野を対象に現下の厳しい状況を乗り切ってもらうための応急的な支援を行います。
 新型コロナ対策については、これまでの先手先手で機動的な対応を今後も着実に実施していくため、医療体制の確保などを継続してまいります。
 あわせて、コロナ禍における価格高騰という厳しい状況においても、新たな時代を見据え、SDGsを意識した、DXや省エネなどの社会実装に向けたチャレンジも織り交ぜた予算編成としています。
 この結果、その総額は、歳入歳出とも、それぞれ、
  一般会計      約70億5,000万円
  特別会計    減額 約1億5,800万円
となり、これを既定の予算額と合わせますと、本年度の予算総額は、
 一般会計   約5,932億  100万円
 特別会計   約1,974億9,000万円
となっております。
 次に、予算案の主な内容について申し上げます。
 まず、光熱費などの負担増に直面する現場への支援についてです。
 光熱費などの高騰により、医療機関や福祉施設、保育所等が影響を受けていますが、これらの施設の多くは、診療報酬など国が定める公定価格で運営されているため、コスト上昇分を価格転嫁することができません。また、価格高騰の長期化により、経営努力だけでは対応が難しくなっています。このため、県民生活に不可欠なサービスを維持していただけるよう、これらの施設に応援金を交付することといたしました。
 また、私立の高校やSSPアスリート寮などについては、保護者負担の増加や教育活動への影響が懸念されることから、光熱費高騰分相当を補助いたします。
 さらに、土地改良区などが管理する揚水ポンプ場などの農業水利施設約2,400か所について、農業者の負担が軽減されるよう電気料金高騰分の2分の1を補助いたします。
 次に、燃料費高騰の影響を受ける農業者及び漁業者への支援について申し上げます。
 燃料費の高騰により、ハウスを加温する施設園芸や乾燥作業が必要なお茶栽培、経費の半分を燃料費が占める漁船漁業が大きな影響を受けています。今後の経営に不安を抱える方々に前を向いて事業を続けていただくため、燃油の使用量や漁船の大きさに応じて、応援金を交付することといたしました。
 次に、価格高騰の影響を受けている中小事業者への支援について申し上げます。
 中小事業者については、6月補正予算において第一弾の応急的な支援を行いましたが、コスト上昇分の価格転嫁が十分に進んでおらず、厳しい経営環境が続いていることから、今回、第2弾の支援を行うことといたしました。基本的には価格転嫁による対応が求められるため、支援額は前回の概ね半分とする考え方で、燃油の使用が多い貨物運送事業者やバス・タクシー事業者などに対しては保有する車両台数に応じ、そのほかの事業者には定額の応援金を交付いたします。
 次に、事業者の新たなチャレンジへの支援について申し上げます。
 厳しい状況の中でも、多くの事業者がピンチをチャンスに変えようと様々な努力をしています。こうした動きに対し、県ではこれまで3度にわたって支援を行い、新分野への進出や業態転換、新商品の開発、デジタル化による生産性の向上など、500を超える新たなチャレンジが生まれています。県内事業者からは、まだ多くのニーズがあると聞いていることから、今回第4弾の支援を行うこととし、新たな視点と発想で事業の変革に挑む、事業者のチャレンジを継続的に後押ししてまいります。
 次に、建設現場へのICT導入により、生産性向上と省エネ化の実現を目指す建設DXを進めるため、ICT建設機械や3次元測量機器などの導入を支援することといたしました。建設DXに向けた建設業者の新たなチャレンジを後押ししてまいります。
 次に、バスや鉄道などの公共交通機関の利用促進について申し上げます。
 燃料価格の高騰によって、バスや鉄道などの公共交通機関が影響を受けていますが、県民はマイカー移動が習慣化しているため、普段ほとんど利用しないという方が多く、乗った経験がない子供も少なくありません。このため、公共交通機関を身近に体感してもらい、利用につなげていく実証実験に取り組みたいと考えています。まず、路線バスについては、佐賀さいこうフェスの期間に佐賀市内で実施した運賃無料デーを拡大し、来年1、2月の水曜日と日曜日に県全域で実施します。また、松浦鉄道については、伊万里市と有田町の小中学生約6,000人に1日乗車券を配布し乗車体験してもらうとともに、待合所やトイレのリニューアルなどの利便性向上のための環境整備を支援することといたしました。
 次に、九州佐賀国際空港の利用者回復に向けた取組について申し上げます。
 先月11日から国の水際対策が大幅に緩和され、同時に全国旅行支援がスタートしています。運航再開後のインバウンドの受入れに備え、水際対策に必要な体制整備を行いながら、航空券の割引キャンペーンを実施し、利用者回復に向けたスタートダッシュを図ってまいります。また、空港テナントで使用できるクーポンを全ての搭乗者に配布するなど、空港施設の集客促進を図ることで、普段から人の集う場所となるよう取り組んでまいります。
 次に、県立夜間中学の設置について申し上げます。
 県では、県民の学びたいというニーズに応え、誰もが義務教育の学び直しの機会を得られるよう、県立で夜間中学を設置することとしています。設置場所については佐賀北高校の通信制校舎を活用すること、また、開校時期については令和6年4月とする方針が、教育委員会において決定されました。今後、施設の整備など、開校に向けた準備を進めることとされています。
 予算外議案といたしましては、条例議案として4件、条例外議案として18件となっています。
 最後になりますが、今議会は私にとりまして2期目の任期最後の定例県議会となります。知事に就任してからこの8年間、私は一貫して、人を基軸に考えることで佐賀を輝かせていきたいという思いを込めて「人を大切に、世界に誇れる佐賀づくり」を基本理念として県政運営に当たってまいりました。まず1期目の4年間は、県内各地をつぶさに見て回り、歴史や文化、美しい自然、豊かな食文化など佐賀が持つ本物の価値を確信し、「さがデザイン」、「自発の地域づくり」、「佐賀さいこう!」、「肥前さが幕末維新博覧会」などの事業を通して、県民の皆様の魂に灯をともすべく、佐賀への自信と誇りを醸成させるよう全力を傾けてまいりました。また、様々な皆さんの声をお聴きしながら、「子育てし大県“さが”プロジェクト」や「森川海人っプロジェクト」、「SSP構想」など、社会の趨勢を見据えたプロジェクトを開始し、主にソフトの面で佐賀の未来につながる種を蒔いてきました。
 そして2期目の4年間は、コロナ禍と豪雨災害への対応に最優先で取り組まなければならない状況でした。そうした中でも、その対応を行いながら、戦略を持って築き上げてきたプロジェクトを一層充実させてきました。そして、ソフト戦略の中で、その実現に必要なハード整備を練り上げてきました。可能性に溢れる佐賀の土壌で、これまでの取組が芽を出し、着実に育っていると感じています。本質的な価値を追求する「世界に誇れる佐賀」に向けてさらに花を咲かせたいと日々考えております。

 さて、目覚ましい進歩を続けるAIは、様々な分野のデジタル実装を加速させ、これからの社会に大きな変革をもたらすことは疑いようがないと思います。これに対して、デジタル推進人材を育成していくことも急務です。
 ただ、デジタル化を進めていく中で、我々は、デジタル化、AIの活用を人が飲み込まれる形ではなく、人の社会をより良くするための手段として活用していかなければなりません。
 AIは様々な膨大なデータから機械学習を行い分析し、最適値を導き出す又は予想することに優れています。
 しかしながら、新しい社会を構築していく上で、人の感情や社会倫理などを踏まえながら、そして将来を鳥瞰的に想像し創り上げていくには「人の力」が不可欠と信じます。
 こうした状況の中で私は改めて、これからの人材に求められるものを考えています。画一化された人材を大量に輩出するのではなく、「注意深さ、真面目さ」だけを重視するのではなく、「課題を発見する力」「あるべき姿を自ら導ける力」が求められていくと思います。
 様々な環境変化が著しい今の時代において、佐賀県は想像力や構想力を持つ多様な人材を育てていく県であり、育っていく環境を持つ県にしていきたいとの思いを強くしています。
 今、世界は激動の中にいます。国際情勢の不確実性の高まりが、経済や安全保障などの様々な分野に影響を及ぼしています。こうした、時代変革の大きなうねりの中にあるからこそ、私自身も世界の情勢を鳥瞰的に見て、佐賀の未来を想像し、人にこだわり、ポテンシャルを最大限に活かすことに力を注いでいきます。そして、真っ直ぐに、愚直に、ひたすらに県民のために頑張り続けてまいります。
 以上、今回提案いたしました議案などについて御説明申し上げました。
 よろしく御審議いただきますようお願い申し上げます。





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