1 世界遺産とは
2 世界遺産条約と世界遺産委員会
3 世界遺産登録の基準
4 我が国の世界遺産
5 世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」
1 世界遺産とは
「世界遺産」とは、人類共通のかけがえのない財産として、将来の世代に引き継いでいくべき宝物です。
世界遺産には、建造物や遺跡などの「文化遺産」、自然地域などの「自然遺産」、文化遺産と自然遺産の両方の要素を兼ね備えた「複合遺産」の3種類があります。
このような文化的・自然的な価値のある財産を、国際協力のもと保護し、将来の世代に伝えていくために、1972年に、ユネスコにおいて「世界遺産条約」が採択されました。
(ユネスコ:国際連合教育科学文化機関、本部はフランスのパリ。)
2 世界遺産条約と世界遺産委員会
世界遺産条約とは
「世界遺産条約」は、正式には「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」といい、文化遺産や自然遺産を人類全体のための遺産として損傷、破壊などの脅威から保護し、保存していくために、国際的な協力及び援助の体制を確立することを目的とした条約で、1972年のユネスコ総会で採択され、1975年に発効しました。
2021年8月現在の締約国は194ヶ国にのぼり、日本はこの条約を1992年に締結しています。
世界遺産委員会とは
世界遺産委員会の主な機能は、世界遺産条約の締約国と協力して、締約国から提出される世界遺産登録推薦書に基づいて、条約のもとで保護すべき、顕著で普遍的価値を有する文化遺産や自然遺産を認定し、世界遺産一覧表に登録することや、これらの遺産の保護に関して、締約国を支援することなどです。
3 世界遺産登録の基準
世界遺産に登録されるためには、ユネスコの定める「世界遺産条約履行のための作業指針」の中の次の3つの条件が揃っている必要があります。
1 資産が「顕著な普遍的価値」を有すること。
2 資産が「真実性」及び「完全性」の条件を満たしていること。
3 資産の保護を確実とする適切な保存管理体制が整えられていること。
1 資産が「顕著な普遍的価値」を有すること。
次の内、文化遺産は(1)~(6)、自然遺産は(7)~(10)が評価基準となり、一つ以上満たす必要があります。
なお、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」は、評価基準(2)、(4)が適用されました。
(1) | 人類の創造的才能を表す傑作である。 |
(2) | ある期間、あるいは世界のある文化圏において、建築物、技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展における人類の価値の重要な交流を示していること。 |
(3) | 現存する、あるいはすでに消滅した文化的伝統や文明に関する独特な、あるいは稀な証拠を示していること。 |
(4) | 人類の歴史の重要な段階を物語る建築様式、あるいは建築的または技術的な集合体または景観に関する優れた見本であること。 |
(5) | ある文化(または複数の文化)を特徴づけるような人類の伝統的集落や土地・海洋利用、あるいは人類と環境の相互作用を示す優れた例であること。特に抗しきれない歴史の流れによってその存続が危うくなっている場合。 |
(6) | 顕著で普遍的な価値をもつ出来事、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または明白な関連があること(ただし、この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。 |
(7) | 類例を見ない自然美および美的要素をもつ優れた自然現象、あるいは地域を含むこと。 |
(8) | 生命進化の記録、地形形成において進行しつつある重要な地学的過程、あるいは重要な地質学的、自然地理学的特徴を含む、地球の歴史の主要な段階を代表とする顕著な例であること。 |
(9) | 陸上、淡水域、沿岸および海洋の生態系、動植物群集の進化や発展において、進行しつつある重要な生態学的・生物学的過程を代表する顕著な例であること。 |
(10) | 学術上、あるいは保全上の観点から見て、顕著で普遍的な価値をもつ、絶滅のおそれがある種を含む、生物の多様性の野生状態における保全にとって、もっとも重要な自然の生育地を含むこと。 |
2 資産が「真実性」及び「完全性」の条件を満たしていること
「真実性」及び「完全性」の条件については、世界遺産委員会では、「世界遺産条約履行のための作業指針」の中で、次のように説明しています。
<真実性>
資材や文化的特徴が本物でなければならないということです。 復元に関しては、正確な情報に基づいて、つくられた当時の材料や構造、工法を守ることが必要とされています。
<完全性>
資産の価値や重要性を示すために必要な要素が全て含まれているということです。
3 資産の保護を確実とする適切な保存管理体制が整えられていること。
資産が国内の法律や制度による開発から保護されるよう守られていることが必要です。
また、資産の価値を損なわないために、必要に応じてそれぞれの資産を取り囲む地域に緩衝地帯(バッファーゾーン)を設定し、景観や環境を保護するための保護の網を設けることとなっています。
5 世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」
「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」は、19世紀中頃から20世紀初頭にかけて、日本が半世紀で産業国家に変貌した過程を時間軸に沿って示したものであり、九州・山口等の各地域に所在する複数の産業遺産(製鉄・製鋼、造船、石炭産業)を一つの「群」としてまとめたものです。
我が国の近代化は、幕末における西洋技術の導入以降、非西洋地域で初めて、きわめて短期間のうちに飛躍的な発展を遂げたという点において、世界史的にも特筆されるべきもので、この飛躍的発展の過程において大きな原動力となったのが、九州・山口等の地域です。
※平成21年に「九州・山口の近代化産業遺産群」のタイトルで我が国の世界遺産暫定一覧表に記載されましたが、平成27年7月の世界遺産一覧表への記載(登録)に当たり、タイトルを「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」とすることが決定されました。
関連リンク
明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業(外部リンク)