文化的景観
「蕨野の棚田」は、唐津市相知町内に所在し、八幡岳の馬蹄形状をした北向きの急斜面地に約36haにわたってひろがっている。棚田の石積みは野面積みを基本とし、平均の高さは3~5m、高いものでは8.5mに及ぶ。八幡岳山中には棚田の水源となる2つの溜池がある。
棚田の築造には二つの特徴がある。一つは「石垣棟梁」と呼ばれる専門の石工とこれを手伝う村人が、「手間講」と呼ばれる協同の石築作業を行い、石積みの維持管理を支えてきたという点である。もう一つの特徴は、棚田に水を配分する水利システムとその構造である。棚田の築造は、少なくとも江戸後期にまで遡ると考えられるが、現存するものの大半は明治から昭和20年代までに形成されたものである。
「蕨野の棚田」は、棚田とその周辺の森林及び水利システムが、固有の石積技術や地域の協同作業に基づいて維持されるとともに、それらの有機的な関係が、一体の土地利用として発展した重要な文化的景観である。