主任技術者又は監理技術者の専任配置の特例
【専任特例1号】
専任特例1号については、主任技術者又は監理技術者は、専任を要する工事を兼務できることとされており、
適用にあたっては、以下の全ての要件に適合しなければならない。なお、専任特例1号は、下請け企業が配置
する主任技術者についても適用が可能である。
1)各建設工事の請負代金の額が、1億円未満(建築一式工事の場合は2億円未満)であること(令第二十八条)。
なお、工事途中において、請負代金の額が1億円(建築一式工事の場合は2億円)以上となった場合には、
それ以降は専任特例を活用できず、主任技術者又は監理技術者を工事毎に専任で配置しなければならない。
2)建設工事の工事現場間の距離が、同一の主任技術者又は監理技術者がその一日の勤務時間内に巡回可能なもの
であり、かつ工事現場において災害、事故その他の事象が発生した場合において、当該工事現場と他の工事現場
との間の移動時間がおおむね2時間以内であること。(規則第十七条の二第一項第一号)なお、左記の移動時間
は片道に要する時間であり、また、その判断は当該工事に関し通常の移動手段(自動車など)の利用を前提に、
確実に実施できる手段により行うものとする。
3)当該建設業者が注文者となった下請契約から数えて、下請次数が3を超えていないこと。(規則第十七条の二
第一項第二号)なお、工事途中において、下請次数が3を超えた場合には、それ以降は専任特例は活用できず、
主任技術者又は監理技術者を工事毎に専任で配置しなければならない。
4)当該建設工事に置かれる主任技術者又は監理技術者との連絡その他必要な措置を講ずるための者(以下「連絡員」
という。)を当該建設工事に置いていること。なお、当該建設工事が土木一式工事又は建築一式工事の場合の連絡
員は、当該建設工事と同業種の建設工事に関し1年以上の実務の経験を有する者を当該工事現場に置くこと。(規
則十七条の二第一項第三号)
連絡員は、各工事に置く必要がある。なお、同一の連絡員が複数の建設工事の連絡員を兼務することは可能である。
また1つの建設工事に複数の連絡員を配置することも可能である。
連絡員は、例えば工程会議や品質検査等が2つの工事現場で同時期に行われる場合に、監理技術者等が遠隔から指
示等するにあたって、工事現場側にて適切に伝達する等、円滑な施工管理の補助を行う(事故等対応含む)ことを
想定している。
連絡員に必要な実務の経験として認められる内容は、法七条第二号に記載の営業所技術者(主任技術者)の実務の
経験として認められる経験の考え方と同じでよい。
連絡員に当該建設工事への専任や常駐は求めない。また、連絡員の雇用形態については、直接的・恒常的雇用関係
は必要ない。ただし、連絡員は当該請負会社が配置するものであり、施工管理の最終的な責任は請負会社が負うこ
とに留意が必要である。
5)当該工事現場の施工体制を主任技術者又は監理技術者が情報通信技術を利用する方法により確認するための措置を
講じていること。(規則十七条の二第一項第四号)なお、情報通信技術については、現場作業員の入退場が遠隔か
ら確認できるものとし、CCUS 又はCCUS とAPI 連携したシステムであることが望ましいが、その他のシステム
であっても、遠隔から現場作業員の入退場が確認できるシステムであれば可能である。
6)当該建設工事を請け負った建設業者が、次に掲げる事項を記載した人員の配置の計画書を作成し、工事現場毎に備
え置くこと。また、当該計画書は、規則二十八条の帳簿の保存期間と同じ期間、当該建設工事の帳簿を保存してい
る営業所で保存しなければならない。なお、当該計画書の作成等は電磁的方法によることが可能である。(規則第
十七条の二第一項第五号、第二項)
イ 当該建設業者の名称及び所在地
ロ 主任技術者又は監理技術者の氏名
ハ 主任技術者又は監理技術者の一日あたりの労働時間のうち労働基準法第三十二条第一項の労働時間を超えるものの
見込み及び労働時間の実績
ニ 各建設工事に係る次の事項
(イ)当該建設工事の名称及び工事現場の所在地
(ロ)当該建設工事の内容(法別表1上段の建設工事の種類)
(ハ)当該建設工事の請負代金の額
(ニ)工事現場間の移動時間
(ホ)下請次数
(ヘ)連絡員の氏名、所属会社及び実務の経験(実務の経験は、土木一式工事又は建築一式工事の場合に記載)
(ト)施工体制を把握するための情報通信技術
(チ)現場状況を把握するための情報通信機器
7)主任技術者又は監理技術者が、当該工事現場以外の場所から当該工事現場の状況の確認をするために必要な映像及び
音声の送受信が可能な情報通信機器が設置され、かつ当該機器を用いた通信を利用することが可能な環境が確保され
ていること。(規則第十七条の三)なお、情報通信機器については、遠隔の現場との必要な情報のやりとりを確実に
実施できるものであればよい。そのため、左記を満足できれば、一般的なスマートフォンやタブレット端末、WEB
会議システムでも差し支えない。また、通信環境については、例えば、山間部等における工事現場において、遠隔か
らの確実な情報のやりとりができない場合はこの要件に該当しない。
8)兼務する建設工事の数は、2を超えないこと。(令第三十条)なお、「専任特例1号を活用した工事現場」と「専任を
要しない工事現場」を同一の主任技術者又は監理技術者が兼務することは可能であるが、専任を要しない工事現場に
ついても、2)~7)の要件を満たし、かつ全ての工事現場の数が2を超えてはならない。