1 事業報告書等の提出と法人情報公開の義務
(1)事業報告書は、毎年度、決算後3ヶ月以内に提出します
NPO法人には、毎年1回、前年度の事業報告書や決算書(財務諸表)を作成し、その報告書等を提出すること、そしてその事業報告書を5年間分法人の全事務所に備え置きすることがNPO法で義務付けられています。
このため、前事業年度の事業報告や決算報告の承認を受けた決議機関(総会、理事会を指します。事業報告・決算報告の承認を受ける決議機関はどれかは法人の定款に定めてあります)で承認を受けたら、「事業報告書等」(※)を所轄庁等に提出することになります。
提出期限は、毎事業年度末日の翌日から3ヶ月以内(例えば、4月~3月を事業年度とする法人では、6月末までとなります)です。
※事業報告書等とは以下の書類一式を言います。
「事業報告書等提出書(法人印押印)」「事業報告書」「活動計算書」「貸借対照表」「財産目録」「(財務諸表の)注記」「前事業年度の役員名簿」「前事業年度の社員名簿」
point1:事業をまったく実施しなかった事業年度でも、「事業を実施しなかった」という事業報告書等を提出しなければいけません。
point2:NPO法人には「休止」制度はありません。なんらかの理由で事業が一時停止状態になったとしても、解散しなかった場合、以下の事項は運営上
必須です。
1) 年1回の通常総会の開催(事業(未)実施報告・決算の承認)
2) 事業報告書等の提出
3) 貸借対照表の公告(平成30年秋から施行)
4) 任期満了年での役員改選と代表者の変更登記
事業報告書未提出が3年以上に及ぶと「認証取消し」になることがあります。
又、任期満了時の役員改選と役員変更登記も忘れないでください。この役員変更登記は、代表者に変更がなくてもやり直さなければなりませ
ん。
活動が停止状態になった時は、早めに「組織を継続して数年後に事業を再開が可能か、今解散した方いいか」を話し合いましょう。
NPO法人は、事業報告書等の書類を、最新役員名簿、最新定款等と併せて、法人の全事務所に備え置き、社員及び利害関係者が求めた場合に閲覧させなければなりません。
また、これらの書類は、所轄庁(県庁または権限移譲市町)でも一般公開=閲覧に供することになっています。
法人が備え置き、閲覧に供する書類は、以下のとおりです。
(3)事業報告書未作成、未提出への罰則
事業報告書等の提出がなされない場合、所轄庁等から電話、文書での督促が行われます。
また、法人としてなすべきことを怠ったとして、裁判所から20万円以下の過料が科せられることもあります。
さらに、3年以上に及んで未提出が続いた場合、所轄庁は「認証取消し」することができます。
認証取消しになった場合、理事、監事は認証取り消し日から2年間、NPO法人の役員になることができなくなります。
また、その取消し処分は県ホームページ上で公開され、報道機関に対しても情報提供されます。
2 貸借対照表の公告とそのための定款変更
NPO法人の正味財産額(資産額)は、登記事項として毎年度「資産の総額」登記で示すことになっていましたが、平成28年のNPO法改正で、この「資産の総額」登記が廃止され、法人自身が行う「貸借対照表の公告」に変更になります。
「資産の総額」登記の廃止⇒貸借対照表の公告への変更は、平成30年10月1日から施行されます。
貸借対照表の公告については、下記の四つの中から定款で定める方法(※)により法人自ら「公告」しなければなりません。
(1)官報に掲載する方法
(2)日刊新聞紙に掲載する方法(新聞社名を具体的に記載します)
(3)電子公告(インターネットに接続された自動公衆送信装置を使用する措置を言う・・・・「法人のホームページ」「内閣府ポータルサイト」等具
体的な方法を記載します)
(4)主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法
※貸借対照表の公告を定款に定める場合、この四つの方法の中で一つ以上の方法を定めればよく、しかし「A又はBによる」というように選択的に定める
ことはできません。
各公告方法の特徴と採用時の注意点については、下記のファイルをご参照ください。
(2)貸借対照表の公告のための定款変更~提出は「定款変更届出書」~
既に活動しているNPO法人は、この貸借対照表の公告の方法を定款に追加する定款変更を行う必要(※)があります。
※現行の定款の「公告の方法」のままで貸借対照表の公告も行うという考え方もあり得ますが、その際は以下の点を考慮してください。
(まず、法人の現行の定款の「公告の方法」を確認してください。)
佐賀県のモデル定款では、以下のようになっています。
「この法人の公告は、この法人の掲示場に掲示するとともに、官報に掲載して行う。」
貸借対照表の公告は一つの方法を定めればいいのですが、この条文のまま貸借対照表の公告を行う場合、二つの方法を併せて行う必要があります。
また、毎年「官報」に掲載する場合、これまでの「資産の総額登記」(NPO法人は登録免許税免除)に比べて、毎年、官報掲載料が必要となります。
貸借対照表の公告方法を定款に定める定款変更手続は以下のようになります。
社員総会での「定款変更の件」の議決(出席社員の4分の3以上の賛成が必要)
⇒議事録の作成
⇒所轄庁に「定款変更届出書」の提出(添付書類「新定款2部」「総会議事録の写し」)
(参考1)定款変更新旧対照表のモデル
(旧)(公告の方法)
第○条 この法人の公告は、この法人の掲示場に掲示するとともに、官報に掲載して行う。
(新)(公告の方法)
第○条 この法人の公告は、この法人の掲示場に掲示するとともに、官報に掲載して行う。
ただし、貸借対照表の公告は、○○(※)に掲載して行う。
※ここに「法人のホームページ」「内閣府のポータルサイト」「法人の主たる事務所の掲示場」等を入れます。
公告の方法のその他の定め方の事例については、以下をご参照ください。
(参考2)定款附則の記載の仕方(平成30年9月30日までに公告に係る定款変更を行う場合)
定款の最後に、変更履歴のため「附則」を記載している法人もおられるでしょう。
今回の「貸借対照表の公告」の施行日は「総会決議日」でも「認証日」でもありません。
定款変更の記録として「附則」をつけている法人は、以下の記載事例を参考にして記載してください。
公告の条項だけの定款変更の場合
「附則(○年○月○日社員総会議決)
この定款は、平成30年10月1日から施行する。」
他の条項も変更している場合は
(定款変更届出書の場合)
「附則(○年○月○日社員総会議決)
この定款は、社員総会議決の日から施行する。ただし、第○条は平成30年10月1日から施行する。」
(定款変更の認証申請書の場合)
「附則(○年○月○日社員総会議決)
この定款は、所轄庁の認証の日から施行する。ただし、第○条は平成30年10月1日から施行する。」