1 条例の制定趣旨
佐賀県は慈しみ合う県。
佐賀の先人であり、日本赤十字社を創設した佐野常民は、「博愛これを仁という。仁とは人を慈しむこと」の言葉を残している。人の痛みに敏感になり、苦しみの中にいる人には手を差し伸べ、寄り添い、慈しみ合う精神は、時代を超えて脈々と佐賀県民の心に受け継がれてきました。この精神はこれからも将来にわたって大切に引き継いでいかなければならないものと考えます。
私たちの社会は様々な年齢、国籍、性別の人、障害のある人ない人も、いろいろな人たちがいろいろな思いで共存しています。
佐賀県では、県民みんながお互いを認め合い、支え合う佐賀らしいやさしさのカタチ「さがすたいる」を広める取組を進めています。
佐賀県は慈しみ合う県であるという土台の下で、「さがすたいる」の取組をさらに進め、県民みんなが支え合いながら暮らせる社会を目指していきます。
他方で、情報化等の進展に伴って、部落差別(同和問題)をはじめとする不当な差別など人権に関する問題は複雑多様化しています。特にインターネットの普及によって、不当な差別やいじめ、プライバシーの侵害、誹謗中傷等が増加し、それらの問題への対応が大きな課題となっています。
佐賀県においても、インターネットを利用した誹謗中傷や差別を助長する投稿をはじめ、学校や職場でのいじめ、パートナーへの暴力や児童への虐待など、「人権」に関わる問題が依然として発生しています。どれも決して他人事ではありません。その解決のためには、県民一人一人が問題を自分のこととして考え、自ら行動していくことが大切です。
私たちは、人として生きていくための何人も侵すことのできない権利である「人権」を生まれながらに享有しています。全ての県民が一人一人の人権を共に認め合い、支え合う社会づくりを進めるために、たゆまぬ努力を続けていくことを決意し、この条例を制定しました。
2 条例の主なポイント
(1) 事業者の責務(第5条関係)
県、市町、県民の責務に加え、「事業者の責務」を新たに規定しました。
事業者におかれましては、従業員その他の関係者の人権を尊重するとともに、従業員の人権意識の高揚を図るための研修の実施などの人権教育・啓発に関する取組に御協力をお願いします。
(2) 人権侵害行為の禁止(第7条関係)
不当な差別、いじめ、虐待、プライバシーの侵害、誹謗中傷など、他人の権利利益を侵害する行為を“してはならない行為”として規定しました。これには、インターネットを通じて行われるものも含まれます。
(3) 相談体制の整備(第8条関係)
人権に関する問題に悩む方に寄り添うための相談体制について規定しました。
相談者への助言や必要な情報の提供、関係機関の紹介など、相談者に必要な支援を行っていきます。
(4) 助言、説示、あっせん、勧告(第9条~第11条関係)
相談による対応での解決が困難な人権侵害行為に係る事案について、必要に応じて、人権侵害行為をしたと認められる者に対して助言、説示、あっせん、勧告を行うことを規定しました。また、助言、説示、あっせんを行う場合は、必要に応じて第3者機関(佐賀県人権施策推進協議会)の意見を聴く(諮問する)仕組みや勧告を行う場合の意見聴取の手続きについて規定しました。
(5) 勧告の状況の公表(第12条関係)
勧告を行った人権侵害行為に係る事案の公表について規定しました。
これは制裁を目的として行うものではなく、人権侵害行為の発生の防止や解消を図るために、その概要を公表するものであり、対象者が特定される事項を除いて公表を行います。
(6) インターネット上の誹謗中傷等の防止(第13条関係)
・ インターネット上の誹謗中傷等(※)を防止するために必要な教育・啓発について規定しました。
・ 県民に対してインターネット上の誹謗中傷等が行われた場合には、「表現の自由」を不当に侵害しないように留意しながら、当該情報の削除に向けて必要な措置を行います。
※「インターネット上の誹謗中傷等とは」
インターネットを利用して、他人の人権を侵害する情報等(プライバシーの侵害に該当する情報、誹謗中傷に該当する情報その他の他人の権利利益を侵害する情報又は人権侵害行為を助長誘発する情報)を発信することを言います。
3 施行期日
この条例は、令和5年(2023年)3月13日から施行します。