令和6年6月26日 博物館・美術館 学芸課 担当者 岩永 内線 3717 直通 0952-24-3947 E-mail hakubi@pref.saga.lg.jp |
OKADA-ROOM Vol.31の展示がスタートしました―三郎助、海を渡る―
佐賀県立美術館は開館以来、明治から昭和初期にかけて活躍した佐賀県出身の日本近代洋画の巨匠岡田三郎助(おかだ・さぶろうすけ、1869~1939)の画業と人物を紹介してきました。
岡田三郎助は、その人生において2回、欧州に渡りました。一度目は明治30年(1897)からの約4年間で、初めての西洋画研究を目的とする文部省留学生としてパリに渡り、黒田清輝や久米桂一郎の師でもあるラファエル・コランに師事しました。岡田は、コランの元で師の穏健な外光派風アカデミズムの画風を受容するとともに、フラ・アンジェリコやヴァン・ダイクといった過去の巨匠の作品を模写し、西洋画を熱心に学びました。
二度目は昭和5年(1930)、文部省から工芸美術視察を命ぜられて渡欧したもので、フランスのみならず東欧やバルカン諸島も巡っています。途上、岡田が多くの古裂(こぎれ)を買い求めたため、この旅は「裂の旅」とも呼ばれています。なお、岡田のアトリエに残された16mmフィルムにはこの旅の様子が写されており、岡田や同行した八千代夫人の様子、あるいは彼らの目に映じた各国の姿を活き活きと今に伝えてくれます。
今回のOKADA-ROOMでは、「三郎助、海を渡る」と題し、「外国」に関わる岡田三郎助の作品を展示します。あわせて、昭和5年の欧州視察の様子を含め、岡田アトリエに残された16mmフィルムを再編した動画を御紹介します。
記
1 会期 令和6年6月20日(木曜日)~8月4日(日曜日)
2 開館時間 9時30分~18時
3 休館日 毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)
4 会場 佐賀県立美術館 OKADA-ROOM(佐賀市城内1丁目15-23)
5 観覧料 無料
岡田三郎助(おかだ・さぶろうすけ) 1869(明治2)~1939(昭和14)
1869年(明治2年)、佐賀県佐賀町(現佐賀市)に旧佐賀藩士石尾孝基(いしお・たかもと)の三男として生まれる。幼時に油絵に関心を持ち、のち洋画を学ぶ。黒田清輝(くろだ・せいき)、久米桂一郎(くめ・けいいちろう)らとともに洋画団体「白馬会」を創立、東京美術学校の西洋画科の助教授に就任する。また文部省の留学生としてフランスに渡り、画家ラファエル・コランから穏やかで明るい色調の作風を学んだ。帰国後は東京美術学校教授として、官展の指導者として、後進の育成に力を注ぎ、1937年(昭和12年)、第1回文化勲章を受章した。
繊細優美な婦人像を多く描き「美人画の岡田」と呼ばれた。
出品目録
- 岡田三郎助《自画像》1899(明治32)、油彩・カンヴァス、佐賀県立美術館
- 岡田三郎助《少年》1899(明治32)、油彩・カンヴァス、佐賀県立美術館
- 岡田三郎助《老人像》1901(明治34)、油彩・カンヴァス、佐賀県立美術館
- 岡田三郎助《西洋婦人像》1900(明治33)、油彩・カンヴァス、佐賀県立美術館
- 岡田三郎助《花野》1917(大正6)、油彩・カンヴァス、佐賀県立美術館、佐賀県重要文化財
- 岡田三郎助《朝鮮婦人》1922(大正11)、油彩・カンヴァス、佐賀県立美術館
- 岡田三郎助《コローの池》1930(昭和5)、油彩・カンヴァス、個人蔵(寄託)
- 岡田三郎助《フローレンス風景》1930(昭和5)、水性絵具・絹・板・布貼り、佐賀県立美術館
- 岡田三郎助《ローマの古橋》1930(昭和5)、油彩・カンヴァスボード、佐賀県立美術館
- 岡田三郎助《裸婦》1935(昭和10)、油彩・カンヴァス、佐賀県立美術館、佐賀県重要文化財
※他、アトリエに残されていた16mmフィルムを再編した映像をOKADA-ROOM内で御紹介します。
岡田三郎助アトリエ・女子洋画研究所(県立博物館東側)
岡田三郎助は、1908年(明治41年)から1939年(昭和14年)まで、現在の東京都渋谷区恵比寿で暮らし、制作に打ち込みました。自宅に隣接したアトリエは木造の洋風建築で、岡田の没後は洋画家の辻永(つじ・ひさし)が譲り受けました。辻家の人々により長年守られた後、佐賀県立博物館東隣に移築・復原され、2018年度から一般公開されています。2022年には、国の登録有形文化財に登録されました。
このアトリエで岡田の名作の数々が誕生し、またその一室は、彼が主宰した画塾「女子洋画研究所」の教室として使用され、数多の女性画家たちが巣立ちました。
御来館の際は、ぜひアトリエもあわせて御見学ください。