公益通報者保護法とは
近年、国民生活の安心や安全を損なうような企業不祥事の多くが、事業者内部の関係者等からの通報を契機として、相次いで明らかになりました。
このような状況を踏まえ、事業者による国民の生命や身体の保護、消費者の利益の擁護等にかかわる法令遵守を確保(=コンブライアンス経営の強化)するとともに、公益のために通報を行ったことを理由として労働者が解雇等の不利益な取扱いを受けることがないよう公益通報者保護法が平成18年4月に施行されました。
法の制定により、どのような内容の通報をどこへ行えば解雇等の不利益な取扱いから保護されるのかが明確になりました。
◇労働者が通報するに当たって
<通報の対象となる「法令違反行為」>
- 個人の生命又は身体の保護
- 消費者の利益の擁護
- 環境の保全
- 公正な競争の確保
- 上記以外の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護
- にかかわる刑法、食品衛生法、金融商品取引法、JAS法、大気汚染防止法、廃棄物処理法、個人情報保護法の他、政令で定めた法律に規定される犯罪行為やその他の法令違反行為(最終的に罰則が規定されているもの)が生じ、又はまさに生じようとしている場合
<通報先>
◇事業者内部:事業者が設置又は指定した通報窓口
◇行政機関:通報内容について命令、勧告等の法的権限を有する行政機関
◇事業者外部:報道機関や消費者団体など被害の発生や拡大を防止するために必要と認められる者
<通報先に応じた保護の要件>
◇事業者内部
(1)金品を要求したり、他人をおとしめるなど不正の目的でないこと
◇行政機関
(1)に加えて、(2)通報内容が真実であると信じる相当の理由があること
◇事業者外部
(1)及び(2)に加えて、次に掲げる要件のいずれかを満たすこと
- 事業者内部や行政機関に通報すると解雇その他の不利益な取扱いを受けると信じる相当の理由がある場合事業者内部への通報では証拠が隠滅されると信じる相当の理由がある場合
- 事業者から事業者内部又は行政機関に通報しないことを正当な理由がなく要求された場合
- 書面により事業者内部へ通報しても20日以内に調査を行う旨の通知がない場合又は正当な理由なく調査を行わない場合
- 人の生命・身体への危害が発生する急迫した危険がある場合
<留意する事項>
通報を行うに当たっては、他人の正当な利益(名誉、信用、プライバシーなど)を侵害しないように配慮することが必要です。
<通報者が受けられる保護の内容>
・公益通報をしたことを理由とした事業者が行った解雇は無効です。
・解雇以外にも、公益通報をしたことを理由とするその他の不利益取扱いも禁止されています。
・派遣労働者が派遣先で生じている法令違反行為を通報しても、これを理由とする労働者派遣契約の解除は無効であり、派遣労働者の交代を求めること等も禁止されています。
【Q&A】
(質問) パートやアルバイトが通報しても保護の対象となりますか?
(回答)
パートやアルバイトについても、正社員と同様に通報したことを理由とした解雇等の不利益取扱いが禁止されています。また、取引先の労働者も法の対象になります。
(質問) 公務員も対象になりますか?
(回答) 公務員も法の対象になっています。
(質問) 法の対象となる法律以外の法令違反行為を通報した場合はどのようになりますか?
(回答)
公益通報者保護法は、保護されるための要件等を明確にして、公益通報を理由とした 不利益取扱いを禁止し、公益通報者の保護を図ろうとするものです。法の対象とならない通報については、労働契約法第16条(※)など、従来の法体系の中で通報者の保護が判断されることに変わりません。
※解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする。
(質問) 事業者が通報窓口を新たに設置するときは、どのようにしたらよいのですか。
(回答)
事業者の内部に窓口を設置したり、事業者が指定した外部の弁護士に委託するなど、 事業者の実状に応じて設置してください。
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