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パネラー意見

最終更新日:

MOX燃料とウラン燃料に安全性で異なることはない
【九州大学大学院 出光教授】

 「発電用軽水型原子炉施設に用いられる混合酸化物燃料について」という原子力安全委員会の専門部会の報告書があります。報告書では、プルトニウムの含有率が最大13%、核分裂性プルトニウム富化度が約8%、炉心の装荷率が約3分の1程度で検討がなされています。また、燃焼度というのは車で例えれば走行距離、出力はその時の車のスピードで、出力が高くて長く運転すればたくさん走るということですが、その最高燃焼度は45000MWd/tの条件で検討されています。 その結果、従来の設計を大幅に変更することなしにMOX燃料を使用可能であると報告書で言っています。ただし、これらの条件は、超えると危なくて使えないという数字ではありません。さらに高い含有率の燃料を将来使うことになった場合には再度検討して報告書が出されるというふうになると思います。
 これに対し玄海3号機では、プルトニウム含有率、それから核分裂性プルトニウム富化度については、報告書と同レベルまでのものを使う可能性があります。ただし、炉心の装荷率は4分の1程度で使うとされています。また、最高燃焼度は報告書と同じものを考えています。
 報告書では一応留意点ということで、4項目が挙げられています。
 ペレットのクリープ速度、分かりやすく言うと燃料の柔らかさですが、これが増加するという点については、変形のスピードが速いということで、どちらかというと燃料棒が壊れにくくなる性質です。
 融点については、ウランで2800度ぐらい、プルトニウムで二千百数十度ということですが、実際に使用するプルトニウムの濃度が10%前後ということでみると、燃料の融点の低下は約70度ということで、安全性には問題ありません。
 熱伝導率についても確かに下がりますが、最も厳しい条件の評価で、途中異常時があった場合も500度近くの裕度を持っているため、中心部が溶融することはないということが確認されています。
 燃料ペレットからのガス放出による内圧上昇についても、解析の結果十分に燃料は壊れないということが確認されています。プルトニウムスポットについても、製造時に400ミクロン以下に管理され問題ありません。
 プルトニウムを使うにあたってウラン燃料と大きく異なることはありません。

安全性は解析や実験で確認されている
【東京大学大学院 大橋教授】

 我々の現代社会には、いろんな問題が出てきます。原子力発電とか、遺伝子操作、伝染性の疾患、地球環境問題。こういう問題は、極めて技術の果たす役割が大きいものです。過度に情緒的なアプローチや、怖い・恐ろしいといったイメージがたくさん流されていますが、科学技術の問題というのは、科学技術をベースにした客観的な判断をすることが一番の基本です。
 安全確保の視点は、安定に運転できるかどうか、何か起きたときに安全に停止できるか、万一の事故時に放射能影響を防げるか、といった問題です。

 プルサーマルについては、燃料をプルトニウム入り燃料に変えるだけで、原子炉特性に基本的な変更はなく、安全性が現行の軽水炉と変わることはありません。こういうことの判断の根拠は解析や実績、実験、学術的知見、経験に基づいて総合的な特性を判断します。これまで軽水炉、プルサーマル、高速炉、実験炉、新型転換炉、多様な条件の経験と実績を持っており、また、データベースの整備、解析手法の改良、計算機性能の向上とあいまって、基本的に特性を正しく予測できる技術が確立しています。これに、プルサーマルに関しては臨界実験や装荷割合、原子力出力、燃焼度、プルトニウム含有率についての実績をベースに判断をしています。 事故の影響範囲については技術的に想定しうる最大の放射能漏洩を仮定した時、MOX燃料装荷では、よう素が1%弱増えるが、希ガスは5%強減るという結果になっており、現行と同等の結果です。
 これに対して距離が2倍に、面積が4倍になるという話があります。その評価は、プルトニウムとか他の元素がチェルノブイリより更に放出されるという想定をしています。これは技術的には発生しないシナリオです。軽水炉ではチェルノブイリのようなことは起きません。それを意図的に想定して恐怖の垂れ流しをやっているような評価結果です。
 安全余裕を食いつぶすとか、事故の影響が2倍4倍になるというようなことは全くありません。玄海町だとか佐賀県の地元の方々が不安を感じる必要は全くありません。

プルサーマルは安全性を犠牲にする
【京都大学原子炉実験所 小出助手】

 私はかつて原子力の平和利用に大変な期待を抱きました。なぜなら、化石燃料は使えば無くなってしまう、将来のエネルギーは原子力に頼るしかないと聞かされたからです。ただし、それは事実ではありません。地球上にあるエネルギー資源で一番豊富な資源は石炭です。石油や天然ガス、オイルシェールやタールサンドという資源もあります。それらがすべて化石燃料ですが、原子力の燃料であるウランは石油に比べても数分の1、石炭に比べたら数十分の1しかないという大変貧弱な資源なのです。こんなものに人類の未来を託すことがまずバカげていると思わなければいけません。
 ただし、原子力を推進する人達には夢があります。原子力の資源にはプルトニウムもあるというわけです。プルトニウムというのは長崎の原爆の材料ですから、原子炉でも燃えます。そのため、プルトニウムを生み出してそれを資源にしたいと考え出しました。
 高速増殖炉という特別な原子炉を動かし、そこから生み出されるプルトニウムを特別な再処理で取り出し、核燃料サイクルをグルグル回すことで核分裂性のウランに比べて60倍ぐらいまで原子力の資源が増えると彼らは言います。ただし、プルトニウムは天然には全くありません。そのため、普通の原子力発電所の使用済み燃料の中からプルトニウムを分離して核燃料サイクルに引き渡そうとしました。そのために日本が分離して保有しているプルトニウムはすでに43トンにもなり、それを長崎原爆を作ることに使うなら、2000発も出来てしまうくらいの量になっています。
 一方、高速増殖炉は世界的にも実現できていないし、日本でも「もんじゅ」という実験炉が潰れてしまいました。こうなると、国際的に大変な疑惑を受けることになります。それで、しょうがないのでプルサーマルで燃やしてしまおうということを考えたわけです。プルサーマルはもともと必要だったのではなく、原子力をやろうとしていた人達の夢が破れてしまい、どうしようもなくて今追い込まれている道なのです。プルサーマルをすれば、安全性も経済性も犠牲にします。資源的にはほとんど意味がありません。それを皆さんが受け入れるのかどうかが問われています。

国の安全解析・審査は信頼できない
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】

 1999年の9月に、関西電力の高浜4号機用のMOX燃料データに不正があるという疑惑が起こりました。関電は、僅か1週間調査しただけで、「不正はない」というように結論し、その結論を当時の規制当局である通産省と原子力安全委員会は直ちに了承しました。
 それに対して私たち市民は、膨大なデータの入力作業を行い、不正があるということを突き止めて、差し止め訴訟を起こしました。判決が出るという予定になっていたその前日に、関西電力がやっぱり不正がありました、すみませんと謝って、全部燃料を破棄してしまったということがありましたが、原子力安全・保安院は佐賀県への説明で、原因は関電が悪いとして、規制当局としての責任には全く触れていません。こういう姿勢で今回も安全審査をすることは全く信頼ができないと思います。 プルサーマルというのは、ウラン燃料用に設計された原発で、設計に反して特性の異なる危険なプルトニウムを混ぜた燃料、MOX燃料を燃やすことであります。 それでどうなるかというのは、一つは、70度燃料が溶けやすくなるということ。1979年のスリーマイル島原発2号機の事故は、燃料の45%が溶融し、そのうちの3分の1が炉の下の底の部分に落下しました。ここはもっと融点が低いため、下手をすると、底が溶け下に落ち、下にたまった水により、水蒸気爆発を起こす恐れがあります。70度溶けやすくなるということは、もっとたくさん溶けて、底が抜ける傾向が高まるということになります。
 プルトニウムを使えと簡単に言いますが、利用の陰には放射能汚染があります。青森のプルトニウム再処理工場から毎年スリーマイル島の原発事故で出た放射能の3・6倍の放射能がこの排気筒から大気に放出されます。また、放射能の廃液を毎日放出し、これをもし飲むと4万7千人分の致死量に相当するのが、毎年ここから放出されます。放射能摂取限度で言うと、3億3000万人分に相当します。
 プルサーマルを容認するということは、今のようなプルトニウム汚染を引き起こして、日本を放射能汚染の泥沼へと導く道であります。プルサーマルを拒否すればまた別の道が目の前に開けてくる、そういう第一歩になると思います。

プルサーマルの原発が攻撃される蓋然性は低い
【拓殖大学海外事情研究所 森本所長】

 原発を含め、この種の国家内にある重要な施設に対するリスク・危険は、大きく分けて2つあります。一つは大規模な災害・事故。もう一つは作為によるものです。この作為によるものというのが今日の議題です。例えばテロだとか、ゲリラ・コマンドだとか、何かしら国家機関やテログループの意図があり、その支持・命令を受けて不法に他国に侵入し、重要施設を破壊するといった行動です。
 一体、どういう目的で例えば原発のような重要施設を攻撃するのかというと、一般論として国際政治の場では2つくらいケースがあります。一つは言うまでもなく、そのような重要な国家施設を破壊することによって、相手国家の機能を麻痺させるといったもの。あるいは、第二に自分側の意思を他国家に強要・脅迫するといった、ある種の武力による威嚇であり、ある種の団体、組織等が行う非合法的活動としてのテロであります。
 このようなテロが突然原発に対して行われる蓋然性を考えると、それは、少し考えにくいと思います。我が国の地理的環境を考えると、経空・経海脅威と言って、空域を通ってくるか、海域を通ってくるかであり、第一義的に事前に何らかの兆候があると考えるのが普通です。アメリカの偵察衛星で、我が国の領海の中に近づくものについては、原則的に我が国に通報があります。また、我が国としても情報衛星を運用しており、更に、日本海には、海上自衛隊と米海軍がイージス艦を展開しており、1隻で大体日本の半分の情報収集をすることができます。この種の情報収集によって、100%ではありませんが、ある程度、我が国に近づく航空機及び船舶を事前に情報収集をするということができると思います。
 問題としては、それでも進入してくる脅威に対して上陸後に警察で対応できないような武器を携行しているか、または、多数で進入してくるという時に、(国会の承認なしに)自衛隊を出す法律上の枠組みがないことなど、原発に対する攻撃を効果的に事前に防ぐという方法については、法体系と国内の体制をまだまだ整備していく必要があるということではないかと思います。
 実際に攻撃を受けた場合にどうなるかというと、現在のロケットとかミサイルで、非常に堅固に守られた構造物である原発が、直ちにミサイルやロケットで破壊されるとは考えにくい。しかし、安全には絶対ということは無く、我々は外から来るもの、あるいは国内から同調する勢力など、いろいろな種類のリスクに対応しないといけないと思います。

プルサーマルの前に原発耐震審査指針の見直しを
【神戸大学海事科学部 山内助教授】

 結論を先に言えば、プルサーマルの議論をする前に、原発耐震審査指針の見直し、あるいはこれが済むまではプルサーマルに対する判断は待ってもいいというのが私の考えです。
 玄海原発は、私たち関西に住む者が抱えている若狭湾にある原発に比べると比較的新しいようなので、老朽化という意味では、比較的新しいということになると思います。しかし若狭と同じように、原発文明がこれまで経験した事がないような地震の活動期に進められようとしている計画であるということを見ないといけないと思います。実際玄海原発を考える場合、どういう時期に、どういうタイミングで、炉心にそういった、これまで経験の無い燃料が装荷されようとしているのかというところを見る必要があると考えるからです。
 福岡県西方沖地震で私が注目すべきものとしては、未知であった断層、これまでそこに断層があると思われてなかった所、そこでマグニチュード7の地震が発生したということです。警固断層系の延長線上にあります。玄海原発の古い方の設置申請書を見ると、この警固断層系が載っていません。玄海原発では想定地震としてマグニチュード7・5と、直下地震として6・5とされています。現在の審査指針に6・5と書いてありますが、実際に活断層のなかった所で7・0が起こってしまったわけであり、安全性を確保しようと考えるのであれば、直下地震として6・5ではなく、少なくとも7・0を考えるべきではないかと考えます。
 今年の8月になり、驚くべき地震が起きました。宮城沖の地震です。宮城県女川町の女川原発で設計用に考えた地震がありますが、実際には設計より小さい地震であったにもかかわらず、揺れが予想を上回りました。大崎の手法というこれまで非常に大きな権威を持っていた計算手法が使われていますが、それを超えてしまった。これが非常に大きな問題と考えます。少なくとも現在の耐震設計審査指針の見直しが完了するまでは、玄海でのプルサーマルは待つべきではないかというのが私の意見です。
 何か大きなことが起こった時に、そこに付加的な災害があると地域は非常に大変なことになります。被災している所に、例え少しでも、放射能を降らすようなことは起こってはならないと思います。

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