平成28年4月28日告示
所在地 鳥栖市田代大官町408番地 中冨記念くすり博物館
所有者 公益財団法人 中冨記念財団
「田代売薬」は、対馬藩田代領(現在の鳥栖市の東半部と基山町)で江戸時代中期頃から始められたとされる配置売薬業である。公益財団法人中冨記念財団が収集する「田代売薬」に関する資料は、こうした江戸時代中期の始まりから配置売薬が衰退していく昭和40年代頃までの、田代で使用された製薬道具、行商の際の諸用具や携行用具、その他製品に関する様々なものが細かく系統立てて収集されている。
近世から現代まで連続して収集されている本資料の存在は、鳥栖地域及び佐賀県域の産業経済の歴史を考える上で大変貴重である。
また、製薬及び売薬の発祥と変遷の理由が、対馬藩の飛び地であったこと、古くから九州の交通の要衝であったことなどの特異な地域的特色により育まれた、当地の人々の先見性、製造技術や開発力、他藩での商売を可能とした外交力や宣伝力といった気風に根差すところが大きいことをよく反映している。
さらに、配置売薬の商売方法である、客を直接訪問して薬を預け、使用した薬代だけを精算する「先用後利」という仕組みは、売薬人と客との信頼関係無くして成立しない日本独特のものであり、人々の生活と深く結びつき、日常の生活文化を支える上でも重要である。