1 里親制度とは・・・
親の病気や障害、死亡、貧困、虐待などにより自分の家庭で暮らすことのできない子どもたちがたくさんいます。このような子どもたちを「児童福祉法」に基づいて、登録された里親に、親に代わって養育をお願いするのが「里親制度」です。
これは法に基づき、公的責任で子どもの養育を里親に委託するものですので、個人的な養育ではなく、みんなで子どもを育てていく「社会的な養育」となります。
県内にもこのような子どもたちがたくさんいて、家庭の温もりを求めています。
既に里親の登録を受け、実際に子どもを養育していただいている方もたくさんいますが、まだまだ子どもたちを受け入れてくれる里親さんが不足している状況です。
この里親制度の趣旨をご理解いただき、みなさんも『里親』になってみませんか。
2 『里親』ってなあに
子どもが明るく健やかに成長していくためには、あたたかい家庭が大切です。しかし、さまざまな事情で親と一緒に暮らせない子どもたちは、自分のことをずっとみてくれて安心感を得られる経験が不足しがちです。
このような子どもたちを、自らの家庭に迎えて愛情とまごころを込めて養育してくださる方のことを『里親』といいます。
いっしょにご飯を食べて、おしゃべりする
いっしょにお風呂に入る
いっしょに寝る
いっしょに服を選ぶ
いっしょに感じる(季節の移り変わりやきれいな花を愛でるなど)
真剣に叱られる、心配される、動いてくれる
愛情たっぷりに抱きしめてくれる
愛情たっぷりの言葉かけをしてくる など
子どもと同じ「けしき」を一緒にみてみませんか。
3. 『里親』になりませんか
里親になるには特別な資格は必要ありません。
子どもが好きで、健康で、経済的にも安定していて、明るい家庭であれば、どなたでも申し込むことができます。
里親になるためには、基本的に次の要件をすべて満たす必要があります。
| 要 件 |
1 | 子どもの養育についての理解及び熱意を持ち、子どもに対する豊かな愛情を持っていること |
2 | 経済的に困窮していないこと |
3 | 県が行う里親研修を修了していること |
4 |
欠格要件(※)に該当しないこと
※(1)禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者
(2)児童福祉法、児童買春・児童ポルノ禁止法又は福祉関係法律の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、 又は執行を受けることがなくなるまでの者
(3)児童虐待又は被措置児童等虐待を行った者その他児童の福祉に関し著しく不適当な行為をした者 |
4 『里親』になったら
子どもの養育をお願いしている間は、養育に必要な経費(例:生活費、里親手当、義務教育費、医療費)が支払われます。
また、児童相談所及び里親支援専門相談員など子どもに関わっている支援者が定期的に家庭訪問をさせていただきます。日ごろ困っていることや悩んでいることなど、どんなに小さなことでも結構ですので、お気軽にご相談ください。みんなで里親さんの気持ちを共有して乗り超えられる方法を考えましょう。
里親による養育は、「社会的な養育」です。つまり、里親さんをはじめ、児童相談所や里親支援専門相談員など、子どもに関わる大人みんなが支援者です。「チーム」として子どもを支えていきましょう。
5 『里親』の種類
| 種類 | 内容 | 有効期間 |
1 | 養育里親 |
親による養育が困難な状態にある子ども、親のもとに置くことが不適当と認められる子どもを、親に代わって養育する里親
委託期間:親による養育が可能と認められると児童相談所が判断するまで(短期の場合も、長期の場合もある) | 5年 |
2 | 養子縁組里親 |
養子縁組を前提として児童を養育する里親
委託期間:養子縁組が成立するまで | 5年 |
3 | 専門里親 |
虐待などにより心身に有害な影響を受けた子どもを養育する里親
委託期間:基本的に2年以内 | 2年 |
4 | 親族里親 |
子どもの扶養義務者(祖父母、兄弟姉妹等)及びその配偶者がその子ども(親族児童)に限って養育する里親
ただし、両親その他子どもを現に監護する方が死亡、行方不明などやむを得ない事情があると児童相談所が認めた場合に限ります。
委託期間:両親が子どもを養育できる状況になったと児童相談所が認めるまで | 委託解除まで |
6 『里親』になるための手続き
(1)佐賀県中央児童相談所へ相談(0952-26-1212)
↓
(2)里親研修(基礎研修)
↓
(3)里親登録の申し込み
↓
(4)里親研修(登録前研修)
↓
(5)家庭調査(児童相談所職員が、訪問して家庭状況を把握)
↓
(6)認定(知事が社会福祉審議会の意見を聴き、里親としての適否を審査し認定)
↓
(7)登録(里親としての登録)
7 当事者の声
-
里子から感謝のことばが聞けず、自分の行いが里子にとって無意味に思えて日々イライラすることが多かった。これ以上養育を続けることはできないと思ったが、今では適切な距離感で関わることができている。一緒の生活を楽しむことができ、この里子を出会ってよかった。
- 委託期間は、里子とうまくコミュニケーションがとれず戸惑うことが多かった。自立のために委託解除された後も「里親としてこの子に何がしてあげれただろうか」と思っていたが、毎年、里親宅に遊びに来てくれたり年賀状も欠かさず送ってくれるようになった。元里子から「自分の本当の親はあなたたちと思っている」と言ってもらったときは感動で涙が溢れた。
- 里子(女)が思春期の頃、里父との関係がうまくいかず、一緒に生活をしていてもほとんどコミュニケーションがない状況で日々もやもやしていた。しかし、自立による委託解除後は、毎年帰省(里親宅)するなど良好な関係が築け、普通養子縁組を行い、新たな親子関係となった。
8 Q&A
(1)里親側からの疑問
≪登録≫
Q1:年齢制限はありますか。
A1:登録に際して年齢制限はありません。ただし、子どもを養育するためには体力や精神力が必要となりますので、
里親委託を検討する子どもがいる場合は、その子どもの養育が可能かどうかの検討には年齢もある程度は考慮します。
Q2:里親登録に至るまでどのくらいの期間がかかりますか。
A2:最初に相談に至った時期により多少のずれがあると思いますが、スムーズに手続きが進んでも概ね半年程度の期間を
要すると思われます。
Q3:単身者でも里親になれますか。
A3:子どもの養育に関する知識や経験があるなど、子どもを適切に養育できると認められる者については、必ずしも配偶者
がいなくても里親登録を受けることはできます。ただし、委託にあたっては、養育を支援する環境等があるか否かなど総合
的に考慮します。
Q4:「経済的に困窮していない」とは、どの程度経済力があればいいのですか。
A4:里親として子どもを養育するためには、まず養育者自身が自立しておく必要があります。そのため、生活保護を受給して
いる世帯や生活保護を受給していなくても非課税世帯など経済的に安定していると認められなければ認定を受けられない
可能性があります。
子どもが委託されると、毎月一定の金額が委託費として支払われます。しかし、年齢によっては、それだけでは不足し里親
の家計に新たな負担が生じることがないとはいえません。そのため、日々の生活が安定して維持できることが一つの検討材料
となります。
Q5:家族が里親登録に賛同していないのですが、夫婦のみで里親になれますか。
A5:里親家庭に新たに子どもがくるということは、子どもや里親は当然のことですが、同居している家族(里親の両親やきょうだい、
実子など)にも大きな環境の変化をもたらします。また、「みんなで子どもを育てていく」ことを目的とした制度ですので、少なく
とも同居している家族の同意は必要です。
Q6:県外へ転居した場合でも里親は続けられますか。
A6:里親登録は居住地の都道府県で受けることになっていますので、県外へ転居された場合は、登録した都道府県での里親
登録は抹消されます。里親として登録を継続する場合は、転居先の都道府県で再度登録手続きが必要となります。
Q7:跡継ぎがいないため、養子がほしいのですが。
A7:里親制度は、里親という一般家庭に子どもを受け入れてもらい、子どもが健やかに成長できるよう支援をするという「子どもの
ための制度」です。そのため、「跡継ぎがほしい」、「老後の世話をさせたい」、「家業を継がせたい」、「墓守をさせたい」といった
自己の目的を主としている場合は登録ができません。
Q8:登録の有効期限が過ぎた場合は自動的に登録が取り消されるのですか。
A8:有効期限が過ぎる前に県で実施する更新研修を受講する必要があります。事前に研修の案内はさせていただきますが、
受講しなかった場合は里親の委託を受けることができません。また更新しなかったのみで即座に登録取り消しになるわけで
はありません。
≪委託≫
Q1:登録されてから子どもの委託を受けるまでにどれくらいかかりますか。
A1:登録されたからといって、すぐに子どもの里親委託の話があるとは限りません。
(1)対象となる子どもが家庭の中での適用が可能か
(2)里親委託に関して保護者の同意がとれているか
(3)子どもの養育に適した里親がいるか(世帯状況、地域、年齢等を含む)
などを総合的に考慮した上で里親委託に進めることになります。そのため、すぐに子どもの委託に関する相談がある場合も
あれば、長期にわたって相談がない場合もあります。
Q2:児童相談所から里親委託の相談があった場合、断っても大丈夫ですか。
A2:自らの家庭の状況をしっかり考慮した上で、相談のあった子どもの受入が難しい場合は断っていただいて結構です。それのみを
理由に、今後の相談がないということはありません。また、一度受入の意思表示をした後でも、マッチングを進める中で、里子の
受入により家庭の状況が悪化すると判断された場合は、マッチング中断を申し出ていただいても結構です。
Q3:どのような子どもが里子としての話がきますか。
A3:児童相談所で関わっている子どもたちの多くが、やむを得ず自らの両親と生活を断念せざるを得なかったものです。それには全て
理由があり、保護者の要因(病気や虐待等)による場合のほか、子どもたちの要因(障害、家庭内暴力など)、又はその
両方の場合があります。そのため、コミュニケーションが不得手だったり、愛着上の問題を抱えるなど、養育する上での難しさを
抱えている子どもはたくさんいます。
Q4:子どもとのマッチングにはどれくらいの期間がかかりますか。
A4:マッチングは子どもと里親との相性等をみるために行います。そのため、まずは子どもとの面会を行い、子どもとの外出
(ショッピングセンターでの買い物や食事、公園での遊び、里親宅の見学など)、外泊(1泊から長期外泊と複数回)を行った
上で、子どもが里親宅での生活が可能と判断できれば委託となります。期間はマッチングの状況(回数や一緒にいる時間の量
など)などにもよるため、一概にはいえませんが、概ね3ヵ月から半年程度はかかります。
Q5:マッチングのときはどんなことを気を付ければいいですか。
A5:マッチング期間は、里子が里親さんの家庭に入ったときのイメージづくりをしっかりしてください。また、家庭内も大きく環境が変わり
ますし、生活スタイルを大きく変える必要がある場合もあります。マッチングの際は、モノを過度に買ってあげたりするよりも、子どもが
好きなことや楽しいことを一緒に共有してください。
Q6:子どもを養育できなくなったらどうしたらいいですか。
A6:まずは困ったこと、悩みごとが出てきた段階で早め早めに児童相談所へご相談ください。児童相談所へ相談しにくい場合は、里親
支援専門相談員など他に相談できる人へご相談ください。里親さんの気持ちを確認した上で、養育を続ける意思があれば、みんな
で里親さんの意思に沿った上で乗り越えられる方法を一緒に考えましょう。
Q7:幼稚園や学校等では、里親の姓を使っていいですか。
A7:住民登録や学籍簿等の正式な書類は実名が使われますが、学校等での日常場面では里親の姓を使うことはできます。ただし、
その場合においても、保護者の同意を得るほか、学齢児であれば子ども本人の意思を尊重することが大切です。
≪その他≫
Q1:養育里親と養子縁組里親は何が違うのでしょうか。
A1:養育里親は、保護者が養育できる環境が整うまでの間、保護者に代わって養育をしていただくものですので、家族再統合を目標に
していますので、多くの場合がいずれ別れがきます。一方、養子縁組里親は、養子縁組を前提としていますので、里親として一定期間
(半年から1年程度)の委託を経て、養子縁組(法律上の親子関係)の手続きを家庭裁判所で行っていただくことになります。
Q2:里親ならではの難しさはどんなところがありますか。
A2:多くの場合が子どもの成長途中からの養育となります。つまり、委託になるまでは、子どもには子どもの人生を歩んできていますのでそれ
までに培った考え方や行動の癖などがあります。そのため、里親さんにとっては、「なぜこんな行動をとるの?」「なぜそんな考え方を
するの?」など、里子のことが分からなくて気持ちが不安定になることが考えられます。また、子どもと保護者との交流がありますので、
そのための協力をいただくことになります。
Q3:里子に対して、言ってはいけないこと、してはいけないことはありますか。
A3:子どもたちは自分の家庭で過ごせないために里親宅へ来ています。つまり、子どもたちの心の中では、「いつ家に帰れるんだろう」
「(親に)捨てられた」「(親は)いつか迎えにきてくれる」など、居場所の不安を抱えています。そのため、子どもの居場所をなくする
ような発言(例:ルールを守れないならここにいれない、子どもがそこにいないかのような態度)は、子どもの気持ちを深く傷つけるもの
になります。また、里親さんには、養育する上での最低基準が定められています(研修の際に講義があります)ので、その内容を確認
してください。
(2)保護者側からの疑問
Q1:子どもが里親さんに懐いて自分のところに帰りたがらなくなるかもしてない。
A1:子どもが健やかに成長するためには、特定の大人との愛着関係を築くことはとても大切です。愛着関係という土台があってはじめて、子ども
は自立へ足を進めるできます。愛着関係がしっかりできていない場合は、成長過程の中で情緒が不安定になり問題行動につながるおそれもあ
ります。そのため、里親さんに懐くことは子どもにとっては、とても大事なことです。しかし、里親さんには、あくまで「保護者の代わりに
養育していただくこと」「家族再統合が目標であること」などを理解してもらった上での委託になります。
Q2:子どもと会えなくなるのではないか。
A2:あくまで家族再統合が目標ですので、定期的に保護者のみなさまとの交流をしていただくことが前提となります。そのため、月1回
程度であれば交流(面会・外出・外泊)も可能です。
Q3:なぜ養護施設ではなく里親なのか。
A3:一般家庭(里親)で生活することは、子どもの成長や自立にも大変有効と考えています。里親家庭、養護施設それぞれよい面
はありますが、里親家庭での生活により、子どもが結婚し親になったときのモデルを学べる、家族の結婚・出産・死亡・病気などの体験
ができる、地域行事への参加、家の中と外での自分の態度、友達の家に遊びに行ったときの対応の仕方、自立した後の相談相手
などがよい面として考えられます。
(3)その他
Q1:親が行方不明となり、子どもの祖父母が養育しているが親族里親として登録できるか。
A1:基本的に扶養親族であれば、民法上の扶養義務が優先されますので親族里親は適用されません。しかし、子どもたちを養育する
ことにより、経済的に困窮状態に陥り、子どもを安心安全な環境で養育することが困難になる場合は親族里親の適用も考えられます。
親族里親の適用については、児童相談所での判断が必要となりますので、まずは児童相談所にご相談ください。
9 里親養育包括支援(フォスタリング)事業
里親委託を推進していくため、次に掲げる業務を一貫して包括的に支援していく業務をフォスタリング業務といいます。
(1) 里親制度の普及啓発・リクルート(里親を希望する人の掘り起こし)
(2) 里親研修及びトレーニング
(3) 子どもと里親とのマッチング
(4) 子どもを委託した里親宅への訪問支援(委託解除後のフォローを含む)
令和3年度においては、(1)から(3)を「社会福祉法人慈恵会」に委託し、(4)については、県を4つのブロックに分割して
それぞれ社会福祉法人に委託して実施しています。
このフォスタリング事業は、「佐賀県 里親支援 こねくと(外部リンク)」が実施しています。
10 その他
(1)関連リンク 厚生労働省(外部リンク)
厚生労働省(広げよう『里親』の輪)(外部リンク)
里親支援機関 洗心和合会(外部リンク)
(2) 令和3年度佐賀県里親養育包括支援(フォスタリング)事業の業務委託先が「社会福祉法人慈恵会」に決定しました。
(3) 令和3年度里親等委託推進提案型事業
厚生労働省が募集した当該事業に提案したところ採択されました。ついては、以下のとおり事業を実施していきます。
ア 事業内容
・里親に関するテレビCMの作成・放映
・SNS集中インストリームによる広告
・パネル展の実施(パネル及び冊子の作成)
・里親文集の作成
・特別養子縁組支援チームの設置
イ 事業期間 R4.1.1~R4.3.31
ウ 評価指標(KPI)
年間登録里親家庭数 20件 ⇒ 30件
(特に不足している養育里親家庭の登録を目指す)