【中村コーディネータ】
プルサーマルの安全性について考えてきたが、最後にもう一度、パネラーの皆さんの御意見もしくはメッセージをいただき、皆さんがプルサーマルを考えるひとつの基準にしていただきたい。
【神戸大学海事科学部 山内助教授】
今日はプルサーマルの問題のところに地震の議論が抜けているのではないかということで、地震の議論を持ってきたつもりです。
神戸等の港湾では津波の際に船舶が液化燃料のタンクにぶつかるが、それをどう回避するのかということが大問題になっています。原発でも、取水口の水位がたぶん問題になると思いますが、地震のことを考えるのが、まず大事であると考えます。
安全余裕がどうこうという話でなくても、MOX燃料の融点が70度低いというなら、もっと性能のいい燃料を作ればいいわけで、そういう努力がなされていないという印象を持ちました。
【拓殖大学海外事情研究所 森本所長】
日本の社会における安全神話がすごい勢いで崩れつつあると思います。原発についてなかなか皆さんの理解が得られない理由は、過去数十年の間に日本の原発でちょっと考えられないような事故が起きてきたということだと思います。我々が何となく守るべき基本的ルール、規律がどこかで弛緩してきて、現象としてそういう事故を生んできたと思います。
今日のこのシンポジウムを通じて、我々はもう一度、自分達の身の回りをもう一度見直して、自分達でなんとなくやってきたことというのが、本当に正しく行われているのか、自分達が守っているルールというのが、本当に正しいのかということをもう一度見直すことから私は安全管理というものが始まるのではないかと思います。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
原発全体が老朽化が進んでいます。老朽化問題は、真剣に取り組まないと、いつ事故を起こすか分からないような時代に入ってきています。そういうところで、今まで海外で再処理したプルトニウムがあるから、それを使うということになるわけで、九州電力が16体ずつMOX燃料を入れていきますが、それは3回ないし、せいぜい4回入れるだけの分しかありません。その後どうなるかというのは、全く見通しが立っていません。
だから、皆さんは今すぐ慌ててプルサーマルを判断するようなことは全然する必要はないと思います。引き受けたら、使用済MOX燃料が永久に置かれる可能性があるわけで、慌てて決める必要はないと思います。よくよく議論して、充分納得された上で判断されるように希望します。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
安全性の問題は単に技術の問題だけでは決まりません。政策的な問題、経済的な問題、日常的な管理の問題など、いろんなことが絡んでいます。技術というのはもちろん事故が起きないようにやるわけですが、必ずしもそれが貫徹できない時があります。今までも事故が起きてきたのはそのためです。プルサーマルをやれば事故や被曝の危険が増えます。
また、使用済MOX燃料については、2010年頃から再処理をするかどうか考えると言っていますが、考えたところで名案が出ない可能性もあります。皆さんがプルサーマルを受け入れるというならば、国や九州電力が説明していることが、その通りにはならない場合があることを必ず含んでおいて下さい。
【東京大学大学院 大橋教授】
原子力技術というのは一般公衆の方に顕著な放射線影響を与えないということを最大の目標にスタートした技術です。何かあっても大丈夫なように施設し、重大事故、仮想事故がそうですが、仮に何があってもこうだと検討をします。そうすると、それは起こるんだろうという議論になる。原子力賠償保険もそうで、もしこうなったらという、その最果てにそういう制度がありますが、それが逆に見れば、やっぱり起こるだろうという捉え方をされるのがとても残念です。
プルサーマルの安全性について、今日簡単に説明しましたが、専門家として何の問題もないと思っています。原子力にはたくさんの技術者が、メーカーだとか、電力だとか、行政庁だとか、我々も参加していますが、危険だと分かっているものを地方に押し付けようなんていう人は誰一人いないと思います。
皆さんがイデオロギー論に巻き込まれたり、原発があるから不安に思っておられるのは残念です。原子力発電所というのは、皆さんが思っている以上に安全です。
【九州大学大学院 出光教授】
再処理工場も、原発もある東海村に7年住んでいました。その後、一時期、スイスの研究所に1年間いましたが、近くにベツナウという炉がありそこにはもうMOX燃料が入っていました。周りの人は特に変わった様子もないし、原子力発電所に勤めている人、あるいは研究所に勤めている人、原子力をやっている人は非常に尊敬されていて、どれだけ地元に根付いているのかが実感できました。
プルサーマルをやっていた発電所の近くに農場とかいっぱいありましたが、風評被害はないし、他の所と変わらない生活ができていました。
プルサーマルについて、急ぐ必要はないという話もありますが、できるものはやった方がいいし、使うと、例えば1トンの燃料を処理すると、250キロのウラン、プルトニウムが回収できます。プルトニウムだけを見ても130キロ回収できます。これはものすごい資源だと思います。資源の有効利用という観点ではこのまま進めていきたいと思います。